「顧客へのメッセージの伝え方がわからない」「なぜ自社の製品が選ばれないのか把握できていない」…..BtoBマーケティングに取り組むうえで発生する課題。これらの多くは、前提となる顧客理解が抜け落ちていることが原因かもしれません。
企業の担当者は、製品・サービスを開発し、提供する側として伝えたいことがあるでしょう。しかし、企業が伝えたいことは、本当に顧客が欲しい情報なのでしょうか。
本記事では、顧客を理解し、顧客への解像度を高めるために才流が実践している12の手法を解説します。
これからBtoBマーケティングに取り組む方、顧客への訴求に悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
才流では「顧客理解の進め方がわからない」「顧客理解を深めたい」企業さまを支援しています。顧客理解からのマーケティング活動でお困り方はお気軽にご相談ください。⇒サービス紹介資料の無料ダウンロードはこちら
なお、本記事内では顧客のフェーズに応じて、次のように表記しています。
・既存顧客:すでに製品・サービスを購買している方
・見込み顧客:将来購買する可能性がある方
・顧客:すべての顧客(既存・見込み顧客を含む)
顧客理解とは何か?
顧客理解とは、字のごとく顧客について理解すること。その意味自体はシンプルではあるものの、顧客の属性だけでなく、ニーズや購買に至るまでの行動および考え方をきちんと把握しないと、本質的な顧客理解とはいえません。顧客のニーズも顕在ニーズと潜在ニーズだけでなく、より深層心理にある「インサイト」までを理解することが求められます。
顧客がどんな課題を抱え、製品・サービスを通じて何を得たいのか。どんな場面で、どういうきっかけで購買を決めているのか。顧客理解を深めるためには、顧客視点で考える必要があります。
なぜ顧客理解が重要なのか
製品・サービスを選定し購買するのは、当然ながら顧客です。しかし、企業側の都合や強い思い込みだけでリリースされ、売れなかったケースも少なくありません。顧客視点が抜け落ちた製品・サービスが売れる可能性は極めて低いのです。
顧客理解はマーケティング活動においては欠かせないプロセスですが、マーケティングだけでなく、営業、契約後のオンボーディングやサポートなど、どのフェーズにおいても、最良の判断を下すための材料となります。
また製品やサービスの認知度や利用率の拡大、競合製品・類似品が市場に出てくることで、時間とともに顧客視点も変化します。健康診断のように、定期的に自社が認識している顧客への理解をアップデートし続けることで、顧客が求める価値を提供し続けることができるでしょう。
顧客理解を深めるための12の手法
ここからは、顧客理解を深めるために才流で実際に行っている12の手法を紹介します。
①ユーザーインタビュー
顧客に直接話を聞くユーザーインタビューは、ZoomやGoogleMeetなど、ビデオ会議ツールの広がりで非常に行いやすくなりました。
才流の場合、ユーザーインタビューは「既存顧客」と「見込み顧客」をわけて実施するケースが多いです。
既存顧客と見込み顧客の両方にインタビューすることで、顧客の声を正しく把握できます。場合によっては、過去に利用していた顧客などにインタビューする場合もあります。
協力してもらうユーザーの収集方法は主に次のとおりです。
また、クラウドワークスなどのクラウドソーシングサイトや、SpreadyやYentaのようなビジネスSNSでも見つけられる場合もあります。
ユーザーインタビューの協力者探しに役立つ主なサービス
サービス名 | 費用 | マッチング方式 | 特長 |
15,000円~/件 | セルフ/手配 | 5,000円〜1万円/件 | セルフ | 大都市圏〜地方まで幅広い応募が見 込まれる。特に担当者レベルの応募 に強みがある。 |
10万円/ 件 | 手配 | SPEEDA/NewsPicksの豊富なネット ワークから、一線級の有識者を運営 側で選定。 | |
1万〜1.5 万円/件 | セルフ | 該当領域の知見がある方や、執筆経 験のあるライターからの応募が見込 める。 | |
1万〜1.5 万円/件 | セルフ | 該当領域の知見がある方や、執筆経 験のあるライターからの応募が見込 める。 | |
3万円/件 | セルフ | 別途依頼し放題の月額プランあり。 登録ユーザー側が候補者を探してく れることも特徴。 | |
5,000円/ 月 | セルフ | 有料プランにすることで、毎日20名 を上限に会いたい人の業種などでの 絞り込みが可能に。オファー時点で メッセージが送れないのでプロフィ ールの充実が重要。 | |
要確認 | 手配 | 担当が相談・課題のヒアリングの上、 プレ面談にてスクリーニングし候補 者を選定。 |
※費用は概算で、インタビュー対象により、相場が異なる場合があります。
また、ユーザーインタビューの種類は、1対1で行う「デプスインタビュー」と複数人を集めて行う「グループインタビュー」があります。
それぞれに特徴があるので、目的に合わせて使い分けましょう。インタビューの効果を高めるための解説記事や、インタビューシートのフォーマットも用意しましたので、併せて参考にしてください。
②ユーザーテスト
ユーザーインタビューがユーザーから意見を聞く目的であるのに対して、ユーザーテストは顧客の実際の行動を観察する目的で実施します。顧客に実際のWebサイトを見てもらい、操作している様子を撮影し、どのような行動をとるか観察します。
ビデオ会議で行う場合は、事前にWebサイトのURLを送り、ユーザー側に画面共有しながら実施します。なおユーザーインタビューとユーザーテストは、同じタイミングで行っても問題はありません。
■ユーザーテストの実施イメージ
ユーザーテストの実施にあたり、Webサイトの課題や顧客の行動について、仮説を設定しておくことが重要です。顧客はどこで手を止め、何の情報に迷い、なぜ意図しない行動をとるのか。行動の背景にある理由を確認しながら、インサイトを補足しましょう。
才流でユーザーテストを行う際に使用している手順書も公開しています。実施する際の参考にしてください。
③エキスパートインタビュー
業界や商材の知識がまだ十分でない場合は、ユーザーインタビューの前に、その道のエキスパートにインタビューすることをおすすめします。
例えば飲食店向けに「予約サービスの導入を促進したい」企業の場合、飲食店と取引のある食品の卸売業に従事する方や、飲食店のコンサルティングを行う方などに話を聞きます。飲食店のニーズや課題を聞くことで、業界に対する解像度が高まります。
また、エキスパートから業界や商材知識をインプットしてもらうことで、ユーザーインタビューで聞きたいことが明確になり、ユーザーインタビュー自体もスムーズに行うことができるでしょう。
またエキスパートは実際の顧客と接点を持っていることも多いです。
エキスパートの観点から、「顧客が何を考えているか」の見解を伺いましょう。実際のユーザーインタビューでは、エキスパートの意見とギャップがある場合もあります。しかし、ギャップがあることを把握できること自体も、顧客理解の観点では役立ちます。
エキスパートインタビューもユーザーインタビューで紹介したサービスを利用し、協力者を集めることが可能です。
④導入事例の分析
現在は多くのBtoB企業が、Webサイトに製品・サービスの導入事例を掲載しています。導入事例は、まさに顧客の声。導入のきっかけや決め手、導入後の効果などを確認できます。
特に見込み顧客やエキスパートが見つかりづらい場合は、自社または競合の導入事例を読み込み、顧客理解を深めるのが有効です。
導入事例の分析については、アプローチ方法や分析用のテンプレートを用意しております。ぜひ参考にしてください。
⑤レビューサイトのクチコミの確認
BtoB向けの製品・サービスは、各領域に複数のプレーヤーが存在しています。
比較サイトには顧客が製品・サービスを比較したり、一括で資料ダウンロードをしたりできるサイトもあり、リード獲得チャネルとしての重要性が高まっています。
各レビューサイトでは、実際にサービスを利用している顧客が、主にサービスについてクチコミを書いています。クチコミを読み込みことも、顧客理解には有効です。
IT系のサービスが中心ですが、ITトレンド、ITreview、BOXILなどが、ユーザーレビューを開示している代表的なレビューサイトです。
匿名性の高いクチコミのため、中には個人的・一方的な意見も含まれますが、改善してほしいポイントなどが率直に記載されているため、参考になります。事前にレビューサイトのクチミに目を通し、ユーザーインタビューで深堀するポイントを特定しておくのも有効です。
⑥ソーシャルリスニング
BtoB向けの製品・サービスでも、SNS、とりわけTwitter上で感想や使用感などを発信する方は増えています。
傾向としてはIT系のサービスが多いですが、業界特有の製品などでも、製品名や製品カテゴリー名、企業名で検索すると言及したツイートが引っかかってくることもあります。自社の製品・サービスや関連キーワードを検索し、状況を確認しておいてもいいでしょう。
もし製品・サービスについての発信が多いようであれば、定期的にモニタリングしておくことをおすすめします。自動でキーワードを拾ってくれるSocial Dogなどのツールもありますので、ご活用ください。
⑦顧客とのやりとりや問い合わせの集約
事業者側には、営業担当が顧客と実際に行ったやりとりや、顧客からの問い合わせの内容など、多くの「顧客の声」が存在します。
記録されているやりとりや問い合わせを確認し、顧客がサービス・製品に期待していること、課題、興味を持ったきっかけなどの情報を収集できます。CRMやSFAを使っていれば、集計して全体像を把握しやすいでしょう。
さらに、顧客のコメントやリアルな問い合わせ内容を確認することで、より理解が深まります。できるだけ多くの声を見ておくことをおすすめします。
もし情報が社内に散らばっている場合は、「BtoBマーケティング担当になったら最初に知っておきたいこと~9つの情報整理フォーマットを解説~」記事を参考にしてください。
記事内には、マーケティングの整理フォーマット(フォーマットの問い合わせ内容、受注理由、失注理由、解約理由、既存顧客のシート)を用意していますので、ご活用いただければ幸いです。
⑧フロント部門との情報共有・インタビュー、商談同席
社内でもっとも顧客を理解しているのは、顧客と接点の多い営業担当やユーザーサポート部門であることが多いです。
ユーザーインタビューで直接顧客の声を聞くとともに、社内のフロント部門にもインタビューを行いましょう。共通する認識、ギャップの両面を把握できます。
また商談がある場合は、可能な範囲で同席し、実際の商談模様や顧客の発言を確認するのも非常に有効です。
現在はWeb商談が増えているため、同席できない場合は録画の確認でもよいでしょう。「より良い提案を社内で練るため」などの目的を説明すれば、許諾いただけるケースが多いです。
才流では、マーケターの顧客解像度を高める「営業インタビューシート」を活用しています。インタビュー対象がサポート部門などの場合も、カスタマイズしてご利用いただけますので、ぜひご利用ください。
⑨アンケート(定量調査)の実施
定量的に顧客の声を把握したい場合は、アンケートでの調査が有効です。
アンケートには、自社で保有する顧客やリードを対象に自社でアンケートを実施する場合と、調査会社に対象の収集とアンケートの実施を委託する場合があります。
保有する顧客やリードの数が十分な場合は、自社で進められます。外部調査会社を利用する場合でも、fastaskやLINEリサーチのように比較的安価で進められるものもあります。目的と調査のボリュームに合わせて選定しましょう。
アンケートは、定量的にユーザーの声を把握できるという特徴がある一方、「なぜそう思うか」といったインサイトが掴みづらい側面もあります。アンケートを実施する場合は、別途ユーザーインタビューなどの定性調査もセットで実施することをおすすめします。
なおアンケートの項目には、アンケートに自由回答欄を設け、自由回答で挙がってきた意見を深堀することで、密度の高いユーザーインタビューを行うことができます。アンケートの項目数は、回答者の負担がないように意識しましょう。
⑩製品・サービスの一部顧客への先行提供
新製品やサービスの新機能の場合は、一部の顧客に先行して提供を行い、顧客からフィードバックをもらうことも有効です。
このとき先行提供する顧客は、現行の製品やサービスを活用しており、フィードバックに協力的な顧客に依頼することをおすすめします。先行して新製品や新機能を提供することに、喜んでくれる顧客も少なくないため、深いフィードバックを得ることが可能です。
またこのときにもらった意見やアンケート結果は、本格展開する際にマーケティングメッセージや導入効果の訴求、先行利用企業の事例として利用できます。先行して顧客の声を得ることは、マーケティング施策としても有効なので、該当する場合はぜひ実施してみましょう。
⑪顧客として店舗・ショールームに訪問する
自社製品・サービスのターゲットとなる企業が店舗やショールームを構えている場合、顧客として訪問し、製品やサービスを見たり、接客を受けてみることも有効です。飲食店などではミステリーショッパーとしてよく行われている手法です。
訪問する際には、プロモーションと接客の観点で視察することをおすすめします。
- プロモーション観点:製品やサービスの情報が適切に掲示されているか、どんな販促ツールが使われているかなどを確認する
- 接客の観点:ニーズや課題に対しどんな説明をしてくれるか、製品・サービスの強みやおすすめポイントをどのように伝えているかなどを確認する
また、店舗やショールームにはその企業が目指す世界観やユーザー体験が表現されていることが多く、企業の理解にも有効です。
⑫従業員のクチコミを確認
BtoBの場合、サービスや製品の導入を決めるのは、導入検討者や決裁者などの企業に所属する個人です。しかし、実際は企業文化が個人の思考に大きく影響を与える場合が多いです。
そのため、顧客となりうる企業自体の組織文化を把握しておくことも重要です。顧客企業の組織文化を把握することで、検討を進めてもらうために重視すべきことや、提案の際に強調するポイントをあぶり出すことができます。
企業の組織文化の把握するためには、その企業で働く従業員のクチコミが参考になります。該当企業で働いた経験のある従業員のクチコミは、openworkなどで確認できます。
openworkの場合は、上図のように8つの評価スコアと8カテゴリーのクチコミで企業の評価が構成されています。クチコミの中でも、特に「組織体制・企業文化」などに目を通しておくと、顧客となる企業の理解が深まります。
集めた声を「顧客視点」として捉えるポイント
さまざまな方法で集めた顧客の声。一番重要なのは、ここから顧客の声をどのように活用するかです。
才流が実際に行っているのは、まずは調査手段ごとにまとめ、その後実際のペルソナに当てはめてるという2段階です。
集めた顧客の声は、調査手段ごとに特徴が出ます。まずは調査方法ごとに得た結果をまとめます。ユーザーインタビューやユーザーテスト、営業インタビューなどは、インタビュー単位でまとめておくと、より顧客の姿がイメージしやすくなります。
ユーザーの声をまとめたら、次のステップとして実際のペルソナに当てはめてみましょう。
ペルソナとは、自社の製品やサービスのターゲットに、より具体的な要素を付与して人物像にしたものです。ペルソナがすでに設計されている場合はそちらに当てはめ、まだの場合はこの機会にぜひ作成してみましょう。
※関連記事:BtoBマーケで役立つペルソナ作成3つのステップ【テンプレート付き】
ちなみに才流では、図のようにペルソナをまとめています。分類する項目は対象の製品・サービスによって適宜入れ替えを行っています。
チームや社内への共有のポイント
調査の結果やペルソナがまとまったら、チーム内や社内の関連部門にも結果と考察を共有しましょう。
目的は、チーム内や関連部門で顧客像に対する認識をそろえることです。共有が終わった後に、社内のメンバーのそれぞれが「当社のサービスのユーザーは◯◯で〜△△な方です」と語れるのが理想です。
チームや社内への共有をスムーズにするためのポイントは2つあります。
まず1つ目は、報告会・共有会の場を設定し、同期的に共有することです。結果を資料で展開するだけでは、理解につながりにくいため、リアルタイムに説明する場を作ることが重要です。また参加者から質問や意見が出ることも予想されるため、有意義なディスカッションができるよう、長めに時間をとっておくことをおすすめします。
もう1つは結果のまとめだけではなく、実際の顧客の発言や行動を見てもらうことです。まとめを共有することも重要ですが、実際に顧客が「どのように言っているか」を見てもらうことで理解が深まります。特にユーザーインタビューやユーザーテストなどの映像は、非常に強い説得力を持ちます。
今回は、顧客視点を身につけるための顧客の声の集め方や、活用ポイントについて解説しました。冒頭にも述べましたが、顧客視点は時間とともに変化します。市場環境や顧客自身の考え方も変わるため、定期的に声を聞いてピントを合わせていきましょう。
本記事が顧客解像度を上げ、よりよいサービスやマーケティングにつながる一助になれば幸いです。
才流では成果が実証されたメソッドにもとづき、マーケティング戦略立案から施策実行まで支援しています。マーケティング活動で課題を感じている方はお気軽にご相談ください。⇒才流のサービス紹介資料を見る(無料)