BtoBのマーケティングや営業活動において、導入事例はとても効果的なコンテンツ。一方で、いざ作ろうと思った際に以下のような悩みを抱えるケースも多いようです。
- まだ顧客が成功したとはいえないのにコンテンツ化できる?
- 顧客にメリットがないのに工数を割いてもらえる?
- インタビューのやり方、記事の書き方がわからない
しかし、実は導入事例にはさまざまな形があります。顧客が商品・サービスを導入した直後に記事化する、顧客へのインタビューを実施せずにコンテンツ化することも可能です。
本記事では目的やリソースにあわせて最適な導入事例の形を選べるよう、「事例コンテンツ」として12のパターンに整理しました。パターンごとに事例も紹介しているので、参考になれば幸いです。
事例コンテンツの12パターン早見表(PDF形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
才流(サイル)では、事例コンテンツの作り方をはじめ、BtoB企業のマーケティングを戦略から実行まで支援しています。ぜひお気軽にご相談ください。
事例コンテンツを作成するメリット
サイトエンジン編集部が実施した『購買者から見たWebサイトに関するアンケート調査【2022年12月実施】』によれば、企業Webサイトのページのうち、最も購入につながっているのは導入事例。事例は、購買に大きな影響をもたらすコンテンツといえます。
なぜ、事例コンテンツは購買に好影響を与えるのでしょうか。ここでは事例コンテンツを作成することで得られる3つのメリットについて説明します。
1.信頼性を獲得できる
直接の利害関係がない第三者の声は受け入れやすいのが人の心理。ユーザーの生の声で構成される事例コンテンツは、信頼性の獲得に寄与します。
もし有名企業が使っていれば、見込み顧客は安心感をおぼえます。また、自社と近しい規模の企業や知っている企業が使っているとわかれば、親近感も抱くでしょう。自社と同じ業界のユーザーがいれば、自社の業界に関する知識も持っているベンダーである、という期待が膨らみます。
2.商品・サービスの理解を促進できる
事例コンテンツを読むことで、見込み顧客は商品・サービスの導入がどのような成果につながるのかを理解できます。また、自社の課題を解決できる見込みがあるのかを判断する機会にもなります。
ちなみに、最近はカスタマーサクセスの一環で、商品・サービスの活用促進を目的として既存顧客に向けて事例コンテンツを発信する企業も増えてきました。とくにSaaSを提供する企業によく見られます。
事例コンテンツは、商品・サービスの理解を促進するのにも有効な手段といえるでしょう。
3.購買担当者が決裁者を説得するときの材料になる
加えて、事例コンテンツは購買担当者が決裁者を説得するときにも役立ちます。
新しい商品・サービスの導入には、リスクが伴うもの。購買担当者には、費用対効果や投資対効果に加えて、発注先が適切かどうかを示すことが求められます。こうした社内の説得は、購買担当者にとっては大きな負担です。
そこでインパクトをもたらすのが、他の企業が成功しているという事実(=事例コンテンツ)。口頭で導入実績を伝えたり、参考資料として稟議書に事例コンテンツを添付したり、上司からの質問対策として事例コンテンツを用意しておくといった用途で使います。
事例コンテンツを作成するときには、購買担当者が決裁者を説得するときの材料にもなる、ということも意識しましょう。
事例コンテンツの12パターン早見表
商品・サービスの購買に好影響をもたらすことから、事例コンテンツの作成に取り組みたいと考える企業は多いでしょう。しかし、事例といえばインタビュー記事であるというイメージから、以下の点がハードルになってしまうようです。
- 顧客にとってメリットがないのに、わざわざインタビューの時間を作ってもらうのは気まずい
- インタビューでこちらの意図どおりに話をしてもらえるのか不安
- 社内にインタビューできる人材、記事を書ける人材がいない
冒頭でも触れたとおり、事例コンテンツはインタビュー形式で導入効果を語るものばかりではありません。才流では、以下の12のパターンで作成できると考えています。
事例コンテンツの12パターン早見表(PDF形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
12のパターンそれぞれ、作成にかかる工数も、期待できる効果も異なります。目的やシーンに応じて、どのパターンで公開するのがベストなのか検討してみてください。なお12パターンからひとつだけを選ぶのではなく、複数のパターンに取り組むこともあります。
以下、12のパターンそれぞれの概要と特徴をまとめました。
成功事例
成功事例は、商品・サービスを導入したことによって得られた成果に言及するパターンです。具体的な数字の推移や投資対効果を盛り込むので、商品・サービスの導入効果に説得力をもたせることができます。
一方で、顧客に具体的な数字の開示を断られる場合がある、成果が出るまではコンテンツが作成できないといったハードルがあります。
パターン1:成功事例【インタビューあり】
顧客へのインタビューを通じて、成果に言及する事例コンテンツです。顧客の言葉で成果を語るため、信頼性の獲得とサービス理解の両方に大きく貢献します。
ただし、インタビューをして記事化するという工程が必須になるため、コンテンツ作成の負荷は12パターンのなかで最も高くなってしまいます。
具体的な事例として、コンテンツマーケティングを支援するバズ部の事例コンテンツを紹介します。取り組み内容だけでなく、実際の成果まで数字を添えて公開している、非常に踏み込んだ内容の成功事例です。
パターン2:成功事例【顧客コメントあり】
続いては、取り組みの成果についてサプライヤーが語るパターンです。最後に顧客からのコメントを紹介することでお墨付きをもらい、信頼性を担保します。
顧客へのインタビューを実施する必要がないので、作成の負担が小さいことがメリットです。
参考として、Webマーケティングを支援するbizhikeの事例コンテンツを紹介します。具体的な取り組みのプロセスを公開し、実際の成果にも言及している事例です。顧客とのやりとりがわかるSlackのキャプチャも挿入されており、リアリティがあります。
パターン3:成功事例【サプライヤーが解説】
成功事例の最後は、サプライヤーが成功事例について解説するパターン。顧客へのインタビューを実施しないため、パターン2よりもさらに作成の負担が小さいことが特長です。
なお、顧客のコメントを掲載しない場合でも、必ずコンテンツを公開する前に内容をチェックしてもらいましょう。
才流が作成した本パターンの事例コンテンツについて、『顧客の不安を解消するサービス提供プロセスの全公開記事とは?』で作成のステップを紹介しています。ぜひ実際の事例コンテンツ『製品なしでも有料モニター4社獲得!新規事業マーケプロジェクト4か月半を全公開』とあわせてご覧ください。
※関連記事:
■顧客の不安を解消するサービス提供プロセスの全公開記事とは?
■製品なしでも有料モニター4社獲得!新規事業マーケプロジェクト4か月半を全公開
活用事例
活用事例は、商品・サービスの導入によって課題がどのように解決されたのかに言及する形式です。先述した成功事例のように定量的な成果は記載しません。当初の課題、その解決プロセスを示し、サービスの理解を促します。
定量的な成果を記載しないため、サービス理解の観点では成功事例よりも一歩劣ります。数字の代わりに改善の実感を伝えるような工夫が必要でしょう。
パターン4:活用事例【インタビューあり】
顧客へのインタビューを通じて、商品・サービスの活用状況を伝えるパターンです。定量的な成果は記載しないものの、顧客の言葉で語ることができるので信頼性の獲得には大きく貢献します。
一方、顧客へのインタビューを経て記事化するので作成の負担は大きいです。
参考として、クラウド人事労務ソフトSmartHRの事例を紹介します。
パターン5:活用事例【顧客コメントあり】
活用事例の二つ目は、サプライヤーが商品・サービスの活用状況を語る形式です。最後に顧客コメントを紹介することでお墨付きをもらい、信頼性を担保します。
顧客へのインタビューを行う必要がないので、パターン4に比べると作成の負担は小さいです。
参考として、インフルエンサーと出会えるプラットフォームLemon Squareの事例を紹介します。実施した施策について、具体的に言及されています。
パターン6:活用事例【サプライヤーが解説】
活用事例の最後は、取り組み内容に関してサプライヤーが語るパターンです。
顧客へのインタビューを実施しないため、パターン5よりもさらに作成の負担を小さくできます。なお、顧客のコメントを掲載しない場合でも、必ず公開する前にコンテンツをチェックしてもらいましょう。
参考として紹介するのは、CXプラットフォームKARTEの事例です。顧客コミュニティで定期的に行われる勉強会で発表された活用事例をコンテンツ化しています。
導入事例
ここからは、導入事例について解説していきます。導入事例は、商品・サービスの導入について言及する形式です。導入時の課題と背景、なぜそのサービスに決めたのかをコンテンツに落とし込みます。
導入経緯にフォーカスするため、商品・サービスの活用が進んでいなくてもコンテンツにできるというメリットがあります。プレスリリースでもよく使われます。
パターン7:導入事例【インタビューあり】
顧客へのインタビューを通じて、導入時の課題や期待をまとめるパターンです。顧客の言葉で語るため、信頼性の獲得に貢献します。
インタビューの実施が欠かせないので作成の負担は大きいですが、成功事例や活用事例に比べると早いタイミングで作成できるというメリットがあります。
才流が2021年に実施した調査によれば、商品・サービスの契約前にインタビューを打診するケースが多いようです。
※関連記事:導入事例の取材許諾の取り方~依頼メール・取材依頼書のテンプレ掲載
パターン7の参考として、決済サービスAirペイの事例を紹介します。
パターン8:導入事例【顧客コメントあり】
サプライヤーが導入時の課題と背景、なぜそのサービスに決めたのかを語る形式です。最後に顧客コメントを紹介することでお墨付きをもらい、信頼性を担保します。
顧客へのインタビューを実施しないため、パターン7に比べると作成の負荷が小さいことがメリットです。以下のようにプレスリリースでもよく使われます。
参考として、健康管理システムCarelyの事例も紹介します。
パターン9:導入事例【サプライヤーが解説】
導入事例の最後は、サプライヤーが導入時の課題と背景、なぜそのサービスに決めたのかを語る形式です。
パターン8との違いは、顧客のコメントも掲載しないこと。パターン8よりもさらに作成の負担を小さくできます。なお、顧客のコメントを掲載しない場合でも、必ずコンテンツを公開する前にチェックしてもらいましょう。
こちらもパターン8と同様にプレスリリースで使われることがよくあります。参考として、出張・経費管理クラウドSAP Concur Japanのプレスリリースの事例を紹介します。
その他
最後にその他の事例コンテンツとして、3つのパターンを紹介します。
パターン10:ユースケース・ケーススタディ
「大手製造業」「首都圏に複数の店舗を展開する小売業」のような形で、顧客の名称を出さずに商品・サービスの利用状況を説明するパターンです。
顧客と調整することなく、サービスの内容を説明できる点が最大のメリット。作成の負担を小さくできます。
ただし社名を出さないとはいえ、顧客には事例コンテンツを作成する旨を伝えておきましょう。
参考として、ふたつの事例を紹介します。
パターン11:お客様の声
「お客様の声」として、実名、もしくは匿名で顧客の声を紹介する形式です。サービスの理解を促すのは難しいですが、生の声としてリアルな雰囲気を伝えられます。
実名でコメントがもらえる場合は、基本的にパターン2の成功事例【顧客コメントあり】、もしくはパターン8の導入事例【顧客コメントあり】として公開することを推奨します。これらが難しい場合のみ、本パターンを採用してください。
匿名で公開する場合も、なるべく参考情報として業種業態、企業規模、地域といった情報を記載するようにしましょう。
実名、匿名それぞれの事例を紹介します。
パターン12:ロゴ・導入実績
最後に紹介するのが、商品・サービスの導入者のロゴをWebサイトに掲載する形式です。読み手側はテキストを読む必要がなく、提供側にも作成に関して大きな負担がないことがメリットです。
理想としては、ターゲットに近い企業のロゴがたくさん並んでいること。参考としてふたつの事例を紹介します。二つ目のKARTEでは、業界ごとにロゴを整理しており非常にわかりやすいです。
今すぐに事例コンテンツを作りたい場合はどうするべきか
量・質ともに充実させるほどよい、ということは理解しつつも、まずはスピード優先で動き出したい!というケースも多いと思います。その場合は、まずは以下の3つに取り組むことをおすすめします。
- パターン8:導入事例、顧客コメントあり
- パターン11:ユースケース・ケーススタディ
- パターン12:ロゴ・導入実績
いずれもインタビューなしで進められるパターンばかり。作成の負担もスケジュール調整の負担も小さいため、短期間でアウトプットが可能です。そして、信頼性の獲得とサービス理解の両方を押さえることができます。
まずは上の3つに取り組み、その後に量の拡充と質の向上を検討しながら事例コンテンツの作成を進めていくとよいでしょう。
事例コンテンツの12パターン早見表(PDF形式)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。 クリックするとファイルがダウンロードされます。
※関連記事:
■BtoB導入事例の作り方【事例インタビューのテンプレート付き】
■導入事例の取材許諾の取り方~依頼メール・取材依頼書のテンプレ掲載
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