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ユニークで緻密な、ホットリンクのコンテンツ戦略

Twitterで情報収集しているマーケターなら「ホットリンク」の名前を知らない人はほぼいないのではないか?

……そう思わせるほど、ブログや書籍、イベントにメルマガとコンテンツを継続的に生み出し続けているSNSマーケティング支援会社・ホットリンク。IR情報によると、SNSマーケティング支援事業は2019年から3倍以上も売上を伸ばしています。

そこで今回はマーケティング本部長の室谷良平さん@rmuroya)にお時間をいただき、同社のコンテンツ発信の裏側を取材しました。表には見えてこない戦略や体制面にまで踏み込み、コンテンツ発信の成功要因を探ります。

※当記事は才流代表の栗原がコンテンツ発信に成功している会社へ取材する連載第一弾としてお届けします。

室谷 良平 氏 
​​​​​​​株式会社ホットリンク マーケティング本部長

前職の人材ベンチャーの株式会社ウェルクスでは、全サービスのマーケティング全般の戦略立案やグロース施策の実行のほか、マネジメントも務める。2019年にソーシャルメディアマーケティング支援会社のホットリンクに入社。B2Bマーケティング、PR、コーポレートブランディング、インサイドセールス部門を統括。企業のソーシャルメディアマーケティングを支援すべく、SNS活用のメソッド開発やコンサルティングにも従事。

著書「1億人のSNSマーケティング バズを生み出す最強メソッド」​​​​​​​

目次[非表示]

  1. あのコンテンツの裏側にある狙いとは
    1. 対談記事「ザ・プロフェッショナル」の裏側
    2. 飲みながら参加するイベントの裏側
  2. コンテンツ投資はブランド連想のために
    1. コンテンツの力で新事業を認知させよ
    2. 企画は事業戦略から逆算して落とし込む
  3. リターンを最大化させる意図的な兼務体制
    1. コーポレートコミュニケーションを担う3人の編集長
  4. 兼務だからこそ一石n鳥のコンテンツを作れる
  5. 手段ではなく、目的にしがみつけ
    1. 「SNSマーケティングならホットリンク」が脳内にこびりつくか
  6. まとめ

あのコンテンツの裏側にある狙いとは

対談記事「ザ・プロフェッショナル」の裏側

―― CMOいいたかさんとの対談「ザ・プロフェッショナル」、先日は私も取材いただきありがとうございました。こちらの連載はなぜ取り組んでいるのでしょうか。

連載一覧

一つは、取材相手のネットワークを通じて、ホットリンクのことをまだ知らない人たちへ接点を広げるためです。1対Nの情報発信って、どれだけ一生懸命やっても興味を持ってくれない人たちが一定数存在します。「じゃあ誰からの発信だったら振り向いてくれるかな?」という観点で企画を立てています。

もう一つは、いくら我々が「UGCで売上を伸ばせます」と発信しても、無形のソリューションのよしあしなんてなかなか伝わりません。だからこそ各界のプロフェッショナルの口からSNS活用の重要性や「UGCで売上が伸びた」と語っていただくことで、「この人が言うなら本当だろうな」という信頼を構築したいからです

―― 認知だけでなく信頼もとりにいっていると。よく練られた対談ですね。

ありがとうございます。ちなみにこうした取材記事って、内容がおもしろくてもどの会社発のコンテンツなのか記憶に残らないことがほとんどですよね。そのため「ザ・プロフェッショナル」ではCMOいいたかが対談相手としてガッツリ入ることで「これはホットリンクのコンテンツである」と印象づけるよう心がけています。

飲みながら参加するイベントの裏側

―― ホットリンクさんといえば、飲みながら参加するイベントや小説風のメルマガも特徴的です。こうした “ゆるめ” のコンテンツはなぜ発信しているのでしょうか。

先ほどの対談記事にも通じますが、弊社は一方的にコンテンツを発信するだけでなく、人と人との対話を通じて関係性を築き、関係者集団にも影響を与えること、応援してくれる人たちを増やすことも重視しています。Appleのマーケティングをリードしたレジス・マッケンナ氏が提唱する「リレーションシップ・マーケティング」ですね。

飲みながら参加するイベント「ノミナー」はまさに関係構築の一環です。フランクに話せる場で社員との距離が縮まれば、弊社のコンテンツを積極的にシェアしてくれたり、「SNSマーケティングならホットリンクがおすすめだよ」と紹介してくれたりするようになるんです。もちろん楽しくお酒を飲みたいから企画したという側面もありますけどね(笑)。

あと、お堅いコンサル会社ってなかなか相談しづらいじゃないですか。しかしフレンドリーな関係性が築けていれば、「ちょっと相談してもいいですか」と比較検討が始まる商談前に真っ先に声をかけてもらいやすくなる。ホットリンクにはフレンドリーな社員が多いこともあり、リレーションシップ・マーケティングがマッチしていると感じています。

―― コンテンツ発信を通じて関係性を構築する、という発想は持っていませんでした。ぜひ参考にします。

コンテンツ投資はブランド連想のために

コンテンツの力で新事業を認知させよ

―― そもそもホットリンクさんはどうしてここまでコンテンツに投資しているのでしょうか?

お客様の情報探索行動がデジタルに移行しているためコンテンツ発信を重視している、というのは大前提としてあります。

加えて、ホットリンクは2018年下期に「BuzzSpreader powed by クチコミ@係長」というプロダクト事業から、SNSマーケティング支援事業に舵を切りました。出来立てほやほやのソリューションですし、世間からするとどんな課題やニーズを解消できる会社なのかまったく知られていないことが目下の経営課題だったんです。

そこで2019年1月にCMOのいいたかが入社してマーケティング本部をドンと構えて、続いて2月に私が入社し、ブランディングを強化することになりました。

―― なるほど。そこからどういう戦略で認知を広げていったのか、ぜひ教えてください。

無名のホットリンクが「デジタルマーケティング」「SNSマーケティング」でいきなり認知をとることは難しいので、当時からすでに実績があった「Twitterマーケティング」の一点突破でブランド連想をとることに専念しました。

最初にやったことはCMOいいたかによる大量のメディア露出と書籍の出版です。こうした広報活動からまずはホットリンクを知ってもらいました。さらに興味を持ってくれた方の受け皿としてコーポレートサイトをリニューアルし、オウンドメディアでの情報発信を充実させていきましたね。

―― 昔のコーポレートサイトからガラッと変わりましたよね。広報ブランディングに投資していることが伝わってきます。

企画は事業戦略から逆算して落とし込む

―― 「SNSマーケティングならホットリンク」という認知が広がっている現在においては、どのようにコンテンツを企画しているのでしょうか?

「事業戦略上こういうポジションをとりたい・強化したい」という観点から、四半期〜半年ごとに企画へ落とし込んでいます。たとえば直近だとTikTokマーケティング支援にも力を入れているので、「カスタマージャーニー上、このフェーズのこのタッチポイントのコンテンツが足りないから仕込もう」というふうに組み立てています。

―― やはり事業戦略からきちんと落とし込んでいるんですね。

そうですね。ただ「なんとなく効果ありそうだから一回やってみよう!」という思いつきの施策にもたびたびチャレンジしていますよ。もちろん既存施策で目標数値を達成した上で、ですが。

ずっと同じ施策をやっていると摩耗していくじゃないですか。成功事例を聞きつけた競合他社がどんどん同じ施策を打つのでリターンが減っていく。それに時代が変わればお客様の行動も当然変わるので、同じ訴求は刺さらなくなっていく。

だからこそ遊びゴコロをもって新しい施策を試し、取り入れていくことは大事だと感じます。失敗したらその原因から学べばいいだけですしね。

リターンを最大化させる意図的な兼務体制

コーポレートコミュニケーションを担う3人の編集長

―― ここからは体制や評価についてお聞きします。現在は何名でコンテンツを作っていますか?

現在コンテンツ制作に携わるメンバーは3名います。それぞれBtoBマーケティング編集長・採用広報編集長・インナーブランディング編集長と、コーポレートコミュニケーション全体を担っていますね。基本的に全員兼務で、顧客案件のヘルプに入ってもらうこともあります。

―― どなたも編集長クラスということは、育成に困ることはあまりないでしょうか。

みな編集や執筆の技能・技術知識に長けたメンバーではありますが、案件獲得や採用、社内活性化という目的達成のために必要なドメイン知識はまだまだ磨いてもらいたいと思っています。

届けたい相手がどんな人なのか、どう発信すると態度変容が起きて目的達成につなげられるか。このドメイン知識の有無でコンテンツの成果は大きく変わります。そのため商談に同席してもらったり、社内研修として課題図書を出したりと、育成にも取り組んでいます。

―― 相手の解像度を高めることはやはり大事ですよね。続いて、評価制度はどのように設計していますか?

評価制度って本当に難しいですよね。たとえばPVやリード数を指標とした場合、そもそも戦略がミスっているとメンバーがいくらがんばって記事を作っても結果が出ないんですよ。そのため弊社では「月◯本執筆する」といった行動指標で評価することが多いです。プラスアルファの貢献度はインセンティブで還元していくイメージですね。

今後は「あなたの役割にはこういうスキルや知識を求めています」というジョブディスクリプションを改めて言語化していこうと思っています。ここが明確になるとより評価に納得してもらいやすくなりますし、メンバー自身ももっと自由に暴れられるようになるはずです。

兼務だからこそ一石n鳥のコンテンツを作れる

―― 兼務だと評価がより一層難しくなりますが、専任体制にはしないのでしょうか?

将来的に組織の規模が大きくなれば専任になる可能性もありますが、当面は兼務でやっていくつもりです。というのも、兼任ならではのよさがあると思っているんですよ。私自身いまも顧客案件に携わっていますが、現場に入るとお客様が困っていることや情報リテラシーを把握できるので、コンテンツの精度を高められるんですよね。

それに “一石n鳥のコンテンツ” は兼務のほうが生まれやすいと感じます。たとえば「新しい教育制度を作りました」というニュースは、求職者にも社内にもポジティブなメッセージとして届けられますよね。さらに充実した教育制度の存在は、見込み顧客にとっては「高品質なサービス提供を受けられる」と期待もできる。こういった複眼的な見方がない場合、単なる社員向けの発信に留まるかもしれません。採用にもインナーブランディングにも案件獲得にも効くニュースだとわかっていれば、コンテンツの見せ方・ディストリビューションも変わり、投資対効果を最大化できるコンテンツの作り方になるはずです。

―― なるほど。兼務だからこそのよさがあるわけですね。

手段ではなく、目的にしがみつけ

「SNSマーケティングならホットリンク」が脳内にこびりつくか

―― 最後に、良質なコンテンツを出し続けるためのクオリティ管理方法について教えてください。

現在は私がすべてチェックするようにしています。「さすがホットリンクさんですね」と思われるような、信頼に値するクオリティであることにこだわり、一切妥協はしません。

「SNSマーケといえばホットリンク」と脳内にこびりついてはがれない、そんな強烈な印象を与えられるかどうかが重要です。Webから情報を引っ張ってきたようなSEOコンテンツにはOKを出しません。

「コンテンツマーケティング」といえば検索で上位表示させてリードを獲得するものである、いいコンテンツとは1〜10位のコンテンツを網羅的にまとめたものである……という昨今の風潮、そして結果として量産される同質化されたコンテンツは、圧倒的にズレていると感じます。SEOは顧客接点の一つに過ぎませんし、リード獲得も手段の一つでしかありません。

―― たしかに、リード数をひたすら追うとSEO狙いの同質化したコンテンツに行き着く気がします。

そうですよね。たとえば一括資料請求サイトであれば、事業構造上、顕在キーワードを狙ったコンテンツを大量に仕込んで、フォームをフッターに固定して、ポップアップバナーもバンバン表示させて……という仕様にならざるを得ないと思います。

しかし弊社は決してそういう事業ではありませんし、売上UPのためにはリード数よりも、ターゲット企業群のリードカバレッジ率を上げるほうが重要です。

みな一括資料請求サイトや一部SaaS企業の事例に引っ張られて「コンテンツ=リード獲得の手段である」という考えに安易に飛びついてしまっている気がします。当たり前のことではありますが、もっともっと目的にしがみついて、事業構造に合った手段を考え、どの手段がもっとも大きなリターンを得られるのかを吟味することが重要だと感じます。

―― おっしゃるとおりですね。室谷さん、本日は具体的な施策から核心を突くメッセージまでありがとうございました。弊社のコンテンツ発信もまだまだブラッシュアップしていきます!

まとめ

ホットリンク社がコンテンツ発信に成功している理由

  • 「Twitterマーケティングといえばホットリンク」というブランド連想をとる一点突破の戦略に対してコンテンツ発信を徹底した
  • 売上UPという目的をブラさず事業戦略をコンテンツ企画へ落とし込んでいる
  • 「SNSマーケティングならホットリンク」が脳内にこびりつくようなクオリティにこだわる
  • コンテンツ発信を通じて関係性を構築し相談しやすい空気を作っている、同時に応援してくれるファンも増やしている
  • 案件獲得にも採用にもインナーブランディングにも効く、一石n鳥の視点を持ってコンテンツ制作のリターンを最大化している

我々はいままで「売上を伸ばしたい」というお客様の課題解決に対し、コンテンツ発信をあまり提案してきませんでした。なぜなら再現性が低いと感じているからです。

今回室谷さんとお話しして、やはりコンテンツ発信をリード獲得の手段に限定すると売上につながりづらい側面があるように感じました。一方で、ブランディングや第一想起獲得のためにコンテンツ発信をやり切ればうまくいくのかもしれない、そんな成功の方向性を少し見いだせた気がします。

今後もコンテンツ発信成功企業に取材し、成功要因を探っていきます。どうぞご期待ください。

(写真:矢野 拓実、文:まこりーぬ、編集:森 駿介)