新規事業はどれだけ素晴らしいアイデアがベースになっていたとしても事業として成功するかどうかは別の話です。アビームコンサルティングが実施した大手企業における新規事業の実態調査によると、検討した事業から立ち上げに至る確率は45%、単年黒字化に至る確率は17%、中核事業にまで育つ可能性は4%しかないという結果でした。
新規事業が失敗する理由はさまざまですが、事業を成功させるためには、顧客の課題やニーズ、競合他社との差別化、最適なコミュニケーション設計、適切なコスト管理など検討すべきことは複数あります。
複雑な要素が絡み合って事業は成立しているわけですが、事業の構造を可視化するのに使えるフレームワークが「リーンキャンバス」です。リーンキャンバスは事業を構成する9つの要素を1枚の用紙にまとめることで、ビジネスモデルの全体像を俯瞰でき、各要素の整合性がとれているかを確認できます。新規事業の落とし穴となり得る要素を網羅しているので、リスク回避にも役立ちます。
本記事では、新規事業の担当者やスタートアップ起業家へ向けて、リーンキャンバスの概要と書き方のポイントをご紹介します。項目ごとに、才流(サイル)コンサルタントによるアドバイスを記載していますので、ぜひお役立てください。
- リーンキャンバスとは
- リーンキャンバスの優れている点
- リーンキャンバスの書き方
- 1. 顧客セグメント(Customer Segments)~顧客は誰か~
- 2. 課題(Problem)~顧客の課題は何か~
- 3. 独自の価値提案(Unique Value Proposition)~課題を解決する価値はあるか~
- 4. 解決策(Solution)~どのように顧客の課題を解決するか~
- 5. チャネル(Channel)~価値をどのように顧客へ届けるか~
- 6. 収益の流れ(Revenue Streams)~どのようなタイミングでいくらかの収益を獲得するか~
- 7. 主要指標(Key Metrics)~成功を測る指標は何か~
- 8. コスト構造(Cost Structure)~価値を提供するのにどのくらいのコストがかかるか~
- 9. 圧倒的な優位性(Unfair Advantage)~他社が真似できない強みは何か~
- リーンキャンバスのテンプレート
- リーンキャンバスが書けたら検証すべきこと
- リーンキャンバス作成時によくある質問【Q&A】
- まとめ
- 才流がわかる3点セット(会社概要・支援実績・サービスの特徴)をダウンロードする
リーンキャンバスとは
リーンキャンバス(Lean Canvas)とは、スタートアップや新規事業のビジネスモデルを可視化するためのフレームワークです。事業計画書の叩き台、顧客や株主への説明資料、構想段階のラフスケッチなど、幅広いシーンで活用できます。
リーンキャンバスは新規事業向けのビジネスモデルキャンバス
もともと、ビジネスモデルを視覚的に表現した「ビジネスモデルキャンバス」というフレームワークがあります。事業の拡大や付加価値を検討する際に活用されますが、これを新規事業向けに作り変えたものがリーンキャンバスです。
リーンキャンバスはビジネスモデルキャンバスをベースに、新規事業開発の無駄を減らす「リーン・スタートアップ」の考え方を反映させたものであり、『Running Lean ―実践リーンスタートアップ』の中で紹介されています。そのため、スタートアップがPMF(※)を達成するために重要となる要素が多く取り入れられています。
※PMF:ピーエムエフ/Product Market Fitの略。商品が顧客のニーズを満たし、正しい市場に提供されている状態。商品がPMFしていると、商品が顧客に引っ張られるように売れていき、顧客が商品を使い続けてくれたり、口コミによって他の顧客を連れてきてくれたりする。
※関連記事:PMFとは?読み方と定義、PMFしている状態のシグナルを解説
リーンキャンバスの優れている点
才流でも新規事業をご支援する際は、リーンキャンバスを活用してレビューを行っています。リーンキャンバスが優れている点について解説します。
スタートアップのリスク要因を網羅している
リーンキャンバスは、スタートアップが失敗を避けるために、リスクになる要因を網羅的にチェックできるフレームワークです。
たとえば新規事業では、以下のような失敗がよくあります。
- 「高機能で素晴らしい製品だと思って販売したが、市場が存在しなかった…」
- 「見込み顧客にアプローチするための有効なチャネルがなかった…」
- 「収益化の見通しが甘く、黒字化する前に資金がなくなってしまった…」
特に、製品以外の検討事項を後回しにした結果、失敗するというケースは珍しくありません。不確実性が高い新規事業では、リスクを最小限に抑えることがカギとなります。
組織・チームの共通言語にできる
不確定要素が多く、手探りの新規事業について議論するには、個人の頭のなかにあるビジネスモデルをアウトプットし、「可視化」することが第一歩となります。リーンキャンバス上にアイデアを書き起こして言語化することで、立場の違うメンバーともスムーズに議論できます。
手軽に作成・編集できる
顧客情報が少ない新規事業では、時間をかけて精緻に事業計画書を作成するよりも、小さな仮説検証を繰り返しながら軌道修正していくことが重要です。リーンキャンバスは手軽に作成・編集できるため、新しく得た情報や仮説を素早く反映できます。柔軟性が求められる事業開発に適したフォーマットといえるでしょう。
リーンキャンバスの書き方
リーンキャンバスの各項目の書き方について説明します。項目ごとに才流コンサルタント・野田によるアドバイスもご紹介していますので、ブラッシュアップのヒントとしてお役立てください。
リーンキャンバスを書く際の順番
各項目には、目安として番号が振られていますが、うまく書き出せない場合は順番にとらわれる必要はありません。リーンキャンバスは、順番に書いていくことでロジックを作るというより、各項目を行ったり来たりしながら加筆修正し、全体の整合性を取るものだからです。
構想の初期段階の場合、まずはアウトプットすることが大事。100点満点を目指さず埋められるところから埋めてみましょう。
1. 顧客セグメント(Customer Segments)~顧客は誰か~
自社製品・サービスの対象となる顧客セグメントについて考えます。
経営資源が限られているスタートアップや新規事業では、いきなり幅広いターゲットを狙うことは難しく、「選択と集中」が大事。最初は粗くても構いませんが、共通のニーズを持つ顧客層に切り分け、なるべく絞り込みましょう。
顧客セグメントの切り分け方(セグメンテーション)の例を以下にご紹介します。
【BtoCの場合】
- 人口統計軸(年齢、性別、職業、家族構成、学歴 etc.)
- 地理的軸(地域、都市規模、人口密度 etc.)
- 心理的軸(価値観、嗜好性 etc.)
- 行動面の軸(購買頻度、追求する便益 etc.)
【BtoBの場合】
- 人口統計軸(企業規模、売上高、日本標準産業分類 etc.)
- 組織のタイプ軸(メーカー、病院、農家 etc.)
- 地理的軸(立地、地域 etc.)
- 製品の種類軸(SaaS、部品メーカー、原材料メーカー etc.)
- 購買状況のタイプ軸(本社一括発注、事業部ごと発注 etc.)
- 調達先忠実度軸(供給業者の変更の頻度)
- 互恵(ごけい)性軸(互いに購入する関係、または一方的に買うだけ)
参考:沼上幹『わかりやすいマーケティング戦略』より一部修正して掲載。
顧客へのインタビューで仮説をブラッシュアップしましょう
顧客に関する一次情報がない段階では、仮説ベースで顧客セグメントを特定するしかありません。その場合、見込み顧客へのインタビューやテストマーケティングを通して、その仮説をブラッシュアップしましょう。
顧客の特定プロセスについては、以下に紹介するPhotosynth(フォトシンス)社「Akerun」の事例が参考になります。
※関連記事:営業をサボらずやり切ることがPMFを手繰り寄せる。徹底的な顧客ヒアリングで方向転換、AkerunのPMFストーリー
アーリーアダプター(Early Adopters)~最初の顧客は誰か~
「顧客」欄のなかに、補助として「アーリーアダプター」という項目があります。
アーリーアダプターとは、新しい製品の普及率を示す「イノベーター理論」において、情報感度が高く、問題解決のためなら新しいサービスを積極的に取り入れる人々のことで、全体の13.5%存在していると言われています。
アーリーアダプターは課題が明確で、新製品に興味を持ち積極的に利用してくれるため、新規事業のリリース初期にアプローチすべき対象となります。
スタートアップや新規事業が、成功への足がかりを掴むために必要なのは顧客が何を求めているのかを知ることです。自社の提供する製品・サービスについて、アーリーアダプターとなるのはどのような顧客層なのか考えてみましょう。
ニーズがペインになっている人が誰かを考えましょう
アーリーアダプターを見つけることは容易ではありません。どうしてもわからない場合は、課題を解決できないことにより、社会的・個人的に損失ともいえるような悪影響を受けるのはどのような立場の人なのか考えてみるのもよいでしょう。つまり、ニーズがペイン(痛み)となっている人です。
仮説を立てる上での情報収集源としては、知人などの個人ネットワークや情報感度の高い人が集まるイベント、SNS、他社の導入事例などが参考になります。
2. 課題(Problem)~顧客の課題は何か~
顧客が抱えている課題を1〜3つ程度書き出します。顧客がお金を払ってでも解決したい課題は何か。「バーニングニーズ」と呼ばれる、切迫したニーズ・課題を特定できるのが理想です。
課題は「理想と現実のギャップ」と言い換えられます。顧客視点に立って、As-Is/To-Be分析(※)を行うとヒントを得られるでしょう。
※As-Is/To-Be分析:現在の状況と理想的な状況を書き出し、そのギャップを作り出してる問題点を特定して、どのようなアクションをとればよいのかを明確にすること。
顧客解像度を高めましょう
顧客のニーズを「片付けるべきジョブ(Job To Be Done)」と捉えた「ジョブ理論」を参考に、「顧客が製品・サービスを通して片付けたいジョブは何か」を深掘りするのもおすすめです。
課題についても、見込み顧客へのインタビューを通して仮説検証し、解像度を高めることが欠かせません。
※関連記事:
顧客理解を深めるための12の手法
見込み顧客へのデプスインタビューの効果を高める26のチェックリスト~ビザスク活用編~
既存の代替品(Existing Alternatives)~課題を解決する既存サービスはあるか~
「課題」欄のなかに、補助として「既存の代替品」という項目があります。この項目では、現在、顧客が目的を達成するために使用している製品・サービスを洗い出します。
ライバル企業の競合製品だけではなく、「現在、顧客がどうやって課題に対応しているのか」に注目しましょう。たとえば、新しいクラウドツールの競合となるのは、他社のクラウドツールではなくExcelやスプレッドシートの可能性もあります。既製品に独自の工夫を加えていたり、複数の製品を組み合わせて使ったりしているケースもあるでしょう。
新しい製品の価値を生み出すには、既存の代替品への「不満」を捉えることが重要。バーニングニーズや独自の価値提案を考えるヒントになるでしょう。
代替品=既存の解決方法と考えましょう
顧客がどのように課題を解決しているのかは、見込み顧客へのインタビュー、日々の情報収集(新聞、業界誌、業界のWebメディア、SNSなど)が役に立ちます。また、「代替品」という言葉がピンとこない場合は、既存の「解決方法」と言い換えると考えやすくなるかもしれません。
3. 独自の価値提案(Unique Value Proposition)~課題を解決する価値はあるか~
「独自の価値提案(UVP)」とは、『Running Lean ―実践リーンスタートアップ』の著者アッシュ・マウリャ氏の定義によれば「あなたが他とは違っていて、注目する価値がある理由」。既存製品や他社製品とは違う、自社製品ならではの価値について書き出します。
独自の価値を見つける切り口としては、「設備・技術/知識・経験/人材・組織/外部との関係/理念・文化・歴史」などがあります。
バリュープロポジションやポジショニングマップを活用しましょう
バリュープロポジションやポジショニングマップといったフレームワークを活用すれば、自社の価値を論理的に導くことができます。
※関連記事:
バリュープロポジションとは?作り方と事例~テンプレート付きで解説~
ポジショニングマップの作り方~肝となる軸の決め方をテンプレート付きで解説~
ハイレベルコンセプト(High Level Concept)~コンセプトを一言で説明するとどのような表現になるか~
「独自の価値提案」欄のなかに、補助として「ハイレベルコンセプト」という項目があります。ハイレベルコンセプトとは、新製品のコンセプトを端的に表したキャッチフレーズで、「ハイコンセプトピッチ」とも呼ばれます。新製品は、新しさゆえにイメージが伝わりにくいことがあります。アイデアを一言で説明するとしたらどのような表現になるのかを言語化してみましょう。
ハイレベルコンセプトの例
・YouTube(動画プラットフォーム):「ビデオのFlickr」
・エイリアン(映画):「宇宙のジョーズ」
ビジネス以外の領域にもアンテナを広げましょう
自社のビジネス領域だけではなく、別の領域や趣味、スポーツにアンテナを広げ、比喩を用いるのも一つの手です。人事向けに採用プラットフォームを展開するHERP社では、「スクラム採用」というコンセプトが市場に浸透したことがPMFのきっかけとなりました。「スクラム」というキーワードは、ラグビーから着想を得たそうです。
※関連記事:どんな言葉で提供価値を伝えるか?コンセプトを考え抜いて市場を創ったHERPのPMFストーリー
4. 解決策(Solution)~どのように顧客の課題を解決するか~
解決策では、自社がどのように顧客の課題を解決するのか、提供する製品・サービスの概要を記載します。解決策に唯一解はなく、「顧客」と「課題」によって変わることを念頭に置き、決め打ちにならないよう注意しましょう。
アイデアが先行しすぎていないかは注意しましょう
解決策については書けないというより、アイデアや想いが先行してしまい、改めて俯瞰してみると「顧客」「課題」とのロジックが成立しなかったというパターンが多いです。
スタートアップが事業を軌道に乗せるために必要なのは、「自分が売りたいもの」ではなく「顧客が欲しがるもの」を生み出すことです。テストマーケティングや見込み顧客へのインタビューを通して、顧客の反応を得ながらアイデアや成功体験に固執せずにブラッシュアップしましょう。
※関連記事:BtoBのテストマーケティングで使える5つのプロトタイピング手法
5. チャネル(Channel)~価値をどのように顧客へ届けるか~
チャネルでは、「ターゲットとした顧客セグメントにどのような接点でリーチし、製品を届けるのか」といった、顧客接点や流通経路について書き出します。
チャネルにはさまざまな種類があります。以下の例を参考にしてください。
- 流通チャネル・・・顧客へ届くまでの流通手段・経路
-直接流通チャネル・・・直販
-間接流通チャネル・・・販売代理店、卸売業者、小売業者 - 販売チャネル・・・顧客が購入する場所
-商談、訪問販売、実店舗、ECサイト、電話営業、ショッピングモール - コミュニケーションチャネル・・・顧客に自社(自分)の商品・サービス情報を伝える伝達手段
-インバウンド施策・・・Webサイト、SNS、Web広告、メール
-アウトバウンド施策・・・マス広告、チラシ、展示会、テレアポ
※関連記事:インバウンドマーケティングとは? 代表的な手法と戦略設計の原則
見込み顧客へのヒアリングも重要です
有効なチャネルを見つけるには情報収集に尽きます。既存の販路について調べるのはもちろん、見込み顧客へのヒアリングも重要です。商品・サービスを選定する際に、どこ(誰)から情報を仕入れ、どこで(誰から)購入するのか、購入に至るまでの具体的な行動について聞いてみましょう。
6. 収益の流れ(Revenue Streams)~どのようなタイミングでいくらかの収益を獲得するか~
収益の流れでは、「何を売って、どのようにお金をもらうのか」といったマネタイズプランについて具体的に記入します。収益モデルや価格について書き出しましょう。
- 収益モデルの例
製造販売、広告モデル、課金モデル、ECモデル、手数料モデルなど - 価格の例
- ・初期導入費○○○円、会員費○○○円
- ・1取引あたり○○○円の収入(○○商材の手数料○○%とした場合)
- ・1契約あたり○○○円の収入(契約○○か月とした場合)
マネタイズプランを学びましょう
上記では一部の収益モデルを挙げましたが、そのほかにもさまざまな方法があります。マネタイズプランについてはインターネットや書籍などで学べます。
7. 主要指標(Key Metrics)~成功を測る指標は何か~
事業の成功に向けた進捗を測るための指標を書き出します。
主要指標を考える上で参考になるのが、デイブ・マクルーア氏が経営のデータ分析のために開発したフレームワーク「AARRR(アー)モデル」。製品・サービスの成長段階を以下の5つの項目にわけて、成長戦略を策定するものです。
【AARRRモデルの5つの項目】
- Acquisition(顧客を獲得する)
- Activation(顧客に体験を提供する)
- Retention(リピーターにする)
- Referral(顧客が第三者に紹介する)
- Revenue(収益化する)
当社のようなコンサルティング会社を例にとると、以下のようになるでしょう。
- Acquisition(顧客を獲得する):受注数
- Activation(顧客に体験を提供する):プロジェクト完了数
- Retention(リピーターにする):プロジェクトの継続率
- Referral(顧客が第三者に紹介する):顧客紹介数
- Revenue(収益化する):粗利額
また、新規事業における立ち上げのフェーズで意識すべきポイントは以下の2つです。
- 事後的にしかわからない、売上高などの「遅行指標」だけでなく、現在の進捗を測る「先行指標」を設定する
例:ショーン・エリステスト、NPS、エンゲージメント など - PMFの兆候となる定性的な指標を取り入れる
例:商品ができていないのに契約が取れる、熱狂的なファンが存在する など
さらに詳しくは、以下の記事で解説しています。
※関連記事:PMFを測る4つの指標と留意点
「虚栄の指標」にならないように注意しましょう
主要指標は事業開始後に向かう目標でもあるので、「虚栄の指標」を設定しないように注意しましょう。虚栄の指標とは、一見事業が順調に推移しているように思えても、事業の成功や成長にはほとんど関係のない数値のこと。たとえば、SNSでの言及数やプレスリリースの掲載数、キャンペーンで集めた無料ユーザー数などです。
主要指標については、会員登録や問い合わせ、アポイントなど、事業の成長に作用するセンターピンを設定することが大切です。
8. コスト構造(Cost Structure)~価値を提供するのにどのくらいのコストがかかるか~
製品を市場に送り出すまでに、どのようなコストがどれくらいかかるのか書き出します。
コストの例
- 人件費
- 顧客獲得コスト
- 物流コスト
- ホスティングコスト
- 開発コスト
- 仕入れコスト
収益が出るまでに一定期間を要する新規事業は、軌道に乗るまでに資金を使い切らないことが大事です。継続的に支出が必要となる「固定費」と、一時的な支出となる「変動費」に分けて洗い出し、持続的な低コスト構造を構築するのが理想です。
また、収益モデルと合わせて、損益分岐点やバーンレート(※)について、具体的な金額を割り出すこともできます。
※バーンレート:会社経営に際して、1か月あたりに消費されるコスト。
決算書でコスト感覚を身につけましょう
事業の運営においてはどのような収入・支出があるのか、お金の流れを把握するために、収支決算報告書(一定期間の収支をまとめた会計書類)を見たり、作り方を学ぶのがおすすめです。
9. 圧倒的な優位性(Unfair Advantage)~他社が真似できない強みは何か~
他社には簡単に真似できない競争優位について書き出します。もっとも難しい項目ですが、差別化要因を考える上で重要なブロックです。
競争優位とは相対的なもので、競合よりも勝っていないと意味がありません。圧倒的な優位性は顧客の課題を理解し、競合分析をするなかで見えてくるでしょう。
無形資産にも注目しましょう
無形資産に注目してみるのも一つの手です。スキルやナレッジ、信頼、ネットワーク、コミュニティなどの資産は簡単に真似できるものではないため、競争優位の源泉となります。
※関連記事:競合分析テンプレート‐BtoB企業向けにまとめ方やツール、分析の観点を解説
リーンキャンバスのテンプレート
リーンキャンバスの作成にお使いいただけるテンプレートをご用意しました。個人情報の入力なしでダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
■リーンキャンバステンプレート(Googleスライド)を開く
■リーンキャンバススライドテンプレート(PowerPoint形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。クリックするとファイルがダウンロードされます。
リーンキャンバスが書けたら検証すべきこと
リーンキャンバスを書き終えたら、最初に検証すべき項目は「顧客」と「課題」です。この2つはビジネスモデルの根幹なので、きちんと定まらないと前提が崩れ、全体の整合性が取れなくなってしまいます。
「顧客」と「課題」の検証は、スタートアップのPMF達成までの道のりを示したフィットジャーニーのなかでも最初のフェーズです。PMFの第一歩として、「顧客に課題が存在するか」からスタートしましょう。
※関連記事:PMF達成への道のり~フィットジャーニーとフェーズごとの指標を解説
リーンキャンバス作成時によくある質問【Q&A】
リーンキャンバスについて、質問に回答します!
Q. ビジネスモデル・キャンバスとの違いはなんですか?
A. ビジネスモデル・キャンバスとは、『ビジネスモデル・ジェネレーション』で提唱されたフレームワークで、リーンキャンバスのヒントとなったものです。ビジネスモデル・キャンバスは主に既存事業向けで、経営資源やステークホルダーとの関係性に主眼が置かれています。
一定の経営資源と顧客情報を保有する既存事業と、そうでないスタートアップでは、優先すべき検討事項が異なります。リーンキャンバスは資源や情報が少ないスタートアップ向けとなっている点が大きな違いです。
具体的には、ビジネスモデル・キャンバスにおける以下の項目が変更されています。
- 協力者 → 課題、既存の代替品
- 活動 → 解決策
- 資源 → 主要指標
- 関係 → 圧倒的な優位性
- (追加) → アーリーアダプター
Q. 表層的なアイデアになってしまうのですが、どうすればよいでしょうか?
A. 表層的なアイデアになってしまう原因は、顧客が本当に欲しがるものを理解していないことに帰結します。改めて顧客の声を集めましょう。
また、具体的で現実的なプランに落とし込めていない場合は、準備が足りていないからかもしれません。あらかじめ準備が必要なことは以下のとおりです。
- 顧客候補の方にインタビューする
- 競合分析をする
- 自社(自分)の強みの棚卸しを行う
- マネタイズプランを学ぶ
- 収支計算書の作り方を学ぶ
- 販路について調べる
必要な情報収集や分析を行った上でブラッシュアップしてみてください。
Q. リーンキャンバスはどのくらいの粒度、精度であるべきでしょうか?
A. リーンキャンバスに記載された内容で、ビジネス立ち上げに向けて1歩目が踏み出せるのであればよいかと思います。作成において完璧を目指す方が多いですが、精緻なリーンキャンバスを作ることが目的ではないので、事業の骨格が見えて事業化に向けて動けるのであれば粗い状態でも問題ありません。
ただ、究極的にはこのリーンキャンバス1枚を持って見込み顧客に見せ、売れる状況まで行けたら最高です。
まとめ
リーンキャンバスはシンプルなフレームワークですが、スタートアップや新規事業の成功確率を高めるのに非常に便利です。リーンキャンバスで立てた仮説を盤石なものにするには、「顧客」と「課題」の検証が最優先事項となります。
才流では成果が実証されたメソッドにもとづき、新規事業に特化した仮説検証やテストマーケティングなどのご支援をしています。新規事業で課題を感じている方はお気軽にご相談ください。
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以下のようなご相談をお受けしております。
- 製品開発前に仮説検証を通じて勝ち筋を見つけたい
- テストマーケティングを効果的に行いたいが、ノウハウを持っていない
- 新製品の売れる証明をしたい
- プロダクトをPMF達成させたい
個別相談も行っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。お問い合わせはこちら
才流がわかる3点セット(会社概要・支援実績・サービスの特徴)をダウンロードする
監修
起業・経営コンサルティング会社にて中小企業ベンチャー企業のコンサルティングを担当。その傍ら、全社のマーケティング部門のトップとしてデジタルマーケティングを推進。ゼロからSEOで月間数十の経営者リードを獲得する仕組みを構築。また、早稲田大学商学部では8年間講師として起業・経営・マーケティングに関して教鞭をとる。個人として地元静岡で児童福祉事業を経営。一橋大学大学院商学研修科経営学修士コース(MBA)修了。
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