BtoBの購買活動における情報収集には、職種別に一定のパターンがあるのではないか?――才流(サイル)では、この仮説をもとに職種別に情報収集の実態調査を行いました。
本記事では、企業内でDX推進を主導する「DX推進担当者」に焦点をあてた調査結果をお届けします。DXに関わる製品・サービスのマーケティング施策を検討するための一助となれば幸いです。
調査サマリ
- 製品・サービスを認知するきっかけとなったチャネルは、「IT系Webメディア」が最も多く、次点は「展示会」
- よく閲覧するIT系Webメディアは、「日経クロステック」が最も多く、次いで「ITmedia」「ビジネス+IT」
- 製品・サービスに興味を持ってもらうためには、「導入事例」が有効
- 一次選定の土俵に上がるためには、「検索エンジン対策」「第一想起獲得」「パートナービジネス」の3つが重要
- 検討プロセスの後半においては、「自社の課題を解決できるか」が最大の関心事
調査概要
調査目的 | DX推進担当者の購買活動における情報収集の実態を明らかにし、マーケティ ング活動を最適化するヒントを得る |
調査対象 | 所属企業において「DX推進を主導している」方 |
調査対象の従業員規模 | 99人以下:121名(24.2%) 100~999人以下:172名(34.4%) 1,000人以上:207名(41.4%) |
有効回答数 | 500件 |
調査期間 | 2024年10月24日 ~ 2024年10月26日 |
調査方法 | Webアンケート調査 |
調査企画・実施 | 株式会社才流 |
調査結果
DXに関わる製品・サービスの購買活動において、DX推進担当者は何を重視し、どのように情報収集と検討を進めているのでしょうか。今回の調査では、認知経路や検討プロセス、導入決定までの期間などが明らかになりました。
ここでは、調査で得られた主要データをもとに、DX推進担当者の購買活動をステップごとに整理し、その行動や意思決定のポイントを解説します。
※本調査では、単一選択(SA)と複数選択(MA)の質問形式を採用しています。
1. DX推進担当者の所属部署
DX推進を主導している人の所属は、DX推進の専門組織が最多となりました。
次に経営企画部門の比率が高く、情報システム部門や経営層など、さまざまな部門からDX推進に携わっている実態も確認できます。
2. DXに関する製品・サービスの「認知のきっかけ」
DXに関する製品・サービスを認知する主なきっかけは、「IT系Webメディア(ITmedia、日経クロステックなど)」が最多で、次に展示会が挙げられました。
IT系Webメディアの影響力が強い一方で、展示会といったオフラインの接点から認知に至るケースも依然として多いことがわかります。
3. DXに関する製品・サービスに「興味を持つきっかけ」
興味を喚起する大きな要因として、「同業他社の導入事例や実績を見たとき」が最も多い結果となりました。次いで、「関係会社・グループ会社の導入事例や実績」が続きました。
これらの結果から、実際の活用シーンを具体的に伝える導入事例が、DX推進担当者の関心を高めるうえで重要な材料であることがわかります。
さらに、「自社が抱える課題を解決できるソリューションであると知ったとき」も上位に挙がっており、課題解決型の提案が興味喚起において有効であることが示されています。
4. DXに関する製品・サービスを「リストアップ(一次選定)する方法」
製品・サービスをリストアップ(一次選定)する際は「検索エンジンから製品・サービスを探しリストアップする」が最も多い結果でした。続いて、「以前から気になっていた製品・サービス」「支援会社の担当者に相談し提案を受ける」といった方法が挙げられています。
この結果から、一次選定においてはSEO施策やリスティング広告などを通じて検索エンジンでの露出を高めること、第一想起ポジションを確保すること、さらにパートナービジネスの強化が重要であると理解できます。
5. DXに関する製品・サービスが「自社にマッチするかを確認する方法」
自社にマッチするかを確認する際の方法として、「ベンダーのサービスサイトを確認する」が最も多く挙げられました。次いで、「ベンダーのサービス資料を確認する」が続いています。
これらに加え、セミナーやウェビナー、営業担当とのやり取りを通じて、多角的に情報を集めたうえで最終判断を行うケースが多いことがうかがえます。
6. DXに関する製品・サービスの「導入検討度が上がる出来事」
導入検討度を上げる要因として最も多かったのは、「活用シーンが明確にイメージできたとき」でした。次いで、「費用対効果が見合うと判断できたとき」や、「自社の課題を解決できるソリューションであると理解できたとき」が挙げられています。
これらの結果から、導入後の具体的な成果を明確に示すことが、最終的な検討度の向上に大きく影響を与えると考えられます。
7. DXに関する製品・サービスを選定する際に「重視したポイント」
選定の際に最も重視されるのは、自社の課題を解決できるかどうかという点です。
導入企業が直面する環境や課題は多岐にわたりますが、それぞれに適した解決策を提示できるかが、最終的な決定における重要なポイントとなります。
8. よく閲覧するIT系Webメディア
DX推進担当者がよく閲覧するIT系Webメディアとして、最も多く挙げられたのは「日経クロステック」です。次に「ITmedia」「ビジネス+IT」が続きました。
これらのメディアは、新たな製品・サービスに関するニュースや導入事例を把握するために利用されていると考えられます。
9. DXに関する製品・サービスの情報収集開始から発注までの期間の期間
情報収集開始から発注までの期間は、「1か月~3か月未満」が最も多く、次いで「3か月~6か月未満」が続きます。
調査全体では、1年以内に発注に至る企業が約85%を占めており、検討から導入までの期間が比較的短い傾向が明らかになりました。
本調査を踏まえた提言――DX推進担当者へのアプローチを最適化するには
本調査から得られた知見をもとに、DXに関する製品・サービスのマーケティング施策を効果的に展開するためのポイントをまとめました。
1.IT系Webメディア、展示会で認知を獲得する
まず、DX推進担当者の認知を獲得するには「IT系Webメディア」と「展示会」を組み合わせたアプローチが有効です。
IT系Webメディアへの寄稿や広告出稿、展示会への出展によってオンライン・オフライン双方での露出を確保すると、幅広い層への認知を得やすくなります。
とくに「日経クロステック」「ITmedia」「ビジネス+IT」は、優先度が高いメディアと考えられます。
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2. 検索エンジン対策を徹底する
一次選定においては、検索エンジンからリストアップするケースが最も多いという結果が示されています。SEO施策やリスティング広告によって検索上の露出を高めることがリストアップの第一歩となります。
検索結果に比較サイトが上位表示されやすいジャンルであれば、その比較サイトへの掲載も選択肢の一つになります。
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3. パートナービジネスを強化する
SIerやコンサルティング会社などの支援会社がDX推進担当者の製品・サービス選定に与える影響も無視できません。
パートナー企業と協業して販売施策を展開するパートナービジネスを強化すれば、新規顧客への導入提案だけでなく、既存顧客からの追加案件獲得などの機会も広がる可能性があります。
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4. 導入事例を制作・拡充する
同業他社の成功事例は、DX推進担当者が最も興味を示す材料の一つです。自社に近い環境・規模の事例が豊富にそろっていると、検討初期から詳細比較の段階まであらゆるフェーズで説得力を高められます。
製品・サービスの魅力を具体的に伝えるためにも、導入事例を積極的に制作・拡充していくことをおすすめします。
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5. 費用対効果をわかりやすく説明する
DX推進担当者が最終的に導入を決断する際には、費用対効果が見合うかどうかが大きな判断基準になります。
提案資料で具体的な導入コストや投資回収シミュレーションを示すなど、費用対効果を視覚的、かつわかりやすく伝える工夫をすることで、導入ハードルを下げられる可能性が高まります。
本調査から導くカスタマージャーニーマップ
以下は、本調査結果をもとにしたDX推進担当向けカスタマージャーニーマップです。自社の商材やリソースにあわせてカスタマイズしてください。
カスタマージャーニーマップ(PowerPoint形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
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調査担当者の視点
今回のWebアンケート調査では、事前に実施した定性インタビューの結果に基づいた仮説を検証しました。その結果、仮説とほぼ一致するデータが得られました。
定性、および定量の両方のアプローチから同様の結果が得られたため、信頼性の高い内容に仕上がったのではと考えています。
商材やリソースの状況に応じて、重視すべき施策は異なるかと思いますが、DXに関わる製品・サービスのマーケティング施策を検討するための一助となれば幸いです。