「新規事業を始めたいが、どこから手をつけるべきだろうか」
「事業の失敗を避けるため、慎重に検討しながら進めないと……」
このように、事業開発の初期段階では「何をすればいいか」という方向性の決定にかなりの時間を取られます。そんなとき、より効果的な意思決定を支援するのがフレームワークやテンプレートです。これを知っておくだけで、相当のロスを避けられます。
そこで本記事では、新規事業に役立つ21のフレームワーク・テンプレートを紹介します。さらに、個人情報不要・無料でダウンロードできるPowerPoint形式のテンプレート集もご用意しました。新規事業を効率よく前進させるために、ぜひご活用ください。
新規事業に役立つ21のフレームワーク・テンプレート集(PowerPoint形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
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アイデア創出を加速させるフレームワーク
新規事業におけるアイデア創出は、競合他社との差別化や既存の問題に対する新しい解決策につながる、極めて重要なステップです。
そこで最初に、新規事業のアイデアを考える際に有効なフレームワークを3つ紹介します。フレームワークを有効活用することで、個人の経験や発想力に依存せず、誰でも一定の水準でアイデアを出せるようになるでしょう。
1. オズボーンのチェックリスト
オズボーンのチェックリストは、アイデア発想をスピーディに行えるフレームワークです。オズボーンのチェックリストを使って、既存事業やよくあるアイデアをさまざまな視点から見ることで、発想の幅を広げられます。
オズボーンのチェックリストは、以下の9つの視点で構成されています。新規事業のアイデアがなかなか出てこないときには、空欄(◯◯◯◯)部分に既存事業やよくあるアイデアを当てはめて、9つの視点で再考してみましょう。
- 転用(Other Uses)
◯◯◯◯に新しい用途はないか?
- 応用(Adapt)
◯◯◯◯を他のものに適用・応用できないか?
- 変更(Modify)
◯◯◯◯の形状、色、動き方、音、香りなどを変えられないか?
- 拡大(Magnify)
◯◯◯◯を大きくしたり、長くしたりできないか?
- 縮小(Minify)
◯◯◯◯を小さくしたり、短くしたりできないか?
- 代用(Substitute)
◯◯◯◯の材料、プロセス、力、場所などを置き換えられないか?
- 置換(Rearrange)
◯◯◯◯の構成要素や手順を入れ替えられないか?
- 逆転(Reverse)
◯◯◯◯を逆方向から考えられないか?
- 結合(Combine)
◯◯◯◯を他のアイデアや商品・サービスと組み合わせられないか?
2. SCAMPER法
SCAMPER法も、既存のアイデアや商品・サービスを改良したり、新しいアイデアを生み出したりするのに役立つフレームワーク。「オズボーンのチェックリスト」をベースに体系化されたものです。
SCAPMER法は、オズボーンのチェックリストに比べて覚えやすく、素早く適用できるのがメリット。状況や目的に応じて適切な手法を選択し、さまざまな視点から既存事業やアイデアを見直してみましょう。
SCAPMERとは、以下の7つの英語の頭文字を取ったものです。空欄(◯◯◯◯)部分に既存事業やよくあるアイデアを当てはめて、7つの視点で問いかけることで、アイデアを発想できます。
- 置き換える(S – Substitute)
◯◯◯◯の中に置き換えられる部分はあるか?
- 組み合わせる(C – Combine)
◯◯◯◯を他の製品や要素と組み合わせられるか?
- 適用する(A – Adapt)
◯◯◯◯を別の分野や環境に適用できるか?
- 修正する / 拡大する(M – Modify / Magnify)
◯◯◯◯の形状や色、サイズなどを変更できるか?
- 他の用途に使う(P – Put to another uses)
◯◯◯◯を本来の用途以外で使えるか?
- 除去する(E – Eliminate)
◯◯◯◯の不要な部分は除去できるか?
- 逆転する / 再配列する(R – Reverse / Rearrange)
◯◯◯◯の手順を逆にしたり、構成を入れ替えたりできるか?
3. アンゾフのマトリクス
アンゾフのマトリクスは、企業の成長戦略を描くためのフレームワークです。
新規事業を検討する際、どの方向性で事業を推進すべきか迷うことがあります。このような場合、アンゾフのマトリクスを活用してアイデアをマッピングすることで、事業戦略を打ち立てやすくなるでしょう。
アンゾフのマトリクスは、製品と市場の2つの軸をもとに、4つの成長戦略を導き出します。
※関連記事:新規事業がPMFできない12の理由~失敗から学ぶ、PMFに必要な行動~
- 市場浸透(既存の市場×既存の製品)
既存の製品を既存の市場でさらに売り込むことで、市場シェアを拡大する戦略。 マーケティング活動の強化や、新しい販売チャネルの開拓などが考えられる
- 新市場開拓(新規の市場×既存の製品)
既存の製品を新しい市場に売り込むことで事業を拡大する戦略。新規の地域や新規の顧客層への進出が典型例
- 新製品開発(既存の市場×新規の製品)
既存の市場に新しい製品を投入することで、シェアを伸ばす戦略。 既存の製品のライン拡張や改良、まったく新しい製品の開発などがある
- 多角化(新規の市場×新規の製品)
新しい製品を新しい市場に投入する最も挑戦的な戦略。 事業の多角化や新規参入を意味する。リスクが高い反面、大きな成長が期待できる
これら4つの戦略には、それぞれリスクとリターンのトレードオフが存在します。現状維持はリスクが低く安全ですが、成長が期待できません。一方、新規参入は大きな成長チャンスがありますが、失敗のリスクも高くなります。
市場分析をスピーディーに行うフレームワーク
事業立ち上げ前の計画段階や重要な経営判断、外部環境に大きな変化があった際に実施する市場分析。急速に変化する市場環境に対応し、競合他社に先んじて戦略を立案・実行するためには、市場分析を迅速に行う必要があります。
ここでは、市場分析を行う際に役立つフレームワークを6つ紹介します。フレームワークを有効活用することで、事業計画の立案や意思決定を的確かつスピーディーに行えるでしょう。
4. TAM・SAM・SOM
TAM・SAM・SOMは、製品の潜在的な総市場規模やリーチできる可能性のある市場規模を、金額や顧客数で表すフレームワークです。
この3つの指標を活用すれば、市場規模を理解して事業の将来性や成長性を評価しやすくなります。たとえば、TAMが大きく、SAMとSOMに多くの差があれば、成長の余地が大きいといえるでしょう。一方、TAMが小さく、SAMとSOMがほぼ同じであれば成長が限られていることになります。
また、投資家やステークホルダーに対して、ビジネスの可能性を伝えるのにも有効です。
※関連記事:BtoB新規事業で使える市場規模算出テンプレート【2024年版】
- TAM(Total Addressable Market)
獲得できる可能性のある最大の市場規模のこと。その製品が狙うことができる最大の顧客層の規模。TAMが大きければ大きいほど、その事業の成長機会は大きくなる
- SAM(Serviceable Available Market)
その市場に関わる特定の製品が獲得し得る市場規模のこと。TAMのうち、企業の製品、販売チャネル、リソースなどの制約から現実的にカバーできる範囲を指す。SAMはTAMより小さな値となる
- SOM(Serviceable Obtainable Market)
自社でアプローチして獲得できるであろう市場規模のこと。SAMに対する自社のシェアを指す。SOMが高ければ高いほど、その分野での自社のプレゼンスが大きいことを意味する
5. ファイブフォース(5 Force)分析
ファイブフォース分析は、業界の収益性を左右する「新規参入者」「代替品」「買い手」「売り手」「業界内の競合」の5つを分析するフレームワークです。この分析を行うことで、自社が置かれている競争環境を把握し、戦略の立案に役立てることができます。
ファイブフォース分析では、この5つの力(フォース)を脅威として大きさを分析し、自社にとって有利か不利かを評価します。脅威が少ない場合、企業はその状況をいかして独自の強みを発揮できる可能性があります。一方、脅威が大きい場合、企業は対策を講じる必要があります。
またファイブフォース分析は、経営者が自社の立ち位置を冷静に把握し、的確な戦略判断を下すのに有効な方法です。分析結果は、競争優位の確立や新規参入、事業撤退など、戦略の検討材料となります。
5つの力それぞれについて、「脅威は大きいか?」と問いかけて分析してみましょう。
- 新規参入者の脅威は大きいか?
参入障壁が低く、後発の新規プレイヤーが増加しやすいほど利益を得にくい
- 代替品の脅威は大きいか?
自社の商品・サービスと同じ顧客ニーズを満たす業界外の代替品が多いほど利益を得にくい
- 買い手の脅威は大きいか?
買い手の購入先の変更が容易であるほど利益を得にくい
- 売り手の脅威は大きいか?
仕入先の変更が容易ではないほど利益を得にくい
- 業界内の脅威は大きいか?
競合数が多いほど利益を得にくい
6. 3C分析
3C分析は、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの要素を分析することで、ビジネス環境を把握し、戦略立案に役立てるフレームワーク。マーケティング戦略策定の基礎的な分析手法として広く活用されている手法です。
3C分析は、市場環境の変化に対応するための柔軟な戦略を構築し、競争力を向上させることを目的としています。分析は、以下の3つの要素(3つのC)に焦点を当てて行います。
- Customer(顧客):顧客のニーズ、欲求、行動パターンを理解する
ターゲットとする顧客層の特性を分析。人口統計データ、ライフスタイル、価値観、購買行動などを詳細に把握することで、顧客ニーズを明確にする。さらに、顧客を細分化し、最重要ターゲットを絞り込むためのセグメンテーションを行う
- Company(自社):自社の強み、弱み、資源、能力を分析する
自社が保有する経営資源や中核となる競争力を分析。技術力、ブランド力、マーケティング能力、資金力などの強みと制約を認識する。さらに、組織文化や事業ポートフォリオにおける新規参入の意義なども検討対象となる
- Competitor(競合):競合他社の戦略、強み、弱みを評価する
競合他社の製品、価格戦略、マーケティング施策などを分析。自社と競合の強みや弱みを比較し、差別化ポイントを見つけ出す。また、新規参入の障壁となる要因を検討することも重要
7. 4P・7P
新規事業の立ち上げの重要なプロセスである市場分析。顧客、競合、市場環境を把握し、新たなビジネスチャンスや潜在的な課題を明らかにします。次に、市場分析の結果に基づき、マーケティング戦略を立案します。このマーケティング戦略の実行に欠かせないのがマーケティング・ミックスです。
マーケティング・ミックスとは、さまざまなマーケティング施策を組み合わせることで、マーケティング効果を最大化させることを指します。マーケティングミックスを分析する際によく使用されるのが、4P・7Pと呼ばれるフレームワークです。
※関連記事:マーケティング・ミックスとは?4Pと7Pの基本と活用事例を解説
4Pは、以下の4つの要素から構成されています。
- Product (製品):製品・サービスの特性、ブランド、パッケージングなど
- Price (価格):価格設定、値引きなど
- Place (流通):販売経路、物流、在庫管理など
- Promotion (プロモーション):広告、セールスプロモーション、PRなど
これら4つの要素を統合的に組み合わせることで、効果的なマーケティング活動を行うことができます。
一方、7Pは、サービス(無形商材)のマーケティング戦術に特化したものです。4Pの項目に次の3つの項目が加わります。
- People (人):従業員の対応力、教育など
- Process (プロセス):サービス提供のしくみ、効率性など
- Physical Evidence (フィジカルエビデンス):店舗・施設の雰囲気、備品など
無形商材のサービスは、有形商材とは大きく異なる特性があるため、人、プロセス、フィジカルエビデンスが重要な要素になります。
マーケティング・ミックスは、マーケティング戦略の基本。市場環境や商品・サービスの特性に合わせて4Pか7Pを使い分け、要素間のバランスを検討することが大切です。顧客ニーズを起点に、経営資源を適切に組み合わせることが、マーケティング成功の鍵となります。
8. SWOT分析・クロスSWOT分析
SWOT分析は、自社の外部環境と内部環境を分析するためのフレームワークです。Strengths(強み)、Weaknesses(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の4つの要素の頭文字を取ってネーミングされました。
この4つの観点から、強みを生かし弱みを克服する方策を立て、機会を捉え脅威に対処するための戦略を描くことができます。
- Strengths(強み):自社が保有する、競争力のある資源や能力
- Weaknesses(弱み):自社が改善すべき点や、競争力のない領域
- Opportunities(機会):外部環境から生まれるビジネスチャンス
- Threats(脅威):競合他社の動きや環境の変化など、自社にリスクとなる要因
一方、クロスSWOT分析は、SWOT分析でリストアップした項目を組み合わせて、より具体的な戦略を導き出すフレームワークです。
- SO戦略(Strength × Opportunities):機会を活用して強みを最大化する戦略
- ST戦略(Strength × Threats):脅威を排除するため強みを活用する戦略
- WO戦略(Weaknesses × Opportunities):機会を活用しつつ弱みを改善する戦略
- WT戦略(Weaknesses × Threats):脅威による影響を最小限に抑えつつ弱みを改善する戦略
このように、SWOT分析で明らかになった内部と外部の状況を組み合わせることで、より実効性の高い戦略が描けます。事業戦略の立案や製品開発、マーケティングなどさまざまな局面で活用できる分析手法です。
9. PEST分析
PEST分析は、企業や業界を取り巻く外部環境、つまりマクロ環境を分析するためのフレームワークです。新しく事業をつくる際、世の中の大きな動きを調べるため、また新しいニーズや課題の発生を予測するために用いられます。
自社の事業にとって影響が大きい領域について、数年先までの動きを予測しておけば、先を見据えた対策を立てられるでしょう。
PESTとは、以下の4つの要素の頭文字を取ったものです。
- 政治(Politics):政府の安定性、政策、法改正、規制、税制、国際情勢など
- 経済(Economy):景気動向、インフレ率、金利、経済成長率、失業率、個人消費の動向、産業構造など
- 社会(Society):人口動態、世帯数・世帯構成、文化、世論・価値観、教育、治安など
- 技術(Technology):新技術・イノベーション、研究開発活動、特許など
近年では、具体的な法律に関する「法律(Legal)」と、気候変動などの「環境(Environment)」を加え、PESTLE分析と呼ばれることもあります。
顧客理解を深めるフレームワーク
ここからは、顧客理解を深めるためのフレームワークを3つ紹介します。顧客について深く理解することで、新規事業の成功確率を高められるでしょう。
10. ペルソナ
ペルソナとは、自社が提供する商品・サービスを活用してくれるであろう、重要で象徴的なユーザー像のことです。
ペルソナを作ることで対象顧客への解像度が高まり、効果的な訴求ができるようになります。また、新規事業やマーケティングなどビジネスに関わるメンバーの中で共通言語が生まれ、意思決定のスピードも上がるでしょう。
※関連記事:BtoBマーケで役立つペルソナ作成3つのステップ【テンプレート付き】
ペルソナを作る際、役職、市場規模、会社名だけでなく、行動パターンや課題なども詳細に設定します。これにより、商品・サービスを必要とするであろう「実在する顧客」に非常に近い具体的なイメージを持つことができます。
さまざまな場面でペルソナを活用することで、顧客の潜在的なニーズを容易に汲み取れ、顧客目線に立った商品・サービスの開発が可能になります。ペルソナは、顧客理解を深め、顧客体験の向上を図る有効な手法といえるでしょう。
11. カスタマージャーニー
カスタマージャーニーとは、顧客が商品・サービスを認知し、購入・利用するまでの一連のプロセスをマッピングしたものです。これにより、顧客と接点を持つすべての場面を把握できるようになり、顧客体験の最適化に役立てられます。
※関連記事:カスタマージャーニーの意味って?基本の概念と構成【初心者向け解説】
カスタマージャーニーのマッピングでは、購入までの一連のプロセスを大まかなフェーズに分けます。たとえば、「認知」「理解」「検討」「商談」という具合です。次に各フェーズにおいて、顧客がどのような行動をとり、自社とどのようなタッチポイントがあるかを洗い出します。
カスタマージャーニーを作成する際は、顧客の声が重要な情報源となります。顧客インタビューやアンケートなどから、実際の顧客行動や体験を把握しましょう。
作成後は、四半期や半期といった節目にカスタマージャーニーを振り返り、リードの獲得状況や受注率を参考にして改善・追記を繰り返してください。
12. バリュープロポジション
バリュープロポジションとは、顧客にとっての商品・サービスの価値を明確に示すコンセプトのこと。才流では、自社が提供できて、競合他社が提供できない、顧客が求める独自の価値を表したものと定義しています。
バリュープロポジションでは、顧客が求める本質的なニーズや課題を捉え、それに対し自社がどのような価値を提供するのかを表現します。
※関連記事:バリュープロポジションとは?作り方と事例~テンプレート付きで解説~
バリュープロポジションは、正しい順番で構築することが重要です。
- 顧客が望んでいる価値
- 自社が提供できる価値
- 競合他社が提供できない価値
まず最初に、対象顧客やペルソナを特定し、その人々が抱える課題や悩み、期待するベネフィットを明らかにします。顧客インタビュー、観察、データ分析、アンケートなどを実施して、顧客が望む価値を見出しましょう。
次に、自社の商品・サービスが、それらの課題をどのように解決し、ベネフィットを提供できるのかを具体化します。単にスペックや機能を列挙するのではなく、顧客がその価値を実感できるよう伝えることが重要です。
最後に競合分析を行い、他社にはない自社の差別化された価値を明らかにしましょう。
バリュープロポジションが明確なほど、マーケティングメッセージがつくりやすく、営業が説明しやすいです。また、バリュープロポジションが簡潔に表現されていれば、顧客は商品・サービスの魅力を容易に理解できるため、結果として顧客に選ばれやすくなります。
企業の使命として、顧客にとって本当に価値があるものは何かを絶えず問い直し、バリューを最大化しましょう。
ビジネスモデル・事業戦略をまとめるフレームワーク
ビジネスモデルや事業戦略を整理する際に有効なフレームワークを5つ紹介します。さまざまなフレームワークを使用することで、事業を俯瞰でき、新たな洞察を得られるでしょう。
13. STP分析|セグメンテーション・ターゲティング
STP分析は、マーケティングの基本プロセスであるセグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の3つから構成される戦略策定アプローチです。新規事業の顧客セグメントの整理や、どのセグメントをどのようなポジショニングの中で狙っていくかを整理するのに役立ちます。
※関連記事:セグメンテーションとは? BtoB事業で「売れるセグメント」を発見する方法
セグメンテーションでは、市場を細分化し、それぞれの特性を明らかにします。人口統計、地理的条件、行動パターン、ライフスタイルなどの基準で市場を複数のセグメントに分けることで、ターゲットとする顧客層がはっきりと見えてきます。
ターゲティングでは、セグメント化された市場のうち、自社が狙うべき最適な顧客セグメントを選定します。収益性、成長性、参入障壁などさまざまな観点から評価を行い、経営資源を最も有効に活用できるセグメントを特定します。
STPを順を追って実行することで活動の方向性と対象が明確になり、限られた経営資源を最大限に活用できます。顧客ニーズにマッチした施策が打てるようになり、高い収益性と成長が期待できるでしょう。
14. STP分析|ポジショニングマップ
ポジショニングは、ターゲット顧客に対して自社の商品やブランドをどのようにポジショニングするかを決定する、STP分析の中でも重要なプロセスです。競合との差別化ポイントを明確化し、顧客にとって魅力的で分かりやすいブランドイメージを構築します。
縦軸と横軸に主要な2つの評価基準を設定し、自社製品と競合製品の位置づけを視覚化した分析図がポジショニングマップです。顧客にとって重要な2つの価値基準を軸に選ぶことで、競合製品との違いや自社の立ち位置が一目でわかるようになります。
※関連記事:ポジショニングマップの作り方~肝となる軸の決め方をテンプレート付きで解説~
ポジショニングマップを活用することで、自社製品の現在の位置づけを確認できるだけでなく、狙うべきターゲット層に合わせた新製品の理想的なポジショニングを検討することができます。競合が手薄な領域に自社製品をポジショニングする、あるいはまだ開拓されていないブルーオーシャンを見つけるなど、さまざまな戦略立案に役立ちます。
STPマーケティング戦略の中でも、ポジショニングは顧客に自社をいかに認識してもらうかという最終段階。ポジショニングマップを用いて、的確なブランディング戦略を構築しましょう。
15. リーンキャンバス
リーンキャンバスは、起業家やスタートアップ企業が新規事業のビジネスモデルを簡潔に設計するためのフレームワーク。新規事業が顧客に対して、どのように価値提供できるかを網羅的に整理できます。
ビジネスモデルを視覚的に表現した「ビジネスモデルキャンバス」というフレームワークがあります。事業の拡大や付加価値を検討する際に活用されますが、これを新規事業向けに作り変えたものがリーンキャンバスです。
リーンキャンバスは、事業目標を達成するために作成するビジネスプランよりも簡素化されているのがポイント。ビジネスモデルの骨子を簡単に可視化でき、頻繁に見直しやブラッシュアップができるメリットがあります。
リーンキャンバスは9つの構成要素から成り立っています。
※関連記事:リーンキャンバスとは? 実践的な書き方と考え方【テンプレート付き】
- 顧客セグメント:顧客は誰か
- (補助の項目)アーリーアダプター:最初の顧客は誰か
- 課題:顧客の課題は何か
- (補助の項目)代替品:課題を解決する既存サービスはあるか
- 独自の価値提案:課題を解決する価値はあるか
- (補助の項目)ハイレベルコンセプト:コンセプトを一言で説明するとどのような表現になるか
- 解決策:どのように顧客の課題を解決するか
- チャネル:価値をどのように顧客へ届けるか
- 収益の流れ:どのようなタイミングでいくらかの収益を獲得するか
- 主要指標:成功を測る指標は何か
- コスト構造:価値を提供するのにどのくらいのコストがかかるか
- 圧倒的な優位性:他社が真似できない強みは何か
これらの要素を1枚のキャンバスに書き出すことで、ビジネスモデル全体の整合性や論理性を確認できます。とくにリソース・コスト・収入のバランスを見極めるのに有効です。
リーンキャンバスは、試行錯誤を重ねながらビジネスモデルを磨き上げるリーンスタートアップ手法に適した設計テンプレートです。アイデアの企画段階から本格的な事業化に至るまで、広く活用できるでしょう。
16. 9セルフレームワーク
9セルフレームワークは、起業家や経営者が自身のビジネスの強み・弱み、機会・脅威を分析し、適切な事業戦略を立案するためのフレームワークです。
9セルフレームワークは、シンプルな構造ながら、事業の本質を捉えやすいため、幅広い分野の経営者に活用されています。戦略策定の土台として有用な分析ツールといえるでしょう。
このフレームワークは、3×3の9つのセルから構成されています。縦軸には「顧客価値」「利益」「プロセス」の3つの観点が、横軸には「WHO」「WHAT」「HOW」の3つの観点が設定されています。
各セルには、対応する観点から自社のビジネスを分析した内容を記入していきます。たとえば、「顧客価値」×「WHO」のセルには対象顧客、「利益」×「WHAT」のセルには料金の項目など、具体的な内容を記載します。すべてのセルを記入し終えると、ビジネスモデルの全体像が可視化され、戦略立案を効率化できます。
製品設計を企画するフレームワーク
製品開発プロセスを体系化し、効率的かつ効果的な製品設計を支援する2つのフレームワークを紹介します。
17. サービスブループリント
サービスブループリントとは、サービス業におけるプロセスを視覚化し、サービス提供時の顧客接点や裏側の業務フローを一目で把握できるようにしたマッピングツールです。
サービスブループリントは、新規サービス開発時の設計や、既存サービスの改善、従業員教育などに活用されています。顧客にとって理想的なサービス体験を提供するため、どのようなプロセスが必要かをビジュアルに検討できる手法です。
サービスブループリントは4つの要素で構成されます。以下の図は、オンラインショッピング業界のサービスブループリントを描いたものです。
- 顧客の行動:顧客が実際にとる行動
- フロントステージスタッフ:サービス提供時に顧客が体験する視界や物理的な環境
- バックステージスタッフ:顧客に見えない業務やサービスの動き
- サポートプロセス:サービスを支えるツールやシステム
これら4つの要素を時系列でマッピングすることで、サービスの全体像と詳細なプロセスフローを一枚の図で表現できます。顧客と企業の双方の視点から業務を描くため、課題やボトルネックを発見しやすいのがメリットです。
サービス業は無形の価値を提供するため、マーケティングや品質管理が難しい側面があります。サービスブループリントを活用し、サービス向上に役立てましょう。
18. POD・POP・POF
POD (Point of Difference)、POP (Point of Parity)、POF (Point of Failure)は、競合他社との差別化を分析するためのフレームワークです。
POP(Point of Parity)
業界内の競合他社と遜色のない、同水準の商品特性や価値提供力のこと。つまり最低条件のことを指します。顧客から見てPOPに満たないものは、選択肢から外されてしまうもの。品質、価格水準、機能などに一定の業界標準があれば、そこに合わせる必要があります。
POD(Point of Difference)
自社の商品・サービスの、競合他社と違う独自の差別化ポイント・優位性のことで、競争優位を築くうえで極めて重要な要素です。たとえば、技術力の高さ、ブランド力、希少性、価格設定など、顧客が自社を選ぶ決め手となる特徴がPODにあたります。マーケティングではこの差別化ポイントを顧客に強くアピールすることが不可欠です。
POF(Point of Failure)
自社の商品・サービスが致命的な欠陥や重大な不具合を抱えている点のこと。POFは顧客離れの大きな原因となり、失敗に直結するリスクファクターになります。たとえば、商品・サービスの安全性・信頼性の欠如、顧客サポートの不備、倫理性の問題など、修復が困難な重大欠陥がこれにあたるでしょう。POFを事前に検知し、対策を打つことが求められます。
このように3つの観点を意識し、POPを満たし、PODを強化し、POFへの対処を行うことが、競争力のある事業運営には重要となります。
事業企画をまとめるフレームワーク
事業企画をまとめるためのフレームワークは、ビジネスのアイデアを整理し、実行可能な計画に落とし込むのに有効です。
19. エレベーターピッチ
エレベーターピッチとは、限られた短い時間で自社やプロダクトの核心を簡潔に伝える手法のことです。その名のとおり、エレベーターに乗り合わせた15秒から30秒程度の時間で、アイデアや事業概要をわかりやすく説明することが想定されています。
この手法は2000年ごろ、アメリカのシリコンバレーで生まれました。当時、起業家がわずかな時間で投資家に自社のプロダクトをアピールする機会が必要とされ、エレベーターピッチが編み出されたといわれています。
エレベーターピッチは、短時間で要点をコンパクトに伝える重要なスキルです。現在では、投資家への事業プレゼンだけでなく、新規事業の社内説明会や商談時の自社紹介などさまざまな場面で活用されています。自社の強みや価値を明確に整理できるため、社内の方向性を合わせるのにも有効です。
※関連記事:エレベーターピッチの作り方を事例で解説【テンプレート付き】
一般的なエレベーターピッチの構成は、以下の9つです。
- 潜在的なニーズ、抱えている課題
- ターゲットユーザー
- 製品名
- 製品のカテゴリ
- 重要な利点、対価に見合う説得力のある理由
- 最も保守的な代替手段
- 差別化の決定的な特徴
- 実績や強み+社名
- 自社が取り組む理由、圧倒的な優位性
このように、限られた時間でインパクトを残す力強いプレゼンテーション手法として、エレベーターピッチは事業の場面で幅広く活用されるようになってきています。簡潔かつ明快に要点を伝えるスキルは、誰もが身につけるべき重要な能力といえるでしょう。
事業の企画・計画に役立つテンプレート
最後に、新規事業の企画や計画を立てる際に活用できるテンプレートを2つ紹介します。
20. 社内会議プレゼン資料
新規事業を提案する際の社内プロセスは大きく2つあります。1つは新規事業提案制度を利用する方法、もう1つは部門内で相談を重ね、役員会で最終承認を得る方法です。いずれの場合も、しっかりとした準備が必要不可欠です。
新規事業を進めるためには、社内会議でプレゼンテーションを突破しなければなりません。そこで、社内会議プレゼン資料の準備が重要となります。
プレゼン資料の準備では、以下の15のポイントに留意する必要があります。
- 新規事業の背景と経緯
- 解決すべき課題と市場性
- ターゲット顧客と市場規模
- 新規事業の具体的な内容
- 顧客の生の声(ペインポイント)
- 競合環境と自社の差別化ポイント
- 事業スケジュールと工程
- 収益計画と期待収益
- 必要な投資やコストの見込み
- リスクシナリオと事業撤退の判断基準
- プロジェクト体制と人員配置
- 具体的な実行計画
- 関連法規への対応
- 社内外の関係者のコメント
- 全社戦略との整合性
これらをきちんと盛り込むことで、新規事業の妥当性や実現可能性をしっかりと説明できます。さらに、よくある質問にも備えておく必要があります。
社内の関係者を納得させ、承認を得るためには、多角的な準備と丁寧な資料作りが不可欠となります。こうした充実したプレゼンテーションができれば、新規事業の社内承認に大きく前進できるでしょう。
社内会議プレゼンテーションテンプレートは、以下の記事からダウンロードできます。
※関連記事:新規事業の社内会議プレゼンテーションテンプレート|突破のための15のポイント
21. 新規事業計画書
新規事業計画書とは、新規事業の具体的な内容や進め方を文書化し、経営層や関係者に理解してもらうために作成する計画書のことです。
新規事業を適切に推進するためには、事前に計画を立てることが重要です。新規事業計画書は、そのための基本的な指針となります。
新規事業計画書には、主に以下の項目が含まれます。
- 事業の概要と目的
- ビジネスモデルと収益構造
- 販売計画やマーケティング戦略
- 必要な投資額と財務計画
- 事業のロードマップとスケジュール
- リスク分析と撤退基準
- 実行体制
これらの項目を詳細に記載することで、新規事業の実現可能性や採算性、リスクなどを多角的に検討でき、関係者の理解と合意を得やすくなるでしょう。
また、作成過程でプロジェクトメンバー内での認識の統一や議論が行われるため、事業を着実に進めるための土台ともなります。必要に応じて外部の専門家に確認を求めるなど、多様な視点からのブラッシュアップが欠かせません。
このように新規事業計画書は、新規事業の実行に向けた準備として欠かせない文書です。綿密な計画を立てることで、事業の成功確率を高めることができるでしょう。
新規事業計画書テンプレートは、以下の記事からダウンロードできます。
※関連記事:新規事業計画書の作り方とプレゼン時の留意点【パワーポイントテンプレート付】
さいごに
本記事では、新規事業のアイデア創出から事業計画立案までに活用できる21のフレームワークを紹介しました。これらのフレームワークをうまく活用すれば、新規事業の成功確率を高められる可能性があります。
新規事業に役立つ21のフレームワーク・テンプレート集(PowerPoint形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
一方、フレームワークの活用にはある程度の経験や知識が求められます。最速で新規事業を前進させたい方は、新規事業に精通した専門家のアドバイスを受けることも検討してみましょう。
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※関連記事:新規事業の「狙い目」を見つけるためのフレームワークとその使い方