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TimeRexは最初の100社の顧客をどう開拓したのか?

新規事業
コンサルタント
黒須 敏行

今回は、弊社コンサルタント黒須のYouTube動画「TimeRexは最初の100社をどのように開拓したのか」を記事化してお届けします。fondeskBizerboardに続く、「最初の100社シリーズ」第4弾です。

GoogleカレンダーやOutlook予定表と連携しビジネス上の日程調整を自動化するサービス「TimeRex」。2020年にローンチした同サービスは最初の100社の顧客を、どのように開拓してきたのでしょうか。

TimeRexを提供するミクステンド株式会社の代表取締役 北野 智大さんに話を伺いました。

日程調整を自動化しビジネスをサポート「TimeRex」とは

黒須:まず、TimeRexとはどのようなサービスなのかを教えてください。

北野:TimeRexはGoogleカレンダーやOutlook予定表など、普段利用しているカレンダーツールと連携し、日程調整を自動化するサービスです。2021年5月に登録者数は3万人を超え、日程調整の件数は累計20万件のご利用をいただいています。

(参考)日程調整自動化ツール『TimeRex』、リリースから約1年半で日程調整件数20万件を突破 | ミクステンド株式会社

【TimeRexが解決すること】

  • 予定の候補日程を自動でリストアップ
  • 日程調整が完了した予定を自動でカレンダーに登録
  • Web会議のURLを発行し相手に送信
(出典:TimRexサービスページ)

TimeRexを無料で試してみる

黒須:TimeRexの収益モデルはフリーミアムモデル。基本の料金は無料で、利用したい機能があれば有料プランを選択できるわけですね。

北野:そうですね。最初は開発リソースの兼ね合いもあり、無料プランだけでローンチしました。3か月後に、有料プランを出しました。年払いで750円(月払い900円)のベーシックプランと、年払い1250円(月払い1500円)のプレミアムプランがあります。

黒須:プランの価格や、ターゲットはどのように決めましたか。

北野:TimeRexのベースになった当社の自社で運営している店舗の予約受付サービスの価格と、海外の似たようなサービスを参考にして決めました。

当初ターゲットにしていたのは、中規模以下の企業でした。日程調整ツールはセキリティが重要になるので、いきなり大企業に導入してもらうのは難しいと思ったんです。

TimeRexは事業部単位で導入できるので、1社あたり10〜20人程度のチームにまずは使っていただこうと考えていました。

黒須:有料プランが月額750円とすると、1社あたりの年間売上は8万円程度ですね。有料プランの獲得に使える予算はかなり限られますね。

北野:おっしゃるとおりです。単価が安いため、営業がすべてのお客様を丁寧にケアするのは難しく、Webサイトなどを活用したデジタルマーケティングがやはり重要になってきます。

黒須:御社では、飲み会などの日程調整に活躍している「調整さん」も運営されていますよね。TimeRexが生まれたのは、どのような経緯だったのでしょうか。

北野:もともと「調整さん」はリクルートが運営をしていて、私もサービス開発として携わっていました。3年前にリクルートが「調整さん」の開発をいったん停止することになり、そのタイミングで私が事業譲渡を受け、独立して今に至ります。

当時、「調整さん」とは別に、店舗の予約受付用の「調整さんカレンダー」も提供していたのですが、それがビジネスの日程調整にも利用されていることがわかったんです。ただ、店舗の予約受付とビジネスの日程調整だとサービスの性質も異なるので、より使いやすい別のプロダクトとして、TimeRexを開発しました。

初期無料ユーザーの獲得と有料プランへの転換戦略

黒須:サービスリリース後、まずどのようなところから利用ユーザーを開拓したのですか?

北野:まずはフリープランの利用者を増やすために、泥臭く自分たちで利用することから始めました。人材や営業、マーケティングなどの支援サービスの営業をいただくことがあったので、機会があるごとに「日程調整をTimeRexでやりませんか?」とお願いをしていました。

当時はがむしゃらにやっていたので、正確に効果測定はできていません。でも、平均して1日2件くらいの営業に対し利用のお願いをしていたので、数はそこそこ担保でき、効果もあったと思っています。

今では営業提案を受ける際、TimeRexのURLが送られてくることもあり、嬉しい限りですね。

黒須:フリーミアムモデルだと、有料プラン契約の獲得も必要ですよね。どのように取り組まれたのでしょうか。

北野有料プランユーザー獲得のためにやったことは、開発がメインですね。利用の傾向を分析して必要な機能を決め、それを素早く実装することです。そうやって新たに実装した機能を有料プランでのみ利用できるようにし、アップグレードしていただけるユーザーを増やしています。

黒須:利用ユーザーが求めている機能を特定して課金ポイントにするんですね。

北野:はい。すでに利用している機能を後から有料にはできないので、利用ユーザーが求めているものを見つけて新たに開発する形です。ですから、ユーザーのデータ分析は重要です。ユーザーが入力した設定を分析し、ヒアリングを実施することもありました。

例えばこれは課金ポイントにはしていませんが、コロナ禍になってからオンラインミーティングのURLを同時に複数の方に送る方や、移動時間がなくオンラインミーティングを前提とした日程調整をする方が多いことがわかりました。実際にユーザーにヒアリングをしたところ、「日程調整自体は効率化できているものの、その後のオンライン会議の準備までは自動化できていない」との課題も浮き彫りになりました。そこで、Zoomとの連携機能をリリースしました。

黒須:ヒアリングの効果は大きくありそうですね。

北野:そうですね。基本的に導入はセルフサーブ型ですが、導入規模が大きいお客様には、一部商談をさせていただくケースもあります。そこで実際の声を集め、日程調整に関する課題を見つけたり、新たに実装しようとしている機能についてフィードバックをいただいたりしています。ヒアリングは製品開発にかなり役立ちますね。

黒須:有料への転換を促進するうえで、機能開発や使いやすさの向上は欠かせなかったということですね。

「使いやすく説明いらず」なサービスが、クチコミを生む

北野:TimeRexは特性上、ユーザーだけでなく、ユーザーが日程調整をする相手の方も使いますよね。非ユーザーだった相手の方がTimeRexを体験し、良さを感じてもらい、また使っていただく。そこから、また他の方にもクチコミ的に利用者が増えるようなサイクルを作ることに重点を置いています。そこで獲得した見込み顧客に、事例や機能の説明などをWebサイト上でうまく展開していくようにしています。

便利で使いやすいツールであれば「今度は自分がこれを使って誰かと日程調整してみよう」と思っていただけるはずなので、どれだけサービスが使いやすく、説明いらずで操作できるかは重視していますね。

黒須:サービス開発を続けていくと、サービスに対して自分が最適化されていく気がします。いつのまにか、使いにくい部分に気づかなくなってしまうこともあると思うのですが、分析はどのようにされていますか。

北野:大きな指標で言えば、日程調整するページの「日程調整完了率」をチェックしています。そもそもTimeRexが使いづらく、多くの離脱が発生していれば、存在価値はありませんよね。操作の簡単さと素早い日程調整のためのサービスですから、パフォーマンスに関するチューニングは頻繁に行っています。

黒須:データとヒアリングをもとにプロダクトを改善し、ユーザーが増える。また、TimeRexを利用した人も、導入してユーザーが増えるという流れですね。

北野:そうですね。新機能をリリースしても知ってもらえなければ意味がないので、リリースや導入事例なども積極的に制作しています。

TimeRexの概念は理解したものの、自分がそれをどう使うのかイメージしにくい方も多いんです。「自社ではどんな形で利用できるのですか?」とお問い合わせいただくことがよくありました。

でも、導入事例を公開してからは「事例の使い方を見て、さらに自社では最適化してこう使いたい」と、一歩踏み込んだ内容のお問い合わせをいただくようになりました。お客様の中で、自分事化するんですね。

黒須:事例の閲覧からの契約などは、トラッキングされていますか。

北野:Google Analyticsでお問い合わせの経路はわかるようになっているので、どの事例が見られていて、問い合わせにつながっているのかは確認しています。

ローンチ時はユーザーが求める機能だけを実装すればいい

黒須:これはちょっとやりすぎたな、やらない方が良かったなという施策はありますか?

北野:マーケティング施策ではないのですが、私がもともと開発出身ということもあり、サービスをより良く作り込もうとしすぎたことがありました。

特に最初のローンチ時は、良いものを出そうとこだわりすぎてしまって。リリースの時期ギリギリまでバタバタしたり、1回目のリリースに間に合わなかったものもありました。

日程調整ページのパスワード保護機能などは、まさにそれでした。そもそもURLを知らなければそのページにアクセスされることはないのですが、セキュリティを強化するために必要なんじゃないかと検討したんです。

でも、実際にはURLもランダムであり、不要な機能だったんですよね。結局ギリギリで実装せず、今もお客様からセキュリティ部分について要望を受けることもありません。

余計な機能を実装しないことは、プロダクト開発において重要ですね。ユーザーの本当に必要なものだけを、最低限使いやすい形に実装してローンチするのが良いと思います。

黒須:ありがとうございました。最後に、伝えたいことはありますか。

北野:今でこそ日程調整ツールが徐々に浸透してきましたが、日本全国やグローバルで見れば、まだまだ日程候補を自分で入力して相手に送るケースが多くあります。

日程調整は時間がかかるだけでなく、不便で、ミスも起こりやすいですよね。まずは無料で使えるTimeRexを、多くの方に使っていただきたいと思います。

まとめ

初期の無料ユーザーを地道に獲得し、ユーザーニーズに沿った開発を続けることで有料ユーザーへつなげてきたTimeRex。

「立ち上げ初期は、1人でも多くの方に使ってもらいたい」ーー泥臭く営業する姿勢は、これまで最初の100社シリーズで話を伺ってきた企業と共通する、成功へのポイントだと感じました。

また、「使いやすく、説明のいらないサービス」を追求することで、体験する人やクチコミする人を増やすという同社の戦略は、シンプルでありとても本質的だと思います。

サービス立ち上げ初期で、ユーザーを獲得したい方、認知を獲得したい方は、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

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