「野性的な仮説」を立てよ。ビジネスをドライブさせる仮説の作り方 | DOER NOTE

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「野性的な仮説」を立てよ。ビジネスをドライブさせる仮説の作り方
レジー
  • 著者/レジー
  • 戦略コンサルタント/音楽ブロガー・ライター

「野性的な仮説」を立てよ。ビジネスをドライブさせる仮説の作り方

仮説=ミッションに対する仮の答え

「仮説は何?」
「まず仮説を考えてみよう」

 

どちらもビジネスパーソンの多くが、おそらく1度は言われたことがあるだろう言葉かと思います。

 

仮説を持つこと。それは大学の研究者やリサーチ部門の会社員にとってだけでなく、「売上をアップさせる」「サイトへのアクセス数を増やす」「優秀な人材を獲得する」など事業上の使命を課せられているビジネスパーソンにとっても非常に重要な概念です。

 

そもそも「仮説」とはなんでしょうか?いろいろな定義があるかと思いますが、ビジネスシーンにおいては「自分が向き合っているミッションに対する仮の答え」くらいの理解でまずは問題ないかと思います。

 

「こうすればこの商品がもっと売れる“はず”」
「ああやれば、このサイトはもっと見てもらえる“のではないか”」
「この部分を改善すればより優秀な人材を獲得できる“だろう”」

 

漫然とミッションに取り組むのではなくこういった仮説を持っていると、「自分のやるべきこと」が自ずと決まってきます。その仮説が正しいかどうかを検証するために何をするか、その結果を受けてどうするか…というようにフェーズが進んでいくわけです。

 

仮説がない場合、「とりあえず何でも調べる」「全部やってみる」といった状況になりがちです。最近は「仮説を持つ前にビッグデータをとりあえず眺めて、そこから傾向を見つける」みたいなケースも徐々に出てきているかと思いますが、基本的には仮説を持ってアクションを起こすことが大事と考えて差し支えないでしょう。

 

では、この仮説というものはどうやって組み立てればよいのでしょうか?

 

調査からわかるのは「過去」でしかない

誰しも考えるのが、「外れない仮説を作りたい」ということかと思います。もちろん、仮説の精度は高い方が良いに決まっています。

 

「外れない仮説」を作るために、まずは「市場環境を調べよう」「似たような案件の成功・失敗事例を集めよう」「自分たちの取り組みの振り返りを行なおう」などなど、関連しそうな情報を集める「調査」を行なうケースが多いのではないかと思います。この「調査」の手法にはすでにいろいろなフレームワークが存在しており、ビジネス書を多少なりとも読んでいる人であれば知っているものがいくつもあるのではないでしょうか。

 

「これまではこうだった」ことはわかる。では、それが「だからこの先もこうなる」に本当につながるのか?もちろんそう言える部分も一定レベルまではあるはずですが、ここに寄りかかりすぎると「未来は変えることができる」という当たり前の事実をないがしろにすることになってしまいます。

 

「未来は変えることができる」。もしかしたら青臭く聞こえるかもしれません。ただ、この考え方はビジネスに向き合う上で何よりも大事ではないかと思います。どんなに調査をしても、未来のことはわかりません。過去の出来事を分析して未来のことを分かった気になるよりも、「どんな未来を自分は望んでいるのか?」ということを考える方が実はよっぽど“現実的”で“生産的”なのではないでしょうか。

 

仮説には「自分が望む未来=意思」を盛り込む

この話を本稿のテーマでもある仮説の作り方に引き付けると…「仮説を作るうえで、自分が望む未来=意思を盛り込む」ということにな ります。

 

「この商品が、こんな評判を獲得できたら嬉しい」
「このサイトが、こういう人たちを集めることができたら最高」
「こういうことに反応する、優秀な人材を集めたい」

 

もしかしたら、こういった「意思」の中には常識的に見れば的外れなもの(たとえば、今までの市場環境からすれば実現が困難なもの)も含まれているかもしれません。ただ「未来は変えられる」のであれば、その未来に向けて「常識」の方を調整しておけばよいわけです。一方で、もちろん「今の状況から見るとさすがに無理」という場合もあります。そのちょうどよい塩梅を見つけるには、前述したような調査で「ここまでの積み重ねとして何が起こってきたか」を正しく把握しないといけません。

 

「調査」と「意思」、ビジネスをドライブさせる仮説づくりにはその双方が必要になります。この2つの観点から仮説というもののあり方をまとめると、下記のようになります。

 

 

①無責任な仮説

リサーチした事実に基づかず、特に意思もない仮説。エビデンスへの理解もなければ何かを動かしていこうという意思もないので百害あって一利なしですが、こういったものを振り回して「仮説」と称しているケースが世の中には非常に多いと思います。

 

②無難な仮説

これまでの現状を踏まえたうえで、そこから導き出される結論としての仮説。過去に起こったことをベースにしているので周囲からの反発も少なく、またリサーチを広範にかつ深く行っていけば大外れする可能性も減っていきます。ただ、ここから「非連続な変化」を引き起こすことは難しいです。

 

③野性的な仮説

しっかりしたリサーチは行なっていなくても、自身の肌感覚や願望から生まれる「こうなんじゃないか?」「こうなってほしい!」という気持ちをベースにした仮説。そこにはある個人の強い思いが確実にあるわけで、何かを動かす原動力にはなりますが、厳しく言えば「思い込みに過ぎない」いう見方もできます。

 

④ダイナミックな仮説

過去の積み重ねも踏まえたうえで、さらに未来を自分が思うものにしたいという意思が込められた仮説。これが「仮説」というものの、一つの目指すべき姿なのではないかと思います。現状把握がなされた先にある「こうしたい」というメッセージは、多くの人を巻き込む力を持ち得ると思います。

 

最初に立てるべきは「野性的な仮説」

ここでお伝えしたいのは、最初に立てるべきは「無難な仮説」ではなく「野性的な仮説」だということです。「調査からわかること」から仮説を作った方が安心できるようにも思いますが、そこから「過去の延長線上にとどまらない仮説」までブラッシュアップするのはなかなか難しいです。まずは勇気をもって「(細かいことはまだわからないけど)自分はこう思う、こうしたい」というところから始めることで、過去にとらわれない発想が生まれやすくなります。

 

その際に留意すべき点は、「確証バイアス(自分の仮説を支持する情報ばかり集めてしまうこと)」を恐れないことです。

 

自分にとって都合のいい情報ばかり集めてしまうというのは、人間であればある意味では致し方ないことです。まずは「そういうものだ」と思って、自身の仮説に紐づく調査を進めて問題ないです。

 

ただ、そこで終わってしまうと誤った意思決定をしてしまう可能性があります。重要なのは、「無難な仮説」視点からのツッコミを絶えず入れていくということ。パートナーがいればその人にそういう観点でのコメントをもらえばよいですし、一人で考える場合は「自分が収集した情報と反対の立場のものがないか」に絞って再度情報収集を行なうのが良いと思います。

 

満遍なく情報を集めるのではなく、

 

「野性的な仮説」を立てる
→その仮説にとって都合のいい情報を集める
→その反証材料がないか考える
→仮説にとってネガティブな情報があれば、乗り越えるためには何が必要かを考える
→仮説を微調整する
→さらにその仮説にとって都合のいい情報を集める…

 

こういったプロセスを繰り返す中で、「野性的な仮説」は「ダイナミックな仮説」に進化していきます。

 

 

ちなみに、人によっては「意思」をどうやって持つのか?(=「野性的な仮説」をどうやって作るのか?)ということ自体が問題になることもあると思います(本意ではないミッションに関わっているケースなど)。その場合は、「ダイナミックな仮説」を作ることは一旦置いておいて、まずは「無難な仮説をしっかり作る」ことを目指せば良いかと思います。

 

その作業を通じて自分が触っている問題を多面的にとらえていくうちに、徐々に「これは変だな」「もっとこうしたらいいのでは」という気持ちが少しずつ芽生えてくる場合があります。仮にリサーチ結果や理性的な判断とは異なる感触でもそれを大事にしていくことで、それ以降の自分の仕事に「意思=こうしたい、こういう未来を作りたい」を盛り込んでいけるようになるはずです。

 

前例を重視しつつ物事を進めるケースの多いビジネスシーンでは「無難な仮説」が求められがちですし、「自分はこうしたい、こうなってほしい」という気持ちを表に出さないのがビジネスパーソンの作法だという空気すら根強く存在するように思います。ただ、これまでの常識が通用しなくなりつつある今の時代こそ、「こうしたい」という思いをいかにビジネスの場に盛り込んでいくかが重要なのではないでしょうか。

 

この先、過去の実績を分析する作業については、AIが人間を上回る精度でやり切ってしまう可能性もあります。「過去から見るとこうなる」ではなく「自分が主体となって未来をこう変えたい」という気持ちを持てるかどうかこそが、「人間がビジネスを行なう」ことの本質的な意味になってくるのではないかと思います。

レジー
  • 著者/レジー
  • 戦略コンサルタント/音楽ブロガー・ライター

大学卒業後から現在に至るまで、メーカーのマーケティング部門およびコンサルティングファームにて事業戦略立案、マーケティング戦略立案、新規事業開発、ブランドマネジメント、新商品開発などに従事。2012年から会社勤務と並行して音楽ブロガー・ライターとしての活動を開始し、ディスクレビューや各種コラムの執筆に加えて、水野良樹(いきものがかり)や三浦大知などのインタビューを担当。昨年12月に、夏フェスを社会学的観点およびビジネス的観点から分析した『夏フェス革命 -音楽が変わる、社会が変わる-』(blueprint)を上梓。

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