
MAツールとしてHubSpotを導入・実装するプロセスをフェーズ別に解説
今回の記事では、MAツールとしてHubSpot Marketing Hubを導入するまでのプロセスと、初めての方が実装時につまずくポイントを具体的に解説します。
HubSpotの利用を検討中の方、あるいはHubSpotを十分に活用できていない方の参考になれば幸いです。導入・実装を進める方が参考にしやすいよう、可能な限り具体的に記載しています。なお実装後の運用については別記事で解説予定です。
才流では、MAツールの導入・実装の支援サービスも提供しております。HubSpotの導入・実装支援に興味のある企業様はお問い合わせください。
目次[非表示]
- 1.前提共有
- 1.1.MAツールに対するスタンス
- 1.2.本プロジェクトの位置付け
- 2.【初期戦略の設計フェーズ】MAツール導入にあたり、はじめに行ったこと
- 2.1.最低限、整理しておくべきこと
- 2.2.そもそものMAツールを導入する目的
- 2.3.MAツール導入による効果見込み
- 2.4.ターゲットの定義
- 2.5.ホットリード、コールドリードの定義
- 2.6.MAツールを利用して実際に行う施策
- 2.7.ツール選定の際、重視すること
- 3.【MAツールの選定フェーズ】どのようにMAツールを決めるか?
- 4.【実装フェーズ】HubSpot実装時につまずくポイント、注意点
- 4.1.重要トピック①プロパティーについて
- 4.1.1.コンタクトプロパティー
- 4.1.2.会社プロパティー
- 4.1.3.共通して理解しておくべきこと
- 4.2.重要トピック②フォームについて
- 4.3.重要トピック③インポートについて
- 4.3.1.マッピング機能が優秀
- 4.3.2.インポート時のエラー
- 4.4.重要トピック④メール配信について
- 4.4.1.メール配信の前にやるべき設定
- 4.4.2.自動送信メールの活用法について紹介
- 4.5.重要トピック⑤レポートとダッシュボードについて
- 5.【まとめ】MAツールの実装に失敗しないために
前提共有
本題に入る前に、細かいですが前提を共有します。
MAツールに対するスタンス
弊社としては、ほとんどのBtoB企業ではMAツールの利用は優先度が低いと考えております。理由は2つあります。
1つは、継続的なコンテンツ作成、インサイドセールス部門の立ち上げ、Web広告の運用など他施策のほうが、MAツールと比較して実行難易度が低く、マーケティング成果へのインパクトも大きくなるケースが多いためです。
もう1つは、導入しても上手く使いこなせないケースが多いためです。「高額なメール配信ツール」と化しているケースをよく伺いますが、それほど、MAツール導入・実装の成功確率は低いです。
自社の目標達成のために「本当にMAツールが必要なのか?メール配信ツールで同じことはできないか?社内の誰が実装できるのか?」と冷静に検討しましょう。
MAツールの導入を検討する際は最低限、次の条件が揃っているかを確認してください。
- お役立ち資料やブログ記事など、顧客が閲覧できるコンテンツが豊富にある
- インサイドセールスの体制がある、あるいは体制を整える予定
- ハウスリストが10,000件以上ある、あるいは今後増える予定
- 導入および実装の責任者、実装後の運用者がいる
- MAツールの実装経験がある人が自社にいない場合、ベンダー側が提供する導入支援サービスを支払える予算がある
上記がないと、導入しても成果を出すことは難しいでしょう。特に、責任をもって導入・実装を推進する人がいない場合、実装段階で失敗します。全体観を理解している人が最低一人は必要です。複数人で分業して、それぞれが細かいところを把握していても全体観がわからないと実装に成功するのは難しいでしょう。詳細は本記事の最後に記載します。
本プロジェクトの位置付け
本プロジェクトは、私がマーケティング支援を担当する株式会社ShirofuneにMAツールの導入を提案した形でスタートしたプロジェクトです。
※株式会社Shirofune様 事例インタビュー:コンテンツ作成からプライシング変更まで。深く入り込んだマーケ支援ができるのは才流ならでは
※本記事で紹介する件はShirofune様から承諾済
本プロジェクトの目標 |
無料トライアル数および中間指標である商談数の増加 ※具体的数値は割愛 |
MAツールの利用で やりたいことの概要 |
・既存リスト、失注リストを対象に掘り起こしたい ・ペルソナごとに最適化したコミュニケーションをしたい |
体制 |
導入・実装に必要なことを全て才流で実施 例) ・初期戦略設計 ・MAツール選定 ・実装 ・運用の設計 |
導入から実装、 運用開始までの期間 |
合計4ヶ月間 ・初期戦略設計とツール選定に1ヶ月半程度 ・導入から実装完了まで2ヶ月半程度 |
【初期戦略の設計フェーズ】MAツール導入にあたり、はじめに行ったこと
MAツールの導入を推進すると意思決定した後に、はじめに行ったことはチェックリストの作成です。
これから導入を推進する方は、ぜひ下記のチェックリストを活用してください。
※チェックリスト:MA(マーケティングオートメーション)ツールを有効活用するための60のチェックリスト
チェックリスト利用を推奨する理由は、検討事項の抜け漏れ防止と情報の可視化です。MAツールの導入を進めている際、例えば「ホットリードの定義って決まっている?」「先々週に話しましたよ」といった議論が起こりえます。MAツールの導入を兼務で行っていると尚更忘れやすいです。
こうした事態を避けるべく、チェックリストを活用して、検討事項をひとつずつ潰しつつ、誰がいつ見ても振り返りができるようにしましょう。
ちなみに、本フェーズで作成したチェックリストはMAツールベンダーと打ち合わせする際にも有効活用できます。内容を埋めたチェックリストを共有することで、自社とベンダー間で前提条件のすり合わせがスピーディーに、かつ正確にできます。自社にとっても、ベンダーにとっても双方にプラスです。
最低限、整理しておくべきこと
「チェックリストの数が多すぎて全部埋めるのは正直厳しいな...」と思われるかもしれません。そんな方に、最低限ここだけは整理しておくべきことを紹介します。
- そもそものMAツールを導入する目的
- MAツール導入による効果見込み
- ターゲットの定義
- ホットリード、コールドリードの定義
- MAツールを利用して実際に行う施策
- ツール選定の際、重視すること
それぞれ簡単に解説します。
そもそものMAツールを導入する目的
目的を言語化し、いつでも確認できるようにしましょう。当たり前のようですが、目的の言語化を怠るとプロジェクトが迷走する恐れがあります。
多くの場合、MAツール導入の目的は、マーケティング目標の達成を阻むボトルネックを解消するためでしょう。売上などの最終指標を達成するために、受注率、商談化率といった中間指標があると思います。各指標において、どの部分がボトルネックとなっているか、まず認識を揃えましょう。その上で「課題の解決策として、本当にMAツールが最適なのか?」を検討してください。
例えば、新規リードの商談化率を上げたいのであれば、インサイドセールスのプロに代行いただくという手段もありえます。代替案の方が短期・中長期ともに成果のインパクトも高く、実現難易度も低く、そして費用も安いという可能性もあります。
MAツール導入による効果見込み
前提として、MAツール導入による効果見込みの算出は難しいです。ただ、クライアント企業様や経営層に決裁をいただくためには、効果見込みの説明は欠かせないでしょう。
効果見込みの説明をするうえでは
- 目標に掲げている最終指標、中間指標をどれくらい達成できる見込みか
- 従来業務からツール導入後、どれくらい日々の業務コストが下がるのか
の2点を意識しましょう。
ターゲットの定義
ターゲットの定義は必ず行いましょう。LTVや顧客の課題、顧客が関心のある情報、優先度を整理することでどんなメッセージを伝えるべきか等、組織内で認識を統一できます。
◾️ ターゲット整理の例
項目 |
ペルソナA 病院
|
ペルソナB 建設
|
マーケティングにおける優先度 |
低 |
高 |
社数 |
200 |
20,000 |
月額ツール利用料単価 |
200万円 |
10万円 |
継続期間 |
36ヶ月 |
36ヶ月 |
LTV |
7,200万円 |
360万円 |
メイン施策 |
紹介経由の営業 |
マーケティング施策 |
現状 |
順調に獲得傾向 |
失注企業、既存リストへの アプローチが全くできていない |
顧客の情報収集源 |
カンファレンス、セミナー |
業界誌 |
顧客の課題 |
売上/利益率の低下 |
業務の工数 |
顧客が関心のある情報 |
集客 |
工数削減 |
ホットリード、コールドリードの定義
ホットリード、コールドリードも必ず定義しましょう。効果測定をする際にも便利です。どの施策やどのページから、どれくらいホットリード、コールドリードを獲得できているか簡単に可視化できます。
本プロジェクトにおけるホットリードとコールドリードの判断基準は、獲得したリードに架電した際に商談獲得ができるかどうか、でした。
一般的には、サービス資料請求は商談化率が高く、お役立ち資料(ホワイトペーパー)は商談化率が低いです。
つまりこの場合、サービス資料請求がホットリードで、お役立ち資料がコールドリードと定義できます。
例えば、下記のようにホットリード、コールドリードを定義しましょう。
-
ホットリード
- サービス資料請求
- 導入事例集
-
コールドリード
- お役立ち資料AのDL
- お役立ち資料BのDL
明確に定義しておくことで、MAツール実装の際にも役立ちます。例えば、HubSpotであれば、フォームやワークフロー、レポート作成において役立ちます。
MAツールを利用して実際に行う施策
MAツールを利用して実際に行う施策は、なるべく具体的に言語化しましょう。
ベンダーとの打ち合わせの際に、施策案を実現できるか否かをヒアリングします。
詳細はMAツール選定フェーズの章で後述します。
MAツールの選定後、実際に行う施策はより具体的に整理しましょう。この際、曖昧な整理はおすすめできません。具体的なTODOまで落ちていないと、関係者が次に何をやるべきかが不明瞭になるためです。いざMAツールを導入しても、プロジェクトの動きが遅くなり、関係者のモチベーションや当事者意識が下がります。
-
NG例
- シナリオメールで既存リスト向けにメールを配信
-
OK例(Hubspotの場合)
- コンタクトプロパティーに、企業規模というプロパティーを作る。選択肢として、大企業・中堅企業・中小企業を用意。別途、既存リストにおける大企業だけをピックアップしたリストをシステムにインポート。コンタクトプロパティーに、企業規模の情報を付与する。そして、大企業と中堅企業を対象に毎月1回メール配信。内容は個別勉強会の案内
◾️ 施策の具体例
No. |
施策内容 |
ツールの対応可否 |
1 |
フォームの入力内容によって、ペルソナごとにサンクスメールを出し分ける。ペルソナAにはA用のサンクスメールを、ペルソナBにはB用のサンクスメールを送付。フォームごとにそれぞれ作成する |
可 |
2 |
優先度の高いペルソナかつ、リードステータスが「未接続」か「ナーチャリング」、かつホットリードが料金ページか事例ページを訪問した場合、Slackに通知。インサイドセールス担当が架電 |
可 |
3 |
受注企業をリストアップ。受注企業のコンタクトが閲覧していたオウンドメディアの記事を特定。その記事と同じ方向性の記事を制作する |
可 (※) |
※補足:受注企業のコンタクトを検索し、コンタクトプロパティーから初回参照ページを見る。例えば、特定のブログが多くの受注企業に見られていた場合、受注に貢献する記事と判断できる。類似する方向性でコンテンツを制作するなどの打ち手を取れる。(参考記事:売上5倍の背景にある、オウンドメディアの隠れた貢献とは)
ツール選定の際、重視すること
ツール選定のために、検討軸と優先度をあらかじめ整理しましょう。
◾️ 具体例
※値はサンプルです
検討軸 |
優先度 |
ツールベンダーA社 |
ツールベンダーB社 |
使いやすさ |
高 |
◯ |
◯ |
MAでやりたいことができるか |
高 |
△ |
◯ |
SFA/CRMの連携度合い |
高 |
◯ |
◯ |
チャットツールの連携 |
高 |
△ |
◯ |
サポート体制 |
高 |
△ |
△ |
費用 |
中 |
◯ |
△ |
セキュリティ要件 |
中 |
◯ |
△ |
契約期間 |
低 |
△ |
△ |
利用ユーザー数 |
低 |
△ |
△ |
他社の活用事例がわかるか |
低 |
× |
◯ |
上記の中から、特に本プロジェクトで重視したことは「MAでやりたいことができるかどうか」です。
【MAツールの選定フェーズ】どのようにMAツールを決めるか?
才流では、特定のMAツールベンダーとパートナー契約を締結していないため、特定ツールにしばられず、クライアント企業様の課題解決のために最適なMAツールを選定しました。
本プロジェクトでは、次の流れでMAツールを絞り込み、最終決定しました。
- ①Web検索や信頼できる人からの口コミをもとに、導入企業にマッチする有力候補ベンダーを絞り込む
- ②有力候補のベンダーと打ち合わせ(デモ)を設定
- ③「MAツールでやりたい施策」をベースに、ベンダーにヒアリング
- ④最終決定
MAツールを選定する上で重要なのは、③のベンダーへのヒアリングだと考えています。
あらかじめ「MAツールでやりたい施策」を必ず用意した上で打ち合わせに臨み、遠慮せずMAベンダーに質問しましょう。質問を用意せずに説明を受けるだけの受け身の状態では、自社が知りたいことが聞けず、何となくの理解で打ち合わせが終了する恐れがあります。
MAツール導入の失敗確率が高いのは、曖昧な理解のまま進めることにあると思います。失敗を避けるためにも、事前に質問をリストアップし、打ち合わせで疑問点を解消しましょう。
場合によっては、担当営業の方に要望も伝えるのも良いでしょう。例えば私が推進したプロジェクトの場合、「こういうレポートを作成したいのですが、サンプルを出していただけませんか?」と、HubSpotの担当営業の方にお伝えしました。その際、HubSpotの担当営業の方が該当するレポートをスピーディーに用意くださったことも、HubSpot導入を決めた理由の一つでもあります。
なぜMAツールとして、HubSpotを利用することを決めたか?
https://www.hubspot.jp/products/marketing
数あるMAツールの中でなぜHubSpotを選んだのか。本プロジェクトにおいては、大きく下記4つの観点から最終判断をしました。
・MAツールでやりたい施策ができる(最優先)
デモの際に、ほぼ全てできることが判明
・ツールとしての使いやすさ
デモの際に、使いやすい印象を抱く。信頼できる人からも、使いやすいと伺っていた
※クライアント企業様にもデモに同席いただき、「HubSpotは使いやすそう」と双方で合意を得ていたこともポイントです。
・担当営業
説明の分かりやすさ、迅速・丁寧なご対応、キャンペーンの的確なご案内など
・CRM機能が無料で使える
CRMに蓄積された情報をマーケティング活動に活かせると判断。HubSpotをCRMとして利用することにしました。
当然ですが、やりたい施策や予算などは会社毎にケースバイケースです。どんなケースでもHubSpotがおすすめというわけではありませんのでご注意ください。
【実装フェーズ】HubSpot実装時につまずくポイント、注意点
続いて、HubSpot実装時につまずくポイントを具体的に紹介します。
最初は独特な概念や言葉遣いに戸惑うかもしれませんが、慣れれば心配ありません。
HubSpotにおいて、重要なトピックは6つあります。
- プロパティー
- フォーム
- インポート
- メール配信
- レポート
- ワークフロー
それぞれを詳細に解説します。HubSpotを利用しているがうまく活用できていない、あるいはHubSpotでどんなことができるか知りたい方の参考になると思います。
重要トピック①プロパティーについて
まず、プロパティーについて解説します。HubSpotを使いこなす上で、重要な概念であり、第一関門とも言えます。
まず、プロパティーにはいくつかタイプがあります。
- コンタクトプロパティー
- 会社プロパティー
-
取引プロパティー
etc.
ここでは重要ポイントを解説します。
コンタクトプロパティー
コンタクトとは、HubSpotに登録されている「人」の情報です。正確には異なりますが、いわゆるリードです。そしてコンタクトプロパティーとは、いわゆるリード情報を溜めるところです。
※私の場合は理解しやすいよう、頭の中でコンタクト≒リードと考えるようにしています。
コンタクトプロパティーの入力項目設計は非常に重要です。フォーム、レポート、ワークフローなど様々なことに関係します。慎重に設計しましょう。
まず、マーケティング・営業活動上、コンタクトごとにどんな情報が必要かを考えましょう。大事なことは、その情報を溜めることで何に活用するかです。何にも活用しないのであれば、記入が無駄です。適宜、新規追加・コンタクトプロパティーからの非表示を設定しましょう。
◾️ コンタクトプロパティーの具体例
項目 |
内容 |
情報蓄積の目的 |
備考 |
リードステータス |
・リード ・未接続 ・対応中 ・商談獲得 ・ナーチャリング ・Dead |
商談管理 |
※デフォルトの 内容を調整 |
オリジナルソース |
・オーガニック検索 ・検索連動広告 ・Eメールマーケティング ・ソーシャルメディア ・リファーラル ・他のキャンペーン ・直接トラフィック ・オフラインソース ・ソーシャル広告 |
効果測定 |
※HubSpotに デフォルトで存在 |
利用状況 |
・無料トライアル転換前 ・無料トライアル中 ・有料転換せず ・有料利用中 ・有料利用後に解約 |
無料トライアル への転換促進 |
※新規で作成 |
会社プロパティー
コンタクトプロパティーと会社プロパティーの違いは何か。包含関係としては下記の図のようになっています。
※筆者作成
そもそも会社プロパティーの必要性は何か。会社単位で保有すべき情報を保管する“箱”の役割を持ちます。
コンタクトごとに持つべき情報と、会社統一で持つべき情報は違います。例えば、姓名やEメールアドレスはコンタクトごとに管理すべき。一方、契約状況は会社ごとに管理するといったイメージです。
共通して理解しておくべきこと
コンタクトプロパティー、会社プロパティーなど共通して理解しておくべきことがあるため、いくつか紹介します。
・HubSpotのデフォルトのプロパティーは編集できないものがある。必要なものは自身で作成する
・プロパティーはコンタクトプロパティー、会社プロパティー、取引プロパティーそれぞれで作る必要がある
・レコードの設定とは、デフォルト or 新規作成したプロパティーの中からどれを表示させるか。プロパティーを作成するだけでは不十分。それぞれのレコードで何を表示させるかを設定する
・どんなレポートを出したいかあらかじめ決めておく。プロパティーはデータを保管する項目なので、保管された情報次第でレポート作成が可能かどうか規定される
HubSpotのデフォルトのプロパティーは編集できないものがあります。ただ、デフォルトのプロパティーは使い方次第では便利です。例えば、オリジナルソース(いわゆるチャネル)はデフォルトで設定されています。うまく活用することでプロパティーを新規作成する手間が省けます。
また、例えばコンタクトプロパティーに表示されるデフォルトの項目も、必要に応じて表示/非表示を切替できます。表示項目が多すぎると煩雑になるので適宜調整しましょう。
重要トピック②フォームについて
続いて、フォーム機能について解説します。フォームはプロパティー、Eメール、ワークフローなどと密接につながりをもっております。
ここでは、フォーム作成において実施してよかったことを紹介します。
フォームに名前をつける際、冒頭を工夫する
フォームに名前をつける際、冒頭のタイトルを工夫することで、ワークフローやレポート設定の際に役立ちます。
具体的には、フォームの各冒頭に【ホットリード】と【コールドリード】と名前を付与しました。
- 【ホットリード】サービス資料の無料請求
- 【コールドリード】セミナー資料の無料請求
※各フォームをホットリード、コールドリードごとにフォルダにまとめる
スムーズにフォームを設定できたのも、初期戦略の設計フェーズで、ホットリードとコールドリードを定義したおかげです。
企業様によっては、ホットリードやコールドリードではなく、MQLやSQLなどそれぞれ定義していると思います。重要なのは、他の担当者が見た時や、時間が経った後に、判断できるようにしておくことです。
フォローアップメールは活用せず、Eメールとワークフローを活用して情報がリッチなサンクスメールを送付する
本プロジェクトではフォローアップEメールは活用しませんでした。理由は、フォローアップEメールで送信できるメールは、シンプルなテキストメールしか送れないためです。
フォーム入力完了後、ターゲットごとに2タイプのサンクスメールを送付したいため、Eメールの自動送信タイプとワークフローを活用しました。
まず、フォームの中で顧客のターゲットごとに出し分けるフォームを決めました。例えば、DL数が多く、ターゲットごとに顧客ニーズが異なるサービス資料請求については自動送信メール(サンクスメール)の出し分けを行う。出し分けが不要なフォームは、一つだけ自動送信メールを作成するといったようにです。
- ABC向け|サービス資料請求への自動送信メール ※出し分け必要
- XYZ向け|サービス資料請求への自動送信メール ※出し分け必要
- XYZ向けお役立ち資料への自動送信メール ※出し分け不要
上記のようなイメージです。
自動送信メールとワークフローの活用については、重要トピック④で解説するのでそちらをご覧ください。
重要トピック③インポートについて
続いて、インポート機能について解説します。
そもそもHubSpotにおけるインポートとは何か。それは、顧客情報や会社情報などの取り込みのこと。
HubSpot利用前に別のシステム、例えばメール配信ツールで顧客情報を管理していた場合に、HubSpotへ顧客情報を移管させる場合に利用します。
HubSpotはCRM機能が無料です。元々、ExcelやGoogleスプレッドシートで顧客情報を管理していた企業様であれば、CRMとしてHubSpotを利用するのもおすすめです。
ちなみにHubSpotでは、コンタクトだけでなく、会社情報もインポートできます。
例えば、ABMを推進すべくターゲット企業のリストを用意していたとします。その場合、会社プロパティーとしてインポートすれば、例えば「ターゲット企業にだけ毎月1回商談を依頼するメールを送信する」といった施策も可能です。
マッピング機能が優秀
他のMAツールに比べ、HubSpotはマッピング機能が優れているためインポートが楽です。
マッピング機能はインポート対象のファイルにおいて、どの列の情報をHubSpotプロパティーのどこに移管させるかを指示する機能です。
ここでは、インポートするファイルとインポート先の対応関係を整理してください。
ちなみに、マッピング機能では特定の列をインポートしない操作も可能です。例えば、インポート対象ファイル「A」において、リードステータスはインポートしないといったイメージです。インポートすると各項目の情報は更新されてしまうため、「この情報は更新したくない」といったときに活用しましょう。
インポートの順番にはおすすめがあります。最も残したい情報を持つファイルを最後にインポートしましょう。例えば、最初にお役立ち資料のリード情報が入ったファイルを、最後にサービス資料請求のリード情報が入ったファイルをインポートするといったイメージです。
インポート時のエラー
インポート時にエラーは付き物です。エラー原因の特定は難しいことが多いですが、HubSpotでは、どこがエラーかを示すファイルをダウンロードできます。
※インポート時のエラーファイルが文字化けする時は、こちらを参考に
重要トピック④メール配信について
続いて、メール配信機能について解説します。
メール配信の前にやるべき設定
HubSpotでメール配信するために必要な設定を紹介します。
- Eメール送信ドメインの接続
- プライマリドメインの接続
この設定をしないと、顧客にメール送信をすると以下画像のようなアラートがメール冒頭に表示される可能性があります。
Eメール送信ドメインとプライマリドメインの接続をすることで、表向きは接続したメールアドレスにすることが可能です。ただし、実際にはHubSpotのドメインでメール自体は送付しているため、プロモーションタブに入ってしまうこともあります。
自社ドメインとHubSpotを接続し、自社ドメインからメール送信する方法の詳細は、HubSpot公式のヘルプページをご覧ください。
自動送信メールの活用法について紹介
Eメールタイプには3つあります。
- 通常送信
- 自動送信
- ブログ/RSS
ここでは、Eメールの自動送信の活用法について紹介します。
※通常送信は簡単なので割愛
本プロジェクトでは、サービス資料請求などフォーム回答後のサンクスメールに自動送信機能を活用しています。
この機能を活用してやりたいことは、ターゲットに応じて、サンクスメールを出し分けること。例えば、自社のターゲットが医療業界と建設業界だとしましょう。前提として、自社が提供するプロダクトでは医療業界と建設業界ではニーズが異なるため、訴求すべきメッセージも別にしたいとします。
その際に、フォームの回答項目、Eメールの自動送信、ワークフローを活用することで、ターゲットに応じてサンクスメールを出し分けることが可能です。
◾️ ターゲットごとに内容を変える具体例
※値はサンプルです。
フォーム名 |
ターゲット |
サンクスメール内のメッセージ |
サービス資料請求 |
医療業界 |
・医療業界向けサービス資料DLリンク ・医療業界の導入事例 ・医療業界向けデモ動画 |
サービス資料請求 |
建設業界 |
・建設業界向けサービス資料DLリンク ・建設業界の導入事例 ・建設業界向けデモ動画 |
実現方法としては、大きく3つのStepがあります。
- Step①:フォームの回答項目を準備
- Step②:自動送信メールを用意
- Step③:ワークフローをそれぞれ設定
まず、フォームの回答項目において、顧客が自社の業界(ex.医療、建設)などを選択できるようにしましょう。
◾️ フォームの具体例
※値はサンプルです。
フォーム名 |
会社名 |
氏名 |
メールアドレス |
貴社の業界を 教えてください |
サービス資料請求 |
※フリー入力 |
※フリー入力 |
※フリー入力 |
※選択制 :医療,建設 |
導入事例集DL |
※フリー入力 |
※フリー入力 |
※フリー入力 |
※選択制 :医療,建設 |
お役立ち資料DL |
※フリー入力 |
※フリー入力 |
※フリー入力 |
※選択制 :医療,建設 |
この設定により、顧客の回答に応じて、サンクスメールを出し分ける下準備が整います。
続いて、自動送信メールを作成しましょう。
HubSpotのメールテンプレートを活用することで、簡単にメール作成が可能です。
※ピンク枠:サンクスメール作成の際に利用したテンプレート
メールに盛り込みたい要素(テキストやボタン)をドラック&ドロップで簡単に作成できます。作り方は簡単なので、詳細は割愛します。
ポイントは、ターゲットに応じて、サンクスメールを作成することです。
◾️ 作成する自動返信メールの具体例
※値はサンプルです。
メールの名前 |
主な内容 |
医療業界向け|サービス資料請求への自動返信メール |
・医療業界向けサービス資料DLリンク ・医療業界の導入事例 ・医療業界向けデモ動画 |
建設業界向け|サービス資料請求への自動返信メール |
・建設業界向けサービス資料DLリンク ・建設業界の導入事例 ・建設業界向けデモ動画 |
医療業界向け|導入事例集DLへの自動返信メール |
・医療業界向け導入事例集DLリンク |
建設業界向け|導入事例集DLへの自動返信メール |
・建設業界向け導入事例集DLリンク |
医療業界向け|お役立ち資料DLへの自動返信メール |
・医療業界向けお役立ち資料DLリンク |
建設業界向け|お役立ち資料DLへの自動返信メール |
・建設業界向けお役立ち資料DLリンク |
※複製機能を活用することで効率化可能
続いて、ワークフローの設定をしましょう。
テキストだけでは分かりづらいため、実際のワークフローの画像を記載します。
ポイントは、見込客(コンタクト)によるフォーム入力を発火条件に、if/then分岐で回答に応じて自動送信メールを出し分けることです。
上記を各フォームごとに設定すればワークフローの設定は完了です。
本トピックで紹介したことを応用すれば、例えば顧客の企業規模に応じてサンクスメールの内容を出し分けるといったことも可能です。
なお、if/then分岐を活用できるようになると、ワークフローでできる幅が広がります。ぜひ習得してください。
重要トピック⑤レポートとダッシュボードについて
続いて、レポート機能について解説します。HubSpotのレポート機能は優れています。
ゼロからレポートを作りたい時に利用する、カスタムレポート機能
ゼロからレポートを作りたい時はカスタムレポート機能を利用しましょう。慣れるまでは、少々理解が難しいので重要事項をお伝えします。
カスタムレポート機能において、重要なポイントは下記です。
- 何のレポートを作成するか
- オブジェクトは何か
- 何のプロパティーを選択するか
- フィルター機能
- ダッシュボード機能
はじめに、「何のレポートを作成するか」を選択しましょう。よく利用するのは単一オブジェクトです。この内、一つを選択すると、右側に詳細が表示されます。
例えば、単一オブジェクトから「コンタクト」を選択すると、下記のような画面が表示されます。
画面左側にある「選択したプロパティー」次第で、レポートに表示する値が決定されます。
新規追加/選択解除も可能ですが、コンタクトプロパティーに限定されることにご注意ください。先ほど「単一オブジェクト」および「コンタクト」を選択しているため、会社プロパティーや取引プロパティーを選択できません。
また、画面左上側にある「フィルター」が重要です。レポートにおいて、何を分母にするかが決定されます。例えば、期間を一定期間に絞ったり、どのページ経由のコンタクトか絞ったりできます。
プロパティーとフィルターの設定完了後、チャートタイプの選択と表示内容を選択すると、データが表示されます。レポートが完成したら保存して、ダッシュボードに追加するか否かを選択しましょう。HubSpotにおけるダッシュボードとは、特定のレポートを集めたレポート群です。マーケティングダッシュボードや、セールスダッシュボードなど、自社にとって管理しやすいダッシュボードを作成しましょう。
ちなみに、HubSpotにはレポートライブラリ機能があり、デフォルトのレポートが140種類(2020年12月時点)用意されているので、それらを活用するのも良いでしょう。
【まとめ】MAツールの実装に失敗しないために
MAツールの導入・実装は難易度が高いと言われていますが、本プロジェクトでは、HubSpot Marketing Hubの導入・実装に成功しました。成功要因はいくつかありますが2つ紹介します。
① HubSpotの導入支援担当の方が、MAツールに大変詳しかった
② マーケティング戦略/施策の全体像を理解している担当者がHubSpotの全体像を理解したうえで、導入から実装まで一人で推進した
②について補足です。私個人の意見ですが、MAツールの実装はなるべく分業をおすすめしません。可能であれば、全体像を理解した一人が細部の実装まで責任をもって推進するのがおすすめです。
あるいは、“実装を含めた”全体像を理解する責任者を一人置き、そのディレクションのもと、それぞれが実装を推進すると良いでしょう。ポイントは実装方法まで理解している人を置くことです。MAツールの戦略設計まではできるものの、実装まで理解していない場合は実装フェーズで苦労します。
「一人で導入から実装まで推進するなんて、大変では?」と思われるかもしれません。実際、大変です。ではなぜ、一人が責任をもって推進することをおすすめするのか。それは、HubSpotがプロパティーやフォーム、ワークフローなどそれぞれが緻密につながっているためです。
「プロパティー“だけ”理解している。他はよく理解していない」といったように、それぞれが実装作業を担当していては、細かい点でズレが生まれやすいからです。細かいズレが複数生まれることで、本来やりたかった施策が実現できない恐れがあります。
正直に言って、MAツールは全体像を理解する難易度が高いのに加えて、実装にかかる工数も多い点が厄介です。多くの企業では、一人で導入・実装を推進するのは難しいでしょう。本プロジェクトもクライアント企業の株式会社Shirofune様や、同社のインサイドセールスを支援くださるパートナー企業様との協力があったからこそ、無事に実装できました。
私が強調したいことは、何人体制で推進しようが、MAツールのプロジェクトを成功させるためには責任者の熱意が必要ということです。
ラクスル株式会社 取締役CMOの田部氏が『たったひとりの「熱狂」が新しいサービスを生む」とおっしゃっていますが、それに近いと感じています。
※画像参照:中小・ベンチャー企業こそ「運用型テレビCM」を。 ラクスルが目指すマーケティングの民主化とは。
HubSpotは大変優れたツールです。MAツールとして使う分にも、とても便利です。しかし、いくら良いツールと言えど、成果が出るよう上手く扱えなければ意味がありません。
本記事で紹介したことは私の経験談なので、鵜呑みにせず適宜参考にしていただければと思います。少しでもお役に立ったようであれば幸いです。
なお、運用フェーズについては別記事で解説予定です。
才流では、MAツールの導入・活用支援・実務代行サービスも提供しております。HubSpotの導入・実装・活用支援に興味のある企業様はお問い合わせください。