「オウンドメディアを立ち上げたものの、売上につながっているか正直わからない」
という企業様が多いなか、Web広告代理店・株式会社キーワードマーケティング社の「キーワードマーケティングのブログ」は、立ち上げ3年で明確に業績UPへ貢献していると聞きつけました。
同社のメディアが理想的な成長を遂げている秘訣はいったいどこにあるのでしょうか。取締役COOの瀧沢さん・編集長の大久保さんにこだわりの運営方針をうかがいました。
コンテンツ発信で売上を伸ばしたいと考える経営者・BtoBマーケターのみなさん、ぜひご覧ください。
※当記事は才流代表の栗原がコンテンツ発信に成功している会社へ取材する連載『コンテンツマーケティング探訪』の第三弾としてお届けします。
同じ連載の記事:
ユニークで緻密な、ホットリンクのコンテンツ戦略
「インバウンド」なマーケティングの体現者であれ。HubSpotブログの裏側
規格外にこだわり抜かれた「FORCAS」のBtoBイベントの裏側
瀧沢 貴浩 氏
株式会社キーワードマーケティング 取締役COO幼児教育支援事業のデジタルマーケティング責任者を務めた後、2016年キーワードマーケティングに入社。九州佐賀支社長に就任し、運用型広告のオペレーション業務を専門で担う部署の立ち上げを行う。東京本社に復帰後はマーケティング部を立ち上げ、マーケティングからセールスまでを一気通貫で行うための組織作りを進める。2019年4月取締役COOに就任。2022年4月からは広告事業部長も兼務している。
大久保 翔太 氏
株式会社キーワードマーケティング ブログ編集長前職では、旅行おでかけ情報メディアでライターの採用・育成、記事編集、SEOプロジェクトに従事。2019年9月に幼稚園から高校までの同級生のリファラルでキーワードマーケティングに入社。2020年4月よりオウンドメディア編集長となり、記事の企画から編集、執筆、公開作業、自社のSNS運用までをおこなう。趣味で始めたTikTokは約10万人のフォロワーを獲得し、グルメTikTokerとして活動中。
問い合わせの半分はブログが初期接点
―― キーワードマーケティングさんのブログ、立ち上げ3年で業績UPに直結していると伺いました。具体的にはどのような成果が出ているのでしょうか。
瀧沢:MAのデータによると、お問い合わせいただいた方の51.8%がブログを初期接点としていることがわかっています。
また、単純にお問い合わせ数が増えただけではなく業績も順調に伸びており、ブログの立ち上げ前後(2021年/2019年)で比較すると、商談単価は250%、営業利益は258%UPしました。
弊社はお問い合わせ獲得のためのリスティング広告等、他のWebマーケティング施策を積極的にはおこなっていないため、これらの業績UPはブログがもっとも貢献していると言えます。質の高いコンテンツ発信をおこなうことで、新たな顧客接点や信頼を獲得できていると感じますね。
―― リード数だけでなく、業績へダイレクトに影響しているなんてすばらしいですね。
理想的な成長を遂げた最大の成功要因とは
―― ずばり最大の成功要因はいったいなんでしょうか?
瀧沢:「公開本数」というシンプルな指標にフルコミットしたこと、ですね。一定のクオリティを満たした記事を年間100本ペースで公開しきったことが一番の成功要因だと感じます。
瀧沢:このグラフのとおり、弊社では記事の公開本数とお問い合わせ数が相関しています。「ブログがお問い合わせにつながってきているな」と特に実感できたのは、毎月8本前後公開するようになってからです。
―― たしかに数値が連動していますね。ブログを立ち上げて1年ほど経過したあとに公開本数を増やされてるようですが、ここにはどのような経緯があったのでしょうか。
瀧沢:立ち上げ当初はほぼ私一人で運営していて、「いい記事を公開すればSNSで口コミが生まれて、そのうちお問い合わせにもつながるだろう」と、毎月2〜3本のペースで記事を公開していました。4本目に公開した社長対談がSNSでうまく拡散されたこともあり、「こういう感じで続けていけばいいんだ」と思ってしまっていたんです。でもそのあとに続くヒット記事をなかなか公開できず、時間をかけたわりに成果が出ない暗黒期に陥っていました。
瀧沢:代表の滝井とは「3年計画でメディアをやろう」と決めていたので諦めるという選択肢もなく、「とにかく改善するしかない」と模索していました。そんなとき、才流のコンサルタントである澤井さんに「成果を出すには年間100本は必要です。ただし、質が低いなら更新する意味はないです」ときっぱりと言われてしまいました。
「いやいや、私一人で質の高い記事を年間100本なんて無理でしょう」と、正直なところアドバイスを聞き流してしまっていた時期もありました。しかし澤井さんがあまりに何度もそうおっしゃるので、滝井と議論を重ね、覚悟を決めて100本やり切ることに決めました。このタイミングで編集長を募集し、2019年9月に大久保が入社、体制を整えたのちに2020年4月から公開本数を月8本ペースに増やした、という流れです。
―― 弊社コンサルタントの提案が成功のきっかけになっていたとは、なによりです。
「わかりやすさ」は武器になる
―― 実際にお問い合わせにつながっているのはどんな記事なんでしょうか?
瀧沢:やはり多いのは「Facebook広告とは?」のような直接お問い合わせにつながりそうなテーマの記事です。しかしながら、「今さら聞けないクリック単価とは?」「GTMを使ったコンバージョン計測方法」といった初学者向けの記事が初期接点となり、そのあと数ヶ月経ってからお問い合わせいただくケースも多いのは意外でした。
また、実際にお問い合わせいただいたお客様へヒアリングしたところ、「発信している情報が “わかりやすかったので” キーワードマーケティングさんを選びました」というコメントをいただきました。
弊社ではコンテンツ作りの三大方針として「わかりにくいをわかりやすく」「役に立つ」「面白い」を掲げています。Web上に山ほどあるコンテンツなかで目を留めてもらえているのは、この「わかりやすさ」が効いているのではないかと思います。
―― 我々才流も、同じ理由でお問い合わせいただくことが多々あります。御社ではどのように「わかりやすさ」を担保しているのでしょうか。
大久保:これは僕から回答しますと、広告運用経験のない自分だからこその「素人目線」を大事に編集しています。僕自身が読んでわからなかったことは、きっと読者のみなさんもわからないだろうな、と。
そのためちょっとでも疑問が浮かべば「この文章ってこういう解釈で合っていますか?」と執筆者とコミュニケーションをとり、どんどん肉付けするようにしています。時間はかかりますが、こうした地道なブラッシュアップでわかりやすさが増しているのではないかと思いますね。
―― なるほど。広告運用者ではない大久保さんが編集者として介在することで、わかりやすさがより研ぎ澄まされているんですね。
リアルな顧客へ手紙を届けるように
―― 現在はどのような流れで記事を作っているのでしょうか?
瀧沢:以下のフローで、毎月8本前後記事を作っています。1本あたりの制作期間は1.5〜2ヶ月程度です。
瀧沢:記事への集客方法は検索エンジンを想定していますが、我々は “検索流入を増やすためにキーワードを選定して記事を作ること” はしません。あくまで「お客様から聞かれたこと」「お問い合わせ内容」「顧客インタビュー」など、お客様の一次情報からテーマを設定すると決めています。
また、もう一つ大事にしているのは「誰に向けて書くのか」です。新入社員に基礎的なノウハウを届けるのと、ベテラン勢に媒体のアップデート情報を届けるのとでは、説明の具合や言葉の使い方が変わってきますからね。まるで手紙を書くように、なるべく実在する人物を想定読者に設定しています。
―― SEOでメディアを伸ばされているなか、SEOに偏重しないよう意識されているのはなぜでしょうか。
大久保:僕らの理想とするメディア像が、SEOありきの機械的なものではなく、お客様起点で人のぬくもりが感じられるメディアであるから、という理由が大きいですね。
それに執筆に協力してもらう社員に対して、「検索上位をとって流入を増やしましょう」と押し付けるのは違うなと思ったんです。それよりも、「自分の知識を記事にしてみたら、お客様や後輩の役に立って感謝された」という体験が一つでも多く生まれたほうが嬉しいよなって。こうして現在の方針に変えていった感じですね。
瀧沢:社員を巻き込む上では、金銭的な報酬だけではなく感情的な報酬も重視しています。「ブログの感想・助かったことを共有する部屋」というチャットグループも用意しているのですが、お客様や入社希望者からの「◯◯さんの記事がわかりやすかった」という感想がたくさん投稿され非常に盛り上がっていますよ。
心を燃やし、業界No.1メディアを目指す
―― お二人のメディアに対する並々ならぬ意気込みやこだわりを、あらゆる部分に感じます。
大久保:「やるからにはこのメディアを業界No.1にする」という気持ちは、入社当初からいまもずっと変わりません。うちの会社には運用型広告の知識がこれだけあるんだから、ブログを通じて社外に発信し、第一想起や信頼を獲得して、売上に貢献したい。こうした思いが僕の心の中には沸々とあります。
なので瀧沢にアイデアをぶつけまくっては、「まあまあ落ち着いて、時間は限られているんだから一つひとつやろう」といつもなだめられています(笑)。
瀧沢:弊社はブログの立ち上げこそ後発でしたが、書籍や有料のニュースレターなど、運用型広告に関するコンテンツ発信は創業時からずっと続けてきました。そのため「コンテンツには価値があり、僕らにとってすごく大事なものだ」という認識は以前から持っています。
だからこそ私も編集長とともに、「業界No.1メディアにする」と心を燃やしながら、日々メディア運営に取り組んでいます。
―― 目指す場所、そして熱量の高さも大きな成功要因の一つだと感じました。貴重なお話をありがとうございました!
まとめ
キーワードマーケティング社が徹底する5つのルール
・「まずは記事100本」というシンプルな指標にフルコミット
・「わからないをわかりやすく」を追求したコンテンツ作り
・実際に質問されたことなどお客様の一次情報からテーマを設定
・なるべく実在する人物を想定読者に設定し手紙を書くように執筆
・「役に立った」などブログの感想は積極的に執筆者へ共有
これまで数多くのBtoBマーケティングを支援してきましたが、立ち上げ3年でここまでハッキリと事業貢献しているオウンドメディアに出会うことはなかなかありません。
100本作り切る、わかりやすさを追求するなど、それぞれの成功要因が達成されているのは、「このメディアを業界No.1にする」という高い志が根底にあるからこそだと感じました。
瀧沢さんと大久保さんがオウンドメディアへ賭ける気合いに非常に刺激を受けたので、私も自社のコンテンツ発信へおおいに励んでいこうと思います。
今後もコンテンツ発信成功企業に取材し、成功要因を探っていきます。どうぞお楽しみに。
同じ連載の記事:
「インバウンド」なマーケティングの体現者であれ。HubSpotブログの裏側
ユニークで緻密な、ホットリンクのコンテンツ戦略
(文:まこりーぬ)