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大企業の「新規事業を阻む壁」を乗り越えるには?- NTT DXパートナー・長谷部豊さん

新規事業
才流コンサルタント
小島 瑶兵

社内で新規事業に関わる人たちは、社内起業家、つまりイントレプレナーです。

才流では、大企業をはじめとしたイントレプレナーの皆さんを取材し、新規事業開発の参考や学びとなるナレッジをご紹介します。

第1回は、株式会社NTT DXパートナーの代表取締役・長谷部豊さんです。

長谷部さんは、NTT東日本に入社後、幅広い業界・企業の業務システム刷新プロジェクトを、コンサルタント兼技術者として推進。その後、ビジネスユーザー向け、生活者向け双方の新規サービス開発に数多く取り組むとともに、イントレプレナーの発掘・育成にも精力的に関わってきました。

そんな長谷部さんに、大企業で新規事業を進めるための知見やマインドをうかがいます。

聞き手は、才流のコンサルタント・小島 瑶兵です。

「新規事業担当者は、どのような心構えを持ち、何から始めるべきか」といった悩みを持つ方は、ぜひご一読ください。


株式会社NTT DXパートナー 代表取締役
長谷部 豊さん

1998年NTT入社。
1999年よりNTT東日本にて、さまざまな業界における企業の業務システム刷新プロジェクトをコンサルタント兼技術者として推進。その後、ビジネスユーザー向け、生活者向けのサービス開発を多数手掛ける。イントレプレナーの育成にも力を注ぎ、複数のチームを率いて新規事業開発に従事。2022年1月より現職。

米国ミシガン大学経営大学院修了(MBA)、グロービス パートナー・ファカルティ(経営戦略講師)

株式会社NTT DXパートナー

NTT東日本が培ってきた、ICT活用のノウハウや地域社会との深いつながりなどの豊富なアセットをいかし、共創・伴走型でDXに関するコンサルティングや機能実装、新規事業開発などを支援する企業。新規事業のひとつとして、株式会社ブレインスリープ、NTT東日本と3社でパートナーシップを結び、睡眠×ICTの事業に取り組む。

既存の事業開発プロセスでは、新規事業は失敗する

小島 私はコンサルタントとして、新規事業支援を担当しています。

とくに大企業の担当者の方々からは、「網羅的な市場調査をしても顧客解像度が上がらず、手触り感のある戦略が描けない」「社内の利害調整ばかりに苦心し、顧客目線の事業開発ができない」といった、大きな組織ならではの難しさを数多く聞いてきました。

その難しさを突破するには、スタートアップで用いられるテクニカルな手法だけでは不十分だと考えています

長谷部さんは、NTT東日本、そして現在のNTT DXパートナーで、さまざまな新規事業を手掛けられ、さらに新規事業開発に対する独自のポリシーをお持ちです。まずは、そのような考えを持つに至った背景から教えてください。

長谷部 新規事業開発については、私も何度もうまくいかない経験をし、悔しい思いをしてきたんです。

プロダクトマーケットフィット(PMF)が実現できていない状況で、本格的な開発やプロモーション施策などが走り始めてしまう──。新規事業に関わる皆さんの多くが、同じ経験をしていると思います。

NTT DXパートナーの代表取締役・長谷部豊さん
NTT DXパートナーの代表取締役・長谷部豊さん

長谷部 その原因のひとつは、新規事業と既存事業の開発プロセスの違いにあると考えています。

一般的に既存事業は、社内に存在する、調査・企画担当、仕様検討・開発担当、プロモーション担当などの専任機能別に、役割を分担しています。新たな改善を加える場合でも、それらの専任機能ごとに役割を分担して実施し、一直線に進めていきます。

つまり、顧客への提供価値ができあがった状態で、専任機能別に役割を分担している。価値提供(デリバリー)の効率化に適合したプロセスなのです。

しかし新規事業開発には、そもそもの価値の源泉の探索や、新たなビジネススキーム、社内のバリューチェーン構築などのプロセスがあります。さらに、何度も立ち戻って、考え直し、やり直すという、仮説検証の繰り返しが必要です。

これを、既存事業に新たな改善を加えるときと同じように実施しようと考え、一連のプロセスを直線的に急いで進めようとすると、うまくいきません。

小島 新規事業開発は、既存事業の運用とはまったく違うんですね。

才流コンサルタント・小島 瑶兵
才流のコンサルタント・小島 瑶兵

長谷部 そうです、新規事業開発は既存事業とはルールが異なるゲームなのです。そのことを理解したうえで、新規事業開発ではそもそもの開発プロセス全体から変える必要があります。

とくに新規事業開発では、フィットジャーニーへの注力が大切です。

顧客に向き合い続け、あと戻りとやり直しを繰り返し、顧客にフィットする価値をつくり出すことが重要。初期は、そのことに専念できる独立した組織やチームを組成して進めるべきだと思います。

PMF達成までのフィットジャーニー

長谷部 ですが、新規事業開発においては、社内調整やステークホルダーとの合意形成など、「顧客の価値創造に直接関係があること」以外にパワーを求められがちです。

さらに、「後戻りして、やり直したい」「提供価値にズレがあるので変えたい」は、簡単に通用しません。「なぜはじめからわからなかったの?」となる。

既存事業の運営の枠組みやプロセスのなかで新規事業開発を進めようとしていた頃に、何度もぶつかった壁でした。

小島 はじめから正解を求められ、仮説とのズレも「失敗」に見られてしまう苦しさがありますよね。

長谷部 顧客にフィットする価値の仮説を磨いている段階で、変更にあたっての承認が多岐に渡ったり、既存業務運営の枠組み、ルールの中でしか変更が認められなかったりすると、顧客にフィットする価値の創出がおそろかになっていく。すると、しだいに社内を通すことに気を取られ、顧客から目が離れてしまいます。結果的に、価値を生まないプロダクトが出来上がってしまうのです

長谷部さんが新規事業開発で大切にしているポリシー

  • 顧客から絶対に目を離さない
  • Will(意志)や熱意を重視する
  • まずは自分たちで30人の顧客に会いにいく

新規事業を「妥協の産物」にしないためのポリシー

小島 そのような環境では、新規事業担当者も、モチベーションが保てないのでは?と思います。

長谷部 実際に、私にも経験があります。「本当はこう変えたかったのに、妥協の産物が出来上がってしまった」という感覚に何度か襲われました。

しかし、「できない」では前に進めない。NTT東日本という企業で、何度も新しい事業に挑戦する機会をもらってきたからこそ、やりきらなくてはなりません。

この悔しさが、「顧客から絶対に目を離さない」というポリシーや「自分で顧客に継続的に会いにいく」アクションへつながったのです。

小島 「顧客から絶対に目を離さない」は、新規事業開発で妥協しないためのポリシーなんですね。

長谷部 妥協してしまうのは、顧客にフィットする価値がつかめていないせいもあります。

私は、「自分たちで30人の潜在顧客に会いにいく」というアクションを通して出会った、ペルソナや潜在顧客を「未来の顧客」と呼んでいます。

未来の顧客とは、ヒアリングのあともMVP(※Minimum Viable Product)の検証などを通して接点をつくり、対話を続けていきます。そうして、自分たちの頭のなかに、顧客が常にいる状態をつくるのです。

すると、社内外でさまざまな議論が起きたとき、「未来の顧客にフィットした価値がつくれているだろうか」と思考を巡らせることができます。私のポリシーは、自分の心を顧客以外に持っていかれないための軸でもあります。

そして「未来の顧客のために、価値を提供し、課題解決を成し遂げる」という、強い意志としてのWillが重要。Willは、自分も含めてチーム全体で、徹頭徹尾で持ち続けることが大切です

※MVP(Minimum Viable Product):顧客に対して、必要最小限の価値や機能を提供するプロダクトやサービスのこと。

既存のルール内で創意工夫し、実績をつくる

小島 社内調整の大変さは、大企業の新規事業支援に関わる皆さんからよく聞く課題です。

私から「ではこうしませんか?」と提案すると、現場の担当者は「確かにそうですね」と同意はしてくださるんです。ところが、「でも、うちでは無理なんですよ」となってしまいます。

なぜ、長谷部さんは社内調整を乗り越えて、事業を実現できるのかを教えてください。

長谷部 私が新規事業の企画・開発を担当し始めた頃の開発プロセスは、基本的にウォーターフォール型(※)でした。新規事業開発であれば、アジャイルの考え方を取り入れたいのですが、まずはウォーターフォール型であってもPDCAを回していけるようにしたのです。

たとえば、それまでは開発会社と製造請負契約を結んでいたところを、アジャイル開発ができるように準委任契約を行い、仕様を決めずに進められるように変えました。開発サイクルの回数を確保するように工夫して、最初は乗り切っていましたね。

※ウォーターフォール型開発とアジャイル型開発
ウォーターフォール型は、必要な要件をあらかじめ定義し、要件通りに開発する。アジャイル型は、小さな単位で開発し、スピーディに実装とテストをくり返し開発する。スピーディなPDCAが求められる新しいサービスやプロダクトの開発では、アジャイル型が望ましいと言われている。

小島 新規事業開発はルールが違う。けれども、まずは既存のルールのなかでできることを実現してきたんですね。

人材育成を目的としたビジネスコンテストで、新規事業の開発プロセスを試す

長谷部 ほかにも、ビジネスコンテストを実施しました。フィットジャーニーのうち、ソリューションプロダクトフィット(以下、SPF)までを、ビジネスコンテスト内のチームで走り切ってしまうのです。

小島 ビジネスコンテストの実施ですか。

長谷部 多くの企業でもおすすめできる方法だと思いますね。

たとえば、既存組織の中で新規事業を立ち上げる場合、最終的には、営業やマーケティングをはじめ、開発、サポートといった、バリューチェーンを形づくる既存の機能別組織とも連携しなくてはなりません。

小島 連携は必要でも、早い段階から連携しすぎると、社内調整が煩雑になってしまいます。そこで「ビジネスコンテストを活用しよう」というわけですね。

長谷部 SPFの手前まで、ビジネスコンテストのチームだけで進める。そのあとに、会社の既存事業で運営している機能別組織と連携し、外部へデリバリーしていく方法を考えていくのです。

SPFを目指すフェーズまで進んでいるならば、リアルな顧客にプロトタイプを見せ、フィードバックをもらえているでしょう。ですから、社内にも具体的な話ができます。

既存事業の運営プロセスによる影響を受けない別会社や新しい部署をつくるなど、いわゆる「出島」の組織ができない場合も、ビジネスコンテストで新しいプロセスを走らせてみるのです。

小島 ビジネスコンテストが、会社の既存組織から独立した「場」になりますね。

長谷部 事業部長さえ説得できれば、予算もそれほどかからずに進められるでしょう。「20%ルール(※業務時間の20%を、自分の担当外のプロジェクトにあてる考えかた)」の範囲内で、新規事業のMVPまでは達成できるはずです。

小島 とてもワクワクします!

しかし、ビジネスコンテストをどういった名目で開催するのかが難しそうな気もしますが

長谷部 人材育成を名目にできます。

以前、あるビジネスコンテストに取り組んだとき、社内では「新しい事業を見出すこと」と「新しいチャレンジに取り組める人材を育成すること」、どちらを主旨にするかの議論がありました。結果、人材育成を優先したんです。

というのも、ビジネスコンテストは既存事業に携わっている社員を公募で集めて参加してもらいます。

すると、既存事業の上司は「なぜ、ほかのプロジェクトに時間を割くのか」と不満を感じかねません。あるいは、「すぐにお金にならない新規事業に時間をかけている場合じゃない」という意見も出てくるでしょう。

ですから、「ビジネスコンテストは人材育成プログラム」と明確にして伝えることで、一定の理解が得られます

社内の壁は「通過儀礼」と心得る

小島 ビジネスコンテストのお話でも出てきましたが、多くの企業では「承認」というプロセスに膨大な時間を要します。長谷部さんは、どのような工夫をして承認を進めてきたのですか?

長谷部 前例がなく、リスクが想定されそうな事柄は、承認のハードルが高くなりますね。

過去何度も試して一定の効果があったのは、アナロジーの利用です。「ある事柄をもとに他の事柄を推し量って考えること」や「類推による表現」といった意味合いですが、社内で似たようなことを実行した履歴を探してみるのです。

そして、新規事業でも「形は違えど、このやり方や、この内容は、今までもやってきたことですよ」といったように理解を促していきます

小島 承認をする相手にも、安心感が生まれる方法ですね。

長谷部 そのうえで、私が立ち上げた新規事業開発チームに対しては、最初に心構えを共有します。

真面目な性格のメンバーほど、社内の壁に対する課題にぶつかり続けていると、つぶれてしまいやすいものです。

そこで、「社内にはあらゆる『やらない理由、やれない理由』の常套句がある。どれだけ壁を乗り越えても、新しい壁が出てくる。これらは通過儀礼なのだ」と伝えます。「担当者の能力やスキル不足の問題ではないので、悩まなくていいよ」と。

長谷部 そして、社内は決して敵ではなく、味方であり仲間だと捉えて「どんな時も社内はワンチーム」との心を持ち続けることが非常に大切だと伝えます。

というのも、「新規事業をやっているとまわりが敵に見える」という人が多いのです。それでギスギスしてしまっては、成功の道は閉ざされてしまいます。

小島 なぜ、まわりの人たちは「新規事業うまくいくの?」や「難しいんじゃない」のような発言をしてしまうのでしょうか。

長谷部 実は「悪気がない」のも事実なんですよ。

多くの社員は、既存事業の生産性を高めるための専門性を持つように教育されています。それぞれの持ち場を効率的に回すことで、会社の利益を最大化していく。フィットジャーニーが終わった「本業」の改善を続けるプロともいえます。

そういった人たちへ「組織の枠を超えて、新しい価値を生むための試行錯誤をしよう」と呼びかけても、すぐには伝わらないのは当たり前なんです。

組織的にも個人的にも、現状の役割やルールのなかで、専門性や効率性を高めることに最適化されている。そう簡単には、役割やルールを変えたり、前例のないことに踏み込めません。

彼らが既存プロセスを愚直に回すことが、現業の利益最大化につながっているのであり、致しかたないことなのです。

未来の顧客の課題解決を担うからこそ「責任を取る」と言い切れる

小島 ここまでのお話を聞いていると、「正面から正論でぶつからないことも大事なのだ」と感じます。

長谷部 他の部署から承認が下りない、協力が得られない場合。実は、担当者は賛同しても、上司に説明できないという事情が隠れているケースもあります。

既存の事業でも同じですが、ときには相手の上司や、さらに上の上司に働きかけ、動いてもらえるように味方につけておくことは大切です。

そして、ここぞというときは、責任をかけて取り組む姿勢を見せる。

これは過去の一例ですが、新しいビジネススキームを組むときに「この発注先は前例がないから承認できない」や「社内ポリシーから認められない」といった壁にぶつかったことがあったんです。

そのときには、自分の上司に応援をもらったうえで、「なにかあった際は、私たち新規事業チームが責任を取ります」と明言して、承認をもらいました

小島 先入観として、大手企業では「責任を取る」と出世しないのではないかと感じていました。

しかし、なぜ長谷部さんは「責任を取る」と言えるのでしょうか。他の人も、同じようなアクションを起こせますか。

長谷部 そこで、Wilの観点が必要になります。新規事業を成功させたいという強い意志がなければ、数々の壁は突破できません

また、「責任を取る」と言い切れるフェーズは、顧客から目を離さずに、SPFに励んでいるときです。

リアリティのある未来の顧客との対話に努めているからこそ、その課題解決策を待ち望んでいる顧客が目の前にいると感じられる。だから、「責任を取る」と言い切れるわけです。

そのハードルを乗り越えたときに、提供できる価値もより大きく感じられるでしょう。

価値や課題が見えていて、打ち手もわかってくると、社内を巻き込める。その段階になるまで、ミニマムで進めていくことが大切です。リアリティのあるものを見せられると、他部署も「勝ち馬に乗りたい」と感じる状態になっていきます。

小島 まわりが「協力したい」と感じられるフェーズまでは、正面突破を避ける。耐え抜く強さも重要ですね。

長谷部 また前提として、「新規事業がうまくいったら、協力してくれた社内の部署の人たちの成果になる」状態をつくることも大事です。新規事業開発では、「何となく協力させられている」と感じる人も多いですからね。

新規事業チームは、他部署も成功して、やっと自分たちの成功といえる状況になります

うまくいったときほど「みなさんの成果だ」といい、体制図に加えましょう。そのような共創ができていれば、新規事業に協力することが他部署の人たちの人事評価にもつなげやすくなり、それ以降も協力を仰げるようになります。

新規事業開発チームは自らの足でフィットジャーニーを歩もう

小島 最後に、大企業で新規事業に挑戦する人たちへ向けて、エールも込めてアドバイスをお願いします。

長谷部 新規事業をつくるには、「既存事業とはまったく違うルールや手法が必要であり、新しいゲームを始めるのだと理解すること」が出発点です。新規事業の開発プロセスが理解されれば、社内の障壁は取り除かれる可能性も高いでしょう。

ただ、Willは別の問題です。「特定の社会課題を解決したい」というスタートアップ的な原体験を持っている人と、人事異動などでアサインされただけの新規事業担当者では、圧倒的に自分ごと化の度合いが異なります。

しかし、「これは仕方のないこと」とあきらめてはなりません。Willの形成は運任せではなく、意図的に仕掛ける必要があります

長谷部 私が何度も新規事業に挑戦させてもらったなかで、再現性を持って実現できる「戦略的なWill(意志)の形成方法」があります。

大枠としてお話すると、新規事業開発チーム自らが、初期の段階で数多くの未来の顧客に会いに行き、顧客の状況を五感で感じ、感情移入し、つねに顧客の感情を想像できる状態に身を置くのです。

そして、顧客との密度の濃い対話、仮説検証の繰り返しを重ねていく。すると、最初は自信が持てない状態でも、顧客とのやり取りを重ねるごとに、自分たちに「やれるかもしれない」「何とか実現したい」という思いが芽生える瞬間がきます。

SPFの前の、プロブレムソリューションフィット(PSF)を目指すフェーズで、顧客からの「これなら今すぐ欲しい!」といったような反応を、直接目の前で言われるような体験をする。最終的には「自分たちがやらずに誰がやる」という使命感にまで、意志のレベルが昇華します。

PMF達成までのフィットジャーニー

このように、フィット・ジャーニーを新規事業開発チーム自らが未来の顧客とともに歩めれば、PMFに近づくという大一番で、この使命感が自然と芽生えるのです。

そのためにも、市場・ニーズ調査、インタビューなどを外部に丸投げするのではなく、新規事業開発チーム自らが実施する。その取り組みが、Will(意志)の形成を意図的に導きます。

もちろん、経験がなかったり、リソースが少ない場合は、外部の伴走支援を受けることは大切です。

小島 長谷部さんの熱意が伝わってきて、自分もその熱意に引き込まれる感覚があります。

長谷部 スタートアップと100m走をしていると考えるならば、私たちは100kgの石を押しながら走っているような状態。いかに新規事業の開発プロセスを整え、Willの形成を意識的かつ戦略的に行い、スタートアップと同等に近づけられるかが重要です。

新規事業を阻む壁を乗り越えた先で実現できる大企業の新規事業開発は、リソースや資金、既存事業などの強みがレバレッジでき、優位かつ非常に魅力的です。勝てるビジネスが、どんどん生まれてくると確信しています。

才流コンサルタントが要点を解説

コンサルタント・小島

さまざまなシーンで「大企業に新規事業は生み出せない」という声を聞きます。
そう言われてしまう背景には、対社内(社内をどう巻き込むか)と対社外(市場にどう受け入れられるか)の両方に、大きな壁が阻んでいるからではないでしょうか。

NTT東日本で、新規事業開発に取り組み続けてきた長谷部さんも、「悔しい経験をしてきた」と明かしてくださいました。

しかし、既存の枠組み内でビジネスコンテストを実施したり、社内のキーパーソンの事情を踏まえた交渉を積み重ねるなど、社内の壁を乗り越える施策に取り組んできた結果、少しずつ社内からの理解をつかんでいきます。

そして、社外の壁には「顧客から絶対に目を離さない」というポリシーで向き合う。

長谷部さんのアクションや考え方には、大企業の環境を踏まえ、どのように社内を巻き込み、顧客にフィットした価値を持つ事業を創出していくかの具体的なヒントにあふれています。

本記事が、ひとつでも多くの事業創出につながることを願っています。

(撮影:関口達朗 執筆:長谷川賢人 取材・編集:水谷真智子)

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