
見込み顧客インタビューの効果を高める26のチェックリスト~ビザスク活用編~
BtoBマーケティングに成功している企業の共通点の1つに「顧客への解像度」があります。
顧客への解像度が高いと、出せる企画やアイデアの質が高くなり、戦略・施策の成功確率が高まります。
BtoBマーケティングにおける顧客解像度を高める取り組みの1つに、顧客へのインタビューがあります。才流(サイル)でもクライアントのBtoBマーケティングを支援させていただく際には、まず見込み顧客や既存顧客へのインタビューを通じて、クライアントの顧客への理解度を高めた上で、具体的な提案をさせていただきます。
ZoomやGoogle Hangoutなどのオンライン会議ツールの発達により、以前より気軽にインタビューができるようになりました。それにより、事業戦略やマーケティング戦略を立案するために、インタビューに取り組まれる方も増えたのではないでしょうか。
一方、いざインタビューに取り組もうと考えても
- インタビューの仕方がわからない
- インタビュー項目の設計が難しい
- そもそも被験者の集め方がわからない
と立ち止まってしまう方も多いと思います。
今回は、BtoB特化のインタビューを実施できるスポットコンサルサービス「ビザスク」に監修いただき、見込み顧客インタビューの効果を高める26のチェックリストと、インタビュー項目をまとめたシートを作成しました。
見込み顧客インタビューの効果を高める26のチェックリスト ビザスク活用編(Word)
見込み顧客インタビューシートのサンプル(Excel)
※個人情報入力無しでダウンロードできます。
これから見込み顧客インタビューを検討される方はぜひご覧ください。
本記事では、顧客理解の方法、インタビューの種類を紹介した上で、具体的なインタビューの準備手順をチェックリストに沿って紹介いたします。
なお、顧客解像度を高めるアプローチは、「SAIRU NOTE」の別記事でも解説していますので、参考にしていただければ幸いです。
■ 参考記事
目次[非表示]
顧客理解の方法の4分類
顧客理解は、[思考 - 行動] × [量的 - 質的] のかけ算
- 「顧客の何を理解するか」の軸と、「顧客をどのように理解するか」の2軸のマトリクス
- 何を理解するか=思考または行動、どのように理解するか=量的または質的で分類できる
思考は、主観的
- 長所:意味情報である、感情などを推察できる
- 短所:事実とは限らない(本人が誤認していたり、正しく伝えられなかったりする)
行動は、客観的
- 長所:事実情報である、第3者が観測できる
- 短所:行動の背景を理解するには解釈が必要である
量的は、広く知れる
- 長所:長所:集計できる、他人を説得しやすい、傾向を把握できる
- 短所:因果はわからない
質的は、深く知れる
- 長所:因果をつかみやすい
- 短所:数を集めづらい、整理しづらい、共有しづらい
インタビューとは、思考×質的な顧客理解の手法
インタビューとは、顧客の「思考」を「質的」に理解すること。オンラインでインタビューを行う場合は、動画や音声を共有するのも有効。
- 長所:主観的で因果をつかみやすい
- 短所:正確さが欠ける。他者と共有しにくい
短所を補うためには、以下を参考にする。
- なるべく正確な情報を聞き出せるようにインタビューのコツ(チェックリスト参照)を抑える
- 他者と共有しやすいように情報のまとめ方(インタビューシートサンプル参照)を工夫する
インタビューの方法は、デプス(対1人)とグループ(対複数人)の2つ
インタビューには、対1人と行うデプスインタビュー、対複数人と行うグループインタビューの2種類がある。
対1人と行うデプスインタビューの特長
- Webサイトや公開資料からは得られない情報も取り扱うことができる
- 他者の発言によるバイアスを避けることができる
- 「〇〇さんがAについて話したから私はBについて話そう」など
- 一人ひとりに対して、インタビュー時間を十分に確保できる
対複数人と行うグループインタビューの特長
- 一度に複数人の情報を取得できるので、情報量の観点からコスパがいい
- グループ内の相互作用で意見が活発になることがある
- 他者の発言をきっかけに新しい意見を思いつく、など
デプスインタビューの準備手順(インタビューの効果を高める26のチェックリスト)
本手順はインタビューの効果を高める 26のチェックリストとしても公開しています。本チェックリストでは、インタビューにて「ビザスクlite」の公募機能を活用することを前提に説明します。
※「ビザスクlite」ではインタビュイーをアドバイザーと呼んでいます。
インタビューに取り組む前に実施すること
目的と課題の確認
- ①インタビュー後に取りたいアクション(目的)は明確か
- ②インタビューを通じて明らかにしたいこと(課題)は明確か
方法の確認
- ③インタビューの方法はデプスインタビューで良いか
- ④アンケートなど、その他の調査方法を取る必要はないか
インタビュー対象の確認
- ⑤インタビュー対象の顧客セグメントを何分類にすべきか決まっているか
- ⑥顧客セグメントごとにアドバイザーを何名集めるべきか決まっているか
アドバイザー募集要項の準備
募集タイトルの作成
- ⑦募集タイトルは具体的かつ簡潔に書いているか
NG例:マーケティング関連の外部発注をした方へ
OK例:企業規模●名以上×●業界で広告運用の外部発注をした方に話を聞きたい
※ただし、具体的に書き過ぎると応募が集まりにくい点は注意する
依頼背景の整理
- ⑧インタビューの目的や課題を具体的に記載しているか
NG例:マーケティング関連業務の外部発注ニーズを把握したいと考えています。
OK例:新規事業の1つとして、BtoBマーケティング業務の代行サービスを検討しています。想定ターゲットとしては、従業員数3,000名以上 × IT業界のBtoB企業でして、当該企業におけるマーケティング関連業務の外部発注ニーズを把握したいと考えています。
アドバイザー要件の整理
- ⑨アドバイザーに求める経歴や経験を具体的に記載しているか
NG例:マーケティング予算の決裁権限を持っている方
OK例:従業員数●名以上の企業で、年間●円以上のマーケティング予算の決裁権限を持っている、または持っていた方(過去3年以内)
インタビュー時の質問の事前提示
- ⑩実際に質問する内容を3つ以上、具体的に記載しているか
例1:マーケティング予算取りのプロセス(社内でどのように予算を獲得したか)
例2:マーケティング予算の配分(獲得した予算を、何にいくら利用したか)
例3:広告代理店など、取引のある(もしくは過去あった)企業への発注理由
※ビザスクでは企業秘密に関わる情報をヒアリングすることはできません
アドバイザー候補からの提案時に記載してほしいことの整理
- ⑪適切なインタビュー対象かを判断できる、具体的な見極め項目を記載しているか
例1:案件に該当する経歴(会社・部署・役職・期間など)
例2:具体的な外部発注の経験(おおよその発注回数、発注金額など)について
例3:プロモーションを担当されている/されていた商材の概要。特に売上や顧客社数、1顧客あたり売上規模(〇円程度)の概算など
依頼主情報の公開
- ⑫インタビュアーはどこで何をしている人かを説明(会社紹介や自己紹介)しているか
- ⑬(エンドクライアントがいる場合)自社のクライアントの説明をしているか
- 自社の説明に加えて、自社のクライアントの業界や規模などを伝えると、アドバイザーは安心して手を挙げられるので提案が増えやすい
インタビューシートの作成
質問項目の整理
- ⑭全体の話から個別の話になるように、インタビュー時の質問項目を整理しているか
- 例:見込み顧客インタビューシートのサンプル
アドバイザー確定前の期待値調整
方法と環境の伝達
- ⑮インタビューの方法と環境について、事前に伝達をしているか
オンラインでインタビューを実施する際に起こりやすいトラブルは
- 回線が不安で音声が聞き取れない
- 喫茶店で話をしているので周辺の音がうるさい
- スマートフォンでアクセスしていて、画面共有が上手くいかない
- やり取りをしている本人以外の第3者が、インタビューに立ち会うことをアドバイザーが知らない など
安定したインターネット環境を指定する、個室などの静かな環境でインタビューを実施するなど、事前に依頼をしておく。
やり取りをしている本人以外の第3者がインタビューに立ち会う場合には、同席者がいる(可能性がある)ことを事前に伝えておく。
【アドバイザー確定前の期待値調整用メールテンプレート】
(相手の名前)様
お世話になっております。
(自分の名前)でございます。ご提案ありがとうございます。
ぜひオンラインでインタビューを実施させてください。
実施にあたり、いくつかご依頼がございます。
ご了承頂けましたら、最下部の日程から
ご都合の良い日時を伺えますと幸いです。
■ご依頼
◇当日のインタビュー環境
・ネット環境が安定している
・デスクトップかノートパソコン環境(※スマートフォンはNG)
・騒音が無い場所
にて実施をお願いいたします。
◇オンライン会議の方法
・「Zoom」というオンライン会議アプリを活用します。インストールは無料です。
以下より事前にインストールをお願いします。
※インストールはこちら
・PC(ミーティング用Zoomクライアント
https://zoom.us/download#client_4meeting
■候補日程
①X月 XX日 XX:XX-XX:XX
②X月 XX日 XX:XX-XX:XX
③X月 XX日 XX:XX-XX:XX
※他の方にも同日程を提示しているため、先に埋まってしまう場合があることをご了承頂けますと幸いです。
以上となります。
日程が確定しましたら、当日に使用するURLをお送りします。
またインタビュー当日は、私以外の弊社社員が同席することがございます。
そのほか、何かご不明な点がございましたら仰ってください。
何卒よろしくお願い申し上げます。
インタビュー時のコツ
冒頭:アドバイザーの安心感を醸成
- ⑯アドバイザーの匿名性を担保しているか
- 名前や企業名などの情報は外部公表しないことを伝える
- 録画や録音は前提としていないため、実施したい場合は事前にアドバイザーの了承を得る
- 得られた場合も社内だけなど限られた範囲での共有であることを伝える
- ⑰終了時間の確認をしているか
- 「インタビュー終了時刻は〇〇時〇〇分でよろしかったでしょうか。この直後に予定はありませんか」と尋ねる
- ⑱インタビュアーの自己紹介と簡単な調査趣旨を説明しているか
- 調査趣旨は簡単に「今日は〇〇について伺いたく、お時間を頂きました」と一言で伝える程度に留める
- 調査趣旨を具体的に伝えすぎると、アドバイザーはコンサルティングモード(相手に何かを教えないといけない)となり、本音やリアルな行動を収集しにくくなる
- ⑲アドバイザーの懸念を払拭しているか
- 「インタビュー実施前に、何か気になることはありますか」と尋ねる
途中:自然なインタビュー情報を収集
- ⑳場をあたためるために、話しやすい質問からはじめているか
- 例:事前にプロフィールにも記載いただいていますが、普段どんなお仕事をされているかを簡単に説明いただけますか?
- ㉑1回の質問にて、1つのことだけ聞いているか
- 「One Question、One Message(ワンクエスチョン、ワンメッセージ)」が原則
NG例:今の業務で活用されているツールの良い点と悪い点、どのような改善点があるかをお聞かせいただけますでしょうか?
OK例:今の業務で活用されているツールの良い点をお聞かせいただけますでしょうか?(アドバイザーの回答終了後に)ありがとうございます。今度は悪い点をお聞かせいただけますでしょうか?(以下略)
- ㉒質問時には「なぜ?」ではなく「誰が、いつ、どこで、何を」と尋ねているか
- 「なぜ?」と尋ねられた相手は、正確な回答を伝えようと教条的になったり、一般論を交えてしまう傾向がある
- 「なぜ?」を問う質問は、相手の判断基準を問う質問である。
- しかし、判断基準の言語化は難易度が高い
- また、回答者によってバラつきが大きく、期待する回答を得られないことがある
- 質問は「誰が?」「いつ?」「どこで?」「何を?」に言い換えた方が、回答しやすい
- 相手の判断基準を知りたいときは「何と比べたか」を尋ねると、判断基準を推察しやすくなる
- ㉓意見ではなく事実を伝えてもらえるように、場のディレクションをしているか
- コンサルティング会社や代理店などに勤務するアドバイザーの方は「ここはこうした方がいい」といったコンサルティングがはじまる場合がある
- インタビューでは意見ではなく行動を知ることがポイント
- 「最近ダウンロードしたホワイトペーパーを教えてください」といった事実に基づいて回答する質問をすることで、コンサルティングモードを修正する
- ㉔回答の誘導をしていないか
- 無意識のうちに、インタビュアー側が求める結論に回答が寄ってしまう可能性がある
NG例:「そのときは発注を見送りました」などの被験者の発言に対しての「実績がなかったからですかね?」「料金が高すぎたからですかね?」などと回答を誘導しない。
- ㉕正解を丸投げする質問をしていないか
- 「どんな情報があれば良いと思いますか?」といったアドバイザーに改善案の正解を丸投げする質問は控える
- ありきたりや思いつきの発言しか得られないことが多い
- 「◯◯があったらどう思いますか?」といった仮説ありきの質問が良い
- 「どんな情報があれば良いと思いますか?」といったアドバイザーに改善案の正解を丸投げする質問は控える
- ㉖アドバイザーが回答しやすい質問の仕方に変えているか
- 価格や比率など、具体的なデータは口外できない場合が多い
- 相手が回答しやすい粒度で尋ねるなど、質問の仕方を変えると望ましい回答を得られることがある
NG例:サービスの金額を具体的に伺えますか?
OK例:サービスの金額は、①10万円以下、②11万円~49万円、③50万円以上、の3択だとすると、どこに当てはまりますか?
最後に
これからインタビューに取り組まれる方に、ご留意いただきたい点を2つお伝えします。
1つ目は、アドバイザーにはドメイン知識を持つ人を選ぶこと。
どんなにインタビューの質問内容を緻密に設計しても、インタビューは人と人との会話です。相手の回答によって瞬時に質問を編集したり、想定外の展開に対応したりするには、インタビュー内容に関するドメイン知識が求められます。
2つ目は、インタビュー実施後に取れる意思決定の幅を明確にしておくこと。
そもそも顧客理解をする目的は、未来の行動を選択する際の判断材料を得ることです。インタビューの結果に関わらず、取る行動が変わらないのであれば、インタビューをする意味がありません。
本記事が、これから見込み顧客のインタビューに取り組まれる方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
才流ではBtoB事業の営業・マーケティングに関するご支援をしています。よろしければお気軽にご連絡ください。
チェックリストの監修:株式会社ビザスク
記事の参考情報:データ・ドリブン社会の創発と戦略 第08回(安宅 和人)