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働き方改革とは、「事業戦略の見直し」そのものである
レジー
  • 著者/ レジー
  • 戦略コンサルタント/音楽ブロガー・ライター

働き方改革とは、「事業戦略の見直し」そのものである

「労働時間削減、結局現場にムチャぶりですか?」
「結果出せおじさんと、早く帰れおじさん…ふぅ…(ため息)」

 

これらのキャッチコピーは、昨年掲出されたサイボウズのクラウドサービス「キントーン」の広告にて使われたものです。

 

今やあらゆる企業で「働き方改革」というワードが使われる時代ですが、そんなお題目に対して上記のような感想を一度でも持ったことのあるビジネスパーソンは非常に多いのではないでしょうか。エン・ジャパンが今年2月に行った調査によると、「働き方改革」によって自身の働き方が変わったと感じているのは22%とのこと。世間では盛り上がっているような雰囲気もある「働き方改革」ですが、実に8割近くのビジネスパーソンにとっては明確な効果を感じられないものになっている…というのが実態です。

 

巷で叫ばれる「働き方改革」に通底する「社員の生活を尊重した無駄のない働き方をしよう!」というメッセージは立派ではありますが、実際には「それができてりゃ苦労しないよ…」というぼやき節が現場を支配しているのでは。そして経営者も、そのような空気を感じながらも、時代の流れに抗えずに明確なイメージもなく「働き方改革」の御旗を振り回している。そういった状況が、あらゆる企業で引き起こされているように思います。

 

では、「働き方改革」というテーマをどのように捉えると、意味のある形で進めることができるのか?本稿ではそんなことについて考えてみました。

 

結論を先取りすると、お伝えしたいことは2つです。


①「働き方改革」は「就業時間を減らすためのもの」ではない
②「働き方改革」とは「事業戦略の見直し」そのものである


「働き方改革」=「就業時間を減らす」?

「働き方改革」とは、企業としての就業時間を減らすことである。平たく言えば、社員みんなが早く帰れるようにすることである。こういった解釈は比較的通りがよいように思います。

 

一旦この考え方を採用してみると、企業の総就業時間は「企業の総タスク量」「企業の時間あたりタスク量」「社員ごとの時間あたりタスク量」「社員数」を使ってこのように定義できます。

 

 

論理的には「社員数を増やす」ことで総就業時間を減らすことができますが、いきなり人を増やすというアクションがとられるケースはそこまで多くないと思います。また、業務に慣れていない社員が増えた場合「社員ごとの時間あたりタスク量」が低下する恐れもあり、望んだ効果が得られない可能性も高いので、ここでは一旦「社員数は一定」として話を進めます。

 

そうなると、必要になるのは「社員ごとの時間あたりタスク量の向上」「総タスク量の削減」となります。「社員ごとの時間あたりタスク量の向上」のためには業務効率アップにつながるデジタルツールが導入されるでしょうし、「総タスク量の削減」に向けては会議資料の簡略化などが進められるかと思います。

 

もちろん、こういった取り組みの中に劇的な効果をもたらすものがあるかもしれません。ただ、「仕事を無駄なく進めよう」という掛け声は、「働き方改革」という言葉が浸透する前から程度の差はあれ各所で言われていたことでした。日本中の職場に「簡単に効率化できる業務」が溢れている、ということでは必ずしもないはずです(「無駄な業務」が残っていたとして、そこにはツール導入くらいでは解決できない様々な事情がこびりついてるケースも多いかと思います)。

 

となると、ここで挙げたような「働き方改革」のための施策は、ともすれば「乾いたぞうきんをさらに絞り上げる」取り組みになってしまう恐れがあります。当然、現場は疲弊していきます。

 

そんな状況を知ってか知らずか、「就業時間を減らそう!」の号令は止まりません。総タスク量は大して減らない、社員が処理できる単位時間あたりのタスク量もそこまで増えない、でも就業時間は減らさないといけない……そんな理不尽なシチュエーションのしわ寄せは、内緒の持ち帰り残業、現場と経営方針の矛盾に端を発するモチベーション低下といった歪みとして顕在化します。

 

こんなことなら、「働き方改革」なんてやらない方がましです。

 

「働き方改革」で生産性を上げるには、どうすればいいか

そもそも企業とは、「事業を通して社会に貢献し、新たな価値を生み出す」ために存在しているはずです。

 

では、そういった話に「働き方改革」を接続してみると…「新たな価値を、無駄のない働き方で生み出す」といったことになります。これはすなわち「生産性を高める」ことであり、先ほどの議論と絡めると「就業時間あたりの付加価値を大きくする」ということになると思います。

 

この考え方で、「働き方改革」の構造について整理したものがこちらです。先ほどまでゴールとして設定されていた「総就業時間の削減」は、ここでは「時間あたり付加価値の向上」のための要素のひとつとなります。

 

 

ではここでの「付加価値」とは何なのか。文字通り「付加された価値」であり、売上と原価の差分と定義して問題ないかと思います。なので原価を低く抑えることで付加価値を高めることができると言えますが、もう少し分解してこのように整理してみます。

 

 

付加価値を高めるためには売上高の増加が必要で、それは市場規模の大きさとシェアの大きさで決まります。「市場規模」と「シェア」、これらを言い換えると「総需要」と「競争力」となります。

 

つまり、売上高というのは「総需要」と「競争力」の関係で決まると言えます。

 

総需要はこの先増える?減る?減る場合、増やせる見込みは?増やせないなら、今後もそこでビジネスをしていてよい?

 

競合と見比べたとき、どこに競争力の源泉を持つ?つまり、競合に何で勝つ?

 

ここまで来ると、これは「働き方改革」の話なのか?と感じる向きもあるかもしれません。

 

しかし、こういった根幹となる事業戦略のあり方をちゃんと考えないままに「働き方改革」を掲げたところで、「そのタスクは無駄なものか?かける時間をもっと削減できるのではないか?」といった抜本的な判断をすることは不可能です。結果として、勇ましい掛け声とは裏腹の「おためごかしの業務改善」ばかりが幅を利かせることになります。

 

結局、「働き方改革」を有意義かつ効果的に進めるには、「その事業戦略はあり?なし?」という部分まで立ち返らなければならないのです。


「働き方改革」=「企業としてのビジネスのあり方そのものの改革」

戦う市場と戦い方(尖らせる武器)が精緻化され、「見込みがある市場に」「勝ち目のある戦い方で挑む」ということを志向できるようになれば、「やらなくていいこと」「やるべきこと」が明確になります。

 

「やらなくていいこと」をカットすることで、総タスク量が減少する。それによって浮いた時間を、「やるべきこと」に再投下する。もしくは、新たな工夫ができないか考える。あるいは、そのタイミングで人員を増やして、その教育に充てる。そういった取り組みを通して「時間あたりのタスク量」がさらに向上し、総就業時間の削減に寄与する。

 

そんなふうにポジティブな形で業務のあり方が変わっていけば、組織としての余裕が生まれます。そうなれば、グループとしての連携向上や各人のモチベーション向上といった数字には表れづらい部分にも好影響が出るはずです。そしてそれは、企業としての競争力にダイレクトに反映され、生み出せる付加価値の向上につながっていきます。

 

これこそが、「働き方改革」の目指すべき姿のはずです。

 

 

「働き方改革」にとって、コミュニケーションツールを導入したり会議の進め方を改めたりするというアクションは、あくまでもほんの一部分でしかありません。

 

経営者(もしくは事業のリーダー)自身が事業の見直しをすること、これが「働き方改革」の本来の第一歩です。現場の「効率の良い働き方」に期待しているうちは何も進まないですし、むしろ事態が悪化する可能性すらあります。

 

「勝てるビジネスのあり方を構築すること」こそが「働き方改革」の正道である。こう言ってしまうと、何やら身も蓋もない話に聞こえるかもしれませんが、そのレベルから手をつけることこそが、本質的に「働き方を変える」ことの早道になるのだと思います。

 

※この記事はあくまでも「事業を円滑に成長させるために必要な考え方」を業務の視点から提示したもので、昨今国会などで議論されている働き方改革関連法案について何らかのスタンスを示すものではありません。

レジー
  • 著者/ レジー
  • 戦略コンサルタント/音楽ブロガー・ライター

大学卒業後から現在に至るまで、メーカーのマーケティング部門およびコンサルティングファームにて事業戦略立案、マーケティング戦略立案、新規事業開発、ブランドマネジメント、新商品開発などに従事。2012年から会社勤務と並行して音楽ブロガー・ライターとしての活動を開始し、ディスクレビューや各種コラムの執筆に加えて、水野良樹(いきものがかり)や三浦大知などのインタビューを担当。昨年12月に、夏フェスを社会学的観点およびビジネス的観点から分析した『夏フェス革命 -音楽が変わる、社会が変わる-』(blueprint)を上梓。

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