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新規事業アイデアを創出&事業化するためのフレームワーク【テンプレート付き】

新規事業開発
コンサルタント
野田 拓志

新規事業開発において、アイデアはすべての起点であり、一連の流れにおいて常に核となるものです。新規事業のアイデアは思いつくだけならそれほど難しくないかもしれません。ただ、それを事業として成立させる必要があるため、体系的なアプローチと戦略的な思考が求められます。

新規事業のアイデアを創出、事業化するために多くの企業が活用しているのが、フレームワークです。フレームワークは、アイデアを体系的に整理し、検証・改善を重ねながら具体的な事業へと昇華させるための“地図”のような役割を果たします。

本記事では、アイデアを創出する段階から実際に事業として立ち上げるまでの各ステップで活用できるフレームワークを紹介します。各種フレームワークにはテンプレートも掲載しているので、ぜひご活用ください。

才流(サイル)では「新規事業の進め方がわからない」「事業戦略を立てられない」といった企業さまを一気通貫で支援します。 新規事業でお困りの方はお気軽にご相談ください。
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新規事業開発におけるアイデアとは

冒頭でも説明したように、新規事業開発においてアイデアとは事業の起点であり、核となるものです。事業の方向性を決定づける「コンセプトの出発点」になり、開発プロセスの「羅針盤(ガイドライン)」にもなり、社内外の協力・資金を得るための「説得材料」にもなります。

では、そもそも新規事業開発における「アイデア」とはどのように定義すればよいのでしょうか。

アイデアとは「誰の、どんな課題を、どのように解決し、どのような価値を生み出すか」

事業アイデアといっても会社によってその定義や粒度は異なりますが、私たちは以下の4つの要素を明確にする必要があると考えています。

  • 誰の(who)
  • どんな課題か(what)
  • どのように解決するか(how)
  • どのような価値を生み出すか(outcome)

この中でもとくに重要なのは「誰の(who)」「どんな課題か(what)」の部分です。なぜなら、ターゲットと課題がクリアになっていれば、解決方法や生み出される価値は自ずと見えてくるからです。

一方でありがちなのが、製品やソリューションが先行し、「誰の課題を解決するのか」という視点が抜け落ちてしまっているパターン。この場合、開発を進めても「本当にほしい人はいない」「誰にも価値を感じてもらえない」という状態に陥ってしまう可能性があります。

そのため、アイデアを創出する際は、まず顧客インタビューなどを通じて徹底的に顧客理解に努めることが重要です。

また、アイデアを出す段階で「どのような顧客が、どのようなシーンで、どのように活用するのか」といったユースケースを具体的に示せるかどうかを確認しておくと、製品先行によるミスマッチを未然に防ぎやすくなります。

ターゲットと課題が明確にし、ユースケースがイメージできる状態であれば、解決方法の検討や価値創出に向けた施策の立案もよりスムーズに進められるでしょう

新規事業アイデアが思いつかない原因

新規事業のアイデアが思いつかないという課題感を持つ企業は多いです。その背景にある代表的な3つの原因を紹介します。

インプット不足

アイデア発想の定番書としても知られるジェームス W.ヤングの著書『アイデアのつくり方』(CCCメディアハウス)では、「アイデアは既存の要素の組み合わせでしかない」と説かれています。

つまり、事業アイデアはゼロから突発的に生まれるものではなく、持っている情報や知識を組み合わせて形にするものです。にもかかわらず、新しい情報を収集する機会が少ないと、発想の素になる“材料”が枯渇してしまいます。

インプットは仕事中に限らず、日常生活の中でもできます。通勤の中での広告やランチをしている飲食店での光景、ふと見たニュースなど、それらの情報を新規事業のお題と掛け合わせてみる。突拍子もない組み合わせかも知れないですが、そこから新しいアイデアの切り口が見つかるかもしれません。

思考パターンの固定化

既存の製品・サービス、ビジネスモデルの延長だけで考えてしまうことも、新規事業のアイデアが生まれにくくなる要因の一つです。既存事業の延長で考えることは非常に大事なことではあるものの、それだけに頼ると、出てくるアイデアの幅や数が限定されてしまいます。

新規事業のアイデアを発想するためには、既存の枠組みを離れる工夫も必要です。業界外の成功事例や異なる分野の知見に触れることは、思考の幅を広げるとともに、これまで気づかなかった視点や発想のヒントを得ることができます。たとえば、「今ある製品・サービス、事業構造をまったく使えないとしたらどうするか?」を考えてみるのもよいでしょう。

メンタル面のブロック

アイデアを難しく考えすぎていたり、周囲の目を気にしすぎたりすると、自分の思考が制限されてしまい、発想することが難しくなります。

アイデアは決して複雑なものではありません。「誰の、どんな課題を、どのように解決し、どのような価値を生み出すか」という定義を押さえておけば、発想すること自体はそれほど難しくないはずです。

そして、アイデアを「出す」フェーズと、「評価する」フェーズは切り分けるようにしてください。アイデア発想のフェーズでは批判や評価を一切排除し、数を出すことに専念することで、自由に発想できるようになります。アイデアはまず数を沢山出すことが大事なので、「とにかく1日で100個のアイデアを出す」みたいなトレーニングをしてみるのもよいでしょう。

新規事業開発はアイデアだけでは足りない

新規事業開発においてアイデアはあくまで事業の起点にすぎません。アイデアだけで成功が保証されるわけではないのです。よく「同じことを考えている人は世界ですでに3人はいる」と言われるように、世の中でまったく誰も思いついたことのないアイデアはほとんどありません。アイデアそのものには大きな価値はなく、それを“どのように実現するか”が重要なのです。

アイデアを事業として形にするためには、必要な人材やスキル、資金、時間を吟味・投入し、計画的に実行していく必要があります。顧客ニーズの検証や市場調査をはじめ、MVP(Minimum Viable Product:必要最小限の機能を備えた試作品)の開発、改善など、着実にステップを踏むことで初めてアイデアは事業へと昇華します。

本記事の後半では、事業アイデアの検証、評価方法についても解説しています。

新規事業のアイデア創出は「顧客理解」から始まる

ここからは、新規事業のアイデアを創出するために必要なプロセスを詳しく解説していきます。

先述のとおり、アイデアとは「誰の、どんな課題を、どのように解決し、どのような価値を生み出すか」を明確にすることです。その中でも重要なのが「誰の、どんな課題を」の部分であり、ここを最優先で固めるためには顧客理解が欠かせません。

ここでは、顧客理解のためにできる、以下の3つの施策を紹介します。

  1. 課題探索インタビュー
  2. ペルソナ作成
  3. 先行事例調査

課題探索インタビュー

課題探索インタビューとは、新規事業開発の初期段階で、今後顧客になるであろう人に対して実施する調査です。単なるアンケート調査とは異なり、対話を通して彼らの日常生活や業務の中で感じている「本当の課題」や「潜在的なニーズ」を発見、深掘りすることを目的としています。

課題探索インタビューの実施手順は、以下の通りです。

  1. インタビュー企画:インタビューの実施目的や対象者、現在持っている仮説などを整理する
  2. インタビュー項目の設定:企画段階で持っている仮説と照らし合わせ、知りたい情報を引き出すためのインタビュー項目を設定する
  3. インタビューイーの募集・選定:インタビューイー(インタビューされる人)を募集する。ビザスクなどのマッチングサービスを利用するのがおすすめ
  4. インタビューの実施:1名あたり1時間を目安に、事前に設定したインタビュー項目に沿って進める
  5. インタビュー内容の整理:各インタビューイーの発言を振り返り、多い意見などはカテゴリやグループ分けを行って傾向を可視化する。最終的に、全体的に得られたインサイトや仮説をまとめる

インサイトや仮説を整理するにあたっては、顧客の視点で見ているものや感情をマッピングする「共感マップ」や業務プロセスを可視化する「業務プロセスマップ」などのフレームワークを活用するのがおすすめです。

共感マップに書くこと
共感マップ

なお、課題探索インタビューを実施するうえで注意したいのが、バーニングニーズの特定に固執しようとしないことです。バーニングニーズとは、切実かつ喫緊の課題や欲求のことです。これを特定できれば、顧客の根本的な課題に直結するサービスを提供できるため、結果的に事業として成功する可能性は高まります。

しかし、新規事業開発の初期段階では、まだ具体的な解決策は固まっていません。そのため、バーニングニーズの特定に固執しすぎると、顧客の表面的な要求に左右され、本来掘り下げるべき潜在的なニーズや課題の全体像を見落とすリスクがあります。課題探索インタビューでは、まずは顧客の実態を把握することに重点を置きましょう。

才流では課題探索インタビューを実施するためのテンプレートを用意しているので、ぜひご活用してください。

課題探索インタビューテンプレート(Excel形式)をダウンロードする

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課題探索インタビューの方法については、以下の記事で解説しています。

※関連記事
新規事業における課題探索インタビューのメソッド/進め方
新規事業における課題探索インタビューテンプレート

ペルソナ作成

ペルソナとは、自社が提供する製品・サービスを活用してくれるであろう、重要で象徴的なユーザー像のことです。

ペルソナを作成するメリットは、具体的な人物像があることで、アイデア検討が現実味を帯びること、チームの共通言語が生まれて意思決定が速くなることが挙げられます。ペルソナを作成する際も課題探索インタビューと同様に、目的と必要な項目を明確にすることが重要です。

最低限設定すべき項目としては、以下の5つが挙げられます。

  • 実現したいこと(ニーズ)
  • 課題
  • 業種
  • 企業規模
  • 役職

これらは想像ではなく、先述した課題探索インタビューや後述する市場調査の結果をもとに作成します。

なお、新規事業開発においてはいきなり100点のペルソナを作ることは不可能であるため、まずは50点くらいのものを作って、徐々にブラッシュアップしようという心持ちで取り組むとよいでしょう。

ペルソナの作成方法については、以下の記事でくわしく解説しています。

※関連記事:【BtoB向け】ペルソナ作成のメソッド/進め方

先行事例調査

先行事例調査とは、すでに市場に存在している競合他社の製品・サービスを調査、分析することです。競合他社を調査することで、自社のアイデアとの違いや共通点が明確になるほか、顧客の課題と提供価値のイメージがより鮮明になり、狙うべき顧客層(セグメント)が把握できます。

先行事例調査でみるべき観点としては、以下のようなものが挙げられます。

  • ターゲット
  • 用途
  • 提供価値
  • 導入実績

先行事例調査では、直接的な競合製品・サービスに加え、同じ顧客層をターゲットとし、顧客の課題を別の方法で解決しようとしている代替手段も対象にしましょう。ときには業界外の事例に着目することで新たな発見を得やすくなります。

なお、先行事例調査には限界があります。市場環境やトレンドは変化するため、過去の成功が現在の顧客に当てはまるとは限りません。また、過度に過去に依存すると他社と同じようなアプローチになり、独自性が損なわれるリスクもあります。そのため、事例調査は先述した課題探索インタビューと組み合わせて実施するのがおすすめです。

顧客理解だけでなく市場理解も重要

新規事業のアイデア創出にあたっては、顧客だけでなく市場の理解も必要です。市場理解に関しては、前提となる新規事業の目的に立ち返ることでインプットするべき情報が変わります。

たとえば、新規事業が既存事業の延長線上である場合は、アンゾフの成長マトリクスでいう「新市場開拓」に該当します。この場合、既存のセグメントとは異なる新たなセグメントの顧客情報を把握し、その市場の特性を掴む必要があります。

一方、自社がこれまで扱ってこなかった全く新しいカテゴリへ参入する場合は、その市場が伸びる素地があるのか(市場成長性)、また市場規模がどの程度なのかを詳細に調べる必要があります。

既存セグメント×既存商材に近い事業では、社内のリソースや既存のノウハウを活かしやすいというメリットがあります。一方で、まったく新しい市場で新商材に挑戦する場合は、事業の成功確率が下がるリスクや、必要な投資額が大きくなる可能性があるため、より慎重なアプローチが求められるのです。

新規事業の目的を整理するうえでは、「既存事業との距離感」は重要な観点の一つといえるでしょう。

事業領域の選定

市場調査の方法については、以下の記事でくわしく解説しています。

※関連記事
市場調査とは? 主な手法と外注すべきかを見極めるポイントを解説
BtoB新規事業で使える市場規模算出テンプレート【2024年版】

アイデア創出&事業化のために使えるフレームワーク・思考法

新規事業を成功させるためには、顧客視点や市場分析を踏まえつつ、アイデアを練り上げ、実行に移す仕組みが必要です。ここでは、新規事業アイデアの創出から事業化に至るまでをスムーズに進めるために活用できるフレームワークや思考法を紹介します。

アイデア創出のために使えるフレームワーク・思考法

まずは、アイデアを創出するために使えるフレームワークと思考法を解説します。

3C分析

先述したように、アイデアとは既存の要素を組み合わせて形にするものです。つまり、アイデアを生み出すために必要なのは、純粋な“ひらめき”や“発想力”よりも、顧客や市場、自社が保有する資源や強みなど、事業に関連する既存要素をどれだけ多く知り、それらをうまく組み合わせられるかだと言えます。

それら事業に関連する情報を収集・整理するためにおすすめのフレームワークが「3C分析」です。3C分析とは、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの要素を分析することで、事業環境を把握し、戦略立案に役立てる手法のことです。

これまで説明してきたように、この3つのCの中でもとくに重要なのは「顧客(Customer)」です。競合の動向(Competitor)や自社の強み(Company)を理解することも大事ですが、顧客の課題・ニーズとかけ離れていては事業は成功しません。まずは顧客(Customer)を起点に据えたうえで、他の2つの要素を掛け合わせ、アイデアをブラッシュアップしていきましょう。

顧客の課題やニーズを知るためには、前章で紹介した課題探索インタビューが効果的です。この時に意識したいのが顧客を業界>会社>部門・チームという3つの観点で理解することです。

顧客の課題やニーズを業界>会社>部門・チームの3つの視点で捉えると、業界全体が抱える構造的な問題やトレンドを把握できます。そのうえで、その会社独自のビジネスモデルや組織文化、さらに部門やチームが直面している現場レベルの悩みを探ることで、上流から下流までの課題がどのように連鎖しているかを把握できます。どこの階層の課題を事業で扱うかどうかで市場規模(≒事業のインパクト)も変わってくるでしょう。

前提として、事業を成功させるためには、そのジャンルについて「社内においては、誰よりも詳しい」というレベルの知識を身につける必要があります。新規事業においても、既存事業と近い分野の方がいい、という理由もここにあるわけです。少なからず新しい分野を開拓することになるので、業界>会社>部門・チームの各階層について情報を集め、それら全体像の中から差別化要素を見つけ出し、より確度の高い事業アイデアに仕上げましょう。

なお、新規事業開発フェーズの3C分析においては、「Competitor(競合)」「Company(自社)」は、そこまで深掘りしなくてもよいと考えています。競合に関しては、自社が全く同じことをしようとしていないか、つまり差別化できているかどうかを確認する程度で十分です。また、自社に関してはリソースやケイバビリティ、過去に同様の試みがなかったかを調査しましょう。

アナロジー思考

アイデアを発想するには大きく2つのプロセスがあります。1つは、さまざまな知識や経験をインプットして整理すること。もう1つが、それらをうまく結びつけることです。そこで活用したいのが、「アナロジー思考」です。

アナロジー思考とは、異なる領域や事例の特徴や仕組みを、自社に応用することで解決策を導く手法のことです。たとえば、異業種のビジネスモデルを自社のサービスに取り入れるといった発想法です。「つなげる力」「模倣する力」と言い換えてもよいでしょう。

これまで多くの新規事業開発に携わってきた人は、自然とアナロジー思考が身についていることが少なくありません。さまざまな事例や業界の成功・失敗パターンを見聞きするなかで、「自社の課題と似た構造を持つケースはないか」といった視点が身に付いているからです。

しかし、これまで新規事業に携わる機会がなかった人は、アナロジー思考を鍛える必要があります。そして、アナロジー思考は誰もが多かれ少なかれ持っている思考力ではあるものの、鍛えるのは容易ではありません。

アナロジー思考のトレーニングにおすすめなのは、競合の事例記事を徹底的に分析することです。分析しながら「どんな背景や狙いがあってこの機能を実装しているのか」「顧客の課題感に共通点はないだろうか」などを深掘りしてみましょう。

たとえば、競合の成功事例であれば「なぜそのやり方がうまくいったのか」「他社と何が違っていたのか」、失敗事例であれば「どの部分が致命的な要因になったのか」を探ることで、自社の事業に取り入れられるポイントや注意すべき点が見えてきます。こうした事例分析を習慣づけることで、自然と「これは自社にも応用できるのでは?」といったアナロジー思考が働き、より多角的なアイデアを引き出しやすくなるはずです。

新規事業開発アイデアを事業化するためのフレームワーク

続いて、新規事業アイデアを事業として形にするために活用したいフレームワークを4つ紹介します。

バリュープロポジションキャンバス

アイデアを事業化するフェーズでは、まず事前に設定したペルソナの課題と自社の提供価値にズレがないかを改めて確認します。そのために活用したいフレームワークが「バリュープロポジションキャンバス」です。

バリュープロポジションキャンバスとは、「顧客が実現したいこと」「ゲイン(得たい価値)」「ペイン(困りごと)」という顧客視点の要素と、自社の提供できる価値を対比させながら整理するものです。ペルソナを踏まえたうえで、実際に提供できる価値が本当に顧客のペインを解消し、期待するゲインを生み出すかどうかを深堀りして検討します。

  【顧客セグメント】

  1. 顧客が実現したいこと
  2. ゲイン(顧客のメリット・恩恵)
  3. ペイン(顧客の障害・リスク)

    【顧客への提供価値】
  4. 製品・サービス
  5. ゲインクリエーター(顧客への利得を与えるもの)
  6. ペインリリーバー(顧客の悩み・障害を取り除くもの)

バリュープロポジションキャンバスを作成する際は、顧客が実現したいことから考えるのがポイントです。また、情報が多すぎると全体像が見えにくくなるので、重要なポイントに絞って簡潔にまとめることを意識しましょう。

バリュープロポジション

バリュープロポジションキャンバスによってペルソナの課題感と自社の提供価値の整合性を確認できたら、その提供価値について簡潔に言語化します。そのために活用したいフレームワークが「バリュープロポジション」です。

バリュープロポジションとは、企業が顧客に提供する価値を表したもの。才流では、「自社が提供できて、競合他社が提供できない、顧客が求める独自の価値を表したもの」と定義しています。

バリュープロポジションによって顧客が求めている価値、またそれに対する自社の優位性や独自性をシンプルに表現することで、アイデアの方向性はより明確になります。

バリュープロポジションを作成する際は、以下の順序で考えることが大事です。

  1. 顧客が望んでいる価値
  2. 競合他社が提供できる価値
  3. 自社が提供できる価値

顧客が望んでいる価値を最優先に考えないと、自社の想いが先行してしまい、市場のニーズと乖離した製品・サービスになってしまう可能性があるからです。顧客が望んでいる価値を正確かつ具体的に把握するには、先述した課題探索インタビューや市場調査を徹底的に行いましょう。

才流では、バリュープロポジションおよびバリュープロポジションキャンバスを作成するためにフレームワークを用意しているので、ぜひご活用ください。

バリュープロポジションスライドテンプレート(Googleスライド)を開く 

■バリュープロポジションスライドテンプレート(PowerPoint)をダウンロードする

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バリュープロポジションおよびバリュープロポジションキャンバスの書き方については、以下の記事で解説しています。

※関連記事:バリュープロポジションとは?作り方と事例~テンプレート付きで解

エレベーターピッチ

エレベーターピッチとは、15〜30秒程度の短い時間で行うプレゼンのことです。バリュープロポジションによって明確になったアイデアの価値や可能性について、社内の意思決定者や投資家に短時間で伝えるときに有効なフレームワークです。アイデアを魅力的に伝えるだけでなく、ブラッシュアップするためのフィードバックを得る手段としても活用できます。

エレベーターピッチは15〜30秒という短い時間ではあるものの、アイデアの核となる要素を凝縮して伝える必要があります。伝えたい要点を整理するにあたっては、以下の9つの要素を明確にしましょう。

  1. ターゲットユーザー
  2. (ターゲットユーザーの)抱えている課題や潜在的なニーズ
  3. プロダクトの名称
  4. プロダクトのカテゴリ
  5. プロダクトの重要な利点、対価に見合う説得力のある理由
  6. プロダクトの最も保守的な代替手段
  7. (保守的な代替手段と比べて)差別化の決定的な特徴
  8. 自社の実績や強み+社名
  9. 自社がこのプロダクト開発に取り組む理由、圧倒的な優位性

エレベーターピッチでは、顧客の課題や競合との差別化要素、自社の強みなどを伝えることはもちろんのこと、短いプレゼンを通じて、聞き手に「もっと知りたい」と感じさせる魅力的なフックも必要です。相手の興味を引きつけるキャッチコピーや、インパクトのある数字や事実を冒頭に入れるのも効果的です。

才流では上記の構成要素をもとにしたエレベーターピッチを作成するためのテンプレートを用意しているので、ぜひご活用ください。

エレベーターピッチのテンプレート(Googleスライド形式)を開く

エレベーターピッチのテンプレート(PowerPoint形式)をダウンロードする

※個人情報の入力は必要ありません。クリックするとファイルがダウンロードされます

エレベーターピッチの作り方については、以下の記事で解説しています。

※関連記事:エレベーターピッチの作り方を事例で解説【テンプレート付き】

リーンキャンバス

エレベーターピッチでアイデアの核を伝えた後に(社内での一次審査などを経て)、より具体的なビジネスモデルや仮説を整理・検証するためのフレームワークとして活用したいのが「リーンキャンバス」です。

エレベーターピッチが短時間で興味を引くためのものであるのに対し、リーンキャンバスは、より具体的な事業の詳細を一枚のキャンバスに落とし込み、新規事業のビジネスモデルを可視化します。

リーンキャンバスの強みは、新規事業におけるあらゆるリスク要因を漏れなくカバーできる点にあります。アイデア自体がどれだけ素晴らしく、実際に第三者から評価されたとしても、事業として成功させるためには、そのアイデアが抱える潜在的なリスクや課題を十分に洗い出し、適切な対策を講じる必要があります。

リーンキャンバスで設定する項目は以下の9つです。

  1. 顧客セグメント
  2. 課題
  3. 独自の価値提案
  4. 解決策
  5. チャネル
  6. 収益の流れ
  7. 主要指標
  8. コスト構造
  9. 圧倒的な優位性

リーンキャンバスの書き方には正解はなく、必ずしも9項目すべてを埋める必要はありません。埋められる項目から記入し、埋められない項目については必要な情報収集を行ってブラッシュアップしましょう。

才流では、リーンキャンバスを作成するためにフレームワークを用意しているので、ぜひご活用ください。

■リーンキャンバステンプレート(Googleスライド)を開く

■リーンキャンバススライドテンプレート(PowerPoint形式)をダウンロードする

※個人情報の入力は必要ありません。クリックするとファイルがダウンロードされます。

リーンキャンバスの書き方については、以下の記事で解説しています。

※関連記事:リーンキャンバスとは? 実践的な書き方と考え方【テンプレート付き】

新規事業開発のアイデアを評価する方法

新規事業開発においては、革新的なアイデアを発想するだけではなく、そのアイデアが実際に事業として成立するかどうかを検証する必要があります。

ここでは、アイデアを評価する観点とフローについて解説します。

評価観点

新規事業のアイデアを評価する際は、「市場のポテンシャルはあるのか」「売れるのか」「作れるのか」という3つの視点から検討します。

具体的な評価観点としては、以下の6つが挙げられます。

  1. 市場の大きさ
  2. ニーズの深さ・逼迫度
  3. 競合優位性
  4. 実現可能性
  5. 投資収益性
  6. 自社がやる意義

とくに上の4つ(市場の大きさ、ニーズの深さ・逼迫度、競合優位性、実現可能性)は、事業として成り立つかどうかをみるうえでは重要な要素です。

なお、評価観点や評価軸は、企業の戦略、ビジネスモデル、業界の特性、さらには市場の成熟度などによって異なるため、一律に決めることはできません。新規事業を開発する目的や目標に合わせて設定しましょう。

それぞれの評価観点についてみていきましょう。

市場の大きさ

市場の大きさとは、市場規模やターゲットとなる顧客数だけでなく、成長性が十分にあるかどうかも重要なポイントです。市場規模は、TAM・SAM・SOMの推定値から測るのが一般的です。

市場の成長性に関しては、直近5年間の市場成長率などを参考にし、市場が存在しない場合は似ている市場の数値を参考にしましょう。

ニーズの深さ・逼迫度

ニーズの深さ・逼迫度とは、アイデアが解決する顧客の課題がどれほど深刻で、早急な解決が求められているかを評価する観点です。前述の市場の大きさが、ニーズの「広さ」を示すのに対して、ニーズの深さ・逼迫度は、個々の顧客が抱える課題の深刻度、そして実際にその解決策に対してどれだけお金を支払う意欲があるのかを示します。

ニーズの深さ・逼迫度は先述した課題探索インタビューなどを実施すればある程度予測できるものの、実際のところはリリースしてみないと分かりません。

そのため、「本当に顧客がお金を出してまで解決したい課題なのか」ということは、後々の検証フェーズでプロトタイプや簡易的な営業資料を作成して、顧客の反応を確認しましょう。

競合優位性

競合優位性とは、自社が市場内で競合他社と比べてどれだけ有利な立場を築けるか、つまり、競合他社の存在感、参入障壁の高さ、そしてどれだけ差別化が可能かや市場シェアを獲得できるかを評価する観点です。競合がどれだけいるか、競合や代替品よりも自社が選ばれる理由があるかなどが焦点となります。

競合他社と比較した自社のポジションを視覚的に理解するためには、「ポジショニングマップ」を作成するのがおすすめです。

ポジショニングマップのつくり方については、以下の記事で解説しています。

※関連記事:ポジショニングマップの作り方~肝となる軸の決め方をテンプレート付きで解説~

実現可能性

実現可能性とは、技術面、資金面、法律面、人的リソースなどの観点から、新規事業をスムーズに立ち上げ、継続して運営できるかどうかという観点です。実現する上で障害がないかどうかに加えて、スケールできる拡張性があるかどうかも重要な観点です。

投資収益性

投資収益性とは、新規事業に投下する資金に対して回収が見込めるかどうかという観点です。ROI(投資利益率)や損益分岐点などで評価するのが一般的ではあるものの、製品・サービスによっては初期段階では正確に見通せないことも少なくありません。

そのため、ある程度の仮説は立てたうえで、後々の検証フェーズで市場の反応や顧客のフィードバックを得ながら数値をアップデートしていくという方法がよいでしょう。

自社がやる意義

自社がやる意義というのは、自社のビジョン・ミッションや経営資源との親和性があるかどうかを確認する観点です。既存事業との親和性があるかどうか、また既存事業とのシナジー効果が生まれるかどうかも重要です。

評価フロー

新規事業アイデアの基本的な評価フローは、以下の通りです。

  1. 一次スクリーニング
  2. 詳細調査(顧客の課題検証etc.)
  3. 詳細評価
  4. ソリューション検証
  5. PoC(概念実証)

一次スクリーニングでは、新規事業アイデアの魅力、ターゲットユーザー、自社が取り組む理由などをエレベーターピッチにまとめ、評価を行います。

次に、詳細調査のフェーズでは、見込み顧客へインタビューを実施し、「課題が実際に存在するのか」「お金を出してまで解決したい課題なのか」を検証します。顧客の反応からあまり求めていない、いわゆる“Nice to have(ナイス トゥ ハブ)”なアイデアであることが分かった場合は優先度を落とす(アイデアを練り直す)、強く求めていることがわかる場合は次のステップに進むといった具合です。

なお、事業アイデアについての検証インタビューでは、以下のような設問項目が挙げられます。

その後、インタビューして得た情報や収集したデータをもとに、先述した市場規模や競合環境、実現可能性などの各視点からアイデアを詳細に評価します。

これらの評価結果を踏まえ、アイデアの具体化と改良点を洗い出した上で、実際にMVPやプロトタイプを作成し、再度顧客にテストしてもらい、その反応やフィードバックをもとにさらに製品・サービスをブラッシュアップしていきます。

最終段階のPoC(概念実証)では、限定的な市場で実際にサービスをリリースし、顧客の反応や収益性を検証することで、最終的な事業化の可否を判断します。

これら一連のプロセスを経て、アイデアをブラッシュアップし、事業へと昇華していきます。

新規事業アイデアに関するQ&A

Q. 新規事業のアイデアを発想する際、陥りやすい現象はありますか?

A. よくあるのは、①コストを度外視してしまう、②自分のアイデアに固執してしまう、③自分の知ってるマス情報に引っ張られてしまう、の3つです。

アイデアは数を沢山出すことが大事なので、制限はなるべく設けない方がよいですが、社内で新規事業に取り組む限り、お金を出すのは企業です。つまり、企業にとって投資すべきアイデア、投資できる範囲で実現できるアイデアであることは大事です。

また、自分のアイデアが可愛くなってしまって、外部からの客観的なフィードバックを受け入れられなくなるということもよくあります。どんなに自分にとって魅力的なアイデアでも、市場や顧客のニーズと乖離していれば成功は望めないということは心得ておきましょう。

最後に、自分の知っているマス情報に頼りすぎるあまり、正しくない情報をベースにアイデアを構築してしまうということもよくあります。正しい一次情報にあたった上でアイデアをつくるようにしましょう。

Q. どのくらいの市場規模ならGoを出しますか?

A. 会社によって求める新規事業の大きさは異なるため、市場規模の目安も変わってきます。

一般的には、5年で1億円、3億円、10億円、30億円といった数字がよく挙げられます。市場規模が大きいほど、売上目標を達成できる可能性も高くなりますが、たとえば市場自体がまだ存在しない状態で5年で10億円を目標とする場合は、市場の啓蒙活動を並行して行いながら売上を創出する必要があります。

Q. 新規事業開発に生成AIを活用できる場面と注意点を教えてください。

A. さまざまな場面で活用できますが、ファクトチェックは重要です。

生成AIは、リサーチ時間の大幅な短縮、未知の市場に関する初期情報の提供、既存の要素の組み合わせによるアイデア創出、さらにはシステムのプロトタイプ作成など、さまざまな場面で活用できます。

しかし、出力された情報のファクトチェックは不可欠です。とくに、生成AIにはハルシネーション(虚偽情報や誤情報を生成してしまう現象)のリスクがあるため、得られたデータやアイデアが正確かどうかは必ずチェックしましょう。

まとめ

本記事では、新規事業のアイデア創出と事業化のために使えるフレームワークを紹介しました。フレームワークはあくまで補助線として、思考を整理し、方向性を明確にするためのツールです。それを埋めること自体が目的になってしまうと、本質的な価値や顧客ニーズを見失ってしまう可能性もあります。

「フレームワークを埋めるためだけの作業」にならないようには気をつけ、自由な発想や新たな視点を積極的に取り入れることが、新規事業を成功に導くうえでは重要です。フレームワークを活用しながらも、顧客の声や市場動向をこまめにチェックし、仮説検証と改善を繰り返す姿勢を忘れないようにしましょう。

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