新規事業開発は、「ニュータイプ社会人」に任せるべきである。 | DOER NOTE

BtoB企業のマーケティング支援なら才流(サイル)

BtoB企業のマーケティング支援なら才流(サイル)

マーケティング

新規事業開発は、「ニュータイプ社会人」に任せるべきである。
林大介
  • 著者/林大介
  • 株式会社ウフル IoT × enebularビジネス開発本部 本部長

新規事業開発は、「ニュータイプ社会人」に任せるべきである。

最近、「新規事業プロジェクトを任せられるリーダーがいない」という悩みをよく耳にするようになった。

 

いない、といってもいろいろな状態がある。適任者が誰かわからない、いるけれど別の仕事をやっていてアサインできない、リーダーらしき人は据えられているが機能していない、元気な若手が実質的なリーダーになってベテラン社員がしらけている……など。状況や条件は様々だが、共通して言えることは「リーダー不在」の一言である。

 

寄稿3回目となった本稿では、筆者が実際に経験したデジタルテクノロジをテーマとした新規事業開発プロジェクトにおいて、実在のリーダーの皆様の人間像を掘り下げ、どういった素養を持つ人物に新規事業のリーダーを任せるべきなのかを論じていきたい。

 

素養1:夢を見させる力

新規事業開発を難しくする要素のひとつに、「誰も予想できないことを前提にせざるを得ない」という点がある。

 

特に、その新しい提案が「どのくらい売れるか」という予測は、1年後の今日の天気を予測するくらい難しいものである。この辺りが、原価低減プロジェクトや制度設計のプロジェクトとは根本的に異なる点である。要するに、予想するのが極端に難しい新規事業開発のプロジェクトにおいてはある程度「思い込み」が必要なのだ。

 

とはいえ、単なる「思い込み」で人を惹きつけることはできない。その思い込みを「信念」に変え、その信念を持った集団が「思想」を持って邁進するためには、リーダーに”夢を見させる力”が不可欠なのである。

 

筆者も長年仕事をご一緒させて頂いているリーダーのAさんは、自らが思い描いている世界観を言論に落として語るのが得意な人だ。Aさんが語ると「その未来が本当に来たら、凄いことだ」と思わざるを得ないのだ。このため、Aさんはお客様からも一目置かれる存在であったし、様々な講演に引っ張りだこの時期もあった。

 

この素養を持つリーダーは、無駄な将来を予測しない。「未来を予測し、そこに網を張って儲けよう」という発想より「自分たちが儲かる未来を、創ってしまえば良い」と考える傾向にある。視点が三人称ではなく、一人称で語られるのだ。従って、この素養を持つ人間を発掘するためには、シンプルに未来を語らせてみれば良いのである。

 

素養2:変化への探究心

次に挙げられる素養として、変化への探究心がある。言い換えると、新しい価値に対する許容度とも言えるかも知れない。例えばウォシュレットは日本では普通だが、海外ではまだ価値を受け容れられているとは言い難い。普通の人間は、新しい価値を受容するには多くの機会と時間を必要とするのだ。

 

しかし、少ない機会で、ともするとたった1度の機会で、その時間をほぼゼロにしてしまう人が少数存在する。ここでリーダーBさんに登場して頂こう。

 

筆者が担当したプロジェクトでの話だが、今やコンシューマの世界では普通になったメッセージのやりとりによるコミュニケーションスタイル(要するにLINEのようなもの)を新しい業務システムに取り入れるべき、と提案したところ即採用され、その業務システムのメイン機能として大々的に社内に宣伝された。

 

「業務をチャットで済ますのか?」
「セキュリティは?」「前例は?」

 

などと、ネガティブなことを指摘しようと思えばいくらでも出来たはず。だが、まだ実装どころか仕様すら固まっていない段階で、素早い決断を下したのである。

 

これは単なる新しもの好きという話ではない。この素養を持つ人間は、体験が変わることに大きな興味を持ち、判断基準の中心に据えていることが多い。いくら新しくても体験が変わらなければ意味がないし、技術的に新しくなくても、体験さえ変われば意味があると考えるのだ。この素養を持つ人間を見つけるためには、何かの新製品について語らせれば良い。機能や競合製品との優位比較ではなく、いかに体験が変わるかについて説明してくれるはずだ。

 

素養3:社会貢献マインド

3つ目の素養は社会貢献のマインドである。会社よりも社会が優先であると考えており、新規事業の企画において、プロジェクトのゴールを自社の営業的な利益ではなく、変革された社会の姿を目標に定める傾向にある。一言で言えば目線が高く、スケールが大きいのだ。

 

そして、この素養を持った人間を見つけることは比較的簡単である。あなたがやりたいその事業のためなら会社を出る覚悟はありますか?と問えば良い。筆者が出会った社会貢献マインドを持つリーダー達は、異口同音に「これを本気でやらせてもらえるんだったら子会社でもジョイントベンチャーでもなんでもいい。なんだったら他社でも良い。」と決意を表していた。自分自身を会社の中での相対的な位置関係で評価するのではなく、社会にどれだけ貢献できるかという考えが根底にある。

 

素養4:社内政治力

最後に挙げる素養は、(身も蓋もないが)社内政治力である。たった一人でも起業する、という状況でない限り、必ず自社企業のリソースを使って事業開発しなければならないので、社内における立ち振る舞いの”巧さ”がものを言う。特に敵対勢力を作らず、リソース集めが上手く、トップへのホットラインを持ちつつ、部下を上手くモチベート出来る人間が最高だ。筆者が長年お世話になっているリーダーのCさんがまさにこのようなタイプで、こういった人間が上に立つことでチームは安心して事業開発に集中することが出来るのである。

 

ただし、この社内政治力という素養と、前述した素養1~3はやや対極的な素養であり、同時に持つ人は極端に少ない。高い視線とマインドを持つビジョナリーだが社内で評価されていなかったり、社内の評判・評価は高いのに新規事業開発のリーダーとしてはビジョンも何も無く保身ばかり考えたり・・・大変切ないがこれが日本企業の実力である。

 

まとめ

ここまで4つの素養「夢を見させる力」「変化への探究心」「社会貢献マインド」「社内政治力」を挙げたが、全てを完璧に備えた人間は希少かも知れない。ただし、その片鱗を見せる人は少なからず存在するはずである。

 

世の中は変わった。市場は非連続で不規則に変化するようになり、戦略的機動力が高い企業でなければ最前線からドロップアウトするようになった。そこで活躍するのが、この4つの素養を併せ持つ「ニュータイプ」な”社会”人である。少ないからといって発掘を諦めてはいけない。

 

この「ニュータイプ社会人」を見つけるためには、実際に会って話をしてみるしかないが、そのリーダー候補の今のポジションや職位が充分に高くない場合がある。もしあなたが新規事業のリーダーを指名できるほどの充分な高い職位にいる人間だとすると、ポジションが高すぎてこのような人間と会話する機会すらないかも知れない。

 

特に大企業の事業本部長・役員クラスの人間は要注意である。「ニュータイプ社会人」なリーダーは現場からの支持が厚いケースが多いので、情報は現場から吸い上げるのが一番良い。

 

最後に、素養が備わっているからといって、そのリーダーが手がける新規事業が必ず成功する訳ではない。何回か失敗することを前提に根気強く任せなければならない。つまり、新規事業開発のプロジェクトリーダーの素養も大事だが、そのリーダーに託す側にも、事業責任者としての素養と覚悟が必要なのだ。そういう意味では、新規事業開発の成否は、リーダーを選ぶ人の”格”に左右されるのである。誰をリーダーにすれば良いか分からない、と悩んでいる時点で”格”は充分だろうか、まずはそれを自省するところから始めるべきかも知れない。

林大介
  • 著者/林大介
  • 株式会社ウフル IoT × enebularビジネス開発本部 本部長

電機メーカのエンジニア、通信システムインテグレーターのセールスを経てコンサルティングの道へ。ネットワーク、モバイルを中心とした戦略立案、新規事業開拓、テクニカルアドバイザリーを中心としたプロジェクトを多数実施。昨今はクラウド、IoT、AIなどの技術トレンドを背景にしたデジタルトランスフォーメーション、IoT新規事業創造、ワークスタイル変革に注力している。各種戦略策定、変革実行支援、ワークショップの企画と開催に強みを持つ。

この著者のSNSアカウント

メルマガ登録

DOER NOTEの人気記事や運営の裏話を毎週月曜日に配信しています。


 

マーケティング