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BtoB製造業の階段設計|マーケティング活動で成果を上げるには?

BtoBマーケティング
インハウスエディター
矢野 絢子

メルマガの運用やホワイトペーパーの配布、展示会での製品PRなど、各種マーケティング施策を進めているものの、なかなか商談につながらない受注に至らないと頭を抱えるマーケティング担当者は多いと思います。

マーケティング施策で成果が出ない理由はさまざまですが、ひとつに顧客とのコミュニケーションの取り方に無理が生じているケースがあります。本記事では、BtoB製造業のマーケティング活動に特化して、マーケティング活動で成果を出すためのコミュニケーションの取り方について解説していきます。

■監修:才流(サイル)コンサルタント・岸田慎平

才流では成果が実証されたメソッドにもとづき、BtoB製造業のマーケティング戦略と施策の立案を支援しています。マーケティング活動で課題を感じている方はお気軽にご相談ください。

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マーケティングに取り組んでいるのに、商談や受注につながらない理由

「サイトから製品カタログをダウンロードしてもらったものの、商談や受注につながらない」「事例紹介ウェビナーを開催したけれど、なかなかお問い合わせにつながらない」

製品カタログの配布やウェビナーなど、さまざまなマーケティング施策を実行しているのに、なかなか成果が出ないという声をよく耳にします。

しかし、顧客の立場で考えてみると、「製品に興味を持ったからカタログをダウンロードしただけであり、採用できるかどうかはまだ検証できていない」「情報収集の一貫としてウェビナーを視聴しただけであり、商談を打診されても困ってしまう」というのが正直なところでしょう。

製品を認知し、導入事例やカタログで理解を深め、CADデータやデモ機などで仕様・品質を確認し、十分な検証を経たうえで購入に至る、というのがBtoB製造業でよくある購買活動の流れです。

企業は、このような顧客の購買活動にあわせて、無理のないコミュニケーションを取っていく必要があります。才流(サイル)では、「階段設計」と呼んでいます。

商談までのなめらかな階段を設計する。階段設計のイメージ図
階段設計のイメージ

検討プロセスの各フェーズで顧客が必要とする情報(コンテンツ)を用意し、スムーズに階段を上れるよう促します。

階段設計では、検討プロセスのすべてのフェーズにコンテンツが用意されていることが重要です。提供できるコンテンツが階段の上の方だけになってしまっていたり、抜けている箇所があったりすると成果は得られません。階段設計に取り組む際は、提供できるコンテンツを点検しましょう。

※関連記事:階段設計

また、もちろん、商材によって選定・購買に必要なコンテンツは異なるため、顧客解像度を高めることが欠かせません。顧客解像度が高まれば、いつ、だれに、どんなコンテンツを提供すればいいのかがおのずと見えてきます。

自社の製品・サービスについて、どんな階段を設計すればいいか描けない、という方は顧客解像度を高めることから始めてみてください。

※関連記事:

■顧客解像度

■BtoBマーケティングで重要な「顧客理解」を深める12の方法

BtoB製造業における階段設計のポイント

つづいて、階段を設計する際のポイントについて解説します。

BtoB製造業においては、選定者・購入者・使用者がそれぞれ異なる点が大きな特徴です。階段を設計するときは、各担当者が考えること、視点が異なることを考慮しましょう。

選定者・購入者・使用者が異なる

また、ターゲットの数が限られる業界なので、今すぐ購入する顧客でなくてもハウスリストに追加していくことが大切です。検討前の顧客とも接点をもち、リードを獲得できるように興味・関心から始まる階段を設計することをおすすめします。

興味・関心から階段をスタートさせて、各フェーズで必要な情報(コンテンツ)を提供する

BtoB製造業における階段設計とコンテンツの例

先述のとおり、階段設計とコンテンツは商材によって異なります。ここからは3つのタイプの商材で、階段設計とコンテンツの例について説明していきます。

産業用ロボット(高単価の商材)

まずは産業用ロボットのような高単価の商材の場合です。

設備投資の新規案件を獲得し続ける必要があるため、マーケティング活動においては営業にリードを提供し続けることが大切です。検討のタイミングも限られてくるため、早期に案件の芽を発見し、営業活動に取り組みましょう。

したがって、潜在層向けの施策がとくに重要な役割を担います。もちろん最優先に考えるべきは顕在層です。そのうえで目安として保有リードが1万件以下の場合は、階段の最も下である興味フェーズのコンテンツづくりを強化しましょう。

産業用ロボットの階段設計
とくに潜在層向けのコンテンツづくりに注力する

興味フェーズのコンテンツとして、たとえば以下のようなものが挙げられます。

  • 今注目の協働ロボットとは?基本と事例を解説
  • 工場自動化の進め方
  • 工場の省人化事例と費用対効果
  • 産業用ロボットの種類と選び方
  • 産業用ロボットの活用事例集【ピッキング工程編】

産業用ロボットを検討する可能性のある人は、そもそも人手不足や省人化、自動化に興味や課題意識を持っているかもしれないと推測できます。まずはこのような興味・課題にアプローチできる、「工場自動化の進め方」のようなコンテンツを用意すると、潜在層にも広く訴求できます。

もう少し手前の段階から接点をもっておきたい場合は、「今注目の協働ロボットとは?基本と事例を解説」のようなトレンドを扱ったコンテンツも有効です。技術者が興味を持ちそうな最新技術、トレンドにもアンテナを張り巡らせましょう。

興味・関心から抜け出して検討に進みつつある層に向けては、「工場の省人化事例と費用対効果」のような、人作業や自動化設備といった産業用ロボットの代替手段と比較しながら、産業用ロボットの優位性を伝えられるようなコンテンツを用意し、階段を一段上がってもらいます。

さらに検討がすすめば、「産業用ロボットの種類と選び方」「産業用ロボットの活用事例集【ピッキング工程編】」のようなより実践的なコンテンツも重宝されるでしょう。

まずは狙うべき層を決めて、作成すべきコンテンツを検討してみてください。

金属加工(カスタム性が高い商材)

つづいて金属加工のような、顧客ごとのカスタムが発生する商材で、かつ新規案件の獲得が常に必要なケースです。

こちらも産業用ロボットと同様に、まだ具体的な検討には入っていない潜在層向けの施策が重要です。標準品を持たないケースが多いため、事例や用途例、ノウハウを積極的にコンテンツ化し、自社の優位性や特長を伝えましょう

事例で顧客の名称を出せない場合は、特注品製作事例集、業界別製作事例集といった形で、社名を伏せて紹介することをおすすめします。当初の顧客の課題や相談内容に加え、業界や企業規模などの情報があると、読み手も自分ごと化しやすくなります。

金属加工の階段設計
事例や用途例、ノウハウを積極的にコンテンツ化し、自社の優位性や特長を伝える

潜在層向けのコンテンツとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 金属3Dプリンタと従来の金属加工の違い
  • 金属加工の種類と選び方
  • 切削加工の基礎知識
  • 金属部品の製作事例集【自動車業界向け】

基本的な考え方は産業用ロボットと同じです。

潜在層に向けては、「金属加工の種類と選び方」「切削加工の基礎知識」といった基礎知識コンテンツを用意しましょう。検討フェーズに入っていなくても、興味を持ってもらいやすいです。検討のタイミングで自社を思い出してもらえるよう、コスト、納期、品質など、検討時に顧客が重視する項目をコンテンツの中でフォローしておくことも大切です。

また、「金属3Dプリンタと従来の金属加工の違い」のような、業界のトレンドに絡めたコンテンツも潜在層を広く集めるのに有効です。

もう少し検討が進んだ層に向けては、製作事例集を用意し、自社ができること、競合他社との違いを訴求して、自社を選んでもらうための理由をつくっていきましょう。

センサ(低単価でリピートが多い商材)

最後に、センサのような低単価、かつリピートで購入されるケースが多い商材の場合です。

上で説明した産業用ロボットや金属加工とは違い、既存顧客からの案件を取りこぼさず、継続的に案件を獲得し続けることが重要です。

リピート購入は、故障や追加購入が検討のきっかけになることがほとんど。検討時に必要となる生産中止情報やトラブルシューティング情報、取り扱い説明書といったコンテンツをしっかり揃えておきましょう。

センサの階段設計
故障や追加購入がきっかけとなるケースが多いため、生産中止情報やトラブルシューティング情報、取り扱い説明書を揃えておく

新規顧客も獲得したいという場合には、検討のタイミングをうまくキャッチできるようなコンテンツを用意して見込み顧客と接点をもつとよいでしょう。

見込み顧客向けのコンテンツとして、以下のようなものが挙げられます。

  • センサでよくある不具合の原因と対策
  • センサのトラブル解決事例20選
  • 故障かな?と思ったときにチェックしたいポイント

故障や不具合が発生した際に頼りたくなるようなコンテンツを作成し、見込み顧客と接点をもちます。とくに失敗事例やトラブル事例が大々的に公開されるケースは少なく、顧客にとっては貴重な情報。情報を公開することによる懸念点も考慮しつつ、前向きに検討してみてください。

才流が過去にご支援したコンデンサメーカーでも、上記のようなトラブル事例に関するコンテンツがヒットし、新規顧客の獲得に貢献しました。詳細は、以下よりご覧いただけます。

※関連記事:BtoB製造業の企業が、自走できるマーケティング組織に変われた理由。

よくある質問と回答

岸田

よくいただく質問に、才流のコンサルタント岸田が回答します。

Q.顧客解像度はどうやって高めていけばいいのでしょうか?

まずは記事内にあるとおり、「誰が選ぶのか」「誰が発注するのか」「誰が追加購入するのか」といった選定に関わる人たちについて理解しましょう。うまく描けない場合は、社内の有識者や営業の方に質問するのが近道です。

次に、製品の選定プロセス上の特性を理解します。以下の記事を参照し、どのパターンに該当するか判定しておくと効率的です。

※関連記事:BtoB製造業向け|マーケティングの役割と効果的な施策

そのうえで購買プロセス、選定する際に重視する項目、普段の情報収集の方法などを顧客へのインタビューを通じて把握することで解像度が高まります。

顧客へのインタビューは、選定を担当する人にインタビューして、関係者がどのように選定に関与するのかも確認しましょう。異なる企業の3〜5名にインタビューすることで共通項が見えてきます。具体的なやり方については、以下の記事が参考になります。

※関連記事:

■BtoBマーケティングで重要な「顧客理解」を深める12の方法

■マーケターの顧客解像度を高める「営業インタビューシート」

■顧客理解に役立つ、見込み顧客インタビューシート

Q.受注から遠い「興味・関心フェーズのコンテンツ」を作成する必要はありますか?

新規顧客の開拓に力を入れたい場合は取り組むべきです。理由は、ターゲットの数が限られる業界なので、今すぐ購入する顧客でなくてもハウスリストに追加することが重要なためです。

あわせて、ハウスリストが1万件程度になればメールマーケティングに取り組み、ナーチャリングからの商談化を目指しましょう。

Q.階段を一段上がってもらうときのポイントは?

階段を上がるということは、検討フェーズが変化するということ。前提として、自社ではコントロールできないと認識した方がよいでしょう。理由は、検討フェーズの変化は顧客都合の要因が強いためです。

そのうえで、Webサイトやメールだけに頼らず、インサイドセールス、営業などから顧客に対して次の階段に該当するコンテンツの提供を打診するのも有効です。

検討が進んで次の情報が欲しい顧客からは「ちょうど良かった、ありがとう」と言われるでしょうし、検討が進んでいない顧客からは「今はまだ必要ない」と言われるでしょう。

Q.コンテンツのネタが浮かびません。どうやってネタ探しをすればいいでしょうか?

まずは顧客に普段見ている情報や関心のあるキーワードについてインタビューしましょう。それをもとに検討します。

ほかにも、以下の切り口で検討してみてください。

  • 商品・サービス紹介
  • 事例紹介
  • ホワイトペーパー
  • コラム
  • ノウハウ提供
  • ニュース
  • 展示会、セミナーのレポート
  • 法律、規格、補助金

他社のWebサイトを閲覧したり、メルマガを購読してヒントを得るのも有効ですし、業界ニュースなどのウェブサイト、メルマガもヒントになります。

※関連記事:BtoB製造業向け|成果につながるメルマガ配信の基本

Q.基礎知識など、潜在層向けのコンテンツ作成をがんばっていますが、受注につながりません。どのくらい待てばよいのでしょうか?

商材にもよりますが、2〜3年かかるケースがあると考えるべきです。とくに特定のメーカーしか使っていない顧客の場合は、不具合やクレーム、在庫の欠品、納期遅延といったメーカーを切り替えるきっかけが必要です。

このようなきっかけからしっかり商談・受注につなげるためにも、潜在層向けのコンテンツからリードを獲得したら、メールマーケティングやインサイドセールスを通じて定期的に接点をもつことを継続してください。

まとめ

BtoB製造業のマーケティング活動で成果をあげるためには、BtoB製造業ならではの購買活動にあわせたなめらかな階段をつくることが重要です。商材によっても購買活動の流れは変わるため、顧客解像度を高めたうえで取り組みましょう。

才流では、BtoB製造業でのマーケティングに特化した記事をほかにも公開しています。ぜひあわせてご覧ください。

※関連記事:

■BtoB製造業向け|マーケティングの役割と効果的な施策

■BtoB製造業向け|成果につながるメルマガ配信の基本

■BtoB製造業向け|事例で解説、メルマガの作り方

才流では成果が実証されたメソッドにもとづき、BtoB製造業のマーケティング戦略と施策の立案を支援しています。マーケティング活動で課題を感じている方はお気軽にご相談ください。
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監修

コンサルタント
岸田 慎平

IBMコンサルティング部門で管理会計コンサルとして大手企業向け業務・ITプロジェクトを経験後、ベンチャー企業へ転職しBtoB製造業向けに約10年間で300社以上のマーケティング領域のコンサルティングから施策実行まで支援。自社プロダクトのマーケティング、営業企画、マネジメントも経験し、株式会社才流へ入社。
Twitter:@shimpei_k

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