企業や事務所の電話の一次受けを代行するサービスである「fondesk(フォンデスク)」。2019年にローンチした同サービスは最初の100件をどのようにして契約したのでしょうか。
本記事では、「fondesk」を提供する株式会社うるるの事業責任者である脇村 瞬太氏と、当社コンサルタントの黒須 敏行によるYouTubeの内容を、記事にして紹介します。
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電話代行サービス「fondesk」の概要と現状
黒須:fondeskについて教えてください。
脇村:fondeskは、企業や事務所の電話の一次受けを代行するサービスです。
われわれが抱えているオペレーターが受電して不在折り返しの対応をし、受電した内容はChatworkやSlack、Eメールなどで要約して報告されます。
主なメリットは以下のとおりです。
- オフィスで電話が一切鳴らない
- オフィスでも、外での商談でも、その後に自分のタイミングで必要な折り返し電話が可能
黒須:一般的な電話代行サービスと異なるポイントはどこですか?
脇村:お客さまの目的からの見ると、他社との大きな違いはありません。
- オンラインですべて手続きが完結
- セルフサーブでSlackとのインテグレーションが可能
- オプションのON/OFFが切替可能
- 受電のタイミングの選択が可能
例)9時から19時の間で15分刻みで任せる時間を選ぶ
競合他社のサービスと異なる点は、月1万円のシェアードのサービスとして展開している点。シンプルなWebサービスであることが他社サービスと異なると思っています。
黒須:ちなみに、当社でも契約をしているのですが、非常に便利で、もうなくてはならないサービスです。
fondeskの契約件数
黒須:IR上で出している契約件数を教えてください。
脇村:2020年の3月末時点で、346件の有料ID数を対外的に報告しています。その後1回だけプレスリリースを出して、4月では500件のID、現在では1,000IDを突破しています。
現在はアクティブユーザー数をその日時点で発表しています。
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黒須:新規事業の立ち上がりとして、社内の評判はいかがですか?
脇村:今までにない立ち上がりのスピードがよく、事業化も正式に決定し、IRも出しているので、「0→1」のフェーズがが終わった認識です。今は次のフェーズである「1→10」を実行しています。
成功のきっかけは、ユーザーインタビューだった
黒須:まず私が気になった施策としては、脇村さんが以前仰っていたユーザーインタビュー。
脇村:サービスを作る前、知り合いの経営者何人かに「こういうサービスがあったら使いますか?」と聞いていましたね。
黒須:どのような方に、何人くらいに聞いたんですか?
脇村:ライトなメッセンジャーでのやり取りも含めると、僕が直接インタビューしたのは合計で10人以上、対面だと5~6名くらいの方に聞きに行きました。多くは企業の役員クラスや部長クラスなどの意思決定者でしたね。
紙に書いた受付メモのイメージを渡し、実際にサービスを疑似体験してもらいます。本当にまだモックもできる前からコンセプト、金額感、実際に得られる便益をお伝えして「実用できますか?」と。
実用のメリットを感じていなさそうな反応なら、
- 何があれば使うのか
- 誰が決めますか
- こういう事・こういうサービスを使うかどうか
などの話を、稟議経路を知りたかったので、詳しく聞いていました。
黒須:ヒアリングの反応を教えてください。何人中何人が実用化を求めてくれましたか?
脇村:実は、最初からほとんどの方が実用を考えてくれました。ニーズをしっかりキャッチしたアイデアだったんだと思います。
月額1万円の範囲であれば、企業の予算感としてはトライできることもわかりました。契約のON/OFFが可能である点からリスクが少ないとしっかり伝えることもできました。
ヒアリングの場で、「リリースしたら導入するから教えてね」という返事を多くいただけていました。
黒須:脇村さんが立ち上げられた別の新規事業も同様のプロセスを経ていたんですか?
脇村:お恥ずかしながら、ここまでしっかりユーザーインタビューを行い、それをもとサービスをつくっていったことは初めてでした。
いくつかの新規事業の失敗を繰り返してきている中で、立ち上げ後にユーザーインタビューやればよかったと思うことも、立ち上げた後にユーザーインタビューが効果的であった経験もありました。
まだアイデアの段階でもユーザーインタビューを行うことに価値があると思い、「fondesk」でも実践していきました。
「fondesk」は最初の100件の契約をどうとったのか
黒須:通常、サービスのリリース直後に広告打っても反応がないと思います。そのため、まずは知り合いに導入をお願いし、そのあとは獲得単価が右肩上がりになる。あるあるですね。
fondeskの契約数は、右肩になだらかに伸びていった印象がありました。100件の契約を取るまでの道のりを教えていただきたいです。
脇村:リリースした2019年2月のタイミングが良かったです。
弊社は1期が4月から翌3月までの区切りです。そのため、年度によって2〜3月は利益余剰のため、投資できるお金が潤沢にある時期なんです。
「新規事業としてこれから3〜6ヶ月の間に様々なトライをしていく。じゃあ、リリース初期の段階で、できるトライはなんだろう?」と役員の人とも話していました。そこで、初めの2ヶ月くらいは、数百万円単位でメールマガジンや、Fecebook広告、Googleリスティング、記事広告などをトライしました。
結果としては、Fecebook広告と記事広告がタイミングも合っていてやって良かった施策だと思いました。
認知獲得のため、『LIGブログ』に記事広告を出稿
黒須:LIGブログへの記事広告は、fondeskから打診したんですか?それともLIGさんから営業が来たのでしょうか?
脇村:こちらから打診しました。記事広告をやりたいと思ったとき、LIGブログの読者には、我々が元々ターゲットにしていた層がすでに多くいました。また、我々からオーダーした記事の内容と近い記事が多く載ってたんです。
LIGブログにはBtoB商材で「〇〇を使ってみた」系の記事が多く、気になる実績も多かった。LIGさんとはまったくリレーションがない状態でしたが、一度問い合わせをして、実際に企画も組んでもらいました。
LIGさんからいただいた企画を見たとき、「これなら数件、いや数十件の受注が取れるかもしれない」と思ったので、記事広告の出稿を決めたんです。
黒須:脇村さんの中で、資料請求やアカウント発行など、BtoBサービス、主にSaaSのCAC(顧客獲得単価)の相場感を教えてください。
脇村:CACの公式について、多く調べてみたところ、許容CACはLTVの3割ぐらいまででした。サービスの単価と想定チャーンレートをもとに、許容CACを算出し、目算を立てました。
算出したCACと合う可能性が髙そうな施策から予算の許す限り順に試していきましたね。
実際に取れ高を1週間スパンくらいでウォッチしながら広告費の上げ下げをして、全体の獲得数は伸ばせるようにチューニングしていきました。
市場的に「電話代行」は空いていた
黒須:fondeskは記事広告や様々な媒体の広告出稿によって、指名検索数が日を追うごとに伸びていきましたよね。
どこまで狙ってやったのか、それとも自然に指名検索数が伸びたのか。実際いかがでしたか?
脇村:1回目の記事広告の『LIGブログ』が上手くいったとき、記事広告施策が指名検索に繋がる肌感を得ました。電話代行の中から探すではなくて、fondeskを知って使うか使わないか。
マーケティングの用語で言う、想起集合の考え方です。例えば、実際にあるサービスを思い浮かべたとき、思い浮かんだ上から3つしか選択肢に入らないと思います。
そもそも電話代行って、「どこの会社の電話代行がいい」というイメージを僕らの周りに頭の中で言える人がいないと思ったんです。
色んな話を経営者の人へヒアリングに行ったとき、挙がるサービス名はトランスコスモスさんや、ベルシステムさんなど。「もし、『fondesk』という名前を覚ぼえてもらえば、3位や2位に入れるかもしれない。市場的にまだ空いている」と思ったんです。
細々とリスティング広告で顕在層を獲得していくのではなく、しっかりと「fondesk」と指名していただく余力はあると思っていました。
認知タイミングの継続により、指名検索増加へ
脇村:指名検索は、2019年の夏からずっと意識していました。指名検索を増やすために意識したことは、3ヶ月ごとのペースで記事広告を仕込んで話題に上がるようにし、検索数を増やすことです。
黒須:3ヶ月、これは過去の経験に基づく数字なんですか?
脇村:記事広告とは直接関係のない話なのですが、きっかけは以前受けた、ビズリーチさんやラクスルさんが、テレビCMを打つタイミングの戦略についてのセミナーです。
ビズリーチさんはずっとテレビCMをやっている印象ですが、実はスポットで出稿料の上げ下げをしているそうです。ずっと広告費を投下し続けると、むしろROIが低下するらしく。
ただ、一度テレビCMなど大きな施策で指名検索の山を作り、そのあとは同じ動画をYouTube広告やタクシー広告で流し、出稿費の部分を押さえていく。
このように「継続した認知タイミングがある状態を作ると、だんだん指名検索数が引き上がっていく」という話をセミナーで聞いて、もしかしたら記事広告でも同じなのでは、と思いました。
黒須:コスパ重視の記事広告施策のような発想ですね。
脇村:無制限に記事広告を打てる会社ってほとんどないです。タイミングを固めるのではなく、クォーター区切りぐらいで分散していく考え方は有効だと思います
さいごに
黒須:ありがとうございました。最後に伝えたいメッセージはございますか?
脇村:いまfondeskは「電話が嫌い」や「着電が煩わしい」などの課題に対して、電話代行と売り出しています。
ただ、新型コロナウィルスの感染拡大によって、リモート勤務が続いている会社や、オフィスを解約した会社などは、いま増えていると思うんです。
そのような会社さんに駆け込み的に使っていただく機会は増えていて、これからは、社内の業務フロー改善や、リモートとオフィスを併用した働き方という文脈にもフィットすると思っています。
今までご存知なかった方、検討されなかった方は、ぜひ1回サービス見ていただけたら嬉しいです。
【事例】才流の価値は「マーケの域を超えた支援」、ビジネスそのものの改善や好循環を生んだ|fondesk
fondesk / フォンデスク 運営チーム|note
才流・黒須の逆転ルール|YouTube
話者紹介
(右)株式会社うるる fondesk事業部 部長 脇村 瞬太氏 @shwkmr
(左)株式会社才流 BtoBマーケティングコンサルタント 黒須 敏行 @kurosutoshiyuki
<文・編集=中島 孝輔 @KosukeNakajima_ 写真=矢野 拓実>