それ、偽装請負じゃないですか?業務委託締結の際の留意点 | DOER NOTE

外部CMO型マーケティング支援 | 才流(サイル)

プロジェクト推進

それ、偽装請負じゃないですか?業務委託締結の際の留意点
小鷹龍哉
  • 著者/小鷹龍哉
  • AZX Professionals Group パートナー

それ、偽装請負じゃないですか?業務委託締結の際の留意点

システムの開発や保守運用を委託する場合など、現在のビジネス取引において、業務委託契約が締結されることが多くなっています。エンジニアを、必要な期間、クライアントのもとに常駐させる、いわゆる、システムエンジニアリングサービスも少なくありません。

このような業務委託契約の締結にあたり、注意して頂きたい点があります。

それは、「偽装請負」になっていないか、という点です。

「偽装請負」とは、実質的には労働者派遣に該当するものの、業務委託(請負)を偽装して行われるものをいいます。

クライアントからエンジニアに対して、直接、業務遂行に関する指示等を行うことが想定されている場合、本来は、労働者派遣契約を締結しなければなりません。
しかし、それを回避するために業務委託契約を締結すること、それが、「偽装請負」です。

また、労働者派遣契約の締結を回避する目的はなかったとしても、その実態として、労働者派遣に該当していると判断されるような場合にも、「偽装請負」に該当してしまっていることになります。

偽装請負に該当してしまっている場合、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「派遣法」といいます。)や職業安定法に違反していることになります。

そこで、今回は、労働者派遣契約と業務委託契約の違いや偽装請負に該当しないためのチェックポイントを見ていきたいと思います。

 

1 労働者派遣契約と業務委託契約の違い

偽装請負とは何かを検討する前提として、労働者派遣契約と業務委託契約(請負契約)の違いについて、みていきましょう。

まず、請負契約とは、「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する」ものをいいます(民法第632条)。

請負契約では、請負人は「仕事を完成する」ことが求められますが、その業務の遂行方法は請負人の裁量に任されています。したがって、請負契約の場合、基本的に、注文者が請負人に対して、業務遂行方法や業務遂行時間等について、具体的に指揮命令することはできません。

一方、労働者派遣とは、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まない」ものをいいます(派遣法第2条第1号)。

このように、労働者派遣は、労働者を「他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」であり、この有無により、労働者派遣契約と業務委託契約(請負契約)は区別されます。

クライアントがエンジニアに対して、指揮命令を行うことを想定しているのであれば、労働者派遣とする必要があります。そのような想定があるにもかかわらず、業務委託としている場合、それは、偽装請負ということになってしまいます。

 

2 偽装請負に該当してしまったら・・・

それでは、偽装請負と判断されてしまった場合、どのような問題があるのでしょうか。

そもそも、労働者派遣を行うのであれば、派遣元としては労働者派遣事業の許可を取得する必要があります。そして、派遣期間の制限や、その他派遣元・派遣先が講ずべき措置として様々な事項を遵守しなければなりません。

しかし、偽装請負であると判断された場合、このような派遣法に定める手続を履践していない違法な労働者派遣事業ということになります。

また、偽装請負と判断された場合、クライアントは、労働者派遣事業者としての許可を取得していな事業主から労働者派遣を受けていたことになりますので、派遣元事業主以外の事業主からの労働者派遣の受入れを禁止する派遣法第24条の2に違反することになります。

派遣法違反と判断された場合、行政指導や勧告、氏名の公表、罰金等の対象となってしまう可能性があります。

さらに、違法な労働者供給を行っていることにもなりますので、職業安定法の違反として、受託者側もクライアント側も罰金(職業安定法第44条、第64条第9号)が科せられてしまう可能性もあります。

 

3 適法な業務委託契約か偽装請負かの判断のポイント

上記のとおり、労働者派遣契約か業務委託契約かは、クライアントとエンジニアとの間に指揮命令関係があるかどうかによって判断されます。

指揮命令関係にあるということになれば、実質的には労働者派遣契約である(=偽装請負である)として、派遣法や職業安定法違反となってしまう可能性があります。

適法な業務委託契約であると判断されるためには、


  ① 当該労働者(※エンジニア)の労働力を当該事業主(※受託者)が自ら直接利用 すること、すなわち、当該労働者の作業の遂行について、当該事業主が直接指揮 監督のすべてを行うとともに、


  ② 当該業務を自己の業務として相手方(※クライアント)から独立して処理するこ と、すなわち、当該業務が当該事業主の業務として、その有する能力に基づき自 己の責任の下に処理される


ことが必要となり、具体的には「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和 61 年労働省告示第 37 号)に基づいて判断されることになります。

この基準によると、例えば、以下のような事情は労働者派遣であることを肯定する事情となります。
なお、以下の事情は偽装請負である(=適法な業務委託ではない)とする一事情に過ぎず、適法な業務委託とするためには、上記の厚生労働省の基準を全て満たす必要がある点は注意が必要です。

 

・クライアントがエンジニアに対して、業務遂行方法に関する細かい指示を出している場合
・クライアントがエンジニアに対して、勤務時間の指定や管理を行っている場合
・エンジニアの評価をクライアントが行っている場合
・遅刻や早退、外出にあたり、クライアントの承認が必要となっている場合
・単純な肉体的な労働力を提供している場合

 

偽装請負に該当しないようにするためには、例えば、以下のような体制にしておくことが重要となります。

 

・業務の遂行方法の決定その他のスケジュール管理は受託者(又はエンジニア)が自ら行うこと
・クライアントはエンジニアに対して直接の業務指示は行わず、業務上必要な場合は全て受託者を介して連絡すること
・当初想定していた範囲外の業務等が生じた場合には、エンジニアとクライアントが直接協議をして決定するのではなく、受託者がクライアントとのコミュニケーションを行うこと
・勤務日程は、業務の開始前に、クライアント及び受託者が協議の上決定すること
・出退勤時間や福利厚生施設の利用の可否等は、クライアントの従業員と異なること

 

クライアントが事業のために人材を活用するケースにおいて、「労働者派遣契約」ではなく、「業務委託契約」が締結されることが多くなっています。
しかし、契約書上「業務委託契約」であっても、その実態は労働者派遣なのではないか、と思われるものが多々見受けられます。

本来、労働者派遣契約を締結しなければならないにもかかわらず、業務委託契約と偽装することは派遣法や職業安定法違法となってしまいます。

偽装請負であると判断されないようにするためには、実態に合わせた適切な契約を締結するとともに、業務委託契約とするのであれば、適法な業務委託契約であると判断される体制を整備の上、それに沿った運用を行なうことが重要となります。

小鷹龍哉
  • 著者/小鷹龍哉
  • AZX Professionals Group パートナー

ベンチャー企業のサポートを専門としており、利用規約・契約書の作成、ビジネスモデルの法務チェック、ファイナンスサポート、M&Aや上場審査のサポート等、ベンチャー企業に関する法務を全般的に取り扱っている。

メルマガ登録
DOER NOTEの人気記事や運営の裏話を配信しています。


 

マーケティング戦略立案・実行のスピードを上げたい企業へ

「マーケティングを強化したいが、社内にリソースがない・・」「マーケターの採用がスムーズに進まない・・」などの課題を持つ企業様向けに、戦略立案はもちろん、施策を「実行」するまでを徹底的にサポートします。

サービス紹介資料請求

プロジェクト推進