
中古品買取ビジネスの営業利益を50%にするための3つの条件
メルカリやヤフオクといった個人間取引サービスが伸びる一方で中古品を買い取って販売する事業で上場した会社は増えています。
- リネット 1998年創業 2016年上場
- マーケットエンタープライズ 2006年創業 2015年上場
- ブランディア 2004年創業 2016年上場
- SOU(なんぼや)2011年創業 2018年上場
- バイセルテクノロジー 2001年創業 2019年上場
以前ベンチャーキャピタリストの佐俣アンリ氏が
このようなツイートをしていました。
文脈としては、起業家センスのある若い方に将来or現在の投資先候補として会ってみたいというツイートです。
実際今成功している起業家のなかで学生時代にせどりをやっていた方は少なくありません。
私の知り合いでも東大在学中に高級住宅地である松濤の家を練り歩き不用品を収集し転売で稼ぎ、卒業後はゴールドマンサックスに就職し起業といった猛者がいました。
中古品買取は
- 初期投資があまりかからない
- 粗利率が高い
- 在庫がいらない
とリスクなく始められるビジネスのひとつで、シンプルですが奥が深いです。
今回はドン・キホーテ買取事業の立ち上げやブランディア創業に大きく携わった中古品買取ビジネスのプロの方にこのビジネスを成立させる条件を伺いました。
買取ビジネスを15年
ドン・キホーテは今でこそ大手ですが、当時はベンチャービジネス。
圧縮陳列と呼ばれる特殊な商品の置き方が特徴で猥雑さがお客様に好評で伸びた会社です。
キャバクラ嬢の方やホストの方が夜になると質屋がしまって困っているという話を聞き、買取を始めたのがきっかけででした。
ドン・キホーテの買取事業の立ち上げをきっかけにしてブランディア立ち上げを経て、今は複数の買取会社の顧問やコンサルティングというように15年以上中古品買取業界にいます。
買取ビジネスの営業利益率50%を成立させる3つの数字
中古品ビジネスは安く買取をして高く売るのが基本ですが、そのなかでも重要なのはいかに安く買取件数を増やせるかどうか。
私自身今は様々な買取ビジネスのコンサルティングをしていますが
- 買取ユーザーのリピートが3回
- 粗利率は40%
- 広告宣伝費を10%以内におさめる
ことによって営業利益50%を目指すことが多いです。
買取相場と販売相場
ヤフオク、メルカリで売っている金額の3分の1で買取り、粗利率が40%出るように値付けして販売します。
例えば定価が30万円、メルカリで9万円で販売されているバッグなら
- 3万円で買取り
- 5万円で販売して
- 2万円の粗利を出す(粗利率は5万円の販売価格に対して40%)
この数字が基本です。
そして営業利益を高めるために必要なのは
- 広告宣伝費を抑えること
になります。
販売は正直商品勝負になるので、いかにして安く買取件数を増やせるかどうかがポイントです。
買取件数を増やす方法としては
- リピートを増やす
- バイセルのように出張で買い取る
- マーケットエンタープライズのように専門買取の切り口から入ってまとめて買い取る
など様々な工夫があります。一つずつ解説しましょう。
ーリピートを増やす
バイヤーあるあるですが、一人のお客様は3回が上限
1回目がお試しで出品し、2回目は慣れてきて本当に買い取ってもらいたいものを出す。
しかし3回目になると悲壮感が出品商品から漂い始め、4回目に卒業するといった流れが多いです。
リピーターがいない買取ビジネスは赤信号です。
ー出張買い取りで利益を出すコツ
着物の出張買い取りで成長し2019年に上場したバイセルテクノロジー
出張買い取り自体はお客様からなんらかの特定商品の買取依頼を受け訪問するものですが、単品の買取だけだと利益がでません。
レンタカーを半日借り、人一人が半日か1日稼働するので、人件費プラス経費で5万円はかかるでしょう。
人件費5万円であれば、20万円前後の粗利が出ないと営業利益率が50%になりません。
そのためには30万円前後で買取をし、50万前後で販売、20万円前後の粗利が必要になります。
バイセルはまとめて買えるだけでなく、独自の商流で買い取った着物を布として高く販売できるため利益を出すことができています。
私も着物の買取をしていたことがありますが、本人は数万円以上で購入した着物は1000円などの査定になることが珍しくありません。
当然買取には応じてもらえないんですよね。
ある日買取目的に訪問した家に学生の写真があったのを着想にした鉄板のセールストークを使っていました。
「我々のお客様にはファッションデザインの専門学校の学生がいます。この着物で縫製の勉強はできるので若い人たちのために譲ってもらえないでしょうか?」
このセリフだと
「若い人のためになるのであれば」
「勉強になるのなら」
といって譲って頂くことができました。
買取は単純にお金で買取る側面とは別に誰かが使ってくれるという価値もあるのです。
ーお片付け需要にこたえるのが専門店買取
買取のビジネスは
「ある人にとっては不要だがある人にとっては必要になる」
ところが面白いところ。
マーケットエンタープライズという買取会社はこれを地で行く企業です。
ギターなんかは捨てると2000円とかかかるので、これを1000円で買うとなるとニーズがあるのです。
代表の小林さんは買取点数は数点と少なくても、専門店である見せ方をすれば売れるのではという仮説を持っていたそうです。
試しにいくつか買い取った鉄道模型の特集サイトを作り、これから鉄道模型をはじめる方向けのスターターキットを用意したところが非常に売れたと。
そのあとはあるカテゴリの商品が2つ以上集まったら特集サイトを作っていたそうです。
今後伸びる買取ビジネスモデル
メルカリが出てきて買取ビジネスは以前の競争環境と変わってきたと感じています。
今後は
- コミュニティ
- シニア
がポイントになってくると思います。
団塊の世代は自分のためにお金を使えますし、孫ファミリーに対して使う方もいるでしょう。
最近私は友達とサバイバルゲームをやったんですが、メルカリで購入の金額上限を決めてまとめてサバイバルゲームグッズを買い、終わったら売却をしました。
こういったことができる場所を提供するイメージです。
生協のように買取金額をプロジェクトに賛同する方から集め、買い取り販売した利益を分配するといったビジネスモデルはまだありません。
まとめ
インタビューは以上です
メルカリやヤフオクが出ても、なんぼやのような会社が成長し上場するのは
- スマートフォンを使わない層がいるマーケット
- 買取することに必要性を作れる
ことだと感じました。
1000円になってしまう着物買取を渋る方に、若い方の練習になることが決め台詞だったという話は非常に示唆に富むと感じました。
営業やマーケティングをやってると金銭的なメリット提案に目が向きがちですが、そもそも人間は合理的ではない感情に基づいた行動も多いですよね。
是非参考にしてみてください。