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失注を招く9つの要因とは? 本当の失注理由を聞き出す方法

法人営業
インハウスエディター
前田 絵理

業績が伸び悩みコンペでの負けが続くときは、失注要因を洗い出す必要があります。 
しかし、失注分析をするときの大きな壁は正しいデータが集まらないこと

たとえば、各営業パーソンがSFA(※)などに失注理由を入力しても、「金額がネック」「時期が伸びた」「不明」など分析に値するデータが集まるとは限りません。

※SFA:エスエフエー/Sales Force Automationの略。営業活動の記録、進捗状況、顧客情報などを管理するシステム。

見込み顧客にヒアリングしても「総合的に判断して」と、お茶を濁されることが多々あります。そこで本記事は、代表的な失注の要因、本当の失注理由を聞き出す方法、受注率を改善してゆくため失注後に行うべき重要なことを、初心者の方へも伝わるよう解説します。

才流では失注の分析から営業の属人化を防ぎ、営業成果を最大化する仕組みづくりまでを支援しています。失注でお悩みの方はお気軽にご相談ください。⇒サービス紹介資料の無料ダウンロードはこちら

■監修:才流(サイル)営業コンサルタント・宮戸 章光

失注とは

失注とは、一般的に「商談したものの受注に至らなかったもの」のこと。商談にならなかったものは対象外です。

組織内で失注の定義を明確にしておくことは重要です。あやふやなままだと、営業担当が何か月も「商談中」のステータスにするケースが発生します。きちんと追客している場合はいいですが、そうでないなら改善を。失注扱いにする期間見極め基準を具体的にルール化しておきましょう。

(例)商談の基準リードタイム=3か月の場合。3か月が経過した時点で失注と判断。
   もし、追客するならその理由を明確にする。

失注の基準

※関連記事:失注商談の掘り起こしがうまくいく事前準備のポイント

失注を招く9つの代表的要因

まずは、失注に至ってしまう代表的な9つの要因を把握しておきましょう。

1.ニーズとのミスマッチが起きている

相手の課題と、自社の提供価値に乖離がある場合は当然ながら受注にいたりません。
最初からミスマッチが起きていることになります。
たとえば、あるベテラン営業と若手営業の受注件数とプレゼン件数が以下だとします。

  • ベテラン営業:受注5件 プレゼン10件
  • 若手営業  :受注5件 プレゼン50件

プレゼン後の失注率は、ベテラン営業が50%で若手営業が90%です。

この差は初回商談時に、案件の見極めができているかどうかです。目の前の受注がほしい若手営業にありがちですが、提案を急ぐあまりニーズがマッチしない相手に提案をしても、打率が上がることはありません。

失注と受注率の関係

あまりにも提案後の失注率が高い場合は、案件の精度を疑いましょう。

2.ヒアリングが不十分で課題の設定・合意形成ができていない

不十分なヒアリングによる課題設定と、合意形成不足も失注を誘発する要因のひとつ。ヒアリングの目的は、現状の問題点を洗い出し、目標達成のための「課題設定」をすること。適切な課題設定に基づく合意形成ができていないと、提案のピントがずれてしまいます。

ヒアリング不足で失注

このとき、先方の課題と自社の提供価値が乖離している場合は、提案を見送ったほうがよいでしょう。契約後の早期解約やクレームが起こっては、誰も幸せになりません。

3.キーパーソンにアプローチしていない

多くの場合、キーパーソンとは決裁者を指します。商品やサービス導入の決定権を握る人物のこと。そもそもキーパーソンに接触できていないと、「本質的な課題」にたどり着けない可能性すらあるでしょう。部門長などの役職者が感じる課題と、現場担当者の感じる課題は、別の場合もあるからです。

競合他社がキーパーソンに接触できていたら、そこで勝敗が決まってしまう危険性もあります。できる限り、ヒアリングの段階からキーパーソンに同席してもらいましょう。

しかし、稀に部門長=キーパーソンではないケースもあるので注意。役職はないけど強い発言権を持つ社員さんもいます。重視するべきはどの方の意見か、ヒアリング時の先方のやりとりを見て確認しておきましょう。多くの場合、意見を発することで空気を変えられる方がキーパーソンです。

4.投資対効果を説明できていない

商品やサービスの投資対効果について「納得感」がないと受注にはいたりません。投資対効果の説明として、コスト削減や売上増加といった具体的なワードを出すときには、ヒアリング時に以下を把握しておきましょう。

  • 顧客単価
  • 利益率
  •  LTV
  • 作業工数や人件費
  • 外注費
    ※提案書は、これらの情報をもとに顧客の視点で作成することが重要

しかし毎回、提案時に投資対効果を明示することは難しいものです。その場合カギとなるのは、最初の「課題設定」で合意が取れているか否か。定量/定性を問わず、課題を解決できると判断してもらえるなら受注確度は高くなるはずです。

5.担当者のメリットを説明できていない

キーパーソンを押さえるのは重要ですが、担当者を軽視してはいけません。担当者のメリットとしては以下のようなものが考えられます。

  • 現場の業務効率化
  • (個人の)目標達成 
  • (個人の)評価向上

担当者自身に個人的なメリットがないと、商品選定のときに候補から外されてしまうリスクもあります。現場で商品やサービスを利用する立場であり、満足してもらえない場合はリプレースの対象になる可能性もあるでしょう。

逆に、担当者を味方につけられるとキーパーソンへの説得に協力してもらえることもあります。そのためには課題に寄り添い、「解決方法を一緒に考える姿勢」が重要です。

6.見込み顧客の疑問や不安を解消できていない

商談プロセスのなかで、見込み顧客の疑問や不安を解消できていないと、失注リスクが高まります。しかし、提案後に疑問点が残ったとしても見込み顧客が自分たちに質問してくれるとは限りません。プレゼン時やその後に、自身でしっかり確認しましょう。

また、多くの顧客に共通する以下のような疑問や不安は、あらかじめ提案書の中に盛り込んでおくのも有効です。

  • 商品やサービスを自分たちがきちんと使えるかどうか
  • 要望通りでなかった場合、修正などは対応可能かどうか
  • サポート体制やサポート範囲は十分か

7.競合の提案力・営業力が高い

競合企業の提案力や営業力が、想像以上に優秀なときも失注要因になるでしょう。特定企業とコンペになったときの勝率が極端に悪い場合などです。この場合、もっともよいのは競合の提案内容の特徴や懸念点を見込み顧客に教えてもらうことでしょう。難しいかもしれませんが、見込み顧客との関係性が構築されている場合は、ヒントをもらえることがあります。潔く勉強させてもらうが吉です。

8.顧客の購買時期に合わないタイミングで提案している

先方の予算策定が1月なのに2月に提案してしまっては、うまくいきません。1月中に判断しなくていけないのに、ギリギリの12月末頃に提案するのも危険でしょう。

できれば、年度予算計画の時期にあわせて提案したいものです。顧客が「ちょうど来期の予算をまとめ始めたところだよ」と感じるベストタイミングで商談すれば、新たな提案に耳を傾けてもらいやすく、顧客側も予算案に組み込めるようになります。

たとえば日本企業の決算期は3月・9月・12月が多いはずです(※)。来期予算は決算期の4〜5か月前に策定され始め、1〜2か月前に決まるケースが多いので、営業パーソンもそれにあわせて提案しましょう。
※参考:決算期月別法人数・国税庁

9.予算感の合わない見込み顧客と商談している

意外な落とし穴がこちら。Webサイトのサービス紹介ページに明確な料金を提示していない場合、見込み顧客のイメージする予算は、想像以上に少ない場合があります。
初回商談では、必ず予算を含むBANTCH情報を聞いておきましょう。

※BANTCH:バントチャンネル/Budget(予算)、Authority(決裁者)、Needs(ニーズ)、Timing(検討時期)、Competitor(自社の競合相手)、Human resources(組織の人員体制)の略。

初回商談で聞くべきヒアリング項目は、以下の記事でテンプレートとともに解説しています。
※関連記事:商談で活用できるヒアリングシート【テンプレート付き】

自社の失注要因を洗い出すための方法

失注分析

失注分析をしようと、いきなりSFAに蓄積されたデータをもとに分析し始めてもうまくいかないケースがほとんどです。そもそも件数が少ない可能性があり、データの正確性や粒度もまちまちで徒労に終わることが多いからです。そのため、営業活動の可視化から始めることをおすすめします。

営業の活動内容を可視化する

以下のような指標を中心に見てみましょう。

  • 受注率(営業パーソンごと)
  • 失注率(営業パーソンごと+プロセスごと)
  • 上記の業界別、エリア別など
  • 競合別の勝率

必ずしもSFAを導入する必要はなく、スプレッドシートやExcelでもかまいません。

失注の洗い出し方

受注率や失注率を営業パーソンごと、かつプロセスごとに整理することで、ハイパフォーマーと他の営業パーソンとの差分を分析できます。担当者合意の手前で失注しているケースが多いのであれば、初回商談のヒアリングや課題設定に問題があるのかもしれません。

あらかじめ仮説を立てる

失注分析を効率よく行うためには、あらかじめ仮説を立てておく必要があります。そのためにも上述の活動内容の可視化は重要です。

特定業界での失注率が高い場合、その業界への理解が足りないケースも少なくありません。その場合、受注済みの顧客や、業界の関係者などに勉強会を開いてもらい、理解を深める手法も有効です。

他社の提案内容を把握する(競合分析)

なんらかの方法で他社の提案内容をイメージできれば、自社の提案との差分を分析できます。思い切って、「可能な範囲で」と断りを入れてから見込み顧客に聞いてみるのもひとつの手。提案の内容を見比べ、不足している情報があれば改善を検討しましょう。

見込み顧客に失注理由を直接聞く

シンプルなようで、効果的なのが見込み顧客に失注理由を直接聞く方法です。ただし、見込み顧客が本音を教えてくれるとは限りません。ここからは、聞き方のコツについて触れていきます。

本当の失注理由の聞き出し方【Q&A

失注理由を聞き出すコツについて、才流の営業コンサルタント・宮戸章光がQ&A形式で解説します。

Q.具体的な失注理由を聞き出すためには、どんなアプローチをすればいいでしょうか?

宮戸章光

A.提案時(失注する前)に、あらかじめ依頼しておきましょう。たとえば、「頑張って提案書を作成したので、ダメだった場合は理由を教えてください」といった具合です。最初に依頼しておけば、失注したときも質問しやすくなります。

Q.失注理由を聞いても「金額です」とだけ言われた場合、どう掘り下げればよいでしょうか?

宮戸章光

A.提案内容には不安点がなかったのか、あったとしたらどのような点なのか掘り下げて聞きましょう。
漠然と理由を聞くのではなく、提案時にあらかじめ「今回検討している商品/サービスの選定軸」を確認しておき、選定軸に沿ってヒアリングする必要があります。そうすることで、お客さまの心理的な回答ハードルも下げられます。
また、質問するときは「時期も価格も問題なかった場合に、お伺いしたいのですが」という枕詞を添えるのも効果的です。

Q.商談プロセスで気を付けておくことはありますか?

宮戸章光

A.お客さまと十分に関係構築できているか、常に意識してください。お客さまの悩みや課題をしっかりヒアリングすることはもちろん、課題解決になるノウハウ資料などは契約前でも惜しみなく共有してよいでしょう。信頼関係を構築することで、失注した場合でも本音を聞き出せる可能性は上がり、継続アプローチによるセカンドチャンスをつかめる確率も高くなります。

Q.他にはどのような点に配慮すれば、失注理由を聞き出せますか?

宮戸章光

A.たとえば以下のようなことを意識するのも有効です。

「これ以上の営業はしないので」としっかりと伝える
失注理由ではなく「競合のどこがよかったのか」、他社に決めた理由を聞く。ポジティブなポイントは回答しやすく、その逆説が自社の改善点となる
「サービスの改善をしたいので教えてほしい」と素直にお願いする
他社に契約したのではなく、サービスの検討そのものを見送ったのかも聞いておく
「営業の提案の中で至らない点や失礼な点はなかったか」と、上長が営業担当に焦点をあてて聞く

質問を2段階にするケースもあります。1つ目の質問で理由を聞き、2つ目の質問で「それが改善されていたら、弊社に決まっていましたか?」と聞きましょう。
最初の質問は答えやすい理由を選択しているケースがあるので、2つ目の質問以降に出てくる理由こそ「本当の理由」の可能性が高いと解釈します。

失注後こそ営業パーソンがするべき重要なこと

失注要因の洗い出しは、営業活動を改善するためのひとつのプロセスにすぎません。失注後こそ、営業パーソンがとるべき重要なアクションがあるのです。 

失注理由は社内に共有する

失注理由が営業個人に蓄積されても、組織全体の改善にはつながりません。ナレッジ共有を評価の対象にして、社内への共有がすすむ環境にしましょう。

失注「直後」にアポを取り、「後日」に経過をヒアリングする

自社が失注して他社の製品やサービスに決まった場合は、失注したその日に次回訪問日のアポを打診しておいてください。訪問予定日は他社の商品が納品された後に設定します。

そのとき聞くべきことは、「納品された他社商品の評判」です。不安や不満があるようであれば、次回のチャンスにつながるかもしれません。

お相手の役に立つ情報を提供し、定期的にコンタクトを取る

失注後も継続的なフォローアップを行うことは重要です。再検討のタイミングを逃さないように、1か月〜数か月ごとにコンタクトをとりましょう。業界事例やお役立ち資料などを送ることでコンタクトをとることができるはずです。他社製品に決まった場合でも、リプレースのチャンスはあります。

担当した営業パーソンとの相性が失注要因として考えられる場合は、インサイドセールスやマーケティング担当者に失注後のフォローを依頼するのも有効です。

まとめ

失注要因を洗い出し、改善するポイントは以下です。

  • 営業活動の可視化
  • 仮説立て
  • 競合分析
  • 失注理由のヒアリング

失注要因の分析は営業プロセスの改善におけるひとつの要素にすぎません。営業活動のためのリソースは限られています。やみ雲に実施して必要以上に時間を奪ってしまっては本末転倒です。あらかじめ立てた仮説に基づき、効率よく実施しましょう。

才流では、BtoB営業に関する以下のような相談をお受けしています。 

  • 商談後の失注率が高いと感じる
  • 失注の要因が特定できていない
  • 営業プロセスが属人的になっている
  • 営業プロセス改善のための仮設立てができない

個別相談会を行っておりますので、悩んでいる方はお気軽にお問い合わせください。⇒才流のサービス紹介資料を見る(無料)


(文:ファストマーケティング

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監修


才流・営業コンサルタント
宮戸 章光

Twitter:@akimitsu_miyato
繊維専門商社を経て営業特化のコンサルティング会社にて、個別企業支援、ミドルマネジメント層向けビジネススクール講師、シンクタンクでの講演を実施。営業プロセス設計、営業スキル向上の支援を中心にシニアコンサルタントとして従事。現在は、株式会社才流にてコンサルタントとして活動。MBA(経営学修士)。

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