インサイドセールスは、マーケティング部と営業部をつなぐ重要な役割をもちます。大きな目標は商談の創出ですが、達成するためには小さな指標をいくつか満たしていかなければなりません。
本記事では、インサイドセールスの生産性を高めて成果を最大化させるためのKPI項目や設定手順について、図表や例を用いながら解説します。
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■監修:株式会社セールスリクエスト代表・原 秀一氏
インサイドセールスとは
インサイドセールスとは、営業活動のなかで顧客への訪問を行わずに商談機会を創出する内勤営業のことです。電話やメールなどのアプローチを通して見込み顧客とコミュニケーションを重ね、商談をフィールドセールスへパスするまでを担当します。
インサイドセールスは、役割ごとにSDRとBDRに分けられることもあります。
SDR(反響型)
SDR(Sales Development Representative)とは、マーケティング部門が獲得したリードに対して電話やメールなどでフォローを行い、見込み顧客を見極めて商談を創出するチームです。問い合わせやイベント申し込みなど、主にインバウンド(見込み顧客からの問い合わせ)のリードにアプローチすることが多いため、反響型のインサイドセールスといえます。
BDR(新規開拓型)
BDR(Business Development Representative)は、リードの有無に関わらず、ターゲットとする企業にアプローチしていくチーム。アウトバウンド(企業から接触していく)営業に近い組織といえるでしょう。たとえば大手企業で決裁権を持つ人物など、インバウンドでは取りづらい顧客に限定してアプローチしたい場合はBDRが必要になるでしょう。
SDRとは違い、アプローチするべき個人の氏名や連絡先を特定するところから始めます。電話やメール以外にも手紙やSNSへのDM(ダイレクトメッセージ)、イベント誘致など、さまざまな方法で関係を構築していく組織です。
※関連記事:
インサイドセールスとは?成果に繋げる113のチェックポイント
インサイドセールスの立ち上げ方と2社の成功事例【SDR・BDR】
インサイドセールスがKPIを設定する目的
KPIは、組織の最終目標であるKGI達成のために必要な中間指標です。
※KPI:Key Performance Indicator/重要業績評価指標のこと。
※KGI:Key Goal Indicator/重要目標達成指標のこと。
インサイドセールスがKPIを設定する主な目的は、3つあります。
- ボトルネックとなっている工程を特定するため
- 目標への進捗を把握するため
- データにもとづいたマネジメントを行うため
商談化までの各プロセスを定量的に管理することで、ボトルネックの特定や進捗状況の確認、データにもとづいたマネジメントができるようになります。問題の早期発見や迅速な軌道修正には、優れたKPI設定が欠かせません。
それでは、SDRとBDRそれぞれに必要なKPI項目を解説していきます。
SDRのKPI項目
SDRに適したKPI項目は、主に5つあります。
SDRの場合、主要KPIは「4.商談化数〜」または「5.有効商談数〜」が一般的です。どちらにするかは、組織の成熟度や後工程を担うフィールドセールスのリソース状況によって決めます。
進捗状況を確認するための経過指標として「2.コネクト(着電)数〜」や「3.有効会話数」を設定したり、行動指標として「1.フォローアップ数」を意識するとよいでしょう。
1.フォローアップ数
フォローアップ数とは、電話やメールなどで見込み顧客に対して接触した回数のことです。とくにSDRの立ち上げ期には、チームや個人のパフォーマンスがどの程度なのか、実態を把握するためにも行動量が必要なので、フォローアップ数を行動指標におくとよいでしょう。
大まかですが、見込み顧客1社に対して、電話とメールを合わせて合計3〜5回程度のフォローが一般的です。
フォローアップ例:サービス紹介資料をダウンロードした見込み顧客の場合
- 自動返信メール
- 電話
- (不在の場合、不在用のメール)
- (再度電話)
- メール(アポの日程調整 or 他の資料送付など)
メールは、文面を工夫するだけで商談化率の向上につながることもあります。ぜひ、以下のメールテンプレートに関する記事も参考にしてください。
※関連記事:
文面の工夫で成果が変わる インサイドセールスのケース別メールテンプレート
商談化率を上げる、商談設定依頼メールのテンプレート
2.コネクト(着電)数/コネクト率
コネクト数とは、フォローアップの結果、見込み顧客へ電話がつながった数のこと。着電数と同義です。
しかし電話だけが有効な手段ではありません。たとえば、建設や運送業界の見込み顧客なら電話やメールよりもSMS(ショートメッセージサービス)の方がコネクトしやすい傾向があります。見込み顧客が所属する業界の特性に合わせ、コネクト率のよいツールや時間帯を模索してください。
以下の表は、時間帯別でコネクト率を集計した結果(提供:株式会社セールスリクエスト)。
一般的なビジネスマンの着席率は、朝の9時台やランチタイム後の13時台が高いと想像できます。
【参考】SDRの時間帯別コネクト率
3.有効会話数
有効会話とは、見込み顧客へコネクトした結果、会話が成立して課題感や興味についてヒアリングができた状態を指します。着電したものの、「会議中なので、あとにしてください」などと言われた場合は有効会話ではないと判断します。
有効会話ができるかどうかは、架電したタイミングの顧客の状態にもよるため、有効会話率をKPIとして追うのはあまり意味がないといえます。有効会話数も厳しく追う必要はありませんが、あまりに少ない場合は架電する時間やアプローチする内容を変更してみましょう。
4.商談化数/商談化率
商談化数とは、商談(アポイント)を獲得した数のことです。企業や部門によって呼称が変わりますが、アポ獲得数、アポ件数、商談獲得数などと同義として捉えてください。
商談化率は重要なKPI項目ですが、注意点が2つあります。
(1)一つ目は、リードを獲得したチャネルによって商談化率は大きく異なること。たとえば、サービス紹介資料の請求フォームを経由したリードなら、商談化する確率は高くなります。サービス内容を知りたいという人は、すでに購買意欲が高めだからです。
一方で、さまざまな企業が出展する展示会で得たリードの中には、自社に対する興味が薄い人もいるでしょう。すぐに商談へ進めようとしても難しいため、まずはセミナーに招待するなどの工夫が必要となります。
チャネル別の一般的な商談化率は以下です。KPI設定時はぜひ参考にしてください。
チャネル | 目安の商談化率 |
サービス紹介資料の請求 | 10〜30% |
展示会 | 1〜5% |
外部メディア媒体 | 1〜5% |
セミナー | 5〜10% |
(2)二つ目の注意点は、商談化率を割り出す方法について。
おすすめの算出法は、「商談化数÷対応済みリード数」です。
対応済みリードとは、個人や冷やかしによる問い合わせを省いた有効リードのなかでも、連絡が取れて自社の見込み顧客になりそうだと判別できたリードのこと。
多くの企業が「商談化数÷有効リード数」で商談化率を算出しますが、これだと実際のパフォーマンスより低く出てしまうので注意しましょう。
(例)
- 当月有効リード数:50件
- 対応済みリード:25件
- 商談化数:10件
× 商談化数10件➗有効リード数50件=商談化率20%
◯ 商談化数10件➗対応済みリード数25件=商談化率40%
この場合、SDRチームは商談化率40%のパフォーマンスを持っていることになります。ところが、母数を有効リード数で計算すると、商談化率20%の力量しかないように見えてしまうのです。
商談化率の低さにお悩みの企業は、計算方法を見直してみてください。もしかしたら、実際のパフォーマンスは高いかもしれません。
5.有効商談数/有効商談率
SDRの最重要KPIといえる有効商談とは、フィールドセールスが実際に商談した結果、受注につながる見込みがあると認定できた商談のことです。そのため、有効商談かどうかの見極めはフィールドセールスへパスした後に行います。インサイドセールスは、フィールドセールスと連携して、有効商談となったアポイントの共通点を把握しておきましょう。
有効商談や無効商談の定義は企業ごとに異なりますが、以下のような条件があげられます。
有効商談
- 見込み顧客の課題を明確に把握できている
- 見込み顧客の課題は、自社の商品/サービスで解決できる
- 導入/契約時期の目安を、見込み顧客と共有できている
- 導入/契約のための予算を、見込み顧客が確保している
無効商談
- 実は購入を検討していない
- 予算が合わない
- 自社の商材で解決できない
- 別の商材に関する問い合わせ
SDRが商談化数を追うあまり、たくさんの無効商談をフィールドセールスへパスしてしまうと、受注につながらない商談が増え、営業生産性を下げる原因となります。たとえば会社全体のKGIが受注金額である場合、SDRのミッションはあくまで受注につながる商談を増やすこと。有効商談の条件をフィールドセールスと握りながら協業していくことが大切です。
商談化数からの有効商談率は、平均的に50〜60%。商材にもよりますが、50%を切ってしまうとSDR側でのヒアリングが十分ではない可能性があるので、リードの質やアプローチ方法を検討し直しましょう。
以上がSDRのKPIです。
BDRのKPI項目
BDRの場合、リードが取得できているSDRとは異なり、ターゲットを特定するところから目標を整理していく必要があります。
そのため成果の第一ゴールを、ターゲットへ連絡できる状態になるパーミッション(有効リード)獲得率にして、最終的な目標を商談化と設定しましょう。
行動指標や経過指標も含めた、BDRが意識するべき項目は以下の5つです。
順に解説していきましょう。
1.ターゲットのリストアップ
ターゲットとは、BDRでアプローチをかける人物のことです。多くの場合、BDRのターゲットとなるのは高額な受注金額を見込める大手企業の役職者などでしょう。
インバウンドは発生しにくいけれど自社の商材価値を発揮できそうな企業を見極め、その中でもアプローチに適した特定の人物をリストアップします。
ターゲットのリストアップ数は、多ければいいわけではありません。BDRのアプローチで最も陥りやすい失敗は、望みの薄い相手へリソースを投下すること。粗い条件のリストをつくって量で勝負するのは不毛です。
商材によって異なるので目安のリストアップ数を提示するのは難しいですが、1件ずつの確度が高まるよう精査したリストを作成することが重要です。過去に受注した顧客の分析、類似サービスの事例などからアプローチするべき業界や企業、部署、役職の特定を行い、リストの精度を高めてください。
※参考記事:【SaaS企業向け】BDR(アウトバウンドコール)で再現性高く成果を出す為の準備について
2.フォローアップ数
フォローアップ数とは、電話やメール、CXOレター(手紙)、DMなどを使ってターゲットにアプローチした数です。
フォローアップ数も画一的に量を追いかける必要はありません。あくまで行動指標と捉え、マネジメントに役立つ参考値として見ておく程度に留めましょう。
たとえばBDRの場合、ターゲットにつながる個人メールアドレスや電話番号がわからないこともあります。その場合は、CXOレターやDMが適切に送られているか、マネージャーはメンバーの動きを見ておいてもよいでしょう。
※関連記事:大手企業の商談を獲得する、CXOレターの手順と文例フォーマット
3.ターゲット接続数/接続率
ターゲット接続数とは、ターゲットと連絡が取れた件数のこと。着電数やDM返信数、メール返信数などを指します。「アプローチしたい人物と接続できたか」で判断し、経過指標として見るとよいでしょう。
大手企業の社長や役員にアプローチする場合、受付や秘書を介することが多いため、いきなり本人へつなげてもらえるパターンは稀です。セールスリクエスト社による集計では、電話の場合のターゲット接続率は、時間帯によって高くても8.1%という結果が出ています。
アプローチする業種やターゲットによって異なりますが、そもそも接続できる可能性は低いものと見積もっておきましょう。
【参考】BDRの時間帯別 接続率
BDRの場合、初回連絡でいきなり商材の話をしてもうまくいきません。案内するコンテンツを工夫して、フォローアップに対するターゲット接続率を高めましょう。
まずは役員限定の個別勉強会やゴルフコンペを開催するなど、イベントへ誘致することから始めるケースもあります。イベント開催というと大変に思うかもしれませんが、CPA(顧客獲得単価)で言えばWebサイト改修やカンファレンスへの協賛費用より安くつく場合もあります。
マーケティング部門と協力しながら、大手企業の役職者が関心を寄せるテーマでのイベント施策などを検討してみるとよいでしょう。
4.パーミッション(有効リード)獲得率
パーミッション獲得とは、有効なリードの獲得と同義です。注意したいのは、単純な連絡先の獲得や接続ではないこと。
たとえばターゲットと接続できても、こちらの商材に興味を持っていない相手に対して合意がないまま営業活動を行えば、迷惑な押し売りになってしまいます。ターゲットと連絡が取れたあと、「◯◯という課題に対してこのようなサービスを展開しているので、ご連絡してよいか」に合意を得てはじめて、パーミッション獲得になります。
パーミッション獲得率は、受注確度の高いターゲットにアプローチできていれば、おおよそ40%程度です。
5.商談化数/商談化率
BDRは、商談化数や商談化率を最重要KPIにしてよいでしょう。SDRのような有効商談をKPIとして追う必要はありません。「自社と相性のよい業界の役職者」など、精査したターゲットリストから商談を創出できれば、SDRよりも受注確度の高い有効商談になるケースが多いからです。
ただし、ターゲットのリストアップから考えると商談化までの期間はSDRより長くなります。こちらの商材を認知していない人物に対してアプローチし始めることも多いため、商談化まで1〜2年かかることも珍しくありません。四半期や半期では追うことが難しいため、とくにBDR立ち上げ期などは達成が難しい目標であることは理解しておきましょう。
インサイドセールスのKPIを設定する手順
インサイドセールスに限った話ではないですが、いわゆるTHE MODEL(ザ・モデル)のような分業型組織の場合、KPIは隣接部門や経営目標に鑑みて設定しなければいけません。設定の手順についてもご紹介しておきます。
【前提】隣接部門とKPI項目の定義・条件を合意する
業務連携をスムーズに行うには、隣接部門とKPIをすり合わせておくことが重要です。マーケティング部門やフィールドセールス部門と、KPI項目の定義や条件について合意を得ます。
定義・条件を合意しておくべきKPI項目
- フィールドセールス部門と合意しておくべき項目▶︎有効商談の定義・条件
- マーケティング部門と合意しておくべき項目(SDRの場合)▶︎有効リードの定義・条件
1.KGIから逆算して、部門の成果目標を設定する
会社全体のKGI(受注金額など)から逆算し、インサイドセールスの成果目標を設定しましょう。
必要な数値
- KGIとなる受注金額
- 顧客単価
- 実績にもとづいた実現可能な受注率
(例)KGIとなる受注金額1,000万円/月、顧客単価が100万円の場合
必要な受注件数10件÷過去の受注率25%=商談化数40件/月
実績をベースに最終的なKPIを算出することが重要です。希望的な観測のもとに高い目標数値を設定してしまうと、すぐに計画が破綻してしまうでしょう。無理のある残業を増やさないためにも、実現可能な目標設定をおすすめします。
2.成果目標から、経過指標と行動指標を設定する
成果目標から逆算して、経過指標と行動指標を設定していきます。ただし、負荷の高い行動指標を設けるのはおすすめしません。商材によりますが、短期的に重い行動量を背負わせるとメンバーのモチベーション維持が難しくなります。組織が疲弊して無意味にリストを消化することになりかねません。
あくまでも、経過指標と行動指標はマネジメントに役立てる参考値として捉え、必要に応じてリソースを確保しましょう。
とくにBDRの場合はSDRよりもリードタイムが長くなる傾向があるので、短期的な目標をおいて刈り取り施策に傾いてしまっては本末転倒です。なるべく長期的に評価することを念頭に置きましょう。
KPI設定時のチェックポイント
ここまでで解説したKPIについて、留意するべきチェックポイントをまとめました。インサイドセールスのKPI設定時に確認してみてください。
SDR・BDR共通 | フィールドセールス部門と有効商談の定義・条件を合意できているか? |
目標数値は、実績をもとにした実現可能な数値になっているか? | |
SDR | マーケティング部門と有効リードの定義・条件を合意できているか? |
商談化率を割り出すときの母数は、対応済みリードになっているか? | |
BDR | ターゲットリストは、自社と相性のよい業界や役職に絞られているか? |
アプローチ方法は、商材やターゲットの特性に合わせているか? |
インサイドセールスのKPIを簡易的に管理したい、というマネージャー層に役立つテンプレートもあるので、以下の記事もぜひご覧ください。
※関連記事:インサイドセールスKPI管理シート(簡易版)
まとめ
インサイドセールスに限りませんが、KPI設定は成果目標に至るまでのプロセスを分解して経過指標、行動指標に落とし込んでいくことが大切です。
才流では成果が実証されたメソッドにもとづき、インサイドセールスの強化を支援しています。インサイドセールス活動で課題を感じている方はお気軽にご相談ください。⇒才流のサービス紹介資料を見る(無料)
- インサイドセールスの成果を最大化したい
- インサイドセールスのKPI設定についてアドバイスがほしい
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■インサイドセールスの強化支援
■インサイドセールスの立ち上げ支援
■セールスイネーブルメントのコンサルティング
(文:大江 健七郎)
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監修
Twitter:@sicgram
2009年より大手人材企業にて求人広告営業に従事。その後、弁護士ドットコム株式会社にてフィールドセールス・インサイドセールス・営業推進を経験後、スタートアップ企業を経て2019年に独立。現在は、セールスリクエスト代表として企業のインサイドセールスを支援。