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業界のビジネスモデルを商流から理解する方法【商流図テンプレート付き】

BtoBマーケティング
才流コンサルタント
岸田 慎平

事業戦略やマーケティング戦略を立てるうえで、自社がターゲットとする業界の構造、商流、プレイヤーなどのビジネスモデルを理解することは非常に重要です。しかし、若手もしくは業界経験の浅いビジネスパーソンにとって、ポイントを押さえた効率的なキャッチアップはなかなか難しいのではないでしょうか。

そこで才流(サイル)がおすすめするのが、商流図を活用して業界の構造やプレイヤーの関係性を理解する方法です。図解を用いることで、効率的にビジネスモデルをキャッチアップすることができます。

本記事では、自社がターゲットとする業界の構造や商流を理解するのに役立つ商流図テンプレートをご用意しました。さらに、商流図を作成するための方法と、参考となる情報源についても解説します。

画像:商流図テンプレート
商流図テンプレート(PowerPoint形式)をダウンロードする

※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。

才流では「自社がターゲットとする業界に対する理解を深めて事業戦略に役立てたい」企業さまを支援しています。事業・マーケティング戦略立案でお困りの方はお気軽にご相談ください。⇒サービス紹介資料の無料ダウンロードはこちら

商流図とは

商流図とは、製品・サービスがメーカーからエンドユーザーに到達するまでの流れを視覚的に示した図解のことで、業界の構造、主要なプレイヤーと役割、情報の流れを一目で理解できるツールです。

自社のビジネスモデルを商流図に起こすことで、以下のような利点があります。

  • 業界の全体像や情報の流れを素早くキャッチアップできる
  • 自社のポジションのほか、各プレイヤーの位置づけや関連性を把握できる
  • 営業やマーケティング活動に活用できる

業界への理解を深めるための基礎知識

商流図を作成する前に、まずは自社がターゲットとする業界への理解を深めるために必要な知識について解説します。

※本記事でいう「業界」とは、同じような製品・サービスを生産・提供している会社や組織の集まりのことです。

業界を代表する5つのプレイヤーを知る

自社がターゲットとする業界を理解するにあたって知っておきたい、プレイヤーに関する情報をまとめました。ここで挙げているプレイヤーは基本的にさまざまな業界に共通して登場するので、その役割と位置づけを把握しておきましょう。

【業界の代表的な5つのプレーヤー】

  • メーカー
  • 代理店、卸
  • 商社
  • SIer、インテグレーター
  • エンドユーザー
図解:業界の5つのプレイヤー。メーカー、代理店・卸、商社、SIer・インテグレーター、エンドユーザーがいる

メーカー

製品・サービスを製造、販売するプレイヤーです。

製造業であればモノを、ITソフトウェアベンダーであればITソフトウェア、システムを開発しています。

代理店、卸

製品・サービスをエンドユーザーに届ける際に、物流・商流を担うプレイヤーです。

販売代行、集中購買、在庫管理、与信担保、カスタマーサポートなどの役割を担います。

商社

製品・サービスをエンドユーザーに届ける際に、物流・商流を担うプレイヤーです。

代理店、卸の機能に加えて、製品・サービスを組み合わせたソリューション提案や、ソフトウェアの導入支援サービスなどの機能を持つことも多くあります。また、海外製品の仕入れ販売を行うケースもあります。

SIer、インテグレーター

IT業界におけるSIer、装置・設備業界におけるセットメーカーのように、顧客に合わせたシステム、装置を設計・製造して導入を担うプレイヤーです。

導入後の保守・運用やサポートなども担うことが多くあります。

エンドユーザー

最終的に製品・サービスを購入・利用するプレイヤーです。

商流、物流、情報の流れを理解する

業界に登場するプレイヤーが把握できたら、各プレイヤーの間でお金、モノ、情報がどのように流れているのかについて理解を深めましょう。具体的には、以下の3つの流れについて整理します。

  • 商流(お金の流れ)
  • 物流(モノ、サービス提供の流れ)
  • 情報の流れ(どこからどこに問い合わせる、どんな情報を聞く)

メーカーからエンドユーザーへ直接販売する、いわゆる直販の場合は、3つの流れはすべて自社とエンドユーザーの間で完結します。近年で増えているSaaSやスタートアップでは、直販のケースが多いといえるでしょう。一方で、歴史のある業界では直販のほうが少ないと考えるべきです。

たとえば、以下のような直販以外のケースがあります。

図解:直販以外の商流がある3つのケース

ケース①

エンドユーザーからメーカーに設計図やカタログの問い合わせ(Webサイトからダウンロードなど)をするが、購入する際には代理店へ納期、在庫を問い合わせる。

ケース②

エンドユーザーからSIerに自社の課題を相談するが、ソフトウェアはメーカーから直接購入。導入支援やカスタマイズ開発、保守サービスはSIerに依頼する。

ケース③

エンドユーザーが部品を商社から購入し、セットメーカーへ直送する。セットメーカーは部品を組み合わせて設備を製造・開発し、完成品をエンドユーザーに納品する。

直販のビジネスに慣れている方には想像しにくいかもしれませんが、商流、物流、情報の流れにはさまざまなケースが存在します。顧客が誰に何を問い合わせるのかどこから情報を入手するのかを意識してみるのがポイントです。

商流、物流、情報の流れを理解するための方法については、このあとで詳しく解説します。

選定権があるプレイヤーは誰か?を意識する

製品・サービスの購入は「エンドユーザーが決める」と思い込んでいませんか?

もちろん、エンドユーザーが選定するケースは多いです。しかし、調べていくと「代理店からおすすめとして提案された製品・サービスを購入した」「セットメーカーが自社で安く仕入れられるメーカーの部品を使って製造した設備を納品してくれた」という事実が明らかになることもあります。

エンドユーザーが選定する、と決めつけずに「どのプレイヤーが選定に関与するのか」「エンドユーザーの決定に大きな影響を与えるのは誰か」という視点で業界構造を調べていくようにしましょう。

業界の基本情報の調べ方

自社がターゲットとする業界の基礎知識を身につけたら、次は基本情報について調べていきましょう。ここでは情報のリサーチ方法について、初期調査と二次調査の2段階に分けて解説します。

初期調査:デスクトップリサーチ

図解:デスクトップリサーチの方法。まず「業界の基本情報を調べて概要を把握する。次に競合や代理店のサイトを調べて情報・モノ・お金の流れを理解し業界への解像度を高める

1.以下のような方法で自社がターゲットとする業界の基本情報を調べ、概要を把握します。

  • 自社がターゲットとする業界の本を読む
  • Web検索やChatGPTなどの生成AIで業界の情報を調べる

業界本は、○○業界の動向とカラクリがよくわかるなどの業界研究本や、四季報の業界地図の冊子版Web版を読むのがおすすめです。

Webサイトは、就活生向けの業界研究サイトや、投資家向けの業界分析のサイトが参考になります。

また、ChatGPTなどの生成AIに質問する際は、「(製品・サービス名)の業界の商流について、登場するプレイヤー、お金、モノ、情報の流れ、選定権をふまえて教えてください」と質問してみましょう。プレイヤーに漏れがある場合は、「上記の商流について、(プレイヤー名)もプレイヤーに加えて修正してください」と追加するとよいでしょう。

2.自社がターゲットとする業界の概要を把握したら、情報、お金、モノの流れについて解像度を高めるために以下をチェックしましょう。

  • 競合のWebサイト
  • 製品・サービスを扱う大手代理店・商社のWebサイト
  • 業界の大手ECサイト

競合のWebサイトのチェックポイント

  • どのような情報を掲載しているか
  • どのようなCTA(お問い合わせ、資料ダウンロード、トライアルなど)を設置しているか
  • 販売店・代理店はどこか

大手代理店・商社のWebサイトのチェックポイント

  • ほかにどのようなメーカーを扱っているか
  • どのような情報を掲載しているか
  • どのようなCTA(お問い合わせ、資料ダウンロード、トライアルなど)を設置しているか

業界の大手ECサイトのチェックポイント

  • ほかにどのような製品・サービスを扱っているか
  • 価格、納期の情報を掲載しているか
  • どのような代理店や商社が製品・サービスを掲載しているか

二次調査:インタビュー

デスクトップリサーチで自社がターゲットとする業界の概要を理解したら、インタビューを通じてさらに解像度を高めていきましょう。具体的には、業界のエキスパートや見込み顧客、既存顧客に対して以下のような質問項目でヒアリングを実施します。

表:インタビューでのヒアリング項目の例。内容は以下テキスト

1.業界関係者へのエキスパートインタビュー

【質問項目の例】

  • 業界構造、主要プレイヤーについて
  • 主要な代理店、商社、導入支援企業について
  • それぞれプレイヤーの特徴、強み、すみ分け、商圏(エリア)について
  • 選定権が強く影響力のあるプレイヤーについて
  • エンドユーザーから求められる情報について

2.見込み顧客、既存顧客へのインタビュー

【質問項目の例】

  • 検討時に誰に相談しているか

例1:契約しているコンサルタントや会計士、弁護士などの士業

例2:経営者仲間、業界の会合での会話

例3:出入りの代理店・商社など

  • 普段どこから購入しているか

例1:代理店、商社、メーカーの直販

例2:ECサイト、企業経由

  • 納期、価格の情報はどこで確認しているか

例1:代理店、商社の営業に問い合わせ

例2:代理店、商社の専用通販サイト、大手ECサイト

例3:メーカーに直接交渉

  • 製品・サービスの資料や設計図、マニュアルなどはどこで情報を入手しているか

例1:代理店、商社の営業に問い合わせ

例2:メーカーサイトに会員登録してダウンロード

例3:比較サイト、業界データベースサイトからダウンロード

  • 購入後の保守、メンテナンスは誰に相談するか

そのほか、東京ビッグサイトで開催される展示会などがあれば出展している企業にヒアリングしたり、代理店、商社にインタビューしたりといった方法も有効です。

商流図テンプレートをダウンロードする

自社がターゲットとする業界への解像度が深まったら、実際に商流図を作成してみましょう。才流では、簡単に商流図を作れるテンプレートをご用意しました。

画像:商流図テンプレート
商流図テンプレート(PowerPoint形式)をダウンロードする

※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。

これは、自社がターゲットとする業界の構造・プレイヤーと自社のポジションを正しく理解することを目的としたテンプレートです。

自社からエンドユーザーに直接販売する直販だけでなく、代理店や商社を通じて販売・価値提供を行う代理店モデル(パートナーセールス)についても理解しやすい仕様にしています。

本テンプレートを活用して、正しく営業、マーケティング活動を行うためのインプットの一助としてください。

商流図の作成のステップ

これまでの調査結果を踏まえて、商流図を作成していきます。作成のステップは以下のとおりです。

  • ステップ1:プレイヤーの配置
  • ステップ2:商流を記載
  • ステップ3:主要企業を記載
  • ステップ4:売上高・売上比率を記載

ケースごとに細分化しすぎて複雑な図にならないように、ある程度は簡略化して記述していくことを意識しましょう。

作成時の注意点

商流図を作成する目的を明確にする

「自社の製品・サービスを販売する際に、どのプレイヤーにどういうアプローチをするか。どういう情報提供をするか」「特定の業界・セグメントを攻略するために、どのプレイヤーを優先的に攻略するか」の2点から目的を検討します。

プレイヤーを洗い出し、主力企業を把握する

優先的にアプローチする企業を明らかにするために、代理店、商社、インテグレーターなどのプレイヤーを洗い出すと同時に、その業界における主力企業もあわせて洗い出します。業界の攻略が目的であれば、とくにその業界に強いプレイヤーを洗い出すように心がけましょう。

情報の流れ、選定権はインタビューで明らかにする

Web上で把握できる情報は限定的です。 とくに、情報の流れや選定権の実情については、その業界に詳しい方へのインタビューを通じて実態を明らかにしましょう。

ステップ1:プレイヤーの配置

まずはプレイヤーを配置します。

左側に自社、右側にエンドユーザー、間に中間プレイヤーを記載しましょう。

図解:プレイヤーの記入例。右に自社、左にエンドユーザー、中央に中間プレイヤーを記載する

※この図では例として「SaaS事業者」が「製造業」をターゲットとした場合を想定しています。

※年商の規模で登場するプレイヤーが異なるので「大手」「中小」に分けて記載しています。

ステップ2:商流を記載

商流を記載します。左から右だけでなく、中間プレイヤー間の取引もあるので漏れなく記載しましょう。また、商流はないものの情報提供を行う必要があるプレイヤー(以下の図では士業、コンサル)が存在するため、注意してください。

図解:商流の記入例。中間プレイヤー間の取引も忘れずに記載する

※「商流はないが、情報提供などのターゲットになる」場合は破線の矢印で表現します。

※「直販」の場合は自社からエンドユーザーへ直接矢印を引いて表現します。この場合は中小企業向けのみ直販があることを示しています。

ステップ3:主要企業を記載

主要企業を記載します。

企業の数が多い場合、大手のプレイヤーや中心プレイヤーに絞って記載しましょう。

図解:主要企業の記入例。プレイヤーが中小企業で多数ある場合は記載を省略しても良い

ステップ4:売上高・売上比率を記載

売上高あるいは売上比率を記載することで、有力なチャネルを可視化していきます。

以下の図では、大手IT商社が重要なプレイヤーだと明らかになっています。

図解:売上高と比率の記入例。矢印の太さや色で有力なチャネルを可視化する

※集められる情報に応じて、比率/金額のどちらで表現するか判断します。

※販売余地の把握やチャネルの発見など、作成する目的によって書き方を検討します。

商流図の活用方法

完成した商流図は、チャネルの開拓、情報提供の優先順位などを検討する際に活用できます。ただし、企業規模や業界によって商流や重要なプレイヤーは異なるため、それぞれの特性を考慮するよう注意が必要です。

図解:商流図から理解できること3つ。内容は以下テキスト

1.注力すべきチャネル、主要企業を特定する

自社がターゲットとする業界、企業規模のエンドユーザーにアプローチするための有効なチャネルを探し出すことができます。

チャネルを特定できれば、具体的にどの企業と組むべきかが見えてくるはずです。

2.直販か、中間プレイヤーと組むかを判断する

業界によっては、直販だけでアプローチできないターゲットは当然存在します。ターゲットに対して直販が難しい場合は、中間プレイヤーと組む必要があります。

どの中間プレイヤーと組むべきかを判断するには、売上比率の高さなどを考慮して検討するとよいでしょう。

3.影響力のあるプレイヤーを見つける

直接販売は行わないものの影響力があるような、間接的に組むべき中間プレイヤーが存在することがあります。

たとえば、以下の図の「士業、コンサル」のチャネルのように、販売はIT商社を経由するものの、エンドユーザーへの販売を行うケースがあるためです。

直接の販売先以外のプレイヤーも意識し、必要な支援をすることなども検討しましょう。

図:間接的に組むべき中間プレイヤーの例

商流図で表現しきれない重要な情報もある

商流図はシンプルで見やすいように作成することが多く、重要な情報をすべて網羅することは難しいです。とくに、以下のような項目は図に記載しきれないため、別途ドキュメントを作成するなどの対応を検討するとよいでしょう。

図解:商流図で表現しきれない重要な情報3つ。内容は以下テキスト

選定権があるプレイヤー

とくに中小企業では、エンドユーザーが自ら選定をせずに中間プレイヤーからの提案で購入を決めるケースがよく発生します。選定権を持つプレイヤーについて吹き出しで記載する、別途ドキュメントなどで商流ごとの選定権を整理するなどが望ましいです。

プレイヤーごとの企業規模

商流図にプレイヤーの候補企業は記載できるものの、どのくらいの企業規模か、商材をどの程度販売しているかといった情報までは記載できません。必要な情報であるため、別途で一覧表を作成するなどの対応が望ましいでしょう。

エンドユーザーがだれに問い合わせをするか

「自社に直接問い合わせが入る」「中間プレイヤーに相談する」といった情報の流れはとても重要です。商流図には記載しきれない内容であるため、別途ドキュメントを作成するのがよいでしょう。

情報の流れを商流図に記載して可視化する場合は、以下のように記載するのがおすすめです。

図:情報経路まで商流図に記載する場合の記入例

参考:AWSの商流図

参考までに、AWS(Amazon Web Services)の商流図を紹介します。

このケースでは、金融業界に対してAWSを提供する商流の例を図解しています。金融向けサービスの主要プレイヤー、エンドユーザーの規模による商流の違いが一目見て理解いただけるのではないでしょうか。

ぜひ自社の商流図を作成する際の参考になさってください。

※あくまでも簡易的な図になりますので、金額・企業規模は省略しています。また、AWSのサイトやIT業界の業界図などを参考にするなど、主にデスクトップリサーチをもとに作成しています。

図:AWSの簡易的な商流図

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