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マーケティング・ミックスとは?4Pと7Pの基本と活用事例を解説

BtoBマーケティング
インハウスエディター
安住 久美子

マーケティング・ミックスとは、企業のマーケティング戦略を実現するための具体的な方法、実行戦術のことです。

マーケティング・ミックスの構成要素である4P、4Pに対応する4C、4Pにかわって使われるようになった7つの戦術(7T)やサービスマーケティングの7Pについて、活用事例もあわせて解説します。  

マーケティング・ミックスとは、戦略立案後の戦術

マーケティングには、大きくわけて3つのステップがあります。市場環境の把握、マーケティング戦略の立案、マーケティング戦術の立案です。

マーケティングの3ステップ

戦略とは、マーケティングで目指す大きなゴールや方向性を示すものであり、ターゲットとなる市場を選び、その市場で生み出す価値を特定することをいいます。

一方戦術は、戦略を実現するための具体的な方法を定義することです。

マーケティング戦略を実現するための戦術をマーケティング・ミックスといいます。

マーケティング・ミックスとは、マーケティング戦略を実現するための戦術

マーケティング・ミックスの構成要素として、長らく4P(Product・製品/Price・価格/Place・流通/Promotion・プロモーション)のフレームワークが使われてきました。

しかし、市場環境の変化により、現代では4Pをさらに分解して考える7つの戦術(7T)やサービス業に特化した7Pで考えるほうが、より正確なアプローチができるといわれています。4Pはあくまでも基本であると考えてください。

マーケティング理論に関する代表的な本の「マーケティング・ミックス」の定義は、以下のとおりです。

戦略とは、企業が競争する市場を明確に選び、その市場でどのような価値を想像するかについて決定することである。戦術とは、マーケテイング・ミックスとも呼ばれ、企業の戦略を実現するものである。ある市場で価値を想像するために開発された製品の重要な側面を明確化しており、企業の戦略から論理的に導かれる。戦略を市場で実現するための方法を反映しており、製品のベネフィットやコストから、ターゲット顧客が製品を知り、購入するための手段まで、あらゆるものを規定する。

引用:『コトラー&ケラー&チェルネフ マーケティング・マネジメント 原書16版』(丸善出版)

マーケティング・ミックスとは、企業が標的市場で目的を達成するために用いるマーケティング・ツールの組み合わせのことを指す。

引用:『マーケティング』(NHK出版、放送大学教育振興会)

4P、4Cはマーケティング・ミックスの基本要素

4Pとは?企業視点で検討すべき基本の項目

マーケティング・ミックスを構成する要素で、もっとも知られているのが4Pのフレームワークです。

Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)の頭文字をとって、4Pと呼ばれています。

4Pは「製品を生み出してから顧客のもとに届けるまで、具体的に検討すべきこと」と考えてください。

Product(製品)

顧客ニーズや課題に応じて、どのような製品・サービスを提供するのか。差別化要因は何か。製品開発や改良、デザインや機能、ブランド、保証などについて検討する

Price(価格)

競合の価格や提供できる価値などから判断して、最適な価格や割引方法を検討する

Place(流通)

どのようなチャネルで届けるのか。販売ルートの開拓や管理、品揃えや在庫の管理、輸送。直販・代理店、Webのみで提供するなどを検討する

Promotion(プロモーション)

製品価値を顧客に伝えるための広告展開、販売促進の活動を検討する

4Cとは?4Pを顧客視点から点検するための要素

4Pは企業の視点、プロダクトアウトの考え方ですが、顧客側の視点を満たしているのか点検する必要があります。そのために、マーケットインの考え方である4Cが使われます。

4Cを提唱した学者ロバート・ラウターボーンは、4Pを考える前に4Cから検討するべきだと述べています。

4Cの要素は、Customer value(顧客価値)、Customer Cost(顧客コスト)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)です。

マーケティングの4C

Customer value(顧客価値)

提供する製品が顧客の課題を解決したり、顧客ニーズに応えたりすることで、どのような価値を提供できるのかを検討する

Customer Cost(顧客コスト)

提供する製品の価値に対して、顧客が支払うコストが見合っているのか。どの程度の対価が見込めるのかを検討する

Convenience(利便性)

顧客にとって、どのようなチャネルで届けると便利なのかを検討する

Communication(コミュニケーション)

顧客はどのようなメディアやコミュニケーションを用いれば買ってくれるのかを検討する

※アロウワンス(Allowance)とは、メーカーから小売店・卸に支払われる手数料のこと。販売奨励金や協賛金など。

4Pと4Cは対応関係にあり、両方の視点から検討するのがポイントです。

4Pが「古い」と言われる理由

4Pのフレームワークは、1960年代に有形商材のビジネスを想定して作られたものです。

フィリップ・コトラーの『コトラーのマーケティング・コンセプト』(東洋経済新報社)によれば、4Pの整理には当初からさまざまな疑問の声があったそうです。中でも、サービスが製品の一部であるという解釈には、サービス・マネージャーから疑問の声があがっていたと記されています。

サービスを主体とするビジネスモデルが増えるにつれ、実態に合ったあらたな指標が必要になってきたのです。

また、4Pのプロモーションという言葉には、インセンティブ(製品の価値を高める活動)とコミュニケーション(製品の価値を顧客に伝える活動)の2つの要素が含まれています。

それぞれ役割が違うため、プロモーションという言葉でひとくくりにするのは限界があると考えられるようになりました。

そこで、近年では4Pを分解した7つの戦術(7T)や、サービス業に特化した7Pが使われるようになっています。

4Pを分解した7つの戦術と、サービスマーケティングの7P

7つの戦術(7T)とは?

4Pの限界をカバーするために、4Pの要素を7つに分けたのが7T(Seven tactics)です。

7Tの構成要素は、製品・サービス・ブランド・価格・流通・インセンティブ・コミュニケーションです。

4Pから以下のように、分解されています。

サービス

顧客ニーズや課題に応じて、どのようなサービスを提供すべきか。サービスの重要な特徴はなにかを検討する

ブランド

競合他社の製品やサービスとの差別化ははかれているか。製品やサービスの価値を超えた独自の価値を創造できているかを検討する

インセンティブ(製品の価値を高める活動)

コストを削減したり、クーポンや値下げ、ボーナスや表彰制度などを検討する

コミュニケーション(製品の価値を顧客に伝える活動)

ターゲット顧客や外部パートナー、企業の利害関係者などにどのようなチャネルで情報提供し、メッセージをどうするか検討する

7Pとは?

企業の価値提供の形態はさまざまありますが、7Pのフレームワークは、サービス(無形商材)のマーケティング戦術に特化したものです。

サービスマーケティングの7Pともいわれています。

7Pの要素は、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)の4Pに加えて、People(人)、Process(プロセス)、Physical Evidence(フィジカルエビデンス)です。

サービスには、有形商材とは大きく異なる特性があるため、それらを決定する要素である人・プロセス・フィジカルエビデンスを加えた点が特徴です。

サービスの特性

・無形性:形がなく、目にすることや触れることはできない

・不可分性:生産と消費が同時に行われる

・変動制:サービスの品質は、誰が、いつどこで、誰にサービスを提供するかによって左右される

・消滅性:サービスは保存できず、需要も変動する

これらの特性をふまえて、4Pに加えて以下の3項目があります。

People(人)

人、顧客、ほかの顧客の3者がサービスにかかわる。どんな人がサービスを提供すればいいのか、サービスを受ける顧客を深く理解し、検討する

Process(プロセス)

どのような方法でサービスを提供するのか。業務のプロセスや販売プロセスを検討する

Physical Evidence(フィジカル・エビデンス)

サービスが提供されたり、顧客と触れ合ったりする環境、およびサービスに付随するあらゆる有形物を検討する

(フィジカル・エビデンスの例)

店舗:外観や内装の雰囲気

スポーツ:スタジアム、チケット、ユニフォームなど

生命保険:契約内容の確認レター

※関連記事:サービスの見える化

マーケティング・ミックス活用のポイント

マーケティング・ミックス活用の際は、以下のポイントを意識しましょう

①戦略に沿っていること

②全体として抜け漏れがないこと

③プロモーションばかりに偏っていないこと

①戦略に沿っていること

そもそも、マーケティング・ミックスは、戦略に沿った実行戦術であるということを忘れてはいけません。市場や競合、顧客の理解があり、自社が提供できる価値をきちんと把握できていないと、何を点検すべきなのか、良し悪しの判断がつきません。

②全体として抜け漏れがないこと

マーケティング・ミックスの各要素は、抜け漏れなく、全体としてバランスが取れている状態が理想です。たとえば、売れていない製品があったら、担当者は当然、売れない理由を検討するでしょう。しかし、製品だけを見て機能改善をしたり、広告訴求だけを改善したりするだけでは不十分です。4Pの要素すべてを検討したうえで、改善点を決めるべきです。

「他社より機能が足りないからではないか?」(Product:製品)
「広告のコピーがわかりにくいのではないか?」(Promotion:プロモーション)

「価格は最適か?」(Price:価格)
「売り場や店舗の状態は?」(Place:流通)

サービスであれば、7Pの要素すべてを検討して、課題を特定し、改善をする必要があるのです。

広告施策やコミュニケーション施策ばかりを改善していたが、実は価格が顧客の期待値とずれており、価格を見直したら成果が出たというような話はよくあるものです。

③プロモーションばかりに偏っていないこと

日本では、マーケティング=プロモーション施策というイメージを持つ方が多いようです。

縦割りの組織構造や分業体制なども影響しているかもしれませんが、「マーケティング担当者が製品や価格に口を出すのは難しい」という声も聞きます。

しかし、本来のマーケティングはプロモーションが目的ではありません。顧客にとって価値のない製品に対しどんなに広告を打っても、継続的な成長にはつながらないでしょう。

フィリップ・コトラーは、著書の中で以下のように語っています。

「マーケティングとは、充足されていないニーズや欲求を突きとめ、その重要性と潜在的な収益性を明確化・評価し、組織が最も貢献できる標的市場を選択したうえで、当該市場に最適な製品、サービス、プログラムを決定し、組織の全成員に顧客志向、顧客奉仕の姿勢を求めるビジネス上の機能である」

引用:コトラーのマーケティング・コンセプト(東洋経済新報社)

製品を創造し顧客に届けるまでのプロセス全体で、最適化された状態を作るのがマーケティングの役割。それを実現するための戦術がマーケティング・ミックスだと考えましょう。

マーケティング・ミックスの活用事例

マーケティング・ミックスの活用事例を、当社コンサルタントの経験から紹介します。

桂川

以前事業マーケティングを管轄していたときは、翌年の方針や施策を検討する際に4P・4Cをベースに施策に落とし込んでいました。これをやってすぐに売上が上がるというようなものではなく、施策に落とし込む際の着眼点として使うのがおすすめです。抜け漏れなく、全体を俯瞰して見るのがポイントだと思います。

野田

私がコンサルティングに入っていた新規事業の案件で、ProductとPromotionを見直したことがありました。製品名が造語だったこともあり、消費者には製品の価値が正しく伝わっていない、どのような製品なのかイメージがつきにくかったのです。製品名を見直したことで、「お客様の反応が変わってきた」「わかりやすいと言っていただけた」「興味関心が高まった」という話がありました。また顧客が求める価値を顧客視点で整理し、Promotionのメッセージも変更しました。

代表 栗原

無形商材を提供するお客様のご支援をしたとき、7Pの中でもPeaple、Process、Physical Evidenceを訴求する必要があると感じ、サービスの見える化を意識してご提案しました。具体的には、サービス内容がイメージできるコンテンツを作ったり、Webサイトを改善して主要コンセプトを説明するページを作ったりしました。才流のコンサルティングも無形商材のため、導入事例で納品物の一部を掲載する、プロセスを時系列で解説するなどを行っています。

マーケティング・ミックスの前段階で使えるフレームワーク

さいごに、マーケティング・ミックスの前段階で、戦略を立てる際に利用できるフレームワークを紹介します。

3C分析

3C分析とは、Customer(顧客)、Competition(競合)、Company(自社)の3つの要素を分析することで、ビジネス環境を把握し、戦略立案に役立てる手法です。3C分析は、市場環境の変化に対応するための柔軟な戦略を構築し、競争力を向上させることを目的としています。3C分析の重要性は、市場や顧客ニーズの変化をキャッチし、競合他社との差別化を図ることができる点にあります。

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ポショニングマップ

ポジショニングマップとは、市場における自社製品のポジションを競合他社と比較して、視覚的に示した図です。競合他社との差別化ポイントを明確にしたい、自社の優位性を投資家または社内への新規事業プレゼンテーションで示したい、マーケティング戦略を立てたい、または再考したいなどの場合に活用できます。

ポジショニングマップ

以下の記事では、ポジショニングマップの作り方のほか、STP分析の進め方も解説しています。

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バリュープロポジション

バリュープロポジション(value proposition)とは、「企業が顧客に提供する価値を表したもの」です。才流ではさらに、「自社が提供できて、競合他社が提供できない、顧客が求める独自の価値を表したもの」と定義しています。

投資家に対して自社商品・サービスの価値を伝えたい、社内の新規事業プレゼンテーションで新商品の価値を表現したい、抜けもれなく商品・サービスの価値を検討したいなどの場合に活用できます。

バリュープロポジション

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監修

才流 マーケティング支援事業 事業責任者

澤井 和弘

求人メディア運営会社にて営業・マーケティング・新規事業の立ち上げを担当。その後、フィードフォースに入社し、マーケティングチームの立ち上げ・事業責任者などを務め、デジタルマーケティングに関するメディアへの寄稿やBtoBマーケティングに関するイベント登壇など行う。現在はBtoBマーケティング支援事業の責任者として活動を行う。コンサルタント紹介ページ

参考文献

  • 『コトラー&ケラー&チェルネフ マーケティング・マネジメント』原書16版(丸善出版)
  • 『コトラーのマーケティング・コンセプト』(東洋経済新報社)
  • 『マーケティング』(放送大学教育振興会/NHK出版)
  • 『サービス・マーケティング– コンサル会社のプロジェクト・ファイルから学ぶ』 (有斐閣ストゥディア)
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