BtoBマーケティングにおいて、展示会は非常に重要な施策の一つです。自社の商品・サービスを認知してもらい、見込み顧客の名刺や商談を獲得できる貴重な機会だからです。
また来場者は、通常の営業商談では得られないメリットを期待し、展示会に参加しています。「主要なサービスをまとめて探したい」「デモや実機を確認したい」「普段は接点を持てない専門家に相談したい」「セミナーにも参加したい」といったものです。
来場者の期待に応え、自社の展示会を成功に導くためには、どのような準備が必要なのでしょうか。そもそも、何をもって展示会への出展は成功といえるのか、を定義ができていない会社も多いのではないでしょうか。
そこで本記事は、自社が出展すべき展示会の選び方から、出展計画の策定方法、展示会後のフォロー方法まで、「BtoB展示会完全攻略ガイド」としてまとめました。記事内では、マーケティング活動に展示会への参加を取り入れているSmartHR社にご協力をいただき、実際の事例も紹介しています。
初めて展示会に出展するマーケターの方、展示会に課題をお持ちの方の参考になれば幸いです。
※本記事は、オフライン開催の展示会を前提に話をまとめています。オンライン展示会は想定していないため、ご了承ください。
出展時の投資対効果・出展予算の試算やスケジュール策定できるテンプレートも別の記事で紹介しています。あわせてご覧ください。
※関連記事:投資対効果を試算できる「展示会計画・出展準備テンプレート」
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出展する展示会を検討する方法
一般社団法人 日本展示会協会によれば、2019年に日本国内で開催された展示会は603件です。BtoBとBtoCを合計した数ですが、毎週10件以上の展示会が開催されている計算になります。
数ある展示会の中から、自社にマッチした展示会を探し出すには、どのようなプロセスを踏めばよいのでしょうか。ここでは展示会の選び方・探し方について解説します。
※出典:「2019年にわが国で開催された展示会実績調査」について
展示会の選び方
展示会の選び方は、以下の2つの軸で考えます。
1. 自社の商品・サービスが所属する製品カテゴリ、業界の展示会
2. ターゲット業界の来場者が集まる展示会
まず検討すべきなのは、自社の商品・サービスが所属するカテゴリーや業界がテーマになっている展示会です。ただし、業界や事業のフェーズによっては、ぴったりあてはまる展示会が見当たらない、少ないケースもあるでしょう。
そこで検討したいのが、自社がターゲットとしている業界に属する顧客が集まる展示会です。1.だけに絞るよりも、広く顧客接点が持てるようになります。2.にあてはまる展示会を検討するときのポイントは以下の2つです。
- 自社の主要ターゲットはどの業界か、あるいは自社の今後の注力業界はどこなのか
- その業界関係者が多く集まる展示会は何があるか(探し方は後述)
- その展示会には、自社の製品を選定する職種の方が来場しているか
業界がマッチしたとしても、来場者が商品・サービスを選定する層でなければ出展する意味がなくなってしまいます。上から順に検討・確認しましょう。
例)「モーター」を自動車の設備業界向けに売り込みたい場合
「オートモーティブワールド」は、設備や設計のエンジニアが来場するのでターゲット職種にアプローチできると考え、出展する。「東京モーターショー」は、完成車両を一般消費者向けにPRする意味合いが強い展示会なので、ターゲット職種へのアプローチは難しいため対象外とする。
展示会の探し方
次に、主要な展示会を探す方法を2つ紹介します。
1.「JETRO」で検索する
日本貿易振興機構JETRO(ジェトロ)のWebサイトでは、国内外の展示会を検索できます。出展品目や過去の来場者数などの情報も掲載されており、業界別、エリア別などで絞り込んだ検索も可能です。
展示会Webサイトへのリンクもついているので、まずはJETROで検索して一覧を作り、詳細を各展示会のホームページで確認するのが効率的な探し方です。
2.『見本市展示会総合ハンドブック』で探す
毎年『見本市展示会総合ハンドブック』という冊子が発行されています。月別、都市別、業種別、50音順に網羅され、出展に協力してくれるブース装飾やレンタル什器などの会社情報もあわせて確認できます。展示会を使ったプロモーションを強化したい年は、1冊買っておくと便利です。
※関連リンク:見本市展示会総合ハンドブック
初開催の展示会について
初めて開催される展示会は、その領域のイノベーター層が来場しやすい傾向にあります。情報感度の高い方が来場し、最先端のソリューションや情報を探しているため、イノベーター向けのソリューションを提供する企業は検討するとよいでしょう。
たとえば、筆者が過去に支援した展示会だと、2017年から始まった「スマート工場EXPO」は、デジタルトランスフォーメーションのさきがけのような内容でした。当時としては新しいキーワード(スマートファクトリーやIIoT、Industry4.0など)の展示をしており、新しいものが好きな方、変革思考の強い方が多く来場していました。
また、2014年から始まった「働き方改革EXPO(旧名:ワークスタイル変革EXPO)」は働き方改革を先取りした展示会です。役職者やキーパーソンが多く来場しており、出展企業も大手の新規事業部門などが多く、各社の新しい提案がありました。
出展計画
出展する展示会を選んだら、出展計画を策定します。
展示会に出展する目的を社内で明確にし、リード(個人情報)や商談の獲得目標数を設定。予算の概算見積もりと投資対効果の検証を行います。
年間のマーケティング計画を立てる際には、出展予定の展示会の数だけ出展計画も必要です。目標とするリードや商談の獲得計画を、達成できるのか。達成できなければ出展の追加や、Web広告などの別の手段でのアプローチを計画しましょう。
以下の記事で、出展時の投資対効果・出展予算の試算やスケジュール策定できるテンプレートを紹介しています。あわせてご覧ください。
※関連記事:投資対効果を試算できる「展示会計画・出展準備テンプレート」
出展目的と指標の設定
何のために展示会に出展するのか。出展目的を設定します。
「新商品・注力商品の認知度を上げる」「新規リードを獲得する」「新規商談を発掘する」「既存顧客との接点を強化する」「新製品・新サービスのユーザーニーズを把握する」など、いくつかのパターンがあります。目的はそのときの事業フェーズや状況に応じて決定されるべきものです。
すべてを狙いたい場合もあるかもしれませんが、必ず優先度を決めておきましょう。どの出展目的に設定するにしても、展示会への出展が成功したかどうかを評価するためには、「何を指標にするか」を定義しておかなければなりません。
では、それぞれの目的に応じた指標はどのように設定をすべきなのか。いくつか例を示します。
目的1.新商品や注力サービスの認知度を上げる
新しい商品・サービスや、注力している商品・サービスの認知度を上げることを出展目的とする場合は、より多くの来場者に商品・サービスを見てもらうことが重要です。
指標はブース来場者数、名刺・バーコード獲得数、セミナー視聴数、デモ実施数などが考えられます。ブース来場者数をカウントするのはコストがかかるため、名刺・バーコード獲得数に置き換えて設定することが多いです。
目的2.新規リードを獲得する
新規リードの獲得を出展目的にする場合の基準は、名刺・バーコード獲得数がわかりやすいでしょう。
目的3.新規商談を創出する
新規商談の創出を出展目的にする場合は、「どういう条件を満たせば商談とカウントするか」を決める必要があります。
商談数は、顧客の状況に左右されるため、自社でコントロールしにくいものです。商談機会がありそうな顧客を見極めることにフォーカスし、展示会後のフォロー対象を判断するための指標を設定したほうが、コストパフォーマンスも高くなります。
たとえば来場者アンケートを広く取り、「導入予定時期が半年以内」の回答をした顧客の数をカウントする、特定の課題にチェックが入った顧客をカウントするなどがあります。商談機会のカウント方法は商材によりますが、BANT(※)をベースに設計するのがわかりやすいでしょう。
商談数のカウント方法は、展示会で使用するヒアリングシートに「見積り希望」や「会期後に訪問希望」のチェック項目を設けて、説明員に記録してもらうとよいでしょう。
ただし、商談数に指標を設定して目標管理をすると、強引に「見積もり希望」を取ってしまうことがあります。「会期後にフォローをしたら空振り」とならないよう、注意が必要です。
※BANT:(Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(必要性)、Timeframe(導入時期)
目的4.既存顧客との接点を強化する
既存顧客との接点強化を出展目的にする場合は、「主要顧客500社のうち、100社(20%)の部長職以上に来場してもらう」など、具体的な顧客リストをもとに指標を設定します。
狙った顧客に来場してもらう必要があるため、事前案内が重要になりますが、目標達成が難しい指標です。商談数と同様に、顧客のスケジュールに左右され、自社でコントロールができないからです。
したがって、展示会の目的を既存顧客との接点強化に置くこと自体、優先順位を下げることをおすすめします。
目的5.新しい商品・サービスのユーザーニーズを把握するため
新商品や新サービスのニーズを知ることを出展目的にする場合は、アンケート数や商談シートの数を指標に設定することが多いです。
まとめ
それぞれの目的に応じた指標を説明してきましたが、結果的には以下の4つが主な指標になります。
- 名刺・バーコード獲得数
- アンケート回収数
- 商談数
- セミナー・プレゼン数
長期間、継続的に出展を続けている企業では、この指標だけが先行してしまい、目的が見失われてしまうことも少なくありません。あらためて「何のために指標を追うのか」、出展目的の見直しをおすすめします。
目標設定
出展目的を設定し、その達成基準を決めたら、次に行うのは指標の数値目標の決定です。ここでは各指標の目標設定の考え方を紹介します。基本的には来場予定者数から逆算して考えます。
名刺・バーコード獲得数
新規リード獲得をメインとする出展目的の場合、来場者数の5~10%程度で設定しましょう。
30,000名の来場者数の展示会であれば、1,500~3,000件の名刺・バーコードリーダーの獲得数を目指すイメージです。
筆者の過去の実績では、名刺交換よりも主催社が提供しているバーコードリーダーの方が獲得効率は2~3倍高くなりました。名刺・バーコード獲得数の目標を設定する場合は、バーコードリーダーをレンタルしましょう。
アンケート回収数
BANTをベースにしたアンケートを作成し、獲得件数の目標を設定します。目安は名刺・バーコードの獲得目標の10~20%程度。つまり、ブースの外で声をかけ、名刺・バーコードを獲得した方のうち、5~10人中1人がアンケートに回答してくれる計算です。
30,000名の来場者数の展示会であれば、次の数字が目安です。
- 名刺・バーコードの獲得目標が1,500件の場合、アンケートは150~300件
- 名刺・バーコードの獲得目標が3,000件の場合は、アンケートは300~600件
なお、アンケートに回答していただく場合は、回答者に対して何らかのインセンティブ(ノベルティなど)を用意しておくことをおすすめします。
商談数
商談数については、名刺・バーコードの獲得目標の1~5%程度で設定するのが一般的です。ただし、各商材によって商談率は変わるため、自社の通常の商談率と比較して調整してください。
30,000名の来場者数の展示会であれば、次の数字が目安です。
- 名刺・バーコード獲得目標が1,500件の場合、商談数は15~75件
- 名刺・バーコード獲得目標が3,000件の場合、商談数は30~150件
ここでの商談は「見積もり希望」「会期後の営業商談希望」に至る顧客を想定しています。また、先述したとおり商談数はコントロールが難しいため、その手前の指標となるアンケートに目標を設定した方が目標管理上は有効です。
セミナー・プレゼン視聴者数
これは小間サイズにもよりますが、1回のセミナーやプレゼンの視聴者数×実施回数で上限が決まります。
たとえば、1日8時間の展示会で1時間に1回実施すると1日8回になります。1回のセミナーで30人視聴を目指す場合は1日240人、3日間で720人が上限です。
展示会の人の流れとして初日、開場すぐ、お昼時間はブースが空きやすいので、その点も考慮した平均値を考えて目標設定をすることが望ましいです。たとえば、開場すぐ10時10分にセミナーやプレゼンを実施しても、2~3人しか視聴していない、下手すると誰もいない、ということは起こり得ます。
また、コロナ禍の現在は展示会来場者数が減ることが想定されるため、セミナーやプレゼンの様子をウェビナーとしてオンライン配信するなどの工夫を取り入れたほうが視聴者数を増やせるので、あわせて検討することをおすすめします。
SmartHRの事例(目標設定編)
「SmartHRでは、展示会のKPIとして「アポイント獲得数」を設定しています。
アポイント獲得数とは、展示会会場でのアポイントではなく、会期後にインサイドセールスがご連絡をした上で、アポイントに至った件数のことです。
前提として、当社ではザ・モデル型のマーケティング・営業組織体制をとっています。接点を持たせて頂いたお客様へインサイドセールスがご連絡し、商談の機会を頂くのが通常の流れです。
そのため、展示会も同様の流れで、最終的にアポイントに至った数を計測し、評価しています。
また、展示会当日は次の2点を追っています。
・名刺獲得件数
・「SmartHRで解決できる課題を持っている顧客」かどうかの見極めとくに、2番目の課題の見極めは重視しています。その場で名刺交換ができたとしても、その方が抱えている課題に当社のサービスがマッチしなければ、当然ながらその先の商談にはつながりません。
展示会の説明員が、接客を通じて見極めるためのオペレーションも徹底しています。SmartHRで解決可能な課題の定義を行い、どういった課題の話が伺えれば、お持ちの課題が解決できるのかフローチャートに落とし込んだりなど、運営マニュアルを準備し、説明員には事前に丁寧にオンボーディングを行っています。見極めの精度を高められるよう、工夫をしています」
展示会予算の立て方
次に、展示会予算の立て方を説明します。獲得目標と獲得単価から、概算予算を策定します。なお、獲得単価の目安は名刺・バーコードリーダーの場合は3,000~5,000円程度です。ここでは獲得単価は「展示会にかかった外部への支払い÷獲得件数」として、自社の人件費抜きで考えています。
たとえば、名刺1,500件獲得を目標として、獲得単価5,000円を目指す場合。1,500×5,000=750万円です。
続いて、各種費用を積み上げて実際に掛かる費用を確認します。次の項目について予算立てをしておくと良いでしょう。
- 小間代
- ブース装飾費
- パネル、デモ機などの製品やサービス展示に関わる費用
- デモ用のパソコン、セミナー用のマイク、音響機器などのレンタル費用
(ブース装飾会社がまとめて手配してくれる場合もあるが、自社で手配が必要な場合もある) - ブース関連で使用する電気代、通信費など
- 製品や機器、パネルなどの郵送費(往復)
- カタログ制作、印刷費用
- ノベルティの制作費用
- アンケート用紙の印刷費あるいはアンケートシステムの利用費
- コンパニオン、ナレーター、ディレクターなどの外注費
- プレゼンテーション用の動画やスライド制作費
- セミナーのオンライン配信にかかる費用(サービス利用料など)
- 集客にかける広告費
- 招待状などの制作、郵送費
- メール、ランディングページなどのデザイン・コーディング費用
- 会期後フォローに行うフォローコールの外注費(必要に応じて)
積み上げた費用と目標から立てた予算を確認し、差分を調整します。
たとえば、獲得単価からの試算が750万円で、積み上げた費用が800万円になった場合は50万円のマイナスが発生してしまいます。
これを解消するためには、「目標を1,500件から1,600件に上げる」、または「費用の内訳を確認し、目標達成に優先度が低いコストを削減する」のいずれかを検討し、調整を行います。
以下の記事で出展時の投資対効果・出展予算の試算やスケジュール策定できるテンプレートを紹介しています。ぜひ算出に活用してください。
※関連記事:投資対効果を試算できる「展示会計画・出展準備テンプレート」
投資対効果の考え方
費用対効果は、基本的にマーケティングの成果シミュレーションと同じ考え方です。
獲得目標のリード(個人情報)に対して商談化率をかけて商談数を出し、商談数に受注率をかけて受注数を算出します。そして、顧客生涯価値(LTV)と受注数をかけ合わせて想定受注金額を算出します。
・獲得目標の個人情報×商談化率=商談数
・商談数×受注率=受注数
・顧客生涯価値(LTV)×受注数=想定受注金額
展示会の場合、想定受注金額が展示会出展のためにかけた投資をこえるように設計します。
例)750万円の出展予算で、1,500件の名刺を獲得。商談化率を5%、受注率を30%、顧客生涯価値(LTV)を300万の場合
- 商談数:1,500×0.05=75件
- 受注数:75×0.33=25件
- 受注金額:25×300万円=7,500万円
このケースでは10倍の投資対効果(人件費除く)と試算できます。
以下の記事で、出展時の投資対効果・出展予算の試算やスケジュール策定できるテンプレートを紹介しています。
※関連記事:投資対効果を試算できる「展示会計画・出展準備テンプレート」
展示会の投資対効果に関するFAQ
投資対効果についてはさまざま議論があります。FAQも用意したので参考としてご覧ください。
Q.受注までの期間は、どのくらい見るべきですか?
A.商材によりますが、1年(次の展示会の出展まで)で試算するのがわかりやすいです。ただし、検討期間が年単位にわたるような高額商材や、検討タイミングが限られる商材の場合は、2~3年以上で設定してもいいでしょう。
Q.商談化率はどう設定すべきでしょうか?
A.通常の商談化率より低めに見積もった方が良いです。なぜなら、一定数は情報収集目的の来場者がいるためです。業界にもよりますが、BtoB製造業においては商談目的の来場者は5%程度ということが多いため、上記では5%として設定しました。
Q.顧客生涯価値(LTV)はどう計算すればよいですか?
A.以下の記事を参考に計算してください。
※関連記事:LTV・CACの計算方法とよくある質問への回答
Q.商談金額、受注金額のどちらで投資対効果の目標を設定すべきですか?
A.原則、受注金額で設定すべきです。
Q.成果を受注金額まで追うことが難しい。どうすればよいですか?
A.大手企業や代理店販売のビジネスで起こりやすい課題です。この場合は、「展示会以降の半年間や1年間で来場企業からの受注が発生したものを展示会の成果とみなす」といったルールを決めるのがよいでしょう。
また、直接販売で展示会で獲得したリードに対して、商談化を計測できていないような場合は、SFAを導入していれば、キャンペーン機能などを活用して計測できます。SFAなどのツールを導入していない場合は、エクセルやスプレッドシートで計測します。いずれにせよ、最後まで追い切ることを徹底するのが何よりも重要です。
SmartHRの事例(投資対効果編)
「ザ・モデル型のマーケティング・営業組織体制のため、LTVからCACを計算しており、リード獲得にかけられる単価設定を行っています。その単価をもとに、投資対効果の判定をしています。
ただし、出展する展示会によって獲得単価は多少傾斜をつけています。これはその展示会の来場者属性から、獲得できる顧客のLTVに応じたものです。
また、獲得単価の観点以外でも、出展しないことによる機会損失(直近新しく拠点を開設した地域の展示会は積極的に投資する)、出展時期や他施策との兼ね合いによるリソース状況なども加味。総合的に投資対効果に見合うかどうかを判断し、出展計画を立てています」
LTVとCACの計算については、以下の記事をご覧ください。
※関連記事:LTV・CACの計算方法とよくある質問への回答
出展申込み時の注意点
次に、出展申込み時の注意点を解説していきます。とくに初めて展示会に出展を検討する場合は参考にしてください。
申込みのタイミング
毎年開催している展示会では、会期中に翌年のブース申込みを受付けるケースも多いです。なるべく1年前、どんなに遅くとも半年前には申込みをしましょう。
また、展示会のブースや備品関連の準備は、出展規模にもよりますが最短でも3か月程度はかかります。出展申込みと各種手続きは、早めに済ませておきましょう。
なお、主催者との専門的なやり取り(ブースの柱を打つ位置の申請や、電気に関する申請)などは、ブース施工会社に依頼したほうがスムーズです。
申込みをしたら、すぐにブース施工会社を選定し、各種申請を支援してもらうことをおすすめします。ブース施工を必要としないパッケージブースのような場合は、自社で最低限の申請を行います。
小間サイズ・小間位置の選び方
小間サイズは出展する商品・サービスの数、設置するデモ機のサイズ、セミナー・プレゼンコーナーや商談スペースの有無、ストックのサイズ、当日参加する社員の人数などをふまえ、必要な広さを考えます。
装飾会社のホームページなどに、小間サイズ別の事例写真が掲載されていることがあります。初めての出展でイメージできない場合は、自社に近い事例を参考に検討を開始するとよいでしょう。
「ブース 二小間」など、「ブース+小間サイズ」でGoogle画像検索をすると、いろいろな写真やパース図を見つけることができます。
小間位置は、来場者が通りやすい場所を選びましょう。
- 入り口付近(赤い部分)
- 入り口から進んだ主要動線(オレンジ色の部分)
- 入り口突き当りの、左右の広い主要動線(青い部分)
図の会場では入口は黒の矢印、赤矢印が主要動線です。動線に沿った場所に人が多く集まります。
ただし、小間サイズによっては良い場所を選択できない場合もあります。主催者に小間割りを問い合わせし、サイズと位置を一緒に検討しましょう。
SmartHRの事例(小間位置編)
「小間位置の選定は、以下の点を意識しています。
・大通りに面していること
・主催者が開催しているセミナーの会場に近いこと
・人通りが多いと想定される通行方向に対し、面を出しやすいこと
・(分かる範囲で)競合の出展位置状況とくにセミナー会場に近いかどうかは重要視しています。セミナー会場の近く、会場に向かう通路は、人通りが増えるためです。人通りに対して面を取り、自社ブース内でのプレゼンや社名サインを打ち出せるような位置を取るようにしています。
また、当社では、来場者を無理に引き込みすぎないことも意識しています。会期後にインサイドセールスがご連絡する際、興味を持った状態でアプローチを行うためにも、過度な呼び込みで接客をすることに意義を感じていません。
自然に興味を持ってブースに入っていただき、会話の中で興味や関心を高めて帰っていただくことが重要だと思います。」
ブース・運営設計
続いて、ブースおよび当日運営の設計を行う際に注意すべき点をチェックリストにまとめました。
ブース施工会社や代理店と、自社で準備する内容を明確にする必要があるため、このチェックリストをもとに関係先と認識合わせを行うとよいでしょう。
とくに出展経験が少ない場合や規模が大きなブースの場合は、専門会社に相談・依頼をした方が抜け漏れを防げます。自社だけでなく、外部パートナーの活用も積極的に検討しましょう。
動線設計
- 来場者のブースへの主要な入り口はどこか
- 入り口でどのように来場者の興味をひくか(セミナー、デモ機、動画など)
- 展示する製品、デモ内容、デモ実施数、パネル枚数はどうするか
- ブース内の回遊シナリオを設計したか(入り口ごとに)
- 来場者と名刺交換をする場所を想定したか(ブース外、ブース内)
- アンケート、商談シートを獲得するか決めたか
- ノベルティや景品を渡す場所を決めたか
- ブースを退出する場所はどこにするか
※来場者が設計した動線通りの動きをするとは限りませんが、主要動線と各コーナーの回遊設計、個人情報を獲得するポイントを設計しておくことは重要です。
セミナー、プレゼン
- プレゼンの時間割を作成したか
- 時間割のパネルあるいはスライドを作成したか
- 席数を確保する、あるいは立ち見にするかを決定する
- 投影する方法はどうするか(パソコン接続、USBから直接再生、DVDなど)
- 投影サイズ、縦横比は決めたか
- 投影するためのケーブルは用意したか、パソコン側のケーブルとあっているか
- セミナー開始前の案内を誰がするのか(10分前くらいから告知すると良い)
- セミナー、プレゼン後の呼び込み動線を決めたか
- セミナー、プレゼン後の呼び込み誘導を確保するための人員計画を立てたか
- リハーサルはいつ、どのように実施するか
運営設計
- 呼び込みスタッフを何人設置するか、目標から逆算したか
- ディレクター、アシスタントディレクターを手配するか。何人必要か
- ノベルティは何にするか、何個用意するか
- バーコードリーダーにするか、名刺交換にするか
- 呼び込みスタッフ、受付の方の衣装はどうするか
- 運営に必要な備品リストを作成し、手配の方法を決定したか
- 運営スタッフのシフト表は作成したか
- 運営マニュアルは作成したか
- 前日のリハーサルは必要か、当日の朝のみとするか
ストック(倉庫)
- 人数分の荷物を置けるスペース、棚を設置したか
- 冬はコート掛けを用意したか
- ストックの中で作業スペースを設けるか、設ける場合は何人を想定するか
- ストック内に電源が必要か、必要な場合は何口設けるか
- ノベルティ、カタログなどの資材を置く場所は用意したか
受付
- 受付を設定するか、しないか決めたか
- 受付の仕事を決めたか(商品お渡し、カタログお渡し、デモの受付、商談の受付)
事前集客
展示会出展の準備を進めつつ、集客を行う必要があります。とくにVIPの方を招待する場合は、早めの連絡が必要です。
VIP招待
社長や役職者、特別に来場いただきたい方にはVIP向け招待を行います。
多忙な方が多いため、遅くとも会期1か月前までには案内を完了する必要があります。できれば、会期2か月前がベストです。
招待の方法は、手書きの手紙や高級感のある紙を使った印刷物などを選ぶとよいでしょう。特別な招待であることを伝え、興味を持ってもらいやすくなります。
届ける方法は、営業が直接渡す、郵送してから電話でご案内するなど、丁寧なアプローチを行います。アプローチの結果はきちんと記録し、可能な限り来場いただけるようにフォローをしていきます。
メールでの集客
メールでの集客は、複数回送付することをおすすめします。具体的には次のタイミングです。
- 会期1か月前
- 会期1週間前
- 会期の週の月曜日
- 会期2日目あるいは最終日の朝
展示会来場の予定を立てるタイミングは人によって違いますので、1か月前から告知を開始し、直前は頻度高くアプローチするのがポイントです。
会期2日目、あるいは最終日の朝に配信する際は、当日の写真やセミナーのタイトル、ノベルティ写真などを添え、来場の興味を喚起する工夫を行うと効果的です。来場者に対して、来場意思決定の最後のひと押しをするオファーをしましょう。
自社でMAツールなどを運用している場合は、「会期1週間前に未開封の方に、翌週月曜日8時台に送信する」、「会期の週の月曜日に未開封の方は、会期初日の8時台に送信する」など、配信シナリオを設定しておくとより良い成果を見込めます。
SmartHRの事例(事前集客編)
「当社のマーケティングチームとしては、VIP招待は原則行っていません。主催社からもらうVIP招待状などは営業に共有する程度です。
既に接点を持っているお客様へのメルマガ告知は、他のコンテンツや企画しているイベントなどの状況にもよりますが、基本的には展示会は「新規のお客様向けの施策」と捉えており1回告知を行う程度にしています。
そのうえで、全社員が参加するミーティングで出展概要の告知を行い、インサイドセールスやクロージングセールスのチームで、顧客接点のきっかけとして活用してもらっています。
結果的にフィールドセールスが既につながりのある顧客にVIP招待状を送付したり、インサイドセールスがご連絡時に提供する情報として展示会の案内をしたりすることもありますが、マーケティングチームから集客目標件数など設定はしていません。
過去には「展示会のめぐり方」をテーマにしたコンテンツを用意し、案内したこともありました。
運営マニュアルを作成する
展示会に向け、運営マニュアルを用意します。初めての出展などで心配な場合は、代理店などに依頼するのもおすすめです。運営マニュアルには、次の項目を入れましょう。
- 展示会概要
- 出展目的、獲得目標、出展位置
- 運営体制、役割、連絡先
- 当日の集合、服装、食事、入館証の取得方法
- ノベルティ、配布物
- メンバーのシフト表
- 前日、当日の集合時間・実施事項のタイムスケジュール
- ブースレイアウト、スタッフ配置、想定ブース動線
- 役割ごとの業務マニュアル(説明員、受付、セミナー運営、集客)
- 想定質問と回答
- プレゼンテーション・セミナーのスケジュール
- 名刺・アンケートなどの日別、時間別の目標シート
- アンケート、商談シートの内容と記載方法、提出方法
- 会期後のフォロー体制、スケジュール
- 備品、消耗品リスト
とくに説明員の接客の流れや挨拶内容、集客スタッフの声がけ内容などは事前に決めておき、来場者の方が気持ちよくブースで過ごしていただけるようにしましょう。
会場を見渡していると、スタッフが立っているだけで声をかけない、挨拶をしないブースも見受けられますが、きちんとやっているブースとでは来場者の印象や来場数も変わってきます。
来場者であれば活気のあるブースに立ち寄りたくなるのは当然のこと。意識して実践するだけで結果に影響しますので、しっかり準備を行いましょう。
また、来場者からの質問には、当日のスタッフで同じ対応ができるように統一しておくことが望ましいです。たとえば価格や納期、他社事例、購入方法、他社と比べた強み、デモ機やデモ・ショールームなどについて、事前に想定質問と回答を用意して配布しましょう。顧客対応の質が向上し、商談機会の損失を防げます。
会期後のフォロー体制やスケジュールも、事前に決めておきましょう。来場した顧客が興味を保った状況で商談を設定する、必要な情報をお届けするために必要な準備です。
たとえば商談シートで「見積り希望」となった顧客は当日中に集計し、翌日には必ず営業担当から電話とメールでご連絡するようにします。お礼メールも会期後の早め(理想は土日、あるいは月曜日)に送信できるよう、名刺データの電子化を進めておくことが望ましいです。
SmartHRの事例(運営マニュアル編)
運営マニュアルで意識している点は、以下の2つです。
・そのページだけピンポイントで読んでも使える資料づくり
・接客経験が浅いメンバーでも接客の質を保てる内容これは、展示会自体が初めての人や、普段お客様に接する機会が少ない人も展示会へ参加するためです。事前の社内向け説明会でも「この展示会の来場者はこういう人が来ます」「こういう問い合わせがきたら、マーケティングチームの●●に声をかけてください」など、丁寧なフォローを心がけています。
また、社内コミュニケーションツールはSlackを使っており、展示会のチャンネルを用意して、必要な情報へアクセスし易くしています。運営マニュアルや過去の展示会ノウハウをまとめた社内ページ、Q&Aのページなどをピン留めしておき、展示会に参加するメンバーが見て、事前に不明点を解消する工夫をしています。
会期前日の準備
展示会前日、会場の最終チェックで確認するポイントをまとめました。
運営関連
- プレゼン、セミナーのリハーサルを行ったか
- 座席から見た見え方に問題はないか
- プレゼン、セミナー後の誘導動線を確認したか
- 音響は問題なく動作しているか
- モニターに不具合はないか
- 投影用のパソコンに必要なデータをすべて登録したか
- 画面、スライドの切り替え手順を確認したか
- 出展社証を入手したか。他メンバー、運営スタッフの分を準備したか(あるいは入手方法を指示したか)
- 当日の集合時間、場所を周知したか
- 受付に必要な備品(カタログや名刺受け)を用意したか
- 名刺、アンケート、商談シートの提出先を決定し、回収用の箱などを用意したか
- バーコードリーダーを使う場合は主催者から受け取り、使い方を確認したか
- 集客動線とブース内の回遊動線を確認したか
ブース関連
- 必要な備品はすべて受け取ったか(事前に運営マニュアルにて準備)
- ストックの備品、ノベルティ、カタログを使いやすい配置で収納したか
- ストックでハンガーラックなどを邪魔にならない場所に設置したか
- ストック内に作業スペースを設ける場合は、机・椅子の配置、電源の位置を確認したか
- 備品撤収用の梱包資材を邪魔にならない場所に置いたか
- ストック内のラックの荷物区分を決めたか(社員用、運営スタッフ用など)
- 電源の場所、電源の落とし方を確認したか
- ストックの鍵を受けとったか(2名以上で鍵を持つことを推奨)
- 電子機器は充電したか(バーコードリーダー、iPadなど)
- 清掃用具を用意し、退出前にブース全体を清掃したか
- パネル関連の設置が完了したか
- デモコーナーでのパソコン、機器、設備の動作確認を行ったか
- ブース内照明が問題なく投影できているか
- 照明の量、明るさが適切か
- ブースにキズ、汚れがないか確認したか
当日の運営
いよいよ展示会当日。時間をかけて準備してきたことを無駄にしないよう、朝礼と夕礼を行い、スタッフ同士の連携を図り、大事なことを共有しましょう。
朝礼
おそくとも会期30分前にはブースに集合し、15分前には朝礼を終えておきましょう。
朝礼では会期全体の目標、前日までの実績、当日の目標、注意事項の案内を展示会参加者に共有します。
当日の目標は1時間ごと、ひとりあたりの目標まで詳細に決めておき、1時間ごとに結果を集計して予実を把握します。目標と結果に差がある場合は、原因調査と対策を打つようにします。
1日が終わってから翌日以降で巻き返すより、当日から対策を続けることで、目標達成の確率が高まります。
夕礼
会期後、当日の結果集計が終わってから実施します。当日獲得した名刺、アンケート、商談シートは漏れなく回収します。
夕礼では当日の結果、来場者からの質問での不明点、注意事項、翌日の目標などを共有します。後片付けを行い、会期後30分程度で退出できるようにしておきましょう。(展示会によっては1時間後以降残ると、出展社に残業代が発生するケースもあります)
アンケートや商談シートで見積もり希望にチェックが入っている、すぐに対応が必要と判断された顧客については、この時点で集計して担当に引継ぎ、翌日フォローしてもらえるようにします。
SmartHRの事例(当日運営編)
朝礼前後は、初めて展示会に参加するメンバーのケアを行っています。展示会に慣れているメンバーが説明員のロープレを手伝ったり、コミュニケーションをとったり。安心感を与える情報提供をするように心掛けています。
また、接客のポイントや会期中の獲得目標のシートなどはバックヤードに紙で貼り出しています。重要な内容をすぐに見られるようにし、進捗(しんちょく)状況を可視化することで、展示会の目標達成にメンバーが士気が高い状態で取り組めるように工夫しています。
とくに「参加してくれるメンバーの士気が下がらない」ことは、とても重要だと考えています。
説明員はマーケティング以外のチームから参加してくれている方もいます。忙しい中で自分のメインの業務ではないことに協力してもらっているわけですから、やはり配慮が必要ですね。
人通りが減った時間に休憩を促したり、おやつやドリンクを用意したり。接客が順調であれば、その状況共有の声がけをする、接客でうまれた疑問点について回答・改善点を伝えるなど、コミュニケーションは大事にしています。他部署のメンバーが展示会に参加することで、顧客像を手触りを持って感じてもらえ、やりがいを高める上でも良い機会になっていると思います。
また、接客については「みなさんがSmartHRの顔です」と伝えています。来場者に気持ちよく帰っていただきたいですし、SmartHRに良い印象を持っていただきたい。来場者と笑顔で会話をする、無理やり情報を聞き出さないなど、気持ちの良い接客をしようと声をかけています。
(来場者への配布物例)
・リーフレットを入れたクリアファイル
・クリアファイルを入れて持ち帰ることができるトートバッグ
・「これからどうなる?人事労務」というお役立ち資料を印刷した冊子(セミナー受講者向け)
顧客フォロー
顧客のフォローは、会期後に電話やメールをするだけではありません。顧客フォローのためにやるべきこと、注意すべきことをチェックリストにまとめました。
会期中
会期中から、顧客フォローは始まっています。ブースからの声がけ、説明員の接客、商談が近い顧客のフォローなどです。
- ブースへの呼び込み、セミナー集客の声がけをしているか
- お客様がブースに来場した際、挨拶を徹底しているか
- 説明員は接客時にきちんと商談シートの記録をしているか
- 顧客の質問にきちんと回答できるように、想定質問集を用意しているか
- (価格や納期、他社事例、購入方法、他社と比べた強み、デモ機やデモ・ショールームなどを会期後にどう確認できるかなど)
- いただいた名刺、商談シート、アンケートをきちんと時間ごとに提出しているか
- いただいた名刺の電子化を進めているか
- (スキャナを持ち込んで読み込む、自社に持ち帰る、まとめて外注会社に郵送する、など)
- 商談シート、アンケートからフォローをどのように実施するか決めているか
- 夕礼後に即フォロー対象顧客を、営業チームに引継ぎしたか
- 前日に即フォロー対象として引継ぎした顧客のフォローが実施されたか
会期後
会期後フォローは事前に設計、準備をしておくことが何より重要です。チェックリストに沿って、会期後フォローを効果的に実行できるように事前準備をしましょう。
名刺・アンケートなどの電子化編
- 名刺の電子化をいつまでに完了させるかを決定したか
- 名刺、アンケート、商談シートを電子化する方法を決定したか
- アンケート、商談シートからフォロー優先度が高い対象の選定ルールを決めたか
- フォロー優先度が高い対象のフォロー方法を決定したか
- 営業チームがフォローした結果を、マーケティングチームにフィードバックをもらう方法を決定したか
お礼メール編
- 文面は会期前に用意したか
- メール添付用に、会期中に手配する素材を決定したか(ブース、デモの様子の写真など)
- 手配した素材をいつ、誰が文面に最終反映するかを決定したか
- 自社を思い出してもらえる工夫を準備したか
※来場者は多数ブースを見学するので、自社のことは忘れられている前提で文面は用意しましょう。 - 配信日を決定したか
- お礼メールからの商談の動線(Web面談日程のCTAなど)を用意したか
- 配信結果をふまえ、営業がフォローを開始する日を決めたか
- フォロールールを決定したか
例:クリック顧客は全員電話フォロー、ターゲットとなる大手企業は開封者まで電話フォロー - フォロー結果を記録する方法を決定したか
- フォロー結果を社内でいつ報告するかを決定したか
【参考】名刺データの電子化スピードを上げる方法
1.名刺スキャナを現地に持ち込む
Sansanなどの名刺電子化サービスを契約している場合、名刺スキャナを会場に持ち込み、一定時間ごとに読み込みを行うことでスピードをあげる方法があります。
光学式文字読み取り装置(OCR)のみで読み込むサービスの場合、読み込んだ名刺データを専属スタッフでチェックしている企業もありますが、精度・コスト面を考慮して検討してみてください。
2.アプリなどの名刺電子化サービスをスポットで契約、利用する
名刺の電子化サービスを利用していない場合でも、イベント用に名刺の電子化サービスを含むスポットで利用できるアプリのサービスを利用することもおすすめです。
※参考:https://www.it-momonga.com/enquete/
展示会でよくある課題と対応方法
ここでは展示会について、よく相談をいただく課題と対応方法について紹介します。
事前告知、招待状からの集客が難しい
高価なノベルティなどを用意して、ターゲットとする顧客を招待する施策は、かなり難易度が高いといえます。展示会会期に来場いただけるかどうかは、その方のスケジュールに依存してしまい、コントロールが難しいためです。
どうしても招きたい顧客がいる場合は、リストを用意して営業経由で電話をしましょう。VIP招待券を個別でお送りするのは、案内と来場確認が取れたお客様程度にとどめるべきです。
ブースに立ち寄ってもらえない
- 来場者に立ち寄ってもらえない場合は、次のことを見直してみましょう。
- 出展している展示会のターゲットと自社のターゲットがマッチしているか
- 会場の動線上、来場者が通りやすい小間位置に出展できているか
- 来場者のメリットがわかりやすい声がけをできているか
- 積極的お声がけをおこなっているか
- ノベルティ、チラシなどを使った声がけができているか
- プレゼンテーション、動画、社名サインなどをメイン部分に設置し、来場者の目線・興味を惹くつくりになっているか
- ブースの入場口が狭くないか、会場のメイン動線から入りやすいようになっているか
ネームバリューがなくてブースに立ち寄ってもらえない
ブースに立ち寄ってもらえない原因として、「社名や商材の認知度が低い」ことが考えられる場合は、併せて以下の点をチェックしましょう。
- 展示会の公式サイトで、自社の情報や製品説明がわかりやすく書かれているか(出展社一覧で来場者が選ぶとき、目につく工夫がされているか)
- 展示会会場での看板広告や、会場図への広告など、来場者の目にとまる場所への広告を検討しているか
- 来場者向けにメリットのある来場特典を用意しているか(お役立ち資料や特徴のあるノベルティ、キャンペーンなど)
- コンパニオンなどを活用した声かけをしているか
- 動画、セミナーなどで来場者の興味をひく内容を用意しているか
名刺、アンケートの獲得数が不十分
獲得数が不十分な場合にチェックすることは、以下とおりです。
- 目標設定は妥当か(名刺は来場者の5~10%程度、アンケートは名刺の10%程度)
- そもそも通行者が少ないのか、通行者はいるが獲得できていないのか
- 通行者が少ない場合は、小間位置の見直しを行ったか
- 通行者がいる場合は、通行者に声がけをしっかりできているか
- 社名の連呼になっており、顧客メリットがない声がけになっていないか
- 集客スタッフの人数が適正か
- (1,500件の名刺獲得目標なら3名程度のスタッフが必要)
- ノベルティ、景品などのインセンティブが来場者にとって魅力があるか
- (自分が来場者の場合、欲しいと思うか)
商談件数が不十分、商談発生率が低い
商談発生率は自社でコントロールが難しいため、基本的にはブース集客、名刺獲得などの数を増やす方向で解決を目指します。
商材や展示会にもよりますが、名刺・バーコードの獲得目標の1〜5%程度が商談化すると考え、必要な商談件数から逆算して名刺・バーコード、アンケートの獲得目標を設定してください。獲得件数が足りない時はひとつ前の、「名刺、アンケートの獲得数が不十分」を参照してください。
会期後のフォローがうまくできない
「顧客フォロー編」に記載したとおり、事前準備、設計の確かさが、フォローの成否を左右します。フォローの準備状況を見直しましょう。
来場者のフォロー結果がわからない
来場者のフォロー結果がわからない場合は、工数をかけても個別に確認するしか解決方法はありません。気をつける点を以下のとおりまとめました。
- フォロー対象のルール、アクションを明確にしたか
- どの指標で結果を測定するかを決定したか
- (新規顧客との接点数、商談数、商談金額、受注数、受注金額など)
- 事前にフォロー方法を関係者に周知し、同意を得たか
- フォロー対象は一覧になっているか
- フォロー結果を記録する方法(スプレッドシートやSFAなど)を決定し、記録方法を案内したか
- フォローの期日を決定して営業に依頼したか
- 期日にチェックして、記録漏れをフィードバックしたか
- 最終報告の期日を決定し、そのタイミングで集計&報告したか
おわりに
展示会は出展展示会の選定から各種手続き、目標設定、事前準備まで手間のかかる施策です。だからこそ、より成果を出せるようにしっかりと準備を進めるべきです。本記事の内容が、展示会の成果を最大化するための一助になれば幸いです。
また、コロナ禍の影響を受け、展示会にも変化がありました。製造業向けのコラムで現状をまとめていますので、参考にしてください。
『BtoB企業の展示会出展ガイドブック』では展示会の基礎知識から投資対効果の試算方法、ブース運営やアフターフォローの進め方まで展示会出展に必要なノウハウを体系化してまとめました。展示会出展に必要なテンプレート10点以上付きですのでぜひご活用ください。⇒『BtoB企業の展示会出展ガイドブック』を無料ダウンロードする(10点以上のテンプレート付き)
※関連記事:https://www.automation-news.jp/2021/05/55847/
※記事は2021年5月時点の状況をもとに執筆しています
【付録:展示会基礎用語集】
展示会の経験が初めての方向けに、よく出てくる展示会基礎用語をまとめました。ここでは一部しか紹介できませんが、「展示会 用語集」で検索をすると、より詳細な情報を掲載したサイトもあるので、検索してみてください。
小間
主催者が出展社に貸し出す展示用スペースのこと。ブースも含めて小間と呼ぶこともある。一般的な展示会では3,000mm×3,000mmの9平米を1小間、主催者がRX Japan社の場合は3,000mm×6,000mmを1小間と呼ぶ。なお、小間位置によっても多少の変動があるので、必ず出展ガイドで確認する
◯◯開放(一面開放、二面開放、三面開放、四面開放)
小間のレイアウトを指す。通路に接している面の数によって、呼び方が変わる。一面開放は1つの面だけが通路に接しており、残りの3面は隣接ブースや壁で覆われている。四面開放は小間の4面がすべて通路に接しており、アイランド型とも呼ばれる
小間位置
出展社のブースを設置する場所のこと。出展を検討する際に、会場図から小間位置を選んで、小間サイズに応じた金額で契約する。抽選で決まる場合もある
招待状 / VIP招待状
主催者が出展社に提供する招待状。出展社が自社の顧客に郵便やメールで送ったり、自社の受付に置いたりして配布する。VIP招待状は、セミナーへの招待や専用ラウンジの利用特典などがある。事前申請が必要で、配布先の役職に制限があるケースが多い
出展社証
出展社が会場に入るときに使うパスのこと。来場者とは違い、準備の時間帯にも会場に入れる。入手方法は展示会によって異なる。事前に必要な枚数を申請して郵送で受領するか、会場内の専用カウンターで引換券・名刺と引き換えるのが一般的
出展社サイト
出展社が各種申請や登録を行うためのWebサイトのこと。出展申し込み後に主催者からURL・ID・パスワードを受領してログインする。サイト内では出展情報の登録、バーコードリーダーや電気などの利用申請、出展ガイドラインや展示会ロゴのダウンロードなどができる
パース図
3CGで制作されたブースのイメージ図。ブースのイメージを具体的に持つために複数方向からのカットで作成するのが一般的
平面図/立面図
平面図はブースを上部から見たときの図面、立面図は横から見た縦方向の図面。詳細な寸法や配置について検討するときに使用する
ストックルーム
出展社が自社ブース内に設置する倉庫。カタログ・パンフレットやノベルティ、スタッフの荷物、搬送用の梱包材などを置く。ストックルーム内に作業スペースをつくるケースもある。また、主催者が小間とは別の場所に倉庫を用意するケースもある
バーコードリーダー
バーコードの情報を取得するためのシステム。展示会では来場者のバッジに付与されたバーコードの情報を取得するために使う。主催者が有償オプションとして提供するケースが多い。名刺交換の2〜3倍のスピードで来場者の情報を取得できる。ノベルティやカタログ・パンフレットと引き換えに、来場者のバッジに付与されたバーコードを読み取ることが多い。スマートフォン用のアプリやスマートフォンとアプリをセットで提供されるケースもある
装飾規定
ブース装飾に関するルールのこと。内容は展示会や会場、小間位置などによって異なる
パッケージブース
主催者が提供する、施工不要のブースのプラン。主に机・椅子、商談用スペース、照明などのレンタル備品と小間で構成される
『BtoB企業の展示会出展ガイドブック』を無料ダウンロードする(10点以上のテンプレート付き)
取材協力:株式会社SmartHR
マーケティンググループ/リードジェネレーションイベントユニット
門脇 健一 様
武蔵野美術大学でデザイン情報学を専攻。卒業後、大手セールスプロモーション企業で、イベント・セミナーを通じた、企業PR施策の企画遂行を行う。その後、株式会社カカクコムでメディア・広告事業を経て、株式会社SmartHRへ入社。現在はクラウド人事労務ソフト「SmartHR」の価値発信に携わる。
マーケティンググループ/リードジェネレーションイベントユニット
川端 奈帆 様
大学卒業後、新卒で大手製造系メーカーに入社。オフラインマーケティングに従事。2020年にSmartHRへ参画し、現在はマーケティンググループにてオフラインオンライン問わずマーケティング施策の企画立案から実行までを幅広く担当。