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カスタマーサクセスとは? 本質を理解して成果につなげるための18のチェックリスト

BtoBマーケティング
インハウスエディター
南 大友

カスタマーサクセスとは、自社製品・サービスを利用している顧客の成功を実現させるための取り組みです。「カスタマーサクセス」という概念は、2018年ごろからSaaSやサブスクリプション型サービスを提供する企業を中心に徐々に認知されるようになりました。

専任部署を設けてカスタマーサクセスに取り組む企業が増えている一方で、カスタマーサクセスという言葉を聞いたことがある人は2割以下という調査結果もあり(※)、意味や取り組みについて詳しく理解しているビジネスパーソンはまだまだ少数派といえます。

本記事では、カスタマーサクセスの基礎知識や取り組みの手順について解説します。実践的な内容として、成果につなげるためのチェックリストも用意しましたのであわせてご活用ください。

※参考記事:【2023年カスタマーサクセスに関する実態調査】 81.7%の企業トップ層が「聞いたことない」正しく理解している人はわずか2.2%と過去最低 、非サブスク企業における重要性は増加 

■監修:才流(サイル)コンサルタント・高橋 歩

カスタマーサクセスとは

カスタマーサクセス(Customer Success)とは企業の成長戦略の一つで、自社製品・サービスを利用している既存顧客の成功を実現し、自社の事業を成長させるための取り組みです。「成功」の定義は顧客によってさまざまですが、製品・サービスの利用を通じて、課題を解決することや期待した成果を手に入れることが挙げられるでしょう。

カスタマーサクセスは部門や役割として機能するだけでなく、企業の方向性を示す指針にもなります。なお、カスタマーサクセス部門は略して「CS」と呼ばれることもあります。

日本では、SaaSやサブスクリプション型サービスを提供するスタートアップ企業を中心に、カスタマーサクセスが普及してきました。SaaS企業の営業組織モデルとして知られる「The Model(ザ・モデル)」では、カスタマーサクセス部門は成約後の顧客の更新率向上を担当する役割と定義されています。

カスタマーサクセスの担当範囲

近年、サブスクリプション型サービスを提供していない企業でも、カスタマーサクセスに注力し、その効果を実感している事例が見られるようになりました。(※)。

カスタマーサクセス部門を設けることで、それまで顧客の対応を営業担当者に任せていたために、私物化されていた顧客情報が社内に共有、活用されるようになり、生産性が向上したというケースが多くみられます。

カスタマーサクセスに取り組んでいる企業の例は以下の通りです。

【カスタマーサクセスに取り組んでいる企業の例】

◎BtoB企業
・Salesforce(SFA/CRM/MA)
・Hubspot(CRM/セールスオートメーション)
・SmartHR(労務管理クラウド)
・Sansan(名刺管理/営業DX)

◎BtoC企業
・airCloset(ファッションレンタル)
・花王(消費財化学メーカー)

※参考記事:
非サブスク企業においても約4割が「カスタマーサクセス」の取り組みによる効果を体感/バーチャレクス調査
「どの企業の解約も同等に受け止める」 お客様と事業を成功に導く、SmartHRのカスタマーサクセス
顧客企業の自学・自走を促す、セールスフォース・ジャパンのカスタマーサクセス組織

カスタマーサクセスが注目される背景

企業の営業活動において新規顧客を獲得するには、既存顧客を維持する5倍ものコストがかかるといわれます。カスタマーサクセス部門という形で既存顧客に対する専任部署をおくことは、営業効率を高めるという観点において合理的な判断といえるでしょう。

また、カスタマーサクセスが広まった背景としては、所有から利用へと顧客の購買行動が変化し、サブスクリプション型ビジネスが増加していることが挙げられます。

サブスクリプション型のビジネスモデルは、アプリケーションやソフトウェア、コンテンツなどの商材を中心に採用されています。利用期間や利用量に応じて継続的に課金してもらうことで収益が拡大するため、使い続けてもらうことが最重要課題となります。

サブスクリプション型ビジネスの増加とともに、顧客との関係を維持し、継続利用を促すための役割として、カスタマーサクセスは注目されるようになりました。

カスタマーサクセスの役割

カスタマーサクセスに取り組む3つの目的と業務内容

カスタマーサクセスに取り組む目的は、大別すると以下の3つに整理できます。

カスタマーサクセスに取り組む3つの目的

目的1.LTVの向上|継続率・顧客単価アップ

カスタマーサクセスの目的の一つは、顧客の成功を実現することによって顧客のLTV(ライフタイムバリュー/Life Time Value)を向上させること。LTVとは、顧客が企業にもたらす粗利の合計のことで、顧客生涯価値ともいわれます。

とくにSaaSやサブスクリプション型サービスを提供する企業にとっては、長期的な収益性や成長性を確保するうえで重要な指標です。

LYVとは

LTVを向上させるためのミッションとしては、顧客の維持(継続期間や購買頻度のアップ)アップセルによる平均購買単価の向上、クロスセルによる提供サービス数の増加などが挙げられます。

LTVの計算方法

LTVを向上させるための取り組みには以下のような業務が挙げられます。

【業務内容例】
導入後の伴走支援(オンボーディング):顧客が商品・サービスを効果的に活用できるよう、導入から成功に至るまでの過程をサポートする。
ユーザーコミュニティの運営:セミナーやイベント、ポータルサイトなどを通して、顧客同士で情報交換できる場を運営する。
アップセル/クロスセル:既存顧客のさらなるニーズを生み出し、上位のプランや追加オプション、関連する製品やサービスを提案する。

※関連記事:
LTV・CACの計算方法とよくある質問への回答【テンプレート付き】
クロスセルとは? LTV向上に役立つ5つの営業Tips【トーク例付き】

目的2.CACの削減|マーケ・営業効率アップ

CAC(​​カスタマーアクイジションコスト/Customer Acquisition Cost)とは新規顧客を獲得するためにかかるコストを指します。CACを低く抑えられると、営業活動の費用対効果は高まります。

CACとは

カスタマーサクセスが既存顧客から事例や口コミを集めて、マーケティングや営業のコンテンツ(Webサイト、LP、SNS、動画、冊子、ホワイトペーパーなど)に活用することは、見込み顧客からの信頼獲得につながります。アウトバウンド営業によって新規顧客を集客する必要性が減るため、CACの削減にも大きく貢献してくれるでしょう。

また、カスタマーサクセスにおいては顧客満足度が高い既存顧客からの見込み顧客の紹介、転職した既存顧客の担当者が転職先企業で契約してくれるといったセカンドオーダーレベニューも期待できます。

CACを削減させるための取り組みとして、以下のような業務が挙げられます。

【業務内容例】
事例創出:伴走支援や導入・活用サポートを通して成功事例を生み出し、インタビューを実施してコンテンツ化する。
口コミ収集:既存顧客からの良い評判や推奨の言葉を積極的に収集し、マーケティングコンテンツや広報活動に活用する。

これらの活動は、大前提としてサービスの価値をきちんと提供し、顧客満足度が高い状態をつくっておくことで初めて成り立つことを心得ておきましょう。

※関連記事:
BtoB導入事例の作り方【事例インタビューのテンプレート付き】
・導入事例の作り方12のパターン【BtoB企業の事例で解説】

目的3.PMFの促進|継続的な市場理解やサービス改善

PMF(プロダクトマーケットフィット/Product Market Fit)とは、プロダクトやサービスが顧客のニーズを満たし正しい市場に提供されている状態のことです。PMFを達成することで、顧客が自発的に購入したり推奨したりするようになり、企業は競争力や収益性を高められます。

PMFとは

カスタマーサクセス部門は利用者ともっとも近い立場にいるため、顧客の声やニーズを収集するのに最適なポジションです。顧客の課題や利用シーンを理解し、顧客から得た定性的な情報を開発やマーケティング、営業などの各部門へフィードバックする役割を担います。

製品がより顧客に寄り添ったものへと進化することで、結果的にLTVやCACにも良い影響をもたらすでしょう。

PMFの促進につながるカスタマーサクセスの業務としては、以下のようなものが挙げられます。

【業務内容例】
利用中顧客へのヒアリング:サービスを利用している顧客との対話を通じ、ニーズや期待を理解し、サービスの利用状況や課題に関するフィードバックを取得する。
解約顧客へのヒアリング:解約した顧客との対話を通して、なぜ解約したのか、どのような課題があったのかを探る。
製品企画や開発部門へのフィードバック:顧客からのフィードバックを社内の各部門に提供する。

※関連記事:
PMFとは?読み方と定義、PMFしている状態のシグナルを解説
既存顧客へのインタビュー項目シート。契約に至るプロセス・ユーザーの情報収集方法まで
解約顧客へのインタビュー方法【テンプレート付き】

高橋

カスタマーサクセスの役割は解約阻止だけではありません

「The Model(ザ・モデル)」でのカスタマーサクセスの役割定義や、サブスクリプション型ビジネスとともに普及してきた背景もあって、カスタマーサクセスの役割というと、「解約(チャーン)を防ぐ」という印象を持っている方も多いでしょう。

しかし近年では、さまざまな業種・業態でカスタマーサクセスが取り入れられ、アプローチが多様化しています。LTVの向上だけではなく、CACの削減やPMFの促進にも寄与するので、必ずしも「カスタマーサクセス=解約阻止」ではなくなってきました。

カスタマーサクセスの役割は、業界や商材、ビジネスモデルによって異なるため、自社の事業成長と顧客の成功を定義し、それに合わせて目的や手段を整理することが大切です。

カスタマーサクセスに取り組む手順

カスタマーサクセスに取り組む際の手順を、大きく3つのプロセスに分けて解説します。

  • 手順1. 目的を整理する
  • 手順2. 標準プロセスを整備する
    • 2-1. 業務内容
    • 2-2. サクセスロードマップ
    • 2-3. タッチモデル
    • 2-4. KPI設定
    • 2-5. 顧客管理方法
  • 手順3. 組織力を高める
    • 3-1. 人員確保
    • 3-2. 育成・研修

手順1. 目的を整理する

はじめに、自社がなぜカスタマーサクセスに取り組むのか、目的を整理し社内で認識合わせを行います

才流に寄せられるご相談のなかには、このプロセスが欠けているために問題が生じているケースがあります。たとえば、「経営層や他部門との合意が得られず、方向性が定まらない」「事業に合わないKPIを設定していた」といった問題です。

とくに、既存組織のなかにカスタマーサクセス部門を増設する場合には重要なプロセスといえます。前章で紹介した3つの目的(1.LTVの向上、2.CACの削減、3.PMFの促進)を参考に整理しましょう。

目的の整理にあたっては自社の事業成長顧客の成功、両方の視点から考えることが大事です。以下のような問いに対して言語化し、両者の関係性を明確化しましょう。

1. 自社の事業成長:事業運営のためにどのような役割を担い、どのような目標を掲げて活動するのか?
2. 顧客の成功:顧客の「サクセス」とは何で、どのような状態を作ることが目標か?

手順2. 標準プロセスを整備する

続いて、業務プロセスを整備するために、「顧客をいつまでにどのような状態にしていかなければならないのか」を整理しましょう。

以下のような順番で考えることで、取り組むべき活動が明確になります。

1. 顧客の成功を達成するために、顧客をいつまでにどのような状態に導かなければならないのか
2. 顧客を導入期間ごとのフェーズにわけ、それぞれのフェーズでどのような状態にしたいのか
3. それを実現するための方法として、どのようにアプローチをするのか
顧客のフェーズ

やるべきことが明確になったら、以下の内容について検討し、業務やタスクを体系的に整備していきます。

  1. 業務内容の洗い出し
  2. 顧客セグメンテーション
  3. サクセスロードマップ
  4. タッチモデル別のアクション設計
  5. KPIとヘルススコア
  6. 顧客管理方法

それぞれについて解説します。

2-1. 業務内容の洗い出し

カスタマーサクセス部門の業務について、進め方やルールをマニュアルに落とし込みます。スムーズに顧客に対応できるように社内での取り決めを明確にするためもので、必要な対応については概要をきちんとまとめましょう。

カスタマーサクセスの代表的な業務と明記すべき内容の例は以下の通りです。

【業務と明記すべき内容例】
伴走支援:基本的な流れ・スケジュール、サポート範囲、よくある質問への回答、メールや問い合わせ対応のテンプレート、顧客管理の手順やルールなど
事例創出/コンテンツ制作:基本的な流れ・スケジュール、準備項目、連絡すべき社内外の関係者、制作フローなど
アップセル/クロスセル/解約阻止:予兆となる条件、アクション内容、応酬話法など

2-2. 顧客セグメンテーション

カスタマーサクセス活動においては、顧客をセグメンテーション(細分化)することが重要です。顧客をひとまとめに管理していては、個々の顧客に対して、適切なタイミングで適切な支援ができません。

顧客セグメンテーションは、以下の2軸で分類するのがおすすめです。

  • 顧客のポテンシャル:契約規模や今後の売上拡大、見込みを含めた価値など
  • 顧客のフェーズ:導入期・活用期・更新拡大期など

顧客のポテンシャルは、現在の契約金額だけでなく、業種・業界や将来性などを考慮して判断しましょう。

また、CS活動において優先すべきターゲット顧客群を定義することも重要です。

【最も優先度が高い顧客群「Tier1」に分類される企業例】
・契約金額が大きい企業
・カスタマーサクセス活動を通じてLTV拡大が見込める企業
・事例化したい企業
・自社サービスのターゲット業種や業界に属する企業

顧客を「Tier1」「Tier2」「Tier3」と分類することで、対応する優先度が明確になり、顧客群別に適切な支援ができるようになります。(Tier1にはハイタッチの割合を増やす、Tier3にはテックタッチで対応するなど)

※ハイタッチ、テックタッチについては後述します。

2-3. サクセスロードマップ

サクセスロードマップとは、顧客が成功に至るまでのプロセスを整理し、顧客と自社それぞれのタスクやアクションを具体的に定めるフレームワークです。「サクセスロードマップ」を使って、活動内容を取り決めましょう。

サクセスロードマップ
【サクセスロードマップの構成】
フェーズ:成功までのプロセスを達成状態とセットで洗い出す。
カスタマータスク:共同で進めるタスクと自社が進めるタスクを洗い出す。
ポジティブアクション:顧客の状況に合わせて、さらなる成功の提供や売上拡大のための誘導アクションを洗い出す。
チャレンジアクション:タスクが滞った際に、状況を前に進めるための誘導アクションを洗い出す。

サクセスロードマップによって整理した情報を標準プロセスとして仕組み化することで、部門内や顧客との認識を合わせやすくなります。PDCAサイクルの高速化やチームのスキル底上げにもつながるでしょう。

2-4. タッチモデル別のアクション設計

タッチモデルとは、顧客との接触方法をハイタッチ、ロータッチ、テックタッチの3つに分ける考え方です。

タッチモデル別のアクション設計
【タッチモデルごとの特徴】
ハイタッチ:頻繁で直接的なコミュニケーション。電話やメール、訪問、オンラインミーティングなどを用いた個別対応。対応できる顧客の数は少なくなる。
ロータッチ:一般的には、ハイタッチへの対応をパターン化・簡略化した対応と、テックタッチの対応を組み合わせる。
テックタッチ:間接的なコミュニケーション。WebサイトやSNS、メールマガジン、チャットボット、ポータルサイト、ウェビナーなどを用いた定型的な対応。多くの顧客に対応できる。

人的リソースが必要となるアプローチは、対応できる範囲に制約があります。タッチモデルを活用することで、顧客に優先順位をつけ、戦略的にカスタマーサクセス活動を展開できるでしょう。

自社の商材やビジネスモデル、顧客数、人手の制約を考慮しながら、分類基準や接触頻度、チャネルといった対応内容を定めましょう。

タッチモデル別の手法

2-5. KPIとヘルススコア

カスタマーサクセス活動の目的に合わせて目標を要素分解し、KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)を設定します。

解約率やアップセル・クロスセル金額などの数値は、一定の期間が経ってから成果に表れる遅行指標です。更新のタイミングまで成果がわからないので、日々の活動をモニタリングしたり、高速でPDCAを回したりするのには向きません。とくに年間契約など、契約期間が長い場合は注意が必要です。

効果的なKPIを設定するには、最終的な成果を測る「主要KPI」だけではなく、顧客の状態を確認する「中間KPI」(ヘルススコア)や、自分たちの活動をモニタリングする「活動KPI」を設定するのがおすすめ。チームの目標や成熟度に応じて、改善しやすいKPIを選びましょう。

なお、カスタマーサクセスにおけるKPI設定には、顧客の状態を把握できる「ヘルススコア」が役立ちます。サクセスロードマップで定義した顧客の状態(フェーズ)をヘルススコアに反映させることで、問題の兆候を早期につかみ、対応の先回りが可能となるでしょう。

カスタマーサクセスのヘルススコア例

2-6. 顧客管理方法

導入社数の規模や管理したい情報、予算に合わせて顧客管理の方法を検討します。顧客管理の方法は、大別すると以下の3つのケースに分けられます。

  1. カスタマーサクセス専用ツールを導入する:カスタマーサクセス活動に特化したプラットフォームを利用する方法。導入社数や業務要件に合わせて柔軟にカスタマイズできる。
  2. 既存のSFA・CRMに合わせる:すでに企業内で使用しているSFA(※)やCRM(※)などの既存のプラットフォームにカスタマーサクセスの機能を追加する方法。部門間でのシームレスなデータ共有や、顧客情報の一元管理が可能。
  3. Excelやスプレッドシートなどで対応する:小規模な事業や予算に限りがある場合に、ExcelやGoogle スプレッドシートなどを活用して顧客情報を管理する方法。手軽に始められる。
高橋

標準プロセスは作って終わりではありません

標準プロセスはつくって終わりではなく、定期的に見直しや改善を行い、より効果的なものにしていく必要があります。実際に運用しながら、メンバーの気づきや顧客からのフィードバックを共有し、随時プロセスやコンテンツの修正・追加を行っていきましょう。

また、メンバーに積極的な改善を促すには、メンバーの声を引き上げる仕組みやチャレンジを推進する文化が大切です。実際には、チャットツールに専用のチャンネルを設け情報をストックする、定例会のテーマに改善を取り上げるなどの方法があります。

手順3. 組織力を高める

カスタマーサクセスチームが組織力を高めるには、人員確保によるリソース拡充育成・研修によるメンバーのスキルアップが必要となります。それぞれについて解説します。

3-1. 人員確保

カスタマーサクセスは比較的新しい職種であるため、転職者市場に経験者は多くありません。経験者採用にこだわると、「応募が集まらない」「求人条件を引き上げなければならない」など、苦戦を強いられることもあるでしょう。

カスタマーサクセス担当者の求人情報をもとに求められるスキルをまとめると、1.業界経験・サービス理解、2.対顧客ビジネススキル、3.推進力・巻き込み力の3つに整理できます。

人員確保の際は期待する役割を整理したうえで、カスタマーサクセス経験にとらわれず、経験や知識、スキルを含めて柔軟に評価することが大切です。

カスタマーサクセスに求められるスキル

カスタマーサクセスに関する知見は後述の研修で補完できます。採用時や異動時には業界やサービスへの理解が深く、社内外の関係者を巻き込むことが得意な人材を集めることに注力してください

3-2. 育成・研修

組織力を高めるもう一つの方法が、研修によって個人の知識やスキルを育成することです。教育体制を整備することで人材育成を効率化でき、新人・若手の早期戦力化やカスタマーサクセス未経験者の人材活用も可能となります。

研修には、社内で企画・講習を行う社内研修と、外部の講師を招いて実施する外部研修があります。それぞれのメリット・デメリットは以下の表のとおりです。

カスタマーサクセスにおける社内研修と外部研修の違い

社内研修は自社の事例を参考にするため理解しやすく、コスト面で優れていますが、「ノウハウが不足していると有意義な内容にはならない」「研修にリソースが割かれる」といったデメリットがあります。ノウハウやリソースが不足している場合には外部研修を利用し、外部のリソースや知見を有効活用しましょう。

高橋

「どこから手をつけたらよいかわからない」場合はコンサルティング会社へご相談ください

カスタマーサクセス研修を提供している企業には、人材教育に特化した研修会社、カスタマーサクセス分野に専門性を持つコンサルティング会社や代行会社などがあります。
組織としての方針が決まらないままに、人材の育成や代行によるリソースサポートを受けたとしても成果にはつながりにくいです。「どこから手をつけたらよいかわからない」という段階でお困りの場合は、コンサルティング会社の提供する研修プログラムをおすすめします。

カスタマーサクセスについてよくある質問【Q&A】

高橋

才流のコンサルタント高橋がお答えします!

簡単にいうと、カスタマーサポートは主に課題解決に焦点を当て、要望や問い合わせ、クレームに対応します。一方で、カスタマーサクセスは顧客の成功を促進し、事業成長に焦点を当てて活動します。利益を生み出すプロフィットセンターであり、能動的に先回りして対応を行う部門といえるでしょう。

両者の違いを以下の表にまとめていますので参考にしてください。

カスタマーサクセスカスタマーサポート
活動先回り型要望対応型
代表的な業務内容・伴走支援
・アップセル/クロスセル
・事例/口コミ創出
・ファン化活動
・利用状況分析/調査
など
・問い合わせ対応
・クレーム対応
など
指標成果重視型
KPI例:解約率、平均購買頻度、平均購買金額、売上維持率
効率重視型
KPI例:課題解決率、課題解決時間、一次応答時間、処理時間

※参考:『カスタマーサクセス―サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』(英治出版)

よくある失敗ケースを2つご紹介します。

一つは、自社の事業成長に注力しすぎて顧客視点が抜けてしまうケース。自社の都合でアップセル・クロスセルを追いかけ、伴走支援をおざなりにして営業活動をしてしまう場合によく起こります。

アップセルやクロスセルを実現するには、顧客の成功プロセスを設計し、まずは顧客に成果を実感してもらう必要があります。顧客の成功の先に自社の事業成長があることを心得ておきましょう。

もう一つは、カスタマーサクセスを単なるトレンドとして取り入れ、自社の商材や顧客に合わない指標を追ってしまうケース

たとえば、解約率はSaaSビジネスでよく用いられる指標ですが、すべてのビジネスモデルに適しているわけではありません。LTVを引き上げるためには、解約率の低減よりもアップセル・クロスセルが有効な施策となる企業も多くあります。

カスタマーサクセスを流行として安易に取り入れるのではなく、本質を理解したうえで自社のビジネスに適した活動に取り組むことが重要です。

カスタマーサクセス活動を成果に結びつける18のチェックリスト

最後に、カスタマーサクセスに取り組むにあたり、チェックすべきポイントを整理しました。カスタマーサクセスを導入する際や、カスタマーサクセス活動を見直す際にご活用ください。

1. 目的の整理

ポイント内容
1目的設定カスタマーサクセス活動をなぜ実施するのか、明確な目的を定義
しているか?
2役割の明確化カスタマーサクセス活動が自社の事業運営や目標達成に向けて、
どのような役割を果たすかを明確にしているか?
3顧客の成功の定義顧客の成功の定義や目標が具体的か?
4関係部門との合意形成カスタマーサクセス活動の目的を関係者間で共有し、認識合わせ
を実施しているか?


2. 標準プロセスの整備

ポイント内容
5プロセス設計「顧客の成功を定義し、顧客をいつまでにどういう状態
にまで導かなければならないのか」について整理できてい
るか?
6業務内容の整理各業務の進め方やアクションのルールが整理されているか?
7マニュアル作成カスタマーサクセス部門の業務内容がマニュアルや資料に落
とし込まれており、社内での取り決めが明確か?
8サクセスロードマップの作成サクセスロードマップに基づいて、フェーズごとに自社・顧
客それぞれのタスクが整理されて​​いるか?
9顧客の分類基準の明確化顧客の価値や顧客のフェーズなど、顧客セグメンテーション
における分類基準を明確化しているか?
10顧客の分類基準の精査分類基準がビジネスモデルや商品特性に合致しているか?
11アプローチ方法の明確化人的リソースを考慮し、適切な接触頻度や方法、チャネルを
設定できているか?
12主要KPIの設定自社商材のビジネスモデルを考慮し、カスタマーサクセス活
動の目的と合致したKPIが設定されているか?
13中間KPI、活動KPIの設定主要KPIに紐づく、顧客の状態を確認する「中間KPI」(ヘル
ススコア)、自分たちの活動をモニタリングする「活動KPI」
が設定されているか?
14顧客管理ツールの導入導入社数や管理したい情報の規模に合わせて適切な顧客管理
ツールを導入しているか?

3. 組織力を高める

カテゴリ内容
15人員確保カスタマーサクセス担当者に求められるスキルが整理され、
採用や社内異動に際しての評価基準が明確か?
16育成プログラムの作成カスタマーサクセス未経験者でも早期戦力化が可能となる
ような育成プログラムやコンテンツを用意しているか?
17研修方法の検討社内研修と外部研修のメリット・デメリットを理解し、目的
に応じて使い分けているか?
18研修の成果確認および改善研修を通じて得た知識やスキルが組織全体で共有され、理解
が促進されているか?

まとめ

カスタマーサクセスは、自社の成長と顧客の成功を両立させる、ビジネス上の戦略的な取り組みです。カスタマーサクセスに取り組む企業の数は徐々に増えており、業績に好影響を与えたという成功事例も出てきています。

購買行動の変化やSaaS市場の拡大によって、カスタマーサクセスの重要性は今後ますます高まっていくでしょう。

カスタマーサクセスを実践し業績向上へと結びつけるには、目的の整理、標準プロセスの整備、組織力の向上が必要です。本記事のチェックリストやQ&Aを、カスタマーサクセスの実践にお役立ていただければ幸いです。

以下のようなご相談をお受けしております。

  • 社内にカスタマーサクセス経験者が少ないため、ノウハウがない
  • 顧客の課題をきちんと理解できていない
  • 顧客の成功像を明確に定義できていない
  • 課題に対して先回りした顧客対応ができていない
  • 自社製品の解約率を下げられない、継続率を上げられない
  • アップセル、クロスセル率を改善できない

個別相談も行っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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監修

コンサルタント
高橋 歩

ソフトバンク・テクノロジーでWebマーケティング事業の立ち上げ後、楽天にて分析データに基づいた意思決定やWebサイト改善を先導。その後スタートアップでカスタマーサクセス・マーケティング・営業の各領域を担う。才流では、カスタマーサクセスの理念と経験を背景に、BtoBマーケティングコンサルタントとして活動中。
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