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商談で活用できるヒアリングシート【テンプレート付き】

法人営業
コンサルタント
宮戸 章光

営業職は、社外に対して個人で業務を進めることが多いため属人化しやすい職種です。しかし属人化が進むと、営業パーソンごとに成績がばらつき、メンバーの育成は滞り、生産性まで低下するといった問題が生じます。そんな状態を解消し、営業プロセスの型化・平準化を目指すなら、商談前の「事前準備」のやり方と、商談時の「ヒアリング」項目の見直しは、即効性の高いオススメの取り組みです。

本記事では、事前準備を実施したあとに用意するべきヒアリングシートのテンプレートをご提供します。顧客解像度を高めるための項目をそろえ、さまざまな業界の方に活用いただけるよう汎用的な構成にしました。自社の商材に合うよう微調整して、ぜひ営業部内で共有してください。

商談で活用できる ヒアリングシート

ヒアリングシート(Googleスプレッドシート版)を開く

ヒアリングシート(Excel版)をダウンロードする

※個人情報の入力は必要ありません。 Googleスプレッドシート版はコピーしてお使いください。Excel版は、クリックするとファイルがダウンロードされます。

【前提】初回商談でヒアリングと提案を同時に実施するのではなく、初回商談ではヒアリングに集中し、後日に提案を行う商談形式を想定したテンプレートです。

才流では「成果につながる営業活動がわからない」「営業が属人化されていて、営業成果を最大化する仕組みが分からない」企業さまを支援しています。営業活動でお困りの方はお気軽にご相談ください。⇒サービス紹介資料の無料ダウンロードはこちら

ヒアリング項目・順序を統一するメリット

ヒアリングするべき内容は、販売する商品/サービスが同じ場合、顧客ごとに違いはなくほぼ決まっているはずです。ヒアリングする項目や順序を営業部内で統一させるメリットは3つあります。

  1. 顧客解像度の向上
  2. 聞き漏れ防止
  3. 組織全体の効率化

1と2は解説不要かもしれません。営業部全体でヒアリングする項目や順序をそろえれば、新人の営業パーソンでも顧客解像度を高める質問ができ、聞き漏れも防止できるでしょう。

3の「組織全体の効率化」というメリットは、近年増加している「THE MODEL(ザ モデル)」型(※)と呼ばれる分業組織で実感できるはずです。

※THE MODEL:企業の営業活動の各段階に専任担当者(マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス)を配置する分業体制により営業効率向上を図る概念。Salesforceが提唱し、日本国内では2019年に福田康隆氏による著書『THE MODEL』(翔泳社)によって紹介された

「インサイドセールスとフィールドセールスによる営業の分業化」、さらには「人材の流動」「人事異動」などにより多くの企業で担当案件の引継ぎが発生しているのではないでしょうか。

ヒアリングする項目・順序を統一しておけば、営業パーソン以外の関係者や後任者が見るときも、どこに何が書いてあるか明確にわかります。ストレスなくキャッチアップできるため、組織全体で業務を効率化できるようになるでしょう。

ヒアリングシートの利用法

それでは、ヒアリングシートの内容について解説します。
本記事の冒頭でもご紹介した、以下のシートとあわせてご覧ください。

ヒアリングシート(Googleスプレッドシート版)を開く
ヒアリングシート(Excel版)をダウンロードする
※個人情報の入力は必要ありません。 Googleスプレッドシート版はコピーしてお使いください。Excel版は、クリックするとファイルがダウンロードされます。

顧客情報

ヒアリングシートの顧客情報

これは、顧客のビジネスを知るための基本項目です。「だれに、なにを、どのように」提供している企業なのか、ホームページに記載してある事業内容やIR情報などを見て入力しておき、商談で確認しましょう。顧客情報と顧客理解の項目は、商談の事前準備で調査し、立てた仮説を検証するものです。

なお、「どのように」は顧客深耕型、新規開拓型、ルートセールス型といった営業スタイルを記載します。複数を実施している企業も多いと思いますが、商談顧客が実施しているスタイルは全て記載しましょう。

顧客理解

ヒアリングシートの顧客理解

9〜24行目には、顧客理解へつながる項目を用意しました。企業が新たな商品/サービスを購入するのは、成し遂げたいことがあり(ゴール)、実現できず(問題)、解決手段(ニーズ)を探しているからです。それらに紐づくさまざまな要因をヒアリングしましょう。

ゴール
実現したいゴールが明確になれば、提案するべき自社の商品/サービスやプランをイメージしやすくなります。

問題
問題は、生み出している要因まで確認しましょう。仮に「組織が属人化している」ことが問題にあがったら、「属人化を課題と感じる根拠」や「属人化を生み出している理由」がわかるようヒアリングしてください。本質的な問題の抽出や、課題解決につながる商品/サービスを提案するために必要なことです。

たとえば自動車の生産・販売業で有名なトヨタ自動車は、問題を発見したら「なぜ」を5回繰り返して、問題の根拠を突きとめるそうです。課題を言語化することは、顧客自身の改善意欲の向上にもつながるでしょう。

ニーズ
ニーズは「組織全体の営業力を底上げしたい」「満足度を向上させたい」など、抽象的な表現になるケースが多いです。そんなときは、「組織全体の営業力を底上げできた状態とは、具体的にどんな姿なのか」をヒアリングし、ニーズを満たした状態を定義しましょう。

ゴールを明確にすることが重要なのと同様、ニーズも深掘りすれば営業パーソンとして提案するべき商品/サービスが明確になります。

ヒアリングシートC〜E列の20〜24セルに該当する薄紫色の箇所は、自社に適したヒアリング項目を任意で入力してください。たとえば、商材がSFAツールであれば利用見込みの人数、従量課金ビジネスであれば毎月の使用量などです。

要件

ヒアリングシートの要件
BtoB営業におけるヒアリングには、「BANTCH条件」というフレームワークがあります。
※Budget(予算)、Authority(決裁者)、Needs(ニーズ)、Timing(検討時期)、Competitor(競合)、Human resources(組織の人員体制)
そのなかで、N(ニーズ)は顧客理解に組み込んだので、それ以外を要件の欄に記入します。


要件の29〜33行目にある「意思決定プロセスと各関係者の関心事」は、商談の担当者やキーパーソンだけではなく、すべての関係者が対象です。たとえば商材が経費精算システムであれば、商談の担当者が総務部長だけだとしても、情報システム部門(管理)や営業部門(利用者)の意見が大きく関わってきます。

商談には同席していなかった他のメンバーに反対され、失注となるケースは少なくありません。それを防ぐために、「このシステムなら営業パーソン全員がいつでも、どこからでも処理を申請できて便利です」など、各関係者への価値も示せるように備えましょう。成約率の向上には、関係者全員の関心事の把握が欠かせません。

事例説明

事例を紹介

商品/サービスの価値や効果を説明するときは、事例が強力なツールとなります。業界軸やニーズ軸で、商談企業の参考になりそうな事例をあらかじめ準備しておきましょう。

ヒアリングシートには、事例を話したときの反応(どの点に、反応を示したか&関心を持たなかったか)を入力しましょう。提案トークに活かせる情報になります。さらに、その情報を社内で共有して蓄積すれば、トークスプリクトの改善や新商品開発のヒントになります。

仮クロージング

仮クロージングの解説

顧客が目指すゴールやニーズを把握できても、すぐには商品/サービスを提案せず、解決策の方向性を整理しましょう。

「たとえばこの事例のように、解決策を〇〇、流れは●●になるよう改善し、成果は■■を目指しましょう。御社のイメージに沿っていますか?」と方向性を擦り合わせることが大事です。

いきなり提案すると商談企業には不安が残ります。方向性を擦り合わせることで双方の納得度も高まるので、仮クロージングは重要です。もし、提示した事例が顧客のイメージに沿っていなければ、別の事例を使って合意形成を図りましょう。

次回/商品提案

次回商談の提案

商品/サービスを初回商談で提案するかどうかは状況によりますが、おすすめは「初回はヒアリングに集中」「次回(二回目)の商談で提案」です。商談企業の不安や課題を聞き漏れるリスクが減り、解決へ向かう適切な提案を準備できるからです。

そのため、ヒアリング終了の条件は「次回/商品提案」をイメージできることだと言えます。もし、後半15分程度になっても提案するべき商材が浮かばないなら、ヒアリングが不十分な可能性があります。予定を調整し、商談を延長することを視野に入れましょう。

クロージング

クロージング情報

最後に「だれが、なにを、いつまでに」行うのか、合意形成が必要となります。「都合のよい日がわかりましたらご連絡ください」と次回商談のアポイントを曖昧にし、連絡がこない、待っている間に他決してしまった例は枚挙にいとまがありません。

とくに商談企業側にボールがあるときは、「いつまでに、なにをしてもらうか」を明確にして、連絡がない場合は営業パーソンから確認の連絡をいれましょう。

その他

専門家としての信頼醸成

40〜43行目の「その他」は、専門家としての信頼醸成に必要なものです。純粋なヒアリング項目ではありませんが、初回商談のときに示しておきたい項目を用意しました。

顧客は、商品/サービスを選ぶときに営業パーソンを「信頼できるか」「課題解決のための知見があるか」という点も考慮します。多くの場合、その判断基準は「自分たちが認知していない課題の提示や情報提供があったかどうか」です。

顧客が認識している問題の解決策だけでなく、顧客自身も気が付いていない「無自覚だけど重要な課題」など、プラスαで専門家としての示唆だしをして信頼・安心の醸成に努めてください。

ヒアリングシートのD列13〜14セルには、「問題の根拠」や「問題を生み出している理由」を聞く項目があります。そのときに本質的な課題を抽出していれば、的を射た情報を提供できるでしょう。以下はトーク例として参考にしてください。

インサイトと解決策の提示
(例)「御社の本質的課題は〇〇です」「御社のケースでは、まず〇〇が解決するべき課題です」

長期視点に基づく改善提案
(例)「今回は〇〇に取り組めば解決できます。その後は多くの企業で△△や□□といった新たな課題がでてきますが、それは◇◇に取り組むことで解決し、成果へつなげている企業が多いですよ」

副次的価値の訴求
(例)「こちらの方法で〇〇の課題は解決できるでしょう。それによって◇◇の成果創出にも寄与したという企業は多いので、我々もサポートしますね」

※関連記事:顧客から信頼を得るために営業パーソンがとるべきアクション

ヒアリング終了の条件

商談の時間内に、ヒアリング項目のすべてを聞き出せないこともあるでしょう。その場合、何をもって商談終了の合図にするかというと、「提案するべき商品/サービスのイメージがついたとき」です。

「課題が聞けたら」「時間がきたら」ではありません。「イメージは湧かないけど、帰社してから考えよう」「周囲に相談しよう」といった状態での終了は正しい営業活動ではありません。そのような案件は、失注となるケースが多いでしょう。ヒアリング終了の条件は、「提案するべき商品/サービスのイメージがついたとき」であることを忘れないでください。

ヒアリング終了後は1枚のシートを議事録として送る

最後に、商談を前進させるTipsをご紹介します。

顧客の成し遂げたいゴールや問題、解決策の方向性などヒアリングで確認できたことを商談の場で1枚のシートにまとめておくと便利です。

商談後の議事録
ヒアリング内容を図解したシート例

商談終了時に、内容に間違いがないか合意形成を図り、合意できれば当日中に議事録としてメールで送ります。手間に感じるかもしれませんが、認識の齟齬を防げるので適切な提案につながり、成約率を向上させることができます。

まとめ

今回は、顧客解像度の向上、聞き漏れ防止、組織の効率化につながるヒアリングシートをご紹介しました。自社ごとにアレンジすれば、明日からでも利用いただけると思います。

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