
記事が書けなくなったら読み返す、6つの執筆プロセス
オウンドメディアは段々更新されなくなる
前職で他社のオウンドメディアのコンサルをしていた時に「このキーワードで上位表示を狙いましょう」、「まだ誰も書いていない、この切り口で記事を書きましょう」などと提案していたけど、同じような視点でいざ自社メディアで書こうとすると、「筆が乗らない・・」となって、あまり更新できなかった(苦笑)。
今回もコーポレートメディアである『DOER NOTE』を普通に立ち上げてしまうと、「忙しくて更新できない・・」、「良いネタが浮かばない・・」などと言って、結局、更新を止めそうだったのでブログ運営を新しい観点で捉え直してみた。
具体的には、以下の6つのSTEPで記事を自然と生産していけることがわかった。
STEP1:自分の感情が動くような目的を定める
STEP2:実現したい目標とToDoを定める
STEP3:いい記事が生まれるフローを過去の経験から見つける
STEP4:きっかけとなる刺激を見つける
STEP5:記事が書きたくなるデザインにする
STEP6:プロトタイプ環境を用意する
一つずつ詳しく説明したい。
STEP1:自分の感情が動く目的を定める
当たり前だけど、物事を進めるにはエネルギーが必要で、エネルギーの「エンジン」が上手く回っていないと、物事はスムーズに進まない。よくある“月◯◯万PV”や“リード獲得◯◯件”だけでモチベーションが湧く人はそれで良いと思うけど、そうじゃない人はもっと情緒的な目標や目的、ゴールを定める方が良い。
当社では「より多くの人が幸せになれる物事の捉え方・進め方」があると信じていて、それをできるだけたくさんの人に広げたいので、『人類の潜在能力の発揮レベルを、次の次元に進める情報を発信する』という目的を持ってやっている。
STEP2:実現したい目標とTodoを定める
STEP:1で設定した目的を実現するために達成したい目標とTodoを定めていく。
このメディアの場合は、PV数以外にも「◯◯なことが起きる」、「◯◯さんに読んでもらえるようになる」などのいくつかの目標を設定していて、それぞれについてKPIツリーを作り、具体的なToDoに落とし込んでいる。
STEP3:いい記事が生まれるフローを過去の経験から見つける
何年か前からMediumや個人ブログを書いている中で、自分でも納得していて好きな記事と、いま読み返すと力みを感じ、あまり好きではない記事があり、継続的に書けている時期とそうでない時期があった。
それぞれの記事や時期を振り返ってみて、自分の場合は、
- 思い付いたことを人に話して、刺さったら、話した通りにそのまま書くと読まれる記事になりやすい
例:「ありえないミスをする人」の脳内では、何が起きているのか。 - お客さんとの商談で話した内容をそのまま書くと読まれる記事になりやすい
例:サイトリニューアルなんて、悪いこと言わないから止めたほうがいい
逆に、
- 人に話した時に熱量を持って滑らかに話せない内容は、記事にしてもあまり読まれない
- 誰かに話すプロセスを通さず、いきなりPCに向かって書き始めても、ほとんどが完成することなくお蔵入りしてしまう(PC内に下書き記事が10個ぐらいある・・・
などの特徴があった。そこでPCに向かって記事を書き始める前に必ず「人に話す」ことにしている。
STEP4:きっかけとなる刺激を見つける
GoogleカレンダーとAmazonの購入履歴を見直して、
- テニスに関する書籍と、数学・生物学・社会心理学領域の書籍を読んだとき
- コンサルティング先のお客さんと会話したとき
- 海外旅行や出張などの後
に筆がのるパターンを発見した。自分が楽しいと感じる刺激に触れていることがアイデアに直結するらしい。
STEP5:記事を書きたくなるデザインにする
デザインの観点から、記事を書きたくなるようにメディアの記事ページのテーマを作ってもらった。
会社や事業もそうだけど、ブログを書くのも、究極はその人の自己表現だと思う。自分が書いていく上で気持ちの良いフォントや行間、色合いなどがあって、そこから外れると、どうしても滑らかに記事を作っていけない。
デザインの工夫点は、別途詳しく記事で説明したい。
STEP6:プロトタイプ環境を用意する
ここまで整えても、残念ながら記事執筆に気分が乗らないときはある。そんなときにおすすめしたいのが、気軽に文章をアウトプットできるプロトタイプ環境の用意だ。自分の場合は
の2つをブログ以外のアウトプットの場として用意していて、2,000-3,000文字の記事を書くモチベーションがわかない時でも、アウトプットが滞らないようにしている。
一度、軽くでもアウトプットしておくと、思考が整理されて次に行けるし、しっかりしたブログ記事を書く時にゼロから文章を立ち上げずに済むので、本番の記事作成にもとても役立っている。
DOER NOTEの記事作成プロセス
上記の気付きをもとに以下のようなプロセスを組み立てた。
- テニスに関係する書籍と数学、生物学、社会心理学領域の書籍を持ち歩く
- 商談後や1日に仕事が終わった後に、Twitterやnoteに気づきを書いておく
↓
- ブログ記事にしたいネタや骨子を思い付いたら、執行役員と話してみる
- 執行役員の反応が良かったら、想定読者&お客さんである経営者・事業責任者との打ち合わせで話してみる
↓
- ここまで進むと、アイデアが研ぎ澄まされ、熱を帯びてくるのでその勢いを使って一気に書く
- 過去にTwitterやnoteで近い視点で書いたものがあれば、それも加筆する
↓
- 記事を公開
↓
- 商談後や1日に仕事が終わった後に書いている、Twitterやnoteで近い視点があれば、公開後の記事を加筆修正
このプロセスに身を委ねていれば、特にエネルギーを振り絞ることなく、継続的に記事が生まれていく。
僕個人が極端なまでのメタゲーム主義者だし、システム思考論者だから、このシステムを作って、そこに身を委ねていること自体が興奮するのだけど、会社や個人によって、しっくり来るやり方はそれこそ会社や人の数だけあると思う(このあたりは「天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々」を読むと創作プロセスの千差万別感を感じられて面白い)。
SEOキーワードや更新本数、リード獲得数“だけ”を目標にしていると多くの会社や人が途中で挫折するので、自社や自分の内面を見つめながら、いかに自然とコンテンツが生み出される状態を作るか、を考えることをお勧めする(名付けて、Motivation driven オウンドメディア運営!)。
最後に村上春樹が語った有名な執筆プロセスのインタビューを引用したい(考える人 2010年 08月号から)。
どうしてペースを守ることが大事なんでしょう。
村上:どうしてだろう、よくわからない。とにかく自分をペースに乗せてしまうこと。自分を習慣の動物にしてしまうこと。一日十枚書くと決めたら、何があろうと十枚書く。それはもう『羊をめぐる冒険』のときからあまり変わらないですね。決めたらやる。弱音ははかない、愚痴は言わない、言い訳はしない。なんか体育会系だな(笑)。
今僕がそう言うと「偉いですね」と感心してくれる人がけっこういますけど、昔はそんなこと言ったら真剣にばかにされましたよね。そんなの芸術家じゃないって。芸術家というのは気が向いたら書いて、気が向かなきゃ書かない。そんなタイムレコーダーを押すような書き方ではろくなものはできない。原稿なんて締め切りがきてから書くものだとか、しょっちゅう言われてました。
でも僕はそうは思わなかった。世界中のみんながなんと言おうと、僕が感じていることのほうがきっと正しいと思っていた。だからどう思われようと、自分のペースを一切崩さなかった。早寝早起きして、毎日十キロ走って、一日十枚書き続けた。ばかみたいに。結局それが正しかったんだと、いまでもそう思いますよ、ほんとうに。まわりの言うことなんて聞くもんじゃないです。