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才流のコンテンツマーケティングの裏側【5年間のプロセス全公開】

BtoBマーケティング
株式会社才流 代表取締役社長
栗原 康太

「才流のコンテンツ発信について、ようやく語れるようになりました」

という代表栗原さんの一言をきっかけに生まれた当取材。

「BtoBマーケティングといえば才流」という想起を獲得するまで、さらには “メソッドカンパニー” として平日毎日コンテンツを発信するに至るまで、約5年かけて才流社が取り組んできたことを、じっくりお聞きしました。

コンテンツマーケティングに携わるみなさま、ぜひご覧ください。

※連載『コンテンツマーケティング探訪』第6弾としてお届けします(取材執筆 まこりーぬ

phase1. 流通経路の確保

―― 才流さんは2018年4月にオウンドメディアを立ち上げ、コンテンツ発信をスタートされていますね。初期に注力したことをぜひ教えてください。

2018年立ち上げ当時のオウンドメディア「DOER NOTE」

栗原:私は前職でオウンドメディアの編集長をやっていたこともあり、良質なコンテンツを作る自信はありました。一方で、課題に感じたのは「流通経路」です。新しい会社のドメインでSEOに取り組むのは時間がかかるなと思い、当時2つの工夫をおこなうことにしました。

1つは、Twitterのフォロワーが1万人近くいた澤山モッツァレラさん(@diceK_sawayama)に編集者として協力してもらったこと。もう1つは、ビジネス界で有名な方10名に寄稿してもらったことです。インフルエンサーを巻き込み、その人たちのSNSを通じてコンテンツを届けていきました。この作戦は功を奏し、比較的早い段階でオウンドメディアを認知してもらうことに成功しています。

「コンテンツをどう届けるか」って、「コンテンツの中身をどうするか」に比べてないがしろにされがちじゃないですか。しかしこうした流通経路の設計は、肝中の肝だと思います。無人島でお祭りをやっても仕方ないですからね。

―― 私は2018年の終わりごろ、栗原さんのTwitter(@kotakurihara)をきっかけに才流社を認知しました。ご自身のTwitterはどのタイミングで注力されたのでしょうか?

栗原:「他人を頼るばかりではなく自分自身も流通経路にならねば」という思いから、オウンドメディアと同時期にTwitterにも取り組みはじめました。

当時、SEOやセミナー、Facebookといった主要チャネルは競合に占有されていて、後発企業の参入はなかなか厳しい状況でした。しかしラッキーなことに、TwitterにはまだBtoBマーケティングの情報発信をしている人が誰もいなかったんですよ。「これはブルーオーシャンだな」と感じ、注力することにしました。

phase2. 発信テーマの絞り込み

栗原:Twitterは「BtoBマーケティングのノウハウをつぶやくbotになろう」とテーマを絞った瞬間、フォロワーが5,000人ほどまで一気に伸びました。

もともとは、「マーケティングだけでなく営業や組織作りまで支援しなければ、本質的にクライアントへ貢献できない」という考えから、あらゆるテーマを発信していたんですよ。しかし残念ながらそれだと数字は伸びない。「 “このメディアでは◯◯の情報が得られる” とユーザーに認識してもらわないとダメだ」という知人のメディア編集長の教えのとおりでした。

こうした自身の反省を踏まえると、「どのテーマで情報発信するのか」は、立ち上げ初期から明確にしておいたほうがいいのではないかと思います。

―― 手広く発信している状態からテーマを狭めるには勇気がいりますが、やはり領域を絞ることは重要なんですね。

phase3. 発信媒体の拡張

―― オウンドメディアとTwitterの次は、どんなことに取り組んだのでしょうか。

栗原:2019年以降は発信媒体を増やし、さらにリーチを広げにいきました。たとえばMarkeZineさんに企画を持ち込んで連載させてもらったり、共催セミナーやカンファレンスを積極的に開いたり、YouTubeチャンネルを始めたり、書籍を出したり。やはりチャネルごとにリーチできる属性が違うんですよね。

栗原:特に書籍の効果は大きく、お問い合わせが純増しました。執筆には毎回苦しんでいますが、やってよかったと思いますね。一方で、YouTubeチャンネルの運用は途中で頓挫してしまい、反省しました。今年は腰を据えて再チャレンジする予定です。

―― 書籍の有用性は他の経営者からもよく耳にします。ふだんTwitterやWebメディアに触れていない層にもリーチできるチャネルと言えそうですね。

phase4. 組織化

栗原:ここまでは私とコンサルメンバーが業務の合間にコンテンツを作り発信してきましたが、2022年6月にようやく「コンテンツ部門(自社のマーケティングチーム)」を立ち上げることができました。

2023年1月現在、コンテンツ担当は約10名在籍しています。いまは平日毎日2〜3個のコンテンツが発信されていて、私からの告知も追いつかなくなってきました。いよいよ “メソッドカンパニー” に近づいてきたな、と感じますね。

今後も発信量を増やしていくのはもちろんのこと、音声や動画、漫画などテキスト以外の形式でもコンテンツを発信したり、大量にある自社コンテンツを整理してユーザーが取り出しやすくしたりと、引き続き新たな取り組みにチャレンジしたいと考えています。

―― コンテンツ担当がすでに10名もいらっしゃるとは驚きました。現在はどのようなフローでコンテンツを制作しているのでしょうか?

栗原:まず、企画は「◯◯について知りたい」というお客様の声が起点になっています。そこから「こういうコンテンツを作ろう」とコンサルメンバーが起案し、Slack上や定例会議の場で「そもそもニーズはあるのか」「もっとこんな要素を追加したらいいんじゃないか」と企画をブラッシュアップしていきます。

Slack上で企画をブラッシュアップ

栗原:このように、1つの企画に対して十数名がかりでコメントし合います。おそらくこれほど企画を叩いているオウンドメディアは他にはないのではないでしょうか。

ここまで徹底して企画を詰めるようになったのは、実は昨年からなんです。それまではコンサルが自分1人で企画執筆した後に、「そもそもこのテーマはニーズがない」と編集時にボツになってしまうことがたびたびありました。そこで現在のフローに変えたところ、効率もクオリティもグッと上がりましたね。改善のインパクトが非常に大きかったポイントです。

―― コンサルのみなさんからのコメント量に圧倒されました。この熱量は、いったいどこから湧いてきているのでしょうか?

栗原:大前提、 “メソッドカンパニー” として「コンテンツは会社のコアである」という認識をみなさん持ってくれていると感じます。でもなにより一番は、「コンテンツがあると自分自身が助かるから」でしょうね。

たとえば、中小企業にしか勤めたことがないコンサルが大手企業の組織変革プロジェクトでどう立ち回るといいかなんて分からないじゃないですか。どんなに優秀であっても全領域に詳しいコンサルなんていません。プロジェクト中に自社のコンテンツに助けられる機会が多いからこそ、コンテンツ作成に対するモチベーションが高いのだと思います。

―― なるほど。非常に納得しました。

クオリティ標準化の工夫

―― 組織化するなかで、大変だったのはどんなことですか?

栗原:どうしたら再現性高くいいコンテンツを生み出せるのか、業務プロセスの整備に苦労しましたね。

失敗例を挙げると、ノウハウ系の記事執筆を外部ライターさんに依頼すると全然うまくいきませんでした。クオリティを維持するには、やはりドメイン知識が必須なんですよね。でも法人ビジネスに詳しいライターさんなんてなかなかいない。「これからずっとBtoBマーケのコンテンツを作ります」という人であれば知識をインプットしてくれるかもしれませんが、そんな人もいない。そのため現在はコンサルかインハウスエディターが執筆するようにしています。

あとは、インハウスエディターは1事業に専念させるのか、事業を横断させるのかにも迷いましたね。いざ採用してみると「SEOに詳しくて、いろんなドメインを扱ったことがある人」はいても、「営業というドメインに詳しくて、SEOも取材もYouTubeもできる人」はまったく市場にいないと分かりました。そのため現在エディターには事業横断で携わってもらうようにしています。インハウスであれば、ドメイン知識は後から身につければいいですからね。

―― ちなみに、エディター採用は順調に進んだのでしょうか?

栗原:弊社の場合、コンテンツ発信のおかげで面接者の9割が才流を事前に認知してくれています。それに「コンテンツ発信に積極的なカルチャー」「高い給与水準」「フルリモートワーク」に魅力を感じてくれる方が多く、ありがたいことに「才流に入りたいので採用が再開するまで転職を待ちます」といってくださる方も複数名いらっしゃいます。

選考フローには編集の実技試験とリファレンスチェックも取り入れているので、現状大きなミスマッチも起きていませんね。

―― 採用窓口に行列ができているとは、本当にすごいですね! 強い組織だからこそ、採用に強いのだな、と感じました。

コンテンツ発信で成果を出すポイント

―― 最後に、栗原さんが考える「コンテンツ発信で成果を出すためのポイント」をぜひ教えてください。

栗原:まずは明確なアンチパターンを知り、それらを回避することから始めるのがおすすめです。新しいドメインでメディアを立ち上げるとか、クラウドソーシングを活用して低品質な記事を大量生産するとか、遠いテーマから無理やりコンバージョンさせようとするとか、逆に本文にCTAをまったく置かないとか。コンテンツ発信にはこうしたアンチパターンがいくつもあるので、事例を探したり、周りの人に聞いたりしてみてほしいですね。

あとはやはり、「2〜3年はコンテンツ発信を続ける」と経営者がコミットすることではないでしょうか。どの企業もいきなり成果を出しているわけではなく、試行錯誤しながら粘り強く発信を続けるなかで成功しています。それにグッドパッチの土屋さんもおっしゃっていたとおり、ほとんどの会社は2〜3年で情報発信をやめてしまいます。3〜4年がんばったら周りがみんないなくなり、残存者利益を得られる可能性も高いと思いますよ。

―― 世の失敗事例を回避しながら、発信し続けるに尽きる! ですね。栗原さん、本日は「メソッドカンパニーに至るまでの集大成」とも言えるお話をありがとうございました!

まとめ

才流のコンテンツマーケティングのプロセス

  • 1. 流通経路の確保
  • 2. 発信テーマの絞り込み
  • 3. 発信媒体の拡張
  • 4. 組織化

コンテンツ発信で成果を出すポイント

  • アンチパターンを調査して回避する
  • 「2〜3年続けること」に経営者がコミットする

「栗原さんという圧倒的なコンテンツメーカーがいるから、才流はコンテンツ発信に成功しているのだろう

正直なところ、私はどこかそう思ってしまっている節がありました。

しかしながら、今回ご紹介した取り組みは「栗原さんじゃなければ成し遂げられなかったもの」ではなく、才流さんらしい、「再現性の高いもの」ばかりだったのではないでしょうか。

すぐに自社へ取り入れられるノウハウとして、みなさまの行動を後押しできていれば幸いです。

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