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ウイングアーク1stの最新パートナービジネスを大公開:営業活動をデータで支援。パートナーとの協業が加速するパートナープログラムの設計方法

法人営業
コンサルタント
桂川 誠

才流(サイル)では、『先駆者に聞く、SaaS×パートナービジネスのリアル』と題して、パートナービジネスの先駆者の皆さまを取材し、パートナービジネスを進めるうえでのポイントや仕組みづくりのナレッジをご紹介しています。

今回は、ウイングアーク1st株式会社のパートナービジネスをインタビューしました。

2021年に、パートナービジネスの新たな市場開拓とパートナー活動支援強化のため、アライアンス統括部を設立したウイングアーク1st。

インタビュー後編では、パートナーグレードの刷新と、パートナープログラムWARP(WingArc1st Relationship Platform)で提供し、パートナーの売上増につながっているコミュニケーションツール・WARP Success Boardについて、開発の背景や活用方法をうかがいます。

また、記事の終わりで、同社が実際に活用しているビジネスプラン(※)のフォーマットがダウンロードできます。ぜひ、ご参考ください。

前半のインタビュー記事

ウイングアーク1stの最新パートナービジネスを大公開:パートナービジネスの新市場を開拓する「ISV Scrum」とは?

ウイングアーク1st株式会社 営業本部 副本部長 兼 アライアンス統括部 統括部長
横尾 勇人さん

2016年にウイングアーク1st株式会社入社後、SVF CloudのSalesforce市場開拓に従事。2017年からは大手SIパートナーやアライアンスベンダーとの協業を担当する営業部門の部門長を担当。2020年にアライアンスチームを立ち上げ、翌年アライアンス統括部に昇格。統括部長として、同部をリードする。

ウイングアーク1st株式会社 営業本部 アライアンス統括部 Partner Development部 部長
中原 新平さん

2008年にウイングアーク1stの新卒3期生として入社。ダイレクト・パートナーセールス、イネーブルメント、営業マネージャーなど幅広く経験し、2021年より現在の営業企画職へ。パートナープログラム・WARP(WingArc1st Relationship Platform)の運営強化、データ&デジタルを活用したパートナー活性化支援に従事する。2022年に新潟県の南魚沼へ移住。

パートナーの活動状況を可視化するWARP Success Board

桂川 ウイングアーク1stでは、パートナープログラム・WARP(WingArc1st Relationship Platform)の一環として、データダッシュボード「WARP Success Board」を提供しているとうかがいました。どのようなツールなのか、教えてください。

ウイングアーク1st株式会社 横尾 勇人さんと中原 新平さん
ウイングアーク1st株式会社 横尾 勇人さんと中原 新平さん

中原 WARP Success Board(以下、WSB)は、おもに販売パートナーさまとのコミュニケーション用に開発した支援ツールです。販売実績やパートナーグレードの評価基準に関する進捗状況をリアルタイムに把握できます。

当社では、WARP発足の初期からパートナー制度があり、売上に応じた仕切りを設定していました。しかし、DXの加速やクラウドシフトなど世の中のトレンドを見通し、時代に合わせたパートナー制度にしようと、2019年に大幅に改訂しました。

新しいパートナー制度では5つのグレードを新設しました。Platinum、Gold、Silverと、これから実績をつくるAssociateとEntryです。さらに7つの活動評価項目があり、各項目ごとの評価基準とパートナーさまの活動実績を照らし合わせ、翌年度のグレードを決定しています。

上位のグレードを目指すには、各項目ごとに決められたポイントの達成が必要です。

WARPのPartnerグレード7つの評価項目

桂川 売上のみで、グレードが決まるわけではないんですね。

中原 そうです。グレードによって仕切りに違いはあるのですが、単純に製品を販売するのではなく、構築などの付加価値をつけて提案したパートナーさまが評価されるような設計にしています。売上だけではなく、ウイングアーク1stとの協業に本当にコミットくださったパートナーさまに、きちんと還元したいと考えているんです。

横尾 「評価が売上一辺倒ではなくなった」が、新しいパートナーグレードのポイントです。もちろんグレードが上がれば仕切りも良くなるので、みなさん上位グレードを目指そうとしてくださいます。

ただ7つも評価項目があると、パートナーさまも「今、順調に評価項目を達成しているのか」がわかりません。評価項目が未達の場合はグレードが落ちてしまうため「何を頑張れば今のグレードを維持できるのか」を気にされる方も多いんです。

中原 そこで、WSBを開発しました。WSBでは、パートナーさまの販売実績がわかるほか、活動評価項目に対してどのような状況なのかが一目でわかるようになっています。

目標のグレードを設定すると、どの項目でどのくらいポイントが足りていないのか、現状とのギャップも可視化してくれます。取引の明細や資格を保有している方の情報、資格の期限がいつ切れるのかなどもわかりますよ。

WSBはウイングアーク1stのBIツール・MotionBoardを使っており、社内の基幹システムとも連携しています。

WSBの画面
WARP Success Boardのデモ画面。目標とするグレードまで、どんな活動が必要か?がわかる。(画像提供・ウイングアーク1st株式会社)

桂川 「グレードを上げるために何をやるべきなのか」が、一目でわかりますね。

パートナーとのテックタッチとして、関連する情報を集めたポータルサイトを用意する事例はありますが、パートナーの活動状況ややるべきことまで可視化されているツールの提供は、一歩先を行くパートナーとのコミュニケーションだと感じます。

中原 パートナー向けのポータルサイトとWSBは使い分けています。ポータルサイトでは、お役立ち資料などセールスや技術者向けの情報を集約し、WSBはパートナーの協業推進者向けのサービスになっています。

パートナーにデータ活用の成功体験をつくる

桂川 パートナーの各社は、WSBをどのように活用していますか。

横尾 2023年度も、期初からWSBを綿密にチェックして、上のグレードを目指そうと計画を立てていたパートナーさまが何社もいらっしゃいました。

パートナーグレードの評価項目の7つを達成したら、そのパートナーさまの売上が上がるんですよ。WSBに表示される要素の1つひとつに、協業が成功するためのナレッジが詰まっています。

中原 2023年度は、7社がグレードアップされました。

以前GoldからPlatinumへとグレードが上がったパートナーさまにお話をうかがった際、社内でWSBを毎週見て、各メンバーの目標設定に活用していたと聞きました。当社の担当者との定例会でもWSBは使われています。

桂川 「グレードを上げるために、あと○件やりましょう」「資格保有者を○名増やしましょう」という具体的な会話ができますね。

中原 やはり「共通言語」があるのはいいですよね。もともとWSBが開発される前は、各営業が売上を自分で集計して毎回持っていたので大変だったんです。

桂川 まさにウイングアーク1stが提唱する「データ活用」とはどういうことかを、WSBを通じてパートナーも実践しているわけですね。

中原 おっしゃる通りです。パートナーさまには、まずウイングアーク1stの製品を使ってみてほしいんですよ。

実際に7つの評価項目の中には「自社内での活用推進と販促活動への推進」という項目が入っています。触ったことのない製品を売ることは難しいと思いますので、まずは自社で使っていただくことを徹底しているんです。

自社での活用例は、対外的な事例にもできる。事例は、お客さまがそのパートナーさまを選ぶ理由にもなります。毎日のWSBの活用が「このような用途でも使えるのであれば、今度お客さまに新しい切り口で提案してみようかな」といった気づきにもなってくれたらいいな、と期待しています。

桂川 テックタッチなコミュニケーションというと、情報を1:Nで届けるような効率性を重視した施策をイメージしますが、WSBはさらに踏み込んでいるなと感じます。

活動の可視化だけでなく、ウイングアーク1st製品の価値であるデータ活用を実際に体験する。また、製品理解を促すだけでなく、パートナー側にも製品の活用事例をつくり、営業へつなげるなど、いくつもの仕掛けがあります。すばらしいツールですね。

テクノロジーと評価設計でパートナーの売上を上げる

桂川 WSBの導入前後でパートナーにはどのような変化がありましたか。

中原 WSBによる変化というよりは、パートナー制度を刷新したことで、パートナーさまが今まで以上にウイングアーク1stとの協業に踏み込んでくださるようになった印象があります。

グレードが上がればパートナーさま側の担当者も社内で評価されるでしょうし、当社からの特典も増える。WSBはこの制度を支援するための仕組みという位置付けですが、お互いのビジネスを伸ばすためのトリガーになっていると思います。

横尾 アライアンス統括部がない頃は、WARP事務局がパートナーの活動支援を担当していました。しかし、このようなツールを開発し、パートナーさまのビジネスに伴走するところまでは踏み込めていなかったんです。アライアンス統括部ができたことで、グレード設計やWSBが取り組めていますね。

桂川 WSBをスタートしたとき、パートナーからはどのような反響だったのでしょうか。

中原 浸透するまでにはかなり時間がかかりました。最初は当社の営業が、定例会でWSBの画面を共有しながら説明をしていました。WSBの閲覧を習慣にするところからスタートしたので、使ってもらえるようになるまでが大変でした。

桂川 やはり、丁寧なコミュニケーションを重ねているんですね。

中原 2019年にWSBをリリースして以降、毎年地道に機能強化を続けています。

社内の営業担当者やパートナーさまから「もっとこうして欲しい」という細かい要望をたくさんいただくんですよ。他の製品と同様にリリースして終わりではなくて、当社のパートナーサクセスチームが頑張ってアップデートをしてくれています。

さらに私のチームでは、パートナーさまから提出いただいているビジネスプランをうまく活用しています。ビジネスプランには、既存のお客さまの会社名や業種、ターゲット業務・エリアなども書いていただきます。

その情報を見て、業種別の事例セミナーをご案内するほか、パートナーさまの状況にあわせた情報をお送りしています。たとえば、製造業のお客さまが多いパートナーさまには製造業の事例やウェビナーをご案内するイメージです。

パートナーさまの強みを把握し、当社の強みを提供する。強み同士を掛け合わせて、一緒にビジネスを伸ばしていきましょうという関係を作りたいです。

パートナーは、仲間でありファミリー

桂川   ウイングアーク1stをパートナービジネスの目標として捉えている企業は多いと思います。ウイングアーク1stのパートナービジネスの実績の裏側には、組織開発も含めた新しい挑戦や試行錯誤があると実感しました。

あらためて、お2人がパートナーとのコミュニケーションで1番大切にされていることを教えてください。

中原 ウイングアーク1stのコアバリューに「Build the Trust」というものがあります。相手の期待を超える結果を出し、信頼される。それが大前提です。

お客さまに喜んでいただけるような体験を、いかに作り上げていけるか。パートナーさまは、そのための仲間のような存在だと思いながら、コミュニケーションをとっています。

横尾  私にとってパートナーさまは、ファミリーです。手前味噌ですが、ウイングアーク1stの製品は素晴らしいものが多い。パートナーさまにご協力いただくことで、直販だけでは絶対にリーチできないお客さまにも製品を届けることができています。

時間はかかるかもしれませんが、うまく車輪が回りだすと一気に成長できるのがパートナービジネス。パートナーさまの売上にもつながりますし、働く社員のみなさま一人ひとりの幸せにもつながると思っています。そのようなファミリーをたくさん作って、ウイングアーク1stの経済圏を広げていくことが目標です。

開発パートナーとのマッチングでウイングアーク1stの経済圏をさらに拡大したい

桂川  終わりに、今後のパートナービジネスの展望を聞かせてください。

中原 先日、パートナーカテゴリーに開発パートナーを新設しました。

前半のインタビューでも話題にあがりましたが、システムエンジニアの人材不足が業界の問題となっています。企業規模の大きい上位パートナーさまの間でも「開発リソースが足りず、お客さまへ踏み込んだ提案ができない」という問題があるんです。

ならば、ウイングアーク1stで開発パートナーを集め、パートナーさま同士の連携が取れる環境をつくりたいと考えています。具体的には、販売パートナーと開発パートナーをつなぐマッチングサイトです。必ず成功させたいです。

横尾 大手のSIer企業との実績をつくりたいと考えている開発会社もいらっしゃいます。私たちの開発パートナーが、そのきっかけになれると良いですよね。SIer企業も開発リソースを補えますし、開発会社にとっては実績が増える。誰も損がないんですよ。

中原 開発会社として構築の実績を積むうちに、いずれは販売や提案もできるようになりたいというニーズが生まれてくるかもしれません。パートナーの事業改革のような領域まで、ウイングアーク1stとして支援できたら嬉しいです。

横尾 地方のお客さまやSIer企業であれば、やはり地場の開発会社と仕事をしたいというニーズもありますよね。当社は全国に販路を持っていますから、エリアに特化したつながりやビジネスもつくっていきたいです。

たとえば、invoiceAgentには、これまで郵送やFAXで送っていた請求書をPDFで送れる機能があります。開発パートナーの会社が使い始めたら、そのエリアで「便利だからうちにも導入したい」というお客さまが増えてくるでしょう。さらに、「DXまわりを地元の開発会社に見てもらいたい」という要望もあるはず。パートナービジネスから新たなビジネスを生み出す世界観を目指しています。

桂川 「製品を売る」だけではなく、パートナー同士、パートナーとお客さまとの、さまざまなビジネス機会を創出していることも、ウイングアーク1stのパートナービジネスの強みだなと感じました。本日は、ありがとうございました。

[個人情報なしでDL]パートナーとの協業を深めるビジネスプランフォーマット

ウイングアーク1stの横尾さん、中原さんより、実際に同社が活用しているビジネスプランフォーマットの抜粋版をご提供いただきました(才流にて一部編集・加工しております)。

新規パートナーとの契約時や、契約更新時にぜひ、ご利用ください。

■パートナー向けビジネスプラン活動計画書のフォーマット(Excel形式)
■パートナー向けビジネスプラン活動計画書のフォーマット(スプレッドシート形式)

才流のコンサルタントが解説

コンサルタント・桂川

「パートナービジネスによる持続的な成長に必要なことは何か」という問いを考えさせられる、ウイングアーク1st横尾さん、中原さんのお話でした。

ウイングアーク1stのパートナー戦略の要点は、次の3つに集約できます。一過性の施策ではなく、持続的にパートナーとともに成長していく組織と、それを実現する仕組みを構築した点が特徴的です。

  1. アライアンス統括部の設立
  2. 多面的な活動評価項目によるグレード制の導入
  3. 開発パートナーとのマッチングによる経済圏の拡大

アライアンス統括部の設立により、ウイングアーク1stでは、売上目標にとらわれない中長期的な視点でのパートナー戦略が可能となりました。他社製品との連携や双方のパートナー網を活用した「ISV SCRUM」の立ち上げにより、パートナーとのwin-winの関係構築を実現しています。

また、パートナー評価制度をグレード制に変更し、売上以外の多面的な指標を導入。目標達成状況の可視化とデータに基づくアクションの提示により、パートナーの売上アップにつながりました。

さらに、販売パートナーと開発パートナーのマッチングを推進することで、エリアに根差した新たなビジネス創出。多様なビジネス機会を生み出す経済圏の形成を目指しています。

パートナーを「仲間」「ファミリー」と捉え、単なる売上至上主義ではない関係性の構築を重視している点も、ウイングアーク1stのパートナー戦略の強みといえるでしょう。

前半のインタビュー記事

ウイングアーク1stの最新パートナービジネスを大公開:パートナービジネスの新市場を開拓する「ISV Scrum」とは?

(執筆:大崎 真澄 撮影:関口 達朗)

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