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失注商談の掘り起こしがうまくいく事前準備のポイント

コロナ禍で訪問営業ができなくなり、従来のリードの獲得方法やマーケティング、営業活動を多くの企業が見直しています。

新規のリードや商談の獲得は重視されていますが、一方で、過去に失注した商談や商談まで至らなかったリードの掘り起こしは、なかなか取り組めていない企業も多いのではないでしょうか。

米シリウスディシジョンズ社(現Forrester社)の調査(※)では、営業担当が失注と判断した商談のうち、8割が2年以内に競合他社の製品を導入したそうです。つまり失注と判断した商談であっても、適切なフォローを行えば、受注につながる大きな可能性を秘めているのです。

失注商談の掘り起こしは、アプローチされる顧客が持つ「なぜ今か?」「なぜ自分か?」という疑問に答えられる、適切なタイミングでアプローチをとることが最も重要です。

本記事では、主にこれまで失注商談の掘り起こしに着手できていない企業向けに、適切なタイミングを逃さないためにどんな準備や整理が必要か、ポイントをまとめました。

※参考:第34回 放置した見込み顧客の8割が2年以内に競合に流れる?

目次[非表示]

  1. 1.失注商談の定義
  2. 2.失注商談掘り起こしにあたってぶつかる2つの問題
    1. 2.1.1.ルールを決めて商談を失注扱いにする
    2. 2.2.2. 失注商談を掘り起こす担当を明確にする
  3. 3.掘り起こしをするタイミングを整理する
    1. 3.1.1.失注理由
    2. 3.2.2.必要な機能・サービス内容
    3. 3.3.3.次回アプローチ時期
    4. 3.4.4.決算月
    5. 3.5.5.業界
  4. 4.アプローチしたログを残せる環境を準備する
    1. 4.1.一斉メールでの情報提供は積極的に行うべき
  5. 5.MAの導入はアプローチ方法が確立してからでもOK

失注商談の定義

はじめに本記事で使う「失注商談」という言葉の範囲を確認しておきます。BtoB企業では、以下のような流れで商談のステップを進むことが多いと思います。

  • 問い合わせ・資料請求(リード化)
  • 商談
  • 交渉・提案
  • 受注

本記事では、商談は行ったものの受注に至らなかったものをすべて「失注商談」として扱います。商談化しなかったリードについては、対象外とします。

失注商談掘り起こしにあたってぶつかる2つの問題

失注商談の掘り起こしを行う場合、よく問題になるのは「失注商談の定義」「失注商談を掘り起こす担当は誰か」の2点です。そこで、次のことを整理しておきましょう。

1.ルールを決めて商談を失注扱いにする

BtoBの商談は、結果が出るまで数カ月以上かかる場合も珍しくありません。そのため、定期的な商談状況のアップデートが重要です。

しかし、長期間にわたり商談が失注とならないまま滞留してしまうケースもよく見られます。停滞商談が発生してしまうのは、明確な失注のルールを決めていないことが要因です。

失注のルールの基準としてよく利用されるのは、商談化してからのリードタイムです。例えばリードタイムの基準を3カ月と設定した場合、実際に商談化から3カ月経過したタイミングで失注とするかの判断を行います。

もちろん基準であるリードタイムが到来しても、明確な理由がある場合は、必ずしも失注としなくても構いません。基準を超えても失注としない場合は、再度見直しを行っていくために、追客する理由と追客の期限を設定しておくのがベターです。

なお設定する追客期限は、営業担当が商談を持ちすぎないように短めに設定し、運用したほうが良いでしょう。ただし、リードタイムが長く、金額が500万円を超えるような高額商材などは例外です。

失注の基準を決めることは、営業担当を追うべき商談にフォーカスさせることとともに、次項で説明する「失注商談の所有者は誰か」を整理するための前提にもなります。

2. 失注商談を掘り起こす担当を明確にする

失注商談のルールが決まったら、次は失注とした商談の掘り起こしを誰が行うかを決めます。企業により、営業担当が管理し続ける、マーケティングやインサイドセールスなどの別部門に戻すなど、運用はさまざまだと思います。

ただ、基本的には失注商談はマーケティングやインサイドセールス部門で引き取ることをおすすめします。

安定的にリードが供給される場合は、失注商談も積み上がっていくため、営業担当には負担です。リードの流入数が少なく、関係性構築を重視する高額商材などを除き、営業担当には進行中の商談にフォーカスしてもらいましょう。

いずれにしても、失注商談を掘り起こす担当を明確にし、チームで合意しておくことが重要です。

掘り起こしをするタイミングを整理する

失注商談の整理、担当が決まったら、どのタイミングでアプローチをするかを決定するため、「失注時のヒアリング項目」を整理します。基本的にはアプローチする失注商談を後から絞り込みしやすいように、選択肢型で項目を設定することをおすすめします。

項目の例は、次のようなものがあります。

1.失注理由

失注理由は失注商談の掘り起こしをする際の最重要項目と言っても過言ではありません。掘り起こしをする担当と営業担当で相談のうえ、必ず営業担当に入力してもらいましょう。

またアプローチ先の絞り込みをしやすくするため、失注理由は選択肢で複数選択できる形式と、状況の詳細を記述できるフリーコメント欄があると扱いやすいです。

具体的なアプローチ例としては、失注理由ごとに以下のようなアプローチがとれます。

  • 「機能要件」の場合、プロダクトの機能拡充時にアプローチ
  • 「価格」の場合、キャンペーン実施時や価格改定時にアプローチ
  • 「予算」「時期をあらため」「競合負け」の場合、決算月や次回アプローチ時期と組み合わせてアプローチ

2.必要な機能・サービス内容

機能やサービス内容のアップデートが頻繁な商材の場合は、顧客に「必要な機能・サービス内容」の項目を失注時にヒアリングしておくと、実際にその機能やサービスが提供された際、強いアプローチが可能になります。再商談やセミナー誘導にもつなげやすいため、サービス企画やプロダクト開発部門とも相談のうえ、失注顧客に聞いておくべきことを検討しましょう。

3.次回アプローチ時期

営業担当から見て、「次はいつアプローチすべきか?」の時期をヒアリング項目に設定しておくことは、掘り起こしを行う際の目安にもなります。フリーコメント欄に記入された失注理由とセットで把握し、アプローチすることで掘り起こしも行いやすくなります。

4.決算月

BtoBの商材は組織的な購買が中心のため、予算の有無や決裁者の判断に大きく依存します。予算を策定するタイミングを考慮してアプローチをすることも効果的です。

失注理由が「他社商品に決定した」という場合でも、切り替えの検討する可能性があるため、決算月は把握しておくことをおすすめします。特に大企業の場合は、人事異動が多い時期を把握しておくことも有効になるでしょう。

5.業界

商材によっては受注しやすさ、顧客単価の高さなどの要因で、戦略的に業界を絞り込む場合もあります。業界で絞り込んだアプローチのタイミングは、業界ごとに予算編成時期や繁忙期など、アプローチするベストな時期がそれぞれ存在します。

例)大学の場合:8月が研究開発費の申請の時期

共通でアプローチできるタイミングとしては、新しく特定の業界で導入した事例が出た時や、業界レポートが発表された時などが有効になります。

アプローチしたログを残せる環境を準備する

実際に掘り起こしのアプローチを行った際に、「結果がどうだったか?」のログを残しておくことも非常に重要になります。アプローチ方法の見直しや、今後のアプローチ可否の管理にもつながるからです。

前項で述べた掘り起こしのトリガーの管理を容易にし、アクションログを時系列で管理するためには、できればSFA(営業管理システム)が導入されていると望ましいでしょう。SFAは無料で利用できるものも多く、これまでの商談やリード情報の整理にもつながります。

導入当初は一時的に手間がかかりますが、導入に要した工数は比較的早く取り戻せます。未導入の場合はぜひ前向きに検討してみましょう。

もしSFAの導入が難しい場合は、Excelやスプレッドシートで管理シートを作り、ログを残せるような環境を準備しましょう。

一斉メールでの情報提供は積極的に行うべき

個別でアプローチするタイミングに至っていない場合、一斉メールでの情報提供を行うことも有効です。

掘り起こしを行う相手企業の方は、一度は自社の商材やサービスに興味を持ち、問い合わせや資料請求を行ってくれた方。失注後に情報提供を継続したとしても、基本的にはネガティブな印象にはなりにくいと考えられます。

コンテンツを作り込んだり、テキスト量を増やしたりするよりも、「配信頻度を高めてコミュニケーション接点を増やすほうがメリットが大きい」という調査結果(※)もあります。商材やサービスのリリース情報や導入事例など、まずは作成できるものから配信し、徐々に頻度を上げていきましょう。

参考:WACUL社・ラクス社のメールマーケティングの実態調査

MAの導入はアプローチ方法が確立してからでもOK

失注商談の掘り起こしは、MA(マーケティングオートメーション)の導入とセットで語られるケースも多いです。MAを導入することで、メールの開封率が高く関心度の高いリードを絞り込んでアプローチできます。

また期限の到来とともに、自動で担当者へ通知・TODO化するなど、掘り起こしが容易になることは事実です。

一方でMAを導入したものの、シナリオ設計や利用定着に苦戦し、単なる一斉メール配信ツールになっているケースもあります。まずは失注商談の要因やタイミングについて整理し、アプローチの方法や内容が確立されてから導入・運用しても遅くありません。

アプローチ方法が確立し、効率的に運用を検討するタイミングで、MAも検討することをおすすめします。

SAIRU NOTEでもMAツール/CRMとしてHubSpot Marketing Hubを導入・実装・運用するプロセスをフェーズ別に解説で解説していますので、参考にしてください。


今回の記事は、失注商談の掘り起こしの重要性はわかるが、「どこから取り組んだらいいかわからない」「そもそも誰が対応するか整理できない」という意見に触れることがあり、企画しました。

失注商談の掘り起こしを始めるにあたってのポイントは、アプローチを「誰が、いつ行うか」に尽きます。ぜひご参考にしていただけると幸いです。

著者/ 藤原 健
株式会社才流 コンサルタント

2009年NTTドコモ入社。県域での代理店営業や販促企画、本社にてマーケティングリサーチを経験。その後一貫してBtoB領域の事業会社に所属し、新規事業責任者や取締役を歴任。直近は株式会社キャスターにて派遣事業、bosyu事業の事業企画に従事。
2021年より株式会社才流にてコンサルタントとして活動。Hubspotソリューションパートナー。

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