サブスクリプション型のビジネスモデルが増えたことで、重要性が増してきた指標、LTV(ライフタイムバリュー・顧客生涯価値)と、CAC(Customer Acquisition Cost・顧客獲得コスト)。
LTVとCACを計算することで、適切な投資対効果のもとでマーケティング活動が行われているかを判断できます。もし、適切な投資対効果が生まれていない場合は、LTVを上げる(収益性を上げる)またはCACを下げる(コストを削減する)ための取り組みが必要です。
本記事では、BtoB企業の初心者マーケターの方に向けて、LTVとCACの計算方法を解説します。現状を正しく把握し、適切な次の打ち手を考えるための指標として、LTVとCACを活用しましょう。
記事後半では、よくある質問と回答、LTV・CACとマーケティング獲得目標、受注・商談・リード獲得の許容単価を試算できるシミュレーションシートの使い方を掲載しています。
LTV・CACのシミュレーションシート(Googleスプレッドシート形式)を開く
LTV・CACのシミュレーションシート(Excel形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
才流では「適切なBtoBマーケティングの打ち手がわからない」「具体的な戦略をどのように立案すればいいかわからない」企業さまを支援しています。マーケティング活動でお悩みの方はお気軽にご相談ください。⇒サービス紹介資料の無料ダウンロードはこちら
LTVの計算方法
LTV(Life Time Value・ライフタイムバリュー)は「顧客生涯価値」とも言われ、1顧客が生涯にわたって生み出す粗利の合計のことです。
SaaSなどのサブスクリプション型ビジネスの場合は、以下の計算式で算出できます。
LTV=1顧客あたりの月次粗利×平均継続月数
平均継続月数とはユーザーの延べ継続期間をユーザー数で割ったものです。例えば、1顧客当たりの月次粗利が10万円で、平均継続月数が24カ月の場合、LTVは240万円となります。
サイト制作などのスポット型ビジネスの場合、以下の計算式で算出できます。
LTV=1取引あたりの粗利×平均リピート購買回数
たとえば1取引あたりの粗利が30万円で、平均のリピート購買回数が5回の場合、LTVは150万円になります。
CACの計算方法
CAC(Customer Acquisition Cost・カスタマーアクイジションコスト)は「顧客獲得コスト」のことで、新規顧客を1社獲得するためにかかったコストを意味します。
CACは新規顧客獲得にかかった営業・マーケティング費用の合計を、新規顧客獲得数で割ると算出できます。
CAC=新規顧客獲得に関する営業・マーケティング費用の合計÷新規顧客獲得数
たとえば、新規顧客獲得に関する営業の費用が50万円/月、広告費などのマーケティング費用が30万円/月、新規顧客獲得数が2件/月だった場合、CACは80万円÷2=40万円となります。
営業・マーケティング費用は、あくまで新規顧客獲得に関する費用のみを対象としてください。
また、月によって費用の変動が大きい場合、4半期や1年と、より長い期間で区切ってCACを算出してみましょう。
よくある質問と回答
Q1. LTVとCACが適切であるかはどのように判断すればいいでしょうか?
ユニットエコノミクス(LTV÷CAC)が「3」以上であれば、収益性のあるビジネスとみなせます。
Q2. LTVを売上で計算してもいいでしょうか?
LTVは、売上ではなく必ず粗利(売上総利益)で計算ください。
Q3. 顧客によってLTVの値の差が大きい場合、平均値での計算で問題ないでしょうか?
異常値が平均値をゆがめていると考えられる場合、中央値で計算するか、異常値を外して平均値を算出することを推奨します。
またセグメントによってLTVの差が顕著な場合、ターゲットごと、用途ごとなどのようにセグメントを分けた上でLTVを計算することもあります。
セグメント | 業種 | LTV | 優先度 |
A | 製造業 | 1,000万円 | 高 |
B | 建設業 | 800万円 | 中 |
C | 情報通信業 | 500万円 | 低 |
Q4. CACは間接費(管理部門の費用、賃料など)まで含めた方がいいでしょうか?
営業・マーケティング部門を維持するうえで必要な間接費まで含めて費用を算出したほうが正確な数値といえます。
Q5. 新規顧客獲得だけを行う営業がいない場合、営業の費用はどう計算すべきでしょうか?
新規顧客獲得に費やしている業務割合に応じ、営業の費用を算出してください。
たとえば、営業全体の費用が200万円、新規顧客獲得に費やしている業務割合が20%の場合、CACに組み入れる営業の費用は40万円となります。
Q6. ユニットエコノミクスを強くするにはどうすればいいでしょうか?
弊社代表栗原のnoteで以前公開した記事にて、具体的な方法を説明しています。
※関連記事:BtoB事業のユニットエコノミクスを強くする33個の方法
スライド共有サービス『Speaker Deck』でも同様のノウハウを公開しています。
また、ユニットエコノミクスについては以下の記事でも解説しています。参考にしていただければ幸いです。
※関連記事:LTVの高さが、BtoBマーケティングの自由度を決める
LTV・CAC試算の具体的な活用方法【シミュレーションシートで解説】
LTVとCACの試算結果を活用すれば、効果的なマーケティング戦略を策定してビジネスの成長と収益性を最大化させることが可能です。ここからは、LTVとCACを具体的に活用できるケースについて、シミュレーションシートを参考に解説していきます。
シミュレーションシートをダウンロードする
才流では、LTVとCACの試算とマーケティング獲得目標、さらに受注・商談・リード獲得の許容単価を算出できるシミュレーションシートを作成しました。ダウンロードしたシートは自社の数値計算で活用できるようコピーしてご利用ください。
LTV・CACのシミュレーションシート(Googleスプレッドシート形式)を開く
LTV・CACのシミュレーションシート(Excel形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
①LTV・CAC/ユニットエコノミクス試算シート
このシートでは、LTVとCACの試算を通してユニットエコノミクスの概算を算出します。「LTVとCAC、マーケティング目標概算試算シート」タブを使用してください。
注意事項
※本シートはSaaSのビジネスモデルを想定したうえで作成されたものです。
※自社のビジネスモデルに合わせて適宜変更してご利用ください。
以下のステップのとおりに、グレーのセルへ数値を記入してください。
1.LTVを計算する
- 初期費用を記入
- 平均契約期間、1ユーザーあたりの単価、導入ユーザー数を記入
- 粗利率を記入
2. CACを計算する
- 営業1名が1社を獲得するのにかかった費用を試算するために、営業の平均年収と月間平均受注数を記入
営業の人件費(月間)÷ 営業一人当たりの平均受注数(月間)
- インサイドセールス(以降、IS)1名が1社を獲得するのにかかった費用を試算するために、ISの平均年収と月間平均受注数を記入
ISの人件費(月間)÷ IS一人当たりの平均受注数(月間)
- マーケティング担当1名が1社を獲得するのにかかった費用を試算するために、マーケティング担当の平均年収と月間平均受注数を記入
マーケティング担当の人件費(月間)÷マーケティング一人当たりの平均受注数(月間)
- 新規顧客の獲得にかかった広告費(1社あたり)を試算するために、月間の平均広告費と新規顧客獲得数を記入
月間の平均広告費 ÷ 月間の平均新規顧客獲得数
3.ユニットエコノミクスの数字を確認する
- 「1.LTV試算」と「2.CAC試算」の数字が入力できていれば、ユニットエコノミクスが計算される
- ユニットエコノミクス(LTV÷CAC)が「3」以上であれば、収益性のあるビジネスと言われている
4.数字をもとに改善方針を検討する
②マーケティング獲得目標試算シート
このシートでは、受注数から逆算して提案数やリード数などのマーケティング獲得目標を試算します。「LTVとCAC、マーケティング目標概算試算シート」タブを使用してください。
注意事項
※テンプレートにあるリード → 一次提案 → 最終提案 → 受注、の流れはあくまでもひとつの一般例です。自社の商談回数などに合わせて適宜変更してください。
※各指標を変えることで、件数の数字が変わってきます。試算された実数を目安としてご活用ください。
以下のステップのとおりに、グレーのセルへ数値を記入してください。
- 目標受注数を記入する
- 自社の現状の受注率(最終提案をして受注する割合)を記入する
- 自社の最終提案化率(一次提案から最終提案へ進む割合)を記入する
- 自社の一次提案化率(リードから一次提案へ進む割合、アポイント率)を記入する
- 自社のリード獲得のCVR(サイトを訪問したユーザー数がリードになる割合)を記入する
- 自社のCTR(クリック率)を記入する
③受注・商談・リード獲得の許容単価試算シート
自社のユニットエコノミクスの理想値から、受注・商談・リード獲得の許容単価を算出します。「LTVとCAC、マーケティング目標概算試算シート」ではなく、別タブの「受注・商談・リード獲得の許容単価試算シート」シートを使用してください。
注意事項
※受注許容単価は、LTV・CACの試算シートの1社当たり新規顧客獲得広告費を参照しています。
※受注・商談・リード獲得の許容単価の試算シートでは、ユニットエコノミクスが3以上になるように調整をしてください
※理論値としての許容単価が算出されます。
使い方のステップは以下のとおりです。
- 「受注・商談・リード獲得の許容単価試算シート」タブで、「①LTV・CAC/ユニットエコノミクス試算シート」と「②マーケティング獲得目標試算シート」の数字を再度記入する
2. ユニットエコノミクスが3以上になるようにCACを調整する
3. 受注許容単価の妥当性を確認する
まとめ
LTVが大きければ大きいほど、許容できるCACは大きくなります。許容できるCACが大きいほどマーケティング施策には選択肢が増え、スケールのスピードを上げやすくなります。
LTVとCACを正しく理解し、マーケティング戦略策定に役立てましょう。
才流では成果が実証されたメソッドにもとづき、マーケティング戦略立案から施策実行まで支援しています。マーケティング活動で課題を感じている方はお気軽にご相談ください。⇒才流のサービス紹介資料を見る(無料)