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ABM、エンタープライズ営業に必須。アカウントプランのつくり方|ABM入門と実践ガイド第4回

法人営業
コンサルタント
政次 貴弘
コンサルタント
名生和史

大手企業の新規開拓・既存顧客の取引拡大に有効な戦略として、ABM(Account Based Marketing[アカウント・ベースド・マーケティング])が注目されています。

そこで才流では、全6回にわたり『ABM 入門と実践ガイド』として、ABMの基礎知識から実践方法までを体系的に解説します。

第4回は、プランニングです。ターゲットアカウントをどのように開拓していくかをまとめた、アカウントプランを作成します。

アカウントプランは、何十ページもの資料をつくる必要はありません。顧客概要、目的と方向性、ポテンシャルマップ、リレーションマップ、アクションマップという5つの情報から、更新・活用しやすいアカウントプランがつくれます。

作成のポイントは、営業が顧客との関わりのなかで得た定性情報の活用にあります。とくに顧客組織内の関係性をまとめたリレーションマップ は、営業活動に大きく影響します。

アカウントプランの作成方法と、活用の仕方を理解しましょう。

あわせて、アカウントプランが5枚のスライドでつくれるテンプレートをご用意しました。ぜひ、ご活用ください。

アカウントプランのテンプレート(pptx形式をダウンロードする)

※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。

才流では、「ABMに興味があるが、自社に適しているかわからない」「ABMを始めているが、成果が見られない」とお困りの企業さまを支援しています。才流のABMコンサルティングは、マーケティングから営業までを一貫して支援できる点が強みです。ABMのお悩みや不明点がある場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。⇒サービス紹介資料のダウンロードはこちら

アカウントプランはゴールを目指す地図

ABM におけるプランニングとは、ターゲットアカウントを開拓するための、調査や分析、方向性の決定、 アクションプランの策定までを行うことです。

このプロセスを経てつくられたプランを、アカウントプランといいます。

アカウントプランは、「顧客とどのような状態になりたいか」というゴールを定義し、それを目指すための地図と考えるとわかりやすいでしょう。

アカウントプランは、リソース配分の計画書です。アカウントプランをつくることは、「やることとやらないことを決めること」ともいえます。

会社のリソースは有限です。アカウントプランがあると、アカウントに対してにどこまでリソースを割くか、施策は何をするか、社内の他部署にどのような協力を仰ぐかの整理や相談がしやすくなります。アカウントプランは、社内関係者が現在地のすりあわせを行う役割も持つのです。

また、「自分の案件に対して時間やお金を投じてほしい」という社内への営業活動にも活用できます。

アカウントプランの作成には一定の時間をかける必要がありますが、結果的に最も効率のよい方法です。

5つの基本情報でつくるアカウントプラン

アカウントプランについてよく挙げられる課題に、「アカウントプランにどんな情報をまとめたらよいかがわからない」「何十枚もの資料をつくったが、活用できていない」があります。

アカウントプランは、作成して終わりではありません。情報の更新を行い、日々のマーケティングや営業活動に活用することが重要です。

ですから、アカウントプランは更新しやすく、日々の業務の参考となる情報がまとまったコンテンツを目指します。IR資料をまとめただけでは、不十分です。

才流がおすすめする、アカウントプランに必要な情報は以下の5つです。

アカウントプランには、ストーリーをつくりましょう。

「どのような顧客か」を明確にし、その「顧客とどのような状態を目指すのか」を定義します。そして、「LTVの見込みは?」を推測し、「どこにどんな課題があるのか」を特定。課題解決のために、「いつまでに何を行うか」を計画していきます。

いざ活動を始めると、アカウントプランとは違うアクションをしてしまいがちです。情報を並べるのではなく、一貫したストーリーを持つことで、目的とアクションのズレを防げます。

アカウントプランの情報①顧客概要


では、アカウントプランに必要な、5 つの基本情報を解説します。

顧客概要は、ホームページや会社四季報、有価証券報告書などの公開情報から、事実ベースの内容をもとにつくります。まずは、企業の規模や事業内容がわかれば問題ありません。マーケティングや営業活動を進めるなかで、わかった情報を更新していきましょう。

アカウントプランの情報②目的と方向性

アカウントプランの基本情報2つ目は、目的と方向性です。アカウントを開拓する目的と、どのように開拓を進めていくかの方向性をまとめます。

ABMでは、そのアカウントからのLTV最大化を目指すため、数年後の自社とアカウントの状態や売上の目安など、「どうなっていたいか」の大まかな方向性を整理します。

数年後の状態とそれへ向かう方向性と根拠を理解しておくと、今やるべきことが見え、顧客への質問レベル・会話レベルが変わっていきます。また、社内関係者にとっても、営業に対してどのようなフォローを行えばよいかわかりやすくなります。

方向性のつくり方は、テンプレートを用意し、穴埋めする形式がおすすめです。テンプレート化することで、網羅性・効率性が上がり、社内関係者間の認識のズレを防ぐほか、情報を都度調べ直す手間が省けます。

アカウントプランの情報③ポテンシャルマップ

ポテンシャルマップとは、ターゲットアカウントから、どのくらいのLTVが見込めるかを整理する資料です

今後のポテンシャルがわかると、適切なリソース配分ができます。また、営業担当者以外から「この領域にクロスセルのチャンスがある」「この事業では、こんな事例が提案できる」などの指摘や意見も引き出しやすくなります。

ポテンシャルマップは、次の順で作成します。

  1. ターゲットアカウントの事業種類、または組織を縦軸に、自社商材名を横軸に記載する
  2. 既契約、現在商談中、将来の見込み(ある程度の推測も含め)を記載し、色分けする
  3. 右の表に、合計を記載する
  4. 表題欄に「現在XX、将来XXの見込みがある」と記載する


ポテンシャルマップ:縦軸が事業種類の場合

ポテンシャルマップ:縦軸が組織の場合


ポテンシャルマップの縦軸は、自社の商品・サービスの売り方を踏まえて、「事業種類」と「組織」 の、どちらか管理しやすいほうを選んでください。

なお、ポテンシャルマップの作成は、次のテンプレートをご利用ください。

ポテンシャルマップ作成テンプレート(Googleスプレッドシート形式)

※個人情報の入力は必要ありません。クリック後、表示される手順に沿ってコピーを作成し、ご利用ください。

アカウントプランの情報④リレーションマップ

リレーションマップは、自社と顧客、または顧客内での関係性や役割を1枚で可視化したものです。バイヤー相関図やパワーチャートともいいます。

どの部署の誰にどのようなアプローチをするのか、商談や提案を進めるうえで想定されるリスクを適切に捉え、アクションを行うために、必須の資料です。

組織図ではありませんので、部署や人の情報を網羅することを目的にしないように注意してください。
とくに、アカウント側に決裁者が複数人いる場合は、リレーションマップを優先してつくりましょう

リレーションマップの一例

上記のリレーションマップには、次のような情報が含まれています。

A社へ提案を進めており、現在はA部との関係性を深めている。

社長のAさま直下に10の部署があり、そのうち当社のサービスの購入または意思決定に関与する可能性が高い部署が6つある。そのうち、A部とB部とは面談済み。C部からF部の部長とは、まだ面識がない。

過去の面談から、以下の情報がわかっている。

  • 準意思決定者は、A部とB部、C部の部長
  • 予算の取りまとめは、F部のF部長が担当している
  • 準意思決定者のA部長は、当社の商品導入にあたり、可もなく不可もなくフラットな状態である
  • カウンターのA課Aさまは当社に好意的
  • カウンターの上司のA課長は、意思決定に強い影響を与える影響者であり、当社のサービスの強い推薦者である
  • B課のB課長は自社の競合他社であるX社に好意的らしい
  • A部長とB課長は、関係性が強い

なお、A社と当社は過去に以下のような接点がある。

  • 当社のA役員は、過去XXXX年YY月に社長のAさまへの提案に同席している
  • Y部長は、過去XXXX年YY月に行ったA部長への提案に同席している

上記の内容が読み取れるよう、リレーションマップには顧客内の関係性や役割だけでなく、自社と顧客のこれまでの関係性を記入することも重要なポイントです。

リレーションマップはリスクを防ぐ

では、なぜABMではリレーションマップが有効なのでしょうか。先に挙げたリレーションマップと上司と部下のコミュニケーション例を見ながら、リレーションマップの重要性を理解していきましょう。

まずは、リレーションマップがない上司と部下の会話です。

営業担当者は、A課長とA部長に対して提案を進めていました。しかし、隣の課のB課長が、商品導入に反対。検討がストップしてしまったといいます。

リレーションマップがないため、マネージャーはA社内の人間関係や役割、状況を把握できていません。さらに、B課長が商品導入に反対していること、A部長との関係性も知らないため、マネージャーは目の前の提案と意思決定者へのケアのみに意識が向いてしまいました。

続いて、リレーションマップがある上司と部下の会話です。

リレーションマップは、アカウント社内で新規に名刺交換をした人や得た情報を記入し、更新していきます。上記の会話からは、マネージャーがつねにリレーションマップを見ていることがわかります。

そしてマネージャーは、リレーションマップから、準意思決定者の1人A部長と関係性の深いB課長が商品導入に反対していることに着目します。B課長のケアだけでなく、自社の役員に相談したり、A社のほかの部にも協力を打診したりと、具体的な指示が出せています。

このように、リレーションマップの有無で、上司と部下のコミュニケーションと具体的なアプローチの質に、大きな差が生まれます。とくに大手企業を開拓するときは、複雑な人間関係に直面することがあるでしょう。その関係性を可視化するためにも、リレーションマップは必要なのです

アカウントプランの情報⑤アクションプラン

アクションプランでは、アカウント開拓のための具体的な活動を計画します。

目標達成に向けて、まずは半年後や1年後の目標を設定しましょう。次に、その目標を達成するために、3か月後の到達点を明確にします。さらに、1か月目、2か月目の計測可能な目標を設定し、段階的に進捗を管理していきます。

たとえば、「今から半年後にターゲットアカウントの決裁者と面談する」という目標を立てた場合、まず現時点から3か月後の中間目標として「キーパーソンへ提案する」を設定します。

さらに、中間目標に向けて「現時点から2ヶ月後にはターゲットアカウント社内で勉強会を実施」「現時点から1か月後にはターゲットアカウントの5名以上と名刺交換を行う」と、段階的に目標を設定していきます。

半年後や1年後の長期的なゴールのみを定めてしまうと、その間に行うアクションが曖昧になりがちです。その結果、進捗状況が把握しづらくなり、アクションプランの成果の評価や、改善が遅れる可能性があります。

具体的な目標の例としては、「〇〇部内で3名以上と面談を行う」「決裁者やキーパーソンを特定する」などが挙げられます。目標設定後は、必要に応じて社内の関係部署に協力を仰ぎ、目標達成に向けて取り組んでいきましょう。

アカウントプランの活用。社内関係者に共有し、更新する

「アカウントプランはゴールを目指すための地図」です。

アカウントプランをつくったら、営業やマーケティング、開発やカスタマーサクセスなども含めた関係者へ、内容を発表する場を設けてください。関係者全員が同じ地図(アカウントプラン)をみて、ゴールを目指しましょう。

アカウントプラン共有の会議には、営業の本部長以上の参加が必須です。同業界や近しい業態のターゲットアカウントを担当するメンバーがいる場合は、声をかけてもよいでしょう。課題感やアクションが参考になるほか、情報交換ができます。

アカウントプランは、関係者がいつでも確認できるような状態にしておきます

社内ポータルやイントラネットと連携、GoogleDrive、Boxなどのクラウドストレージに保存、NotionやSalesforceAnywhere(Quip)などのドキュメントツールを活用するなど、環境にあわせて使いやすい状態を心がけましょう。

アカウントプランの更新

アカウントプランは、更新を行います。プラン通りに進んでいる、進んでいない、どちらの状況であっても、更新を続けましょう。

更新は、アカウントの担当営業が行います。「気づいたら更新」ではなく、更新する日を決めることが継続のポイントです。

アカウントプラン更新ルールの例

アカウントプラン会議を行う

アカウントプランをもとにした、会議を行いましょう。

会議では、アカウントプランから示唆を見つけ、具体的なアクションをディスカッションします。頻度は、営業現場の会議を月に1回、営業の役員や上位管理職や他部署の役員も交えた会議は3か月または四半期に1回が目安です。

アカウントプラン会議の一例


『ABM 入門と実践ガイド』第4回として、プランニング(アカウントプランの作成)を解説しました。

アカウントプランのテンプレートは、以下よりダウンロードできます。ご活用ください。

アカウントプランのテンプレート(pptx形式をダウンロードする)

※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。

アカウントプランのつくり方や活用方法を、よりくわしく説明した『ABM 入門と実践ガイドブック』をダウンロード配布しています。リレーションマップを用いた部下への指示の出し方や、リレーションマップを更新するときのポイントなどを解説しています。

『ABM 入門と実践ガイドブック』をダウンロードする(無料)→

第5回では、ターゲットアカウントと面談の機会や商談をつくる、具体的なアクションの例を紹介します。

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