新しい求人媒体として支持を獲得したWantedly社は、最近では『Wantedly People』サービスについて驚くべきSEO施策を行なっているようです。SEOのエキスパートである村上薫さんに解説をお願いしました。(※この記事は2018年公開当時の情報が含まれています)
他社が容易には真似できないSEO戦略
求人媒体で伸びたWantedlyが、新規事業として『Wantedly People』という名刺管理サービスを出していますよね。
IR資料を見ても、クオーターで1億円以上の投資をしているのがわかります。
当然「名刺管理」でSEOをするんですが、成果が出ているだけでなくやり方が結構面白いなと。
これを見ると
- SEOでWantedlyが「名刺管理」で4位と上位に表示されててうまくいってそう
- そもそも他の会社で簡単に真似できるものなのか?
- 色々な障害があってもやりきっているWantedly凄い
てなことをいろいろ思うんですが、ひとつずつ説明しましょう。
名刺管理で上位をとるWantedlyのSEO手法
以前までBtoBの製品をSEOする場合は、製品LPや会社のコーポレートサイトTOPを最適化するというやり方でした。
ただし今はユーザが知りたいことを記事化したコンテンツでSEOをかけていくのが主流になっています。
Wantedlyも、記事を用意することで『名刺管理』というキーワードで上位をとっているのがわかると思います。
タイトルは「【徹底比較】無料でも使える、おすすめ人気名刺管理アプリ7選!」というもので、内容は各社の名刺管理アプリを自社の商品と比較するというもの。
この記事の内容を見ると「簡単には真似できないな」と思うのです。なぜそう思うのかを説明します。
なぜ簡単に真似できないと思うのか?
結論からいうと、すごい点は2つあります。
- 他社と比較をしている
- メディアという立場ではなく、自社の立場からの情報
①他社と比較をしている
この施策をいくつかのクライアントに提案した経験があるのですが、担当者は口をそろえて「それはできない」という反応でした。
理由としては他社からのクレームがくるのではないか、というものが一番大きかったです。唯一「やろう」というリアクションがあった会社でも、深掘って聞いていくと比較関連のクエリは、ASPを通してアフィリエイターにとってもらうといった施策で、自社の名前でやるのはNGということでした。
比較広告は、海外と比較すると日本では敬遠されることが多いと聞いたことがあります。確かに、コカ・コーラとペプシのような比較広告を日本で見る機会はあまりありません。
最近で印象深いのは、楽天カードのCMに『アマゾゲス』というキャラクターが出ていたぐらいですし、楽天カードのCMのように何か社名を想起させるといった形で、具体的な社名や商品名を伏せることが多いと思います。
しかし、Wantedlyの記事はすべての商品名が記載されています。
②自社ドメインで発信している
どこかの営業マンが、その営業マンの商品と他社の商品を比較する際に
- 本当にフラットに比較しているのか
- その営業マンの会社にとって有利な軸で比較しているのか
この2つで大きく分かれると思います。
どうしてもクライアントは、営業マンのいうことを色眼鏡で見てしまうと思うんですよね。ですから、こういった中立比較コンテンツを出す場合は、
- メディアに広告を出す
- 自社でオウンドメディアを用意して掲載する
といったステップがよく踏まれます。前述のアフィリエイター経由でとりにいく、というのも同じ発想です。
もともと名刺管理というワードはSansanがやっている『名刺管理Hacks』というオウンドメディアで同じような施策が実施されており、ずっと上位に掲載されていました。
このメディアも運営元はSansanと書かれていますが、そこまで目立つような表記にはなっていません。おそらくですが、「誰が言っているのか問題」に気を使っているのではないでしょうか。
話を戻すとWantedlyの記事は、思いっきり自社ドメインの配下にあるので、まったく隠そうという意図はありません。
普通のシーンであれば、「競合企業に文句をいわれるのでは?」「ユーザから見てどう見られるのか」といった議論が起こって実現しないので、Wantedlyは思い切っているなと思うのです。
そしてことSEOの手法という観点だと、これは参考になる施策だと思います。
SEOは言いたいことではなく、ユーザが知りたい情報が勝つ
前提として、昔も今もSEOで有利になる情報は、企業が言いたいことではなくユーザが知りたいこと。これが大原則です。
ですから、「名刺管理」で狙う際にWantedly Peopleの宣伝をするよりも、さまざまな情報を比較した観点のほうが大多数の関心を捉えるはずです。こういった情報がSEOとしてうまくいくのは、不自然ではありません。
ですから、この考え方はどの企業も素直に真似してほしいなと思うのです。
まとめ
まとめましょう。
- SEOは言いたいことではなく知りたいこと
- 自社のセールスよりも、多くの情報をまとめるコンテンツを作ろう
- いろいろな問題があるが、解決の方法もいろいろある
といった学びがあると思います。