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アイデアは100パーセント出る。ウフル林氏が提案する、打率9割の発想法

アイデア不足に悩む企業は多い。「自分はアイデアを出せない」という苦手意識を持つ方も少なくないだろう。しかし、ここ4年で「両手両足の指では足りない」数の新規事業企画に携わったという株式会社ウフル・林大介氏は、「アイデアは100パーセント出る」と断言する。

人類には、必ずアイデアを出す能力がある

「アイデアは100パーセント出る」

こう言うとやや誇大で、胡散臭さしか感じない人が大半だと推察するが、この4年間で特にIoTの概念をベースに新規事業企画のコンサルティングを提供してきた筆者としては、アイデアは100パーセント出ると断言したい。

アイデアは出すだけで良ければ何でも良いんだから当然じゃないか、という意見もあると思うが、ここで申し上げるところの「アイデアが出る」というのは、そのプロジェクトの中心に鎮座し得る、事業企画の主役たる「閃き」のことを意味している。

筆者はここ4年間で両手両足の指では足りないレベルの数の新規事業企画に携わってきた。もちろんプロジェクトの規模や期間は大小様々だが、筆者の記憶が確かならば、アイデアが出ずに終了したプロジェクトは一件もないはずである。これは単に筆者のコンサルティングの善し悪しもある”かも”知れないが、それよりも原理原則として、われわれ人類は必ずアイデアを出す能力があると考える方が自然なのではないかと感じている。

本稿では、打率10割・・・と言いたいところだけどちょっと保険掛けて「9割」のアイデア発想法をご紹介したいと思う。今回は新規事業のアイディエーションに特化した内容を述べるが、応用すれば様々な範囲に適用できるはずだ。

アイデアは当事者の意識の中に眠っている

大前提として認識して頂きたいのは、花咲くアイデアの種は当事者の意識の中にあるという実態である。新規事業のアイデア出しミーティングの仕切りをお任せ頂けることが多いが、最終的に生き残るアイデアは、筆者がファシリテーションをしながら「いち参加者」として思い描いたものや閃いたものではないケースが大半である。その業界や課題に常日頃直面している”当事者”の意識の深いところに眠っていた何かに、急にスポットライトが当たったような感覚で一気に浮上してくるケースが非常に多い。

人間の脳は不思議な造りになっていて、われわれが意識して脳みそをフル回転している時間”以外”にもせっせと働いているようである。この辺りの詳細はいくつか関連する書籍に論を譲りたいが、簡単に言えば普段から脳に対する刺激(インプット)を怠っていなければ、ふとした瞬間、特に何か「緩んだ」時に沸いて出てくるのがアイデアなのである。トイレや浴室で急に”閃いた””降ってきた”などの話を耳にしたことはないだろうか。あのような経験は実は偶発的に引き起こすことが可能なのである。

とはいえ、前述したようにそもそものインプットが足りてなければ閃くことはない。あるテーマに対して、最も事前の情報を有しているのはコンサルタントではなくお客様である。お題やテーマが示されてから動くわれわれよりも、日々業界で格闘しているお客様の方が関連する情報量が多いのは当然だ。であれば、コンサルタントなど使わなくともいつかはアイデアが舞い降りてきそうであるが、実際にはなかなかそうはならない、というのが実感ではないだろうか。そこにはアイデアが出ないと感じるからくりが存在するのである。

アイデアが出ないワケ

アイデアが出ないと感じる理由はいくつかある。

まず最初に上げられるのは、前提となるインプット情報に偏りがあるケースである。お客様は必ず何かしらの業界に属していて、その属する範囲については深く精通しているものである。しかしながら、それ以外の業界については関係ないと感じてしまいがちで、途端に情報量は少なくなる。いわゆる”アンテナ”が張られていないのだ。

そして次に考えられるのは、アイデアを言語化できていないケースである。何か素晴らしいことを閃いた”気がする”が、書き出した紙を見てみると何か違う・・・(もしくは、紙になかなか落とせない)、こういった経験はないだろうか。こういった状態を筆者は「アイデアの解像度が低い状態(図1)」と呼んでいる。図1をご覧いただきたいが、アイデアがいまいちピリッとしないのは、この4つの要素のうちどれかが欠けているからに過ぎない。

アイデアの解像度が低い状態(図1)

要は、一部しか閃いていないのである。アイデアは、いきなり全体像が浮かぶというよりも、パズルのピースが埋まるように閃いていく。ただ、そのスピードはまちまちで、最初から全部埋まることもあれば、徐々に埋まっていくこともあり、それが”途中で”止まってしまうと解像度が下がるのだ。モヤモヤした状態になったら一度こういった型にはめて穴がないかを探ると良い。

アイデアが出ない3つめの理由は、出るはず・出たはずのアイデアが葬り去られるケースである。これにはいろいろなパターンがある。日本企業の場合で最も多いパターンが、「思いついているのに言わない」という何とも勿体ない話である。

これはミーティングの中に上位職が何人も参加している場合に多い。これについては皆さんも想像に難くないと思うが、要するにヒラの参加者が「発言してしまったらやらなければならない」という妙な強迫観念を感じて黙ってしまうのだ。認知的一貫性の罠というべきか、言ったことに責任を持たなければならないという社会通念がそうさせるのであろう。

もう一つのパターンが、アイデアの断片に気づかないか、または上記同様に飲み込んでしまうケースである。複数人でアイデアの会議をしているのに、その種は誰かひとりが考えたものでなければならない、そんな固定観念に囚われて、面白い視点を持つものや独自の閃きの欠片を取りこぼしている。それを口に出したところで拾ってくれる人がいない、そう感じてしまうと、人は無意識のうちにそれを胸にしまい込んでしまうのだ。

アイデア発想のポイント

アイデアが出ないケースとその要因をいくつか紹介したので、ここからはアイデア発想のコツというか、ポイントを紹介していきたい。

まず心構えとして大事なのは、決して真面目にやってはいけないということである。ちょっとしたおふざけや悪ノリの要素が発想には欠かせない。かといって、不真面目に適当にやればいいということではない。こういった心持ちを表す適切な言葉として「非真面目(ひまじめ)」という言葉を紹介しておこう(残念ながら筆者が考えた言葉ではない)。こんなこと言っちゃって良いんだろうか、というためらいの気持ちを捨てて、アイデアをさらけ出すのが良い。

二つ目はテクニックとして紹介するものだが、キーワードザッピングという手法がある。図2をご覧いただきたいが、要はアイデアは後回しにしてキーワードを結合させ、それを声に出すことで無理矢理発想を促す手法である。

無理矢理発想を促す手法

例えばテーマが新しい冷蔵庫だったとする。そして、冷蔵庫という言葉に無理矢理これらのキーワードをくっつけて発言する。冷蔵庫のシェアリング、冷蔵庫の結果コミット型ビジネス、冷蔵庫の自動化、冷蔵庫の余剰キャパシティの利用・・・などとつぶやき続けるのである。そのうち、「あれ?これ面白いかも」という組み合わせが誕生し、その意味を後から考えていく。

「冷蔵庫のアップグレーダブル商品、、、うーん、ハードは全部同じものでソフト制御で機能をライセンス提供して、最初は安く売っておいて後から機能を追加で売るビジネスは面白いかも!」のように発想を広げていくわけだ。これらのキーワードは世の中に既に実例として存在するものであるが、イノベーションとは得てして既存の技術や知識の組み合わせで発現するものなのだ。

三つ目のポイントは、人の摂理に反していないか、という視点を持つことである。人々の暮らしは変われど、人の本質的な部分は変わらないことを自覚していなければならない。例えば、「ラクをしたい」という欲求や要望はこれまでもこれからも不変なものである。その視点で人々の行動を改めて観察すると、本当は人の摂理に反しているのに常識としてまかり通ってしまっている習慣や慣例が多いことに気が付くだろう。

例えば、トイレの便座はかつては手で触って上げ下げしていたが、今ではボタンを押すか目の前に立てば便座は自動的に動くようになった。暮らしは変わっていくが、汚いものは触りたくない、面倒なことはしたくないという人の本質的な欲求は不変なのである。

最後に挙げるポイントとして、意見をちゃんと否定することである。ブレインストーミングやKJ法など、様々なアイデア発想手法が一般化されているが、それと同時に注意書きのように存在するのが「人の意見を否定しちゃダメ」というルールである。筆者はこのルールにはあまり意味を見出していない。意見というのは否定されないとより良いものに生まれ変わらない、というのが筆者のスタンスである。ただし、仮説そのものは否定してはならないし、意見を否定するときはそれより良い手段やアイデアをセットで語ることが”マナー”である。

アイデアを愛そう

アイデア発想の会議は簡単なようで難しい。こういったアイデア発想のからくりをある程度理解した上で、議論を回せるファシリテーターの存在が不可欠だからである。そして、それは外部の人間に託してしまった方が良いと筆者は考える。身内が仕切ると参加者がフェアに感じないという心理的なものもあるし、都合良くアイデア発想会議のファシリテーターを務められる人間が社内にいるとは限らないからだ。また、ファシリテーターがどんな手法をもって会議を仕切っているかについては、また別途稿を設けて論じたいと思う。

そして、そうやって誕生したアイデア、とりわけ参加者の内部に眠っていたアイデアの種が芽吹いたとき、参加者はそのアイデアを我が子のように愛することが出来るのである。誰かのアイデアを押しつけられた、流されたと感じてしまっては、そのアイデアを信じ抜くことができない

最もベストなのは、参加者が「なーんだ、ウフルさんも大したこと無いですね。われわれはこれだけのアイデアを出せたのだから、あなたたちなんか要らなかったんじゃないですか?」と内心思って頂けることである。ベストなファシリテーターとは、化学反応を促進するもその反応自体には関わらない触媒のような存在であるべきだ。

最後に、生まれたアイデアは我が子である。是非、名前を付けて頂きたい。筆者が支援したある製造業においては、その名前がキーワード化してその会社の至る所で呟かれるまでに成長した例がある。一方で、別の企業の新規事業企画において、全く名前のようなものがついていないまま進んでいるケースも目にしている。こちらは事業企画が思うように進んでいないようである。名前を付けるだけで愛着も湧くし、名前を付けるだけの”特徴”がなければそれもできないので、良いアイデアと名前は切っても切り離せない関係である。
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アイデアは自らの内に秘めていると信じ、苦労して生み出し、名前を付けて愛してあげるのが筆者が提唱するアイデア発想法の全体像である。IoTの時代は新規事業の機会に恵まれており、たくさんの”子達”が誕生することを願ってやまない。

林大介

著者/ 林 大介
株式会社ウフル IoT × enebularビジネス開発本部 本部長

電機メーカのエンジニア、通信システムインテグレーターのセールスを経てコンサルティングの道へ。ネットワーク、モバイルを中心とした戦略立案、新規事業開拓、テクニカルアドバイザリーを中心としたプロジェクトを多数実施。昨今はクラウド、IoT、AIなどの技術トレンドを背景にしたデジタルトランスフォーメーション、IoT新規事業創造、ワークスタイル変革に注力している。各種戦略策定、変革実行支援、ワークショップの企画と開催に強みを持つ。

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