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BtoBマーケターのスキルチェックシート~大企業で自走できるマーケターを育成するために~

BtoBマーケティング
コンサルタント
野田 拓志

BtoBマーケティングに携わっていると、「社内で、自走できるマーケターを育成したい」「マーケターの評価がわからない」などのご相談をよくいただきます。

  • マーケターにはどのようなスキルが必要なの?
  • どのレベルまでできれば、一人前のマーケターと言えるのか?
  • 社内での評価基準はどうすればいいかのか?

これらの疑問は、マーケター評価の客観的な指標がないために、手探りで進めている状況によるものです。

そこで、特に組織として課題を抱えやすい大企業に特化し、マーケターのスキルの指標となるチェックシートを作成しました。本記事では、利用方法を解説します。

スキルチェックシートは、マーケターの基本スキルと、専門スキルの2つあります。マーケター育成に課題を抱える方、メンバーの評価に迷っている方、自分自身のスキルをチェックしたいマーケターの方もぜひご活用ください。

大企業のマーケタースキルチェックシート(Googleスプレッドシート)を開く 
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※個人情報の入力は必要ありません。クリックするとファイルがダウンロードされます

マーケターの業務範囲やスキルは企業規模によって違う

大企業と中小ベンチャーでは、マーケターの課題やそもそもの役割に違いがあります。マーケターの悩みを企業規模別に集計したBenchmark社のアンケートによると、企業規模によってマーケターが任されているマーケティング業務の範囲が異なることがわかります。

ヒト・モノ・カネ・情報がある大企業のマーケターは、リソースをいかに有効に配分し、成果を上げるかを重視していることが多いです。

マーケティング施策の運用は外部の専門会社に依頼することが多いため、大企業のマーケターには外部パートナーから提示された結果を分析し、戦略を見直すスキルが求められます。

他方、中小ベンチャー企業のマーケターは戦略を立てる段階から、施策の実行まで、すべてを自分で行っているケースが多いです。

外注はコストの関係上なかなか難しく、相談できるメンバーも多くありません。施策の実行・運用も書籍やWebの情報をもとに試行錯誤しながら進めています。

自分自身で施策を実施し、広告コピーも考え、営業部門とのコミュニケーションも行う中小ベンチャーのマーケターは、大企業のマーケターより、さらに専門的な知識や実行スキルが求められるのです。

なお、今回のスキルチェックシートは、組織の特徴として評価体制構築を求められる大企業向けにまとめています。

※関連動画:戦略を練られるマーケターの採用&スキルアップ術(YouTube)

なぜ自走できるマーケターが生まれないのか?

BtoBマーケティングの組織をつくり、社内メンバーだけで自走していく。BtoB事業を行う多くの企業が理想とする形です。

しかし、実際はその理想には届かず、苦労しているという声を聞きます。なぜ、社内に自走できるマーケターが生まれないのかでしょうか。

理由は2つ。マーケティングのドーナツ化現象と、組織の評価体制の問題が考えられます。

理由①マーケティングスキルのドーナツ化現象が起きている

大企業の場合、代理店や外注先から、日々マーケティング施策の結果が届きます。提出された報告のレポートを読み解き、施策を改善していく必要があるため、具体的な施策やツールに関する学びをつい優先してしまいがちです。

例えばリスティング広告の効果的な出し方、SEOのテクニック、MAツールの活用法などがこれに当たります。

しかし、マーケティングでもっとも重要なのはドーナツの真ん中にある戦略・施策立案と体制作りです。根幹が抜けてしまっているために、いくら施策を繰り返しても、どんなに知識をつけても、なかなか思うような成果が出ないのです。

マーケティングで自走するためには、まずはマーケティング戦略を考えるスキルが必要です。

理由②スキルアップの未来地図がない

人材育成で成功しているマッキンゼーでは、同社流の「リーダー人材育成の評価・選抜」を次の4ステップで行っているそうです。

ステップ1:ゴールの姿の明確化

個々人が目指すべき最終ゴールとなるリーダー像の具体的イメージを形成し、育成担当者と本人が共有する

ステップ2:ギャップアナリシスの実施

ゴールと現時点での本人を比較し、「ゴールに辿り着くためには、これから何を経験させればよいのか」の分析を行う

ステップ3:ファクト・アンド・ロジックに基づく評価

評価を特定の上司から切り離し、同じプロジェクトで働いた社員から、仕事ぶりやスキルレベルに関する情報を集め、評価を仮決定する。その仮決定をもとに人材評価育成会議で評価を決定する

ステップ4:組織の価値観を伝達する

将来にわたり長く組織を率い、ともに発展させていく仲間や後継者を育てるために組織として譲れない使命や信念を伝達する

この評価・育成法を参考にすると、人材育成のためには「ゴールの姿の明確化」と「何を経験させればよいのかのマイルストーン」が必要だということがわかります。

つまり、「自走」という理想の状態にマーケターを導くためには、会社や組織がゴールの姿を示し、マーケターと擦り合わせていくことが重要なのです。

スキルアップの未来地図がないために、自走できるマーケターが育たない。この課題に対し、スキルチェックシートは方向性を示す一助になると考えています。

大企業のマーケタースキルチェックシート

前述の課題を解決するため、社内で使える「大企業のマーケタースキルチェックシート」を作成しました。

大企業のマーケターが身につけるべきスキルを見える化し、レベル分けしたものです。スキル範囲の観点だけでなく「スキルの深さ」という観点からも人材育成のヒントになれば幸いです。

また本シートはあくまでも汎用的なチェックシートです。活用する際は、自社の状況に合わせカスタマイズしてご活用ください。

シートは【基本スキル】と【専門スキル】に分かれています。

【基本スキル】

【専門スキル】

【評価基準の目安】

〇:一人でできている(下位者に教えることができるレベルを含む)

△:ほぼ一人でできている(一部、上位者・周囲の助けが必要なレベル)

×:できていない(常に上位者・周囲の助けが必要なレベル)

また、2018年ころから、マーケタースキルの見える化に各社が取り組んでおり、本チェックシートの参考にさせていただきました。

※参考記事

マーケティングに強くなる「スキルマップ」を作ってみた

ジャーニーを動かすマーケターの育成方法とは?スキルマップで個々の特性を見極める【古庄拓氏×黒澤友貴氏 対談後編】 | DMMオンライン展示会

「基本スキル」は戦略を立て、施策を分析するために必要

基本スキルは「現状の調査・分析」、「戦略立案」、「施策実行と改善」の3つに分かれ、さらにそれぞれの能力ユニットに分かれています。レベルはLv.1 初心者からLv.3 責任者・CMOまで分かれています。

現状の調査・分析:顧客理解、自社事業理解、競合理解、数値管理・レポーティング

戦略立案:課題の設定、マーケティング施策の企画

施策実行と改善:他部署連携、パートナーマネジメント

現状の調査・分析

マーケティング戦略や施策の立案を行うためには、現状の調査・分析が欠かせません。現状を理解せずに、打ち手をつくることは難しいものです。

現状の調査・分析は、4つに分けて能力ユニット化しました。マーケティングの基本的な3C分析と、目標に基づく数値を調査・分析できるスキルを身につけましょう。

なお、各スキルを高めるヒントは以下の記事を参考にしてください。

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戦略立案

現状の調査・分析で集めてきた情報をもとに戦略立案を行います。自社のマーケティングの現在地を把握したうえで、現状の課題を明確にし、目指すべき状態とのギャップを埋めていく方法を決めていきます。

大きな戦略を描いただけで終わらず、具体的なマーケティング施策にまで落とし込み、実行できる状態にしていきましょう。

スキル関連記事
マーケティング施策BtoBマーケティングの手法大全                     

施策実行と改善

施策実行と改善を行うために、関係各所へのマネジメントが必要です。

営業やCSなど他部署のメンバーを巻き込みながら、施策を実行していきます。また、専門的な知識が必要となってくる施策に関しては、外部パートナーを有効活用するスキルも必要です。

施策の実行では、やりっぱなしはご法度。確実に、PDCAが回るようにしていきましょう。

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「専門スキル」は施策の成果を高めるために必要

次に、専門スキルのシートを解説します。

専門スキルは「Webサイト改善」、「SEO」、「広告運用」、「メールマガジン配信」、「コンテンツ企画・制作」、「郵送DM企画・郵送」、「イベント企画・出展」、「ツール導入・運用」の8つに分かれています。

レベルは、Lv.1 初心者からLv.4 CMOまでです。

施策実行と改善

施策実行と改善を極めたい、自社内で完全に運用したいという場合は、専門スキルを身につけていくことをおすすめします。

BtoBマーケティングの専門スキルは「Webサイト改善」、「SEO」、「広告運用」、「メールマガジン配信」、「コンテンツ企画・制作」、「郵送DM企画・郵送」、「イベント企画・出展」、「ツール導入・運用」が主です。

初期はパートナーの力を借りつつ、個人のスキルレベルを高めることで自走できる状態へと近づけていきましょう。

マーケタースキルチェックシートの利用シーン

大企業のマーケタースキルチェックシートは、2つの利用方法をイメージしています。

1on1ミーティングでの使用

シートには「現状のレベル」「自己評価」「上司評価」「コメント」を記載する欄を用意しています。

現状のレベルを設定し、直近の評価を個人と上司で項目を埋め、コメントも追記するという順でご活用ください。1on1ミーティングで個人のキャリアを描く、ゴールを設定する際に参考資料として活用できます。

個人のレベルをチェックするために使用

本シートは、マーケター自身のキャリアアップの基準としても活用できます。自身のスキルをどこまで高めればいいのか?という疑問は誰しも抱くもの。目標となるレベルを決め、学ぶためのロードマップを描いてみてはいかがでしょう。

大企業のマーケタースキルチェックシート(Googleスプレッドシート)を開く 
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※個人情報の入力は必要ありません。クリックするとファイルがダウンロードされます

よくある質問

野田

マーケターのスキルやチェックシートについて、質問に回答します!

Q. 大企業のマーケタースキルチェックシートは独自に変更しても良いですか?

各社状況や組織体制などは異なりますので、自社の状況に合わせて変更してください。また、自社内にマーケターとしてモデルケースとなる方がいる場合は、その方にご意見をいただきながら作成することをオススメします。

Q. 施策実行と改善(専門スキル)をすべて習得しなければなりませんか?

専門スキルとして挙げている8つの専門スキルをすべて極めているという人は存在しないでしょう。必ず得意不得意があるものです。組織として、複数人で専門スキル全体を網羅する体制をつくるのが現実的です。

Q. 評価制度の運用で使用したいので、もっと細かいスキルチェックシートはありませんか?

厚生労働省が作成した「職業能力評価シート」内に職務マーケティングというものがあります。同資料は、評価制度で活用することを想定していますので、参考にしてください。

※参考:厚生労働省「職業能力評価シート(事務系職種)のダウンロード

おわりに

多くの会社が、「社内に自走できるマーケターがほしい」と期待しています。しかし優秀なマーケターを採用する難易度も非常に高いもの。会社や組織が社内のマーケターのスキルアップを導いていくことが、理想の状態に至るためには必要なのです。

ぜひとも、大企業のマーケタースキルチェックシートをご活用いただき、レベルアップの青写真を描いて育成につなげていきましょう。

大企業のマーケタースキルチェックシートがきっかけで色々な会社に自走できるマーケターが増えることを願っております。

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