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無形商材(IT・コンサル・人材など)のマーケティングで意識したい3つの特性

BtoBマーケティング
株式会社リザーブリンク 予約ラボ 所長
星野 陽介

はじめまして。予約ラボ所長をつとめております星野陽介と申します。

予約ラボは、株式会社リザーブリンクが創立以来15年以上にわたって蓄積した予約業務の効率化ノウハウや、お客様との関係をベースに立ち上げられた【「予約」を起点に「価値」を生み出す】国内唯一の予約研究機関として活動しています。私自身は、2012年に入社し、その間ずっと業種・業界を横断してお客様の「予約」の業務効率化をご支援して参りました。

予約ラボ

現在は、ソリューションの一つとして「予約の顧問サービス」を提供しております。予約に関するご相談ごとは、業務効率化のためのIT導入に関することから、「予約の数が伸びないが、何が問題なのか相談に乗って欲しい」といったマーケティング寄りのお話や、「予約サービスを立ち上げたいので、参画して欲しい」というお話をいただきます。

このときに、われわれが参考にしている「サービス・マーケティング」という考え方は、才流さんの主戦場であるBtoBマーケティングでも有効です。中でもIT、コンサル、人材サービスにおける活用方法について、事例を交えてご紹介したいと思います。

BtoBでも「サービスの特性」を理解しておくと、仮説を立てやすい。

「サービス・マーケティング」とは、いわば無形商材のマーケティングに関する考え方の一つです。サービス=無形商材の売り方についての研究分野と解釈しています。

「サービス」には様々な分類がありますが、上に挙げたIT、コンサル、人材サービスというのは、「人」の知恵や心などの無形材に対するサービスに分類されます。対して、美容・飲食サービスなどは「人」の身体(有形)に対して向けられるサービス。カーメンテナンスや車検などは、車という「モノ」に向けられるサービス。「モノ」の中でも、金融サービスは無形資産に向けられるサービスという分類になります。これは、クリストファー・ラブロックという学者さんが分類されています。

無形、有形ということを書きましたが、サービスには「無形性」「異質性/非均一性」「同時性/不可分性」「消滅性」「変動性」という、5つの特性があるといわれています。この特性を把握しておくことで、見込みのお客様や継続利用者に対し、サービス利用の障壁や不満足が生まれかねないリスクを事前におさえ、対策を講じることができるようになります。

IT、コンサル、人材サービスのマーケティングでいうと、「無形性」「異質性/非均一性」「同時性/不可分性」がポイントになりそうなので、今回はこの三つに着目して解説します。

1:「無形性」=サービス内容・工程・違いがわかりにくい

「人材サービスは、無形商材です。付加価値をつけて売らなくてはいけません」。新卒で入った人材サービス会社の新人研修で言われたことです。当初は全くこの意味を理解していませんでした。システムの受託開発やコンサルティング事業なども、サービス自体にほとんど形がなく、サービス内容・工程・違いが分かりにくいという特性があります。

これらの事業で生じる「企画」「ディレクション」「要件定義」「進行管理」「壁打ち」といった業務は、アウトプットとしての資料や結果があったとしても、プロセスが受注生産的であり、利用前の評価が相対的に難しいと考えられています。無形性によってサービスの輪郭が曖昧になりがちであり、しっかり言語化・可視化しておかないと、システム開発などで「保守は含まれているのか」「保守の内容はどこまでなのか」「障害時の対応フローはどうなっているのか」といったやりとりが後々発生してしまい、トラブルになりかねません。

2:「異質性」=品質の標準化が難しい

例えばコンサル、人材紹介サービスの営業は、担当者のスキルや状況、顧客との相性などが絡んでくるため、品質にバラツキが出てきます。売れている営業と売れていない営業の差が出るのは、価値提供の標準化が難しいことにあります。SaaSも、ソフトウェアの機能やコードは全顧客同一でも、営業や導入コンサル、カスタマーサクセス担当の対応はまちまちになりがちです。オーダーメードのシステム開発など、均一管理ができないために、生ずる運用コストなどにも着目したい特性です。

3:「同時性」=生産と消費が同時に発生する

SI事業における要件定義会議、コンサルティング事業の定例会議、人材紹介事業における求職者との面談や、求人企業とのやりとりは、おそらく各サービスのコアな業務にあたるかと思いますが、いずれもその瞬間に利用者と提供者が時間を共有している状況が必要になります。これがサービスの「同時性」という特性です。

同時性の特徴は、誰かが遅刻・欠席すると、そもそもサービスの提供ができない事態になるリスクがあります。対面の打合せになると、いずれかが移動しなくてはいけません。移動時間も考慮したスケジュール調整問題は、サービスの同時性から引き起こされている言うこともできるというわけです。

こうしたサービスの特性に、どのような対応ができるのか?

こういった特性に対して、うまく対処していると感じる事例をご紹介いたします。

1:無形性を可視化する。

「納品のない受託開発」というユニークな打ち出しで有名になったソニックガーデン社は、受託開発という無形商材をとことん解説・可視化されている好事例だと思います。

ご相談から契約までの流れ

https://www.sonicgarden.jp/business#image

受託開発自体がサービスとして分かりにくいところ、「納品のない受託開発」となると、初めて目や耳にした方はさらによく分からないと思います。ソニックガーデン社は、そのコンセプトや導入の流れ、実績などを、とことんテキストや図解・写真で可視化しています。

究極の質問は、今そのサービスをAmazonに出品して、売れるパッケージングになっているかどうかです。SaaSの場合は、ソフトウェアの部分の有形要素が強いので、Slackのようなフリープランや、まずは2週間お試しといったデモ期間を用意し、お試しいただくことでサービスの無形性を回避しています。

サービス

https://slack.com/intl/ja-jp/pricing

2:異質性を、マニュアル化で防ぐ。

先日のDOER NOTEでも話題になっていましたが、2018年07月06日に東証マザーズから東証一部へと市場変更したマニュアル制作専門のグレイステクノロジー社の主力サービスが、まさにこの異質性に徹底的に向き合ったサービスになっています。

各種メーカー様では部品の「モジュール化」と「再利用」が当然のように行われていますが、その製品に紐づくマニュアルは「モジュール化」「再利用」が行われず、ユーザー様を無視したものになっております。具体的には、同一のシリーズであっても構成が全く異っていたり、表記・表現、ビジュアルに至るまで一貫性がない

と、主に製造業におけるマニュアル品質のばらつきに着目したビジネスで、自社サービスの品質へのこだわりが半端ないです。

精鋭部隊であるライティング/翻訳のスペシャリストと、徹底したチェックシステムで、マニュアルの品質をほぼ「完璧」と呼べる領域まで高めています。ライターや翻訳者は厳しく選別され数々の「狭き門」と面談をクリアした、技術とこころ構えの両面を持ちあわせたまさに精鋭集団です。

「完璧」とはなかなか、ここまで言い切れません。

マニュアル

マニュアルといえば、その機械の使い方や保守の方法、あるいはサービスの手引書といったように、本来バラツキを出したくない物事に対して、標準化や体系化を狙ったものです。そのマニュアルが、書く人によって異質性が際立ってしまっては、本来のマニュアルのもつ意味に疑問符がついてしまうところ。まさに、マニュアルづくりと運用のマニュアル化によって、異質性を二重回避している事例といえます。

BtoBのマーケティングという観点に話を戻すと、このバラツキをどうとらえるかだと思います。営業マンのキャラやスキルの違いを活かしたマーケティングを行うのか、グレイステクノロジー社のようにWeb上で「完璧」とうたえるレベルにまで品質に自信を持って提供するのか、あるいはマーケ上は少し背伸びした表現をしながら、品質を同時に高めていくのか。。ぜひサービスの異質性に着目してみてください。

3:同時性を疑ってみる。

ITの発達によって、意外と「同時にやらなくてもいいんじゃないか?」ということがあります。

BtoBでいうなら「訪問」。私がSaaS事業を担当していた頃も「とりあえず来て!」系の問合せに対して、当初は全部訪問していました。PMFするまではいいと思います。ただ、ある程度製品が拡販できる状態までいったときも、機能だけを紹介して終了!といった打合せが続いていて、ふと気づきました。

「機能紹介はWebサイトで紹介したり、お客さんがご自身で試しやすいよう手順をメールでお伝えしたり、それでもわからなければ電話だけでも十分サポートが可能だろう」

結果、来社・訪問は、必要性がある場合のみに限定しました。受注件数は減るどころか、伸びていきました。理由はシンプルで、対応数・対応時間が増えたからです。重要なのは、問題解決に必要な道筋をお客様と共有し、必要なサポートを、必要なタイミングとスピード感で実行することです。

同時性をできるだけ回避したい場合に、弊社が実行したことは、

  • サイトやブログなどで自社サービスのスタンスや導入フローといった無形性をとことん回避しておく。
  • 同時性を要する、お問合せ用の電話番号掲載をやめる。
  • 問合せフォームを、BANTCを意識した項目で、締める。
  • 質問や疑問があったら、双方事前にとことんメールやチャットで質問・回答する。
  • どうしても打合せが必要な場合、サービス利用希望者も、提供者も入念に準備しておく。
  • どうしても打合せが必要な場合、移動しないオンラインのビデオ会議か、ご来社で対応する。

導入フロー

https://baigie.me/contact/

BtoBのサイト制作で有名なbaigie社のお問合せフォームは、検討者にもある程度の準備を必要としています。

「とりあえず訪問希望」系でよくあるのは、商習慣からくるもの、社内チームの複数人で情報収集をしたい、込み入った相談ごとなので会った方が早い、顔を見ておきたい、といったいくつかのケースでした。

少し振り返ると「検討したいが、ここからどうすればいいのか手順が分からない」といった理由が多い傾向がありました。この時は、「無形性」が回避できていないために、「同時性」の必要なサービスを求められてしまっているのではないか?と仮説立てし、Web上でのコンテンツを見直しました。

見込みのお客様からいただいている問題解決に慣れているのはサービス提供者側のはずなのですから、提供者側が、そういったサービスの流れや背景をしっかり説明・可視化することが重要だと思います。以下は、その時に追加したコンテンツです。

ご利用の流れ

https://yoyaku-package.com/

スケジュール

https://yoyaku-package.com/order-flow/

予約管理業務に特化したSaaSのChoiceRESERVEの製品サイト内のコンテンツ。導入までのフローを示すことで、課題解決には、訪問が必須ではなく、デモサイトの検証による業務課題とのフィット&ギャップがメインになることを表現しています。

おわりに

当たり前のようなことを、既存の文献にある「サービスの特性」というフレームワークで切ってみました。仮説はもうあるんだよ!実行が足りないんだ!という読者の方には、退屈だったかもしれません。ただ、貴社のサービスがどれだけ無形なのかということだけでも振り返っていただき、改善のきっかけになりましたら幸いです。

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