「社内会議の突破は難しい」という言葉をよく耳にしませんか?
新規事業を推進するにあたって超えなければならないのが「社内の壁」です。社内会議を突破しなければ、顧客へ新商品・新サービスを届けることはかないません。
才流(サイル)でも、「社内プレゼンを突破するための準備に時間がかかる」「新規事業の社内プレゼンを突破するノウハウが知りたい」といった相談を受けることがよくあります。
そこで本記事では、新規事業で社内会議を突破するために、プレゼン資料の準備で大切なポイントを解説します。社内会議の準備にすぐに使えるプレゼンテーション資料のテンプレートも用意しましたので、ぜひ参考にしてみてください。
※企業、プレゼンテーションの対象、フェーズによって求められる内容は異なりますので、自社に合わせてスライドを追加・削除ください
新規事業社内会議用プレゼンテーションテンプレート(PowerPoint形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。クリックするとファイルがダウンロードされます
才流では「新規事業の進め方がわからない」「ターゲティングや他社製品との差別化戦略を立てられない」企業を、PMFに至るまで一気通貫で支援します。 新規事業でお困りの方はお気軽にご相談ください。⇒サービス紹介資料の無料ダウンロードはこちら
新規事業で社内承認を得るまでの2種類のプロセス
新規事業の社内承認のプロセスは会社によって異なりますが、大きく分けて以下の2種類があります。
- 新規事業提案制度を利用する
- 社内で相談を繰り返し役員会で承認を得る
1. 新規事業提案制度を利用する
新規事業提案制度で有名なケースとしては、1982年から続いているリクルートの新規事業提案制度「Ring」や、博報堂DYホールディングスの「AD+VENTURE」などがあります。
これらのケースでは、ステージゲート制やフィットジャーニーを活用して新規事業を段階的に進めていきます。各ステージごとに超えるべき壁があり、その壁を一つひとつ越えていくことで新規事業を本格的に事業化していくのが特徴です。
Ringのフロー
Ring最終審査後の事業開発手法
2.社内で相談を繰り返し役員会で承認を得る
新規事業提案制度を設けていない会社の場合は、社内関係者と相談を繰り返して、役員会で承認を得るプロセスをたどることになります。
このケースでは明確な承認のフェーズが存在しないため、進め方は自由です。しかし、役員が評価する基準や視点が分からないため、手探りで突破する方法を自分自身で探していく必要があります。そのため、社内調整がより重要になってくるのです。
新規事業の社内プレゼンの準備で大切な15のポイント
新規事業を進めるためには、社内会議でプレゼンテーションを突破することが欠かせません。プレゼンの準備として考えておくべき15のポイントを紹介します。
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1. 背景
はじめに新規事業のサマリーを提示したうえで、この新規事業を行うべき理由を明確にします。新規事業を行うべき理由は、会社や事業部のミッションやビジョンとの関係性がわかるように伝えましょう。
最初のつかみの部分でもあるので、できるだけ端的に伝えるのがポイントです。
2. 課題と市場性
顧客にはどのような課題やニーズがあるのか、それを取り込む商品・サービスにはどの程度の市場性があるのかを伝えていきましょう。
このとき、見込み顧客へのインタビューの結果も共有しておくことで説得力が増します。
【社内会議での想定質問】
- 顧客の課題は本当か?
- 顧客の課題の言質は取ったのか?
3. ターゲットおよび市場規模
どのような企業をターゲットとするのか、どの程度の市場規模(TAM[※1]、SAM[※2]、SOM[※3])が期待できるかを伝えましょう。ペルソナもあわせて作成することで、顧客のイメージを深く共有することができます。
また、成長性という観点から、今後の市場成長率やそれに伴う事業の売上成長率はどの程度期待できるかも伝えられるとよいです。
【社内会議での想定質問】
- 市場規模の計算はどのように行いましたか?
- ターゲットを決めたロジックを教えてください
- ペルソナのイメージが持てないのですが……
※1 TAM:Total Addressable Marketの略。特定の製品やサービスが対象とするすべての顧客や需要を含んだ市場規模のこと。企業が拡大する際の潜在的な成長を評価するために用いられる。
※2 SAM:Serviceable Available Marketの略。企業が実際にターゲットにできる市場規模のこと。特定の地域、顧客層、チャネルなどを考慮し、獲得可能な潜在顧客数や市場シェアを示す。
※3 SOM:Serviceable Obtainable Marketの略。短期的な目標として企業が実際に獲得できる市場規模のこと。競合他社や自社の販売能力を考慮し、現実的な市場シェアを示す。
4. 新規事業の内容
新規事業の内容を伝えましょう。「2. 課題と市場性」で触れている内容を深堀りしながら、顧客のペインポイントと解決策を明示します。顧客がお金を出してでも解決したいと思っている強いニーズとその理由を語るのがポイントです。
また、ビジネスモデルを示して全体像を理解してもらえるようにしましょう。 思考を整理するために、「リーンキャンバス(※)」を使用するのがおすすめです。(プレゼンテーションで使用する際は、リーンキャンバスのフレームワークを知らない方もいますのでご注意ください)
【社内会議での想定質問】
- 課題と解決策のつながりが見えなかった
- ビジネスモデルを明確に説明してもらえますか?
- 課金方法はどうなるのでしょうか?
※リーンキャンバス:ビジネスアイデアを1枚の紙に要約するシンプルなフレームワーク。主要な要素(顧客セグメント、価値提案、チャネル、収益源など)を記入し、スタートアップのビジネスモデルを可視化するもの。
※関連記事:リーンキャンパスとは?実践的な書き方と考え方【テンプレート付き】
5. 顧客の生の声
プレゼンテーションの中でも、「顧客の生の声」は最も大事な項目です。新規事業に対する顧客からの「買いたい」という声を集め、社内に伝えましょう。ポイントは、抽象的にならないように「〇〇株式会社の〇〇事業部の方に聞いてみました」と具体的に伝えることです。
顧客の生の声は、既存顧客や自身のつながりの中から集めましょう。また、ビザスクやSpreadyなどのサービスを使うことで、顧客の声を集めることもできます。
【社内会議での想定質問】
- 見込み顧客はなんて言っているの?
- 顧客はお金を払ってもいいと思っているの?
6. 競争環境
自社にとっては新規事業であっても、顧客にとってはよく見知った事業であるケースは多いです。そのため、今のタイミングで参入すべき理由(コンペリングイベント※)を語りましょう。
また、すでに競合企業がビジネスを始めているのであれば、競争優位性を示すことが重要です。他社に対して勝てる理由、あるいは勝つために必要なことを伝えましょう。
【社内会議での想定質問】
- なぜ今この市場に参入するのか?
- 競合他社と比較して自社が優れていることは?
- 競合他社に勝てるようなストーリーを教えてください
※コンペリングイベント:ビジネスにおいて変化せざるを得ない差し迫った状況のこと。プロモーション、新製品のローンチ、競合他社の行動などさまざまな形で現れる。
7. スケジュール
新規事業を実施していくスケジュールをフェーズ別にまとめていきましょう。第1フェーズはここまで、第2フェーズはここまでを目指すというように、自分自身で途中の関門を設けることで、実際に事業が動き出してからも迷子になりにくいです。
【社内会議での想定質問】
- いつまでにどの状態を目指すのですか?
- 時間軸と事業進捗の予測を教えてください
8. 収益性
新規事業の開始から5年程度にわたる売上・利益の予測を明示しましょう。後述するリスクシナリオとも連動してきますが、まずベースシナリオの収益性を策定し、上振れ20%のベストシナリオ、下振れ20%のワーストシナリオを作成します。
また、収益性に関しては計算の過程についての質問が出やすいです。あらかじめ計算の過程のスライドを用意しておくとよいでしょう。
【社内会議での想定質問】
- 収益性の計算ロジックを教えてください
- 単価設定はどのくらいですか?
9. 投資やコスト
事業化するための投資額や、生産・サービス提供にかかるコストを明示しましょう。全体収支としての話をするためにも、以下の2つに分けて説明するのがおすすめです。
- 初期フェーズでかかる投資
- ランニングでかかるコスト
【社内会議での想定質問】
- 初期フェーズにはどのような投資がありますか?
- 事業が軌道に乗った後はどんなランニングコストがかかりますか?
10. リスクシナリオと撤退ライン
新規事業は不確実性が高いため、リスクシナリオを想定しておきましょう。リスクシナリオは、収支的な観点から以下の3つでシミュレーションを行うのがおすすめです。
- ベストシナリオ(上振れ20%)の場合
- ベースシナリオの場合
- ワーストシナリオ(下振れ20%)の場合
同時に、ワーストシナリオに近づいたときの挽回策も検討しておくことが大事です。
スケジュール進行の観点からも、リスクシナリオは必要です。3か月遅れの場合のテコ入れ策、6か月遅れの場合のテコ入れ策を事前に決めておきましょう。
また大事なことは、事業がスタートする前に「撤退基準」を決めておくことです。事業がスタートしてからでは、冷静な判断が難しくなることもあります。どの時期にどこまで伸びなかったら終了する、ということを事前に決めておきましょう。
【社内会議での想定質問】
- 計画よりも収益が思うように伸びなかったらどうするの?
- 撤退基準はどのように決めていますか?
11. プロジェクト体制
新規事業に誰をアサインするのかという点も、大事なポイントになります。現段階でのコアメンバーの紹介ができるように、あらかじめ準備をしておきましょう。
【社内会議での想定質問】
- どのようなメンバーで新規事業に取り組んでいるのですか?
- 現在のメンバーの専門分野や知識で、事業化は実現できるの?
12. 実行方法
事業スキームを明確にしましょう。新規事業を実現するビジネスパートナーや顧客との関係、自社の立ち位置(自社内の事業部も含め)を整理します。 この実行方法によって事業実現の可能性が見えてくるため、事業を立ち上げられる可能性やその理由をしっかりと伝えましょう。
新規事業が立ち上がった後のオペレーションも想定する必要があります。今後のオペレーション体制を計画しておくことが大切です。調達や物流、インサイドセールス、カスタマーサポートなど、社内の他部署との関係がある場合は、事前にオペレーション体制図を用意しましょう。
【社内会議での想定質問】
- 新規事業が軌道に乗った場合、社内への業務負荷はどうなるのか?
- 弊社部門にも追加業務が生まれるのでしょうか?
13. 関連諸法規の提示
新規事業は、通常、社内メンバーが普段取り組んでいない業界や領域で展開されることが多いです。そのため、その業界や領域に関する専門家は社内にはほとんど存在しません。
法制度・規制・社会的ルール・商習慣に関しては、以下の3つの方法を組み合わせて情報を収集しましょう。
- 自主調査を行う
- 社内の法務部や弁護士に相談する
- 社外の専門家からアドバイスを受ける
【社内会議での想定質問】
- この新規事業は、法規制には触れないのでしょうか?
- 宗教的な観点からリスクは発生しないでしょうか?(海外事業の場合)
14. 社内キーマン・社外権威者のコメント
新規事業を円滑に進めるためには、社内での支持と理解が不可欠です。新規事業で取り組もうとしている業界や領域に詳しいメンバーがいれば、コメントをもらってプレゼンテーションに取り入れましょう。
実際にはネガティブなコメントを受ける可能性もありますが、それを考慮した切り返しを用意することで説得力が増します。
また、新規事業で取り組む業界や領域の専門家である社外の権威者(大学の教授や有識者)からの応援コメントも取得できれば、社内承認への材料の一つとなるでしょう。
【社内会議での想定質問】
- 新規事業と近い事業を行っている既存事業の〇〇さんにはご意見をもらいましたか?
15. 自社の全社戦略との関連性
中期経営計画で語られている自社の戦略と、新規事業の関連性を明確にしましょう。たとえば、以下のように自社の戦略との関連性を語るとわかりやすいです。
- 既存事業のリソースが新規事業で活用できる
- 新規事業での取り組みが既存事業へ生かせる
- 新しいビジネスモデルへの転換におけるチャレンジの一つとして位置づけられる
【社内会議での想定質問】
- 当社でやる意義はなんですか?
- 全社戦略の中での新規事業の位置づけはどう考えていますか?
新規事業の社内プレゼンでよくある質問と回答
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Q:新規事業の社内会議では何を議論すべきですか?反対に、議論を避けるべき論点はありますか?
顧客の課題やニーズが反映されている事業内容については、抜け漏れがないかどうかの議論が必要です。また、新規事業が立ち上がった後の社内の協力体制に関しても、建設的な議論ができるとよいでしょう。
一方で、細かい数字に関する話を延々と続けるのは無益です。新規事業は、外部環境や内部環境などの影響も考慮すべき変数として関わってくるもの。実際に試してみないと分からないという結論に達することが多いからです。
数字に関するリスクを最小限に抑えたい場合は、小規模で始めて、検証期間を短く取ることで対応するのがよいでしょう。
Q:この15のポイントを最初からすべて準備しておく必要はありますか?
まずは顧客の声を集めることに時間を割いて、市場の存在が確認できるようになってから他の準備を始めましょう。
最初からすべてを完璧に準備しようとすると、時間が足りずに中途半端になってしまう可能性があるからです。
新規事業の社内会議では、さまざまな角度から指摘が入ります。それらの指摘に耐えられるように、しっかりと準備をすることが大切です。今回用意したプレゼンテーションのテンプレートが、社内会議を突破するヒントになれば嬉しいです。
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