商談の前に顧客解像度を高めることが重視される一方で、やり方や精度についてお悩みの方も多いと思います。
顧客解像度を高めるために欠かせないのが事前のリサーチですが、その種類は実にさまざま。限られた時間のなかで効率的に実施したいものです。
そこで本記事では法人営業に携わる方に向けて、顧客解像度を高めるのに有効なリサーチの手法を優先順位も添えて解説していきます。商談の事前準備の参考になれば幸いです。
また、才流では「顧客解像度を高めて営業活動をおこないたい」「営業活動前のリサーチを適切に実施したい」企業さまを支援しています。営業活動でお困りの方はお気軽にご相談ください。⇒サービス紹介資料の無料ダウンロードはこちら
リサーチの目的
まずは前提として、リサーチの目的について解説します。
法人営業におけるリサーチの目的とポイント
法人営業におけるリサーチの目的は、顧客解像度を高めて、商談の質を向上させることです。
そのためには以下の2つを理解したうえで、自社が提供できる価値について仮説を立てる必要があります。
- ターゲット顧客の市場環境
- ターゲット顧客の課題とニーズ
市場環境については、PEST、5F、3C、バリューチェーン、サプライチェーンといった切り口での調査が有効です。
課題・ニーズについて理解を深める際は、顧客の外部環境や競合についても調査しましょう。上場企業の場合は、中期経営計画のような資料に記載されているケースもあるので、閲覧することをおすすめします。
顧客の市場環境、課題・ニーズを理解できたら、自社が提供できる価値について整理していきましょう。
取り組み事例
ある企業では、初回商談の前に以下に取り組み、顧客や顧客の業界に対する解像度を高めています。
- 新規顧客との初回商談の前に顧客のサービスを利用
- 顧客の業界の有識者からコメントを取得
- ユーザー100名以上にアンケートを実施
初回商談から課題・解決策・自社の提供価値を的確に訴求するためです。
もちろん、すべての商談で実施しているわけではないと推察されますが、分析の正確性や熱量により、多くの大企業から受注を獲得しています。
また、才流(サイル)でも顧客とのプロジェクトが始まるタイミングで、後述のリサーチ手法を組み合わせて業界や顧客の理解を深めています。質の高いコンサルティングを実現するためです。
リサーチの進め方
続いて、リサーチの進め方について解説します。
目的から逆算して調査項目を設計し、仮説を持って進める
リサーチするときに意識したいのが、以下の3つです。
- やみくもにリサーチするのではなく、目的から逆算して調査項目を設計する
- 調査項目に対して自分なりの仮説を持ってリサーチする
- 客観的な視点を持つことを忘れない
無計画なリサーチは大海で適当に釣りをしているようなもの。筋のよい情報は見つけられません。目的から逆算して調査項目を設計しましょう。
また、設計した調査項目に対して自分なりの仮説を持つことも大切です。情報に対して、so what(だから、なに?)が生まれ、深い洞察を得ることができるからです。
一方で、自分がすでに持っている仮説を立証するための情報ばかりを集めたり、思い込みによって誤認したりする可能性もあります。想定していなかった情報が入ってくることもあるので、客観的に見ることも忘れないようにしましょう。
組織として調査項目・目安時間を決めておく
リサーチの対象に応じて多少のチューニングは必要になりますが、調査項目と目安時間は組織で統一できるケースが多いです。効率的にリサーチするためにも、組織で整理し、型化しておきましょう。
なお、代表的な調査項目は以下の3つです。
- 企業情報(ミッション、事業目標、プロダクト・サービスなど)
- 市場環境(業界、競合、トレンドなど)
- 商談相手の情報(役割、課題、ニーズなど)
これら3つをベースとして、リサーチの対象にあわせてチューニングしましょう。
また、リサーチにかけるべき工数は、業界の複雑性や担当領域における自身のリテラシー、顧客の企業規模、案件規模、担当している顧客数などによって変わるものです。とはいえ、限りある時間を有効に使うためにも、目安となる時間を決めておくことをおすすめします。
たとえば新規リードとの商談が毎月数十件あるような場合は、工数をかけるべきではありません。一方、絶対に獲得したい顧客がいる場合は工数をかけるべきでしょう。
また、浅いリサーチで商談の転換率を低下させて、多くの商談をこなすよりも、リサーチによって商談の質を向上させて高い転換率で営業活動を行う方が生産性が高く、精神衛生上もよいでしょう。
これらを踏まえて、目安となる時間を設定してください。
7つのリサーチ手法
主なリサーチの手法は7つあります。
- 社内
- 記事(業界新聞やWeb)
- Webサイト(ターゲット顧客や競合企業)
- 書籍
- 調査会社
- ウェビナー、展示会
- インタビュー
どのような場合においても社内、Webサイト(ターゲット顧客や競合企業)、Webサイト(ターゲット顧客や競合企業)の3つは使用することを推奨します。
必要に応じて、書籍、民間調査、ウェビナー、展示会、インタビューも利用していきましょう。
1.社内
まずは社内の有識者を探します。同僚や先輩、上司に相談し、知見を有している人や事例を見つけましょう。市場全体から現場の詳細情報まで、広範囲な情報を取得できるケースも多く、最も効率的な方法です。
過去に担当したことがある人や、実はその市場に詳しいという人は意外と見つかります。また、社内イントラで情報を一元化している企業も多いと思います。ぜひ閲覧してみましょう。
2.記事(業界新聞やWeb)
業界新聞やWebの記事は、トレンドを把握するのに効果的な手段です。とくに業界新聞は最新の情報を入手できるうえ、情報の信頼性も担保されているケースが多いです。
私が過去にお会いした金融業界のトップセールスの方は、4つの業界の新聞をかばんに忍ばせていました。Webよりも紙の方が視認性が高く、短時間でキャッチアップできるとのことです。
また、関連する領域の専門家のSNSのアカウントをフォローすることも有効です。最新の情報を入手できるだけでなく、顧客と共通の話題を持てるというメリットも得られます。
3.Webサイト(ターゲット顧客や競合企業)
Webは多くの情報を取得できますが、ターゲット顧客のコーポレートサイトや中期経営計画を優先的に閲覧しましょう。事業計画や課題を把握できます。また財務三表が読める場合は、中期経営計画では得られない声なき声を推測し、鋭い考察が得られる可能性があります。
新規事業を提案する場合は、ターゲット顧客の投資キャッシュフローを確認しましょう。マイナス額が毎年増加している企業は投資を実施している企業です。拡大フェーズであり、新規事業の提案の好機かもしれないといった仮説が立てられます。
また、リサーチの対象は、ターゲット顧客だけではありません。競合やサプライチェーンの主たる企業をリサーチすることで、さらに理解が深まります。Web上でターゲット顧客の情報を見つけられなかった場合にも有効です。
例:大手アパレルメーカーをリサーチする際に、戦略提携している物流システムメーカーの展示会も視察する
社員・元社員の声が集まるような口コミサイトも内部の情報を取得するのに有効です。ただし、口コミサイトに限らず、Webの情報は信憑性に欠けるものが多数存在します。関連する新しい情報がないか、真逆の主張をしている情報がないか、あるいは書籍のような別媒体で確認することも忘れないでください。
4.書籍
書籍はとくに市場全体をリサーチしたいときに有効です。業界本と呼ばれるような専門書で市場全体の動向や数年分の市場データなどを入手できます。
主張や切り口が異なる書籍を読むことで広範囲に深い洞察が得られるため、最低3冊読むことをおすすめします。
なお市場に関する情報は、経済情報プラットフォームSPEEDA(スピーダ)や業界動向サーチといったWebサイトでも入手できます。SPEEDAは有料ですが、主たる上場企業の経営指標も算出しているため、必要な場合は別途で調査するよりも費用対効果が高いです。
5.調査会社
矢野経済研究所や富士経済のような調査会社は、特定のテーマを深堀りする際に有効です。有料ですが、一定規模以上の企業であれば法人契約しているケースが多いです。
以前、とあるSaaS企業を支援した際の話です。特定の業界を開拓しようとしたものの、うまくいっていないというお話だったので、調査会社のデータを閲覧することを提案しました。
すると、実は自社ですでに契約されていたことが発覚。結果的に「調査会社のデータをベースに商談を設計したら、商談化率が上がりました」という言葉をいただきました。
スポットで利用できる媒体もあるので、ぜひ活用してみてください。
6.ウェビナー・展示会
ウェビナーや展示会は、ターゲット顧客が注力している領域や最新のサービスを把握できるよい機会です。
「○○業界 ウェビナー」「○○業界 展示会」といったワードで検索するか、展示会の主催会社のメルマガに登録して普段から情報を収集するとよいでしょう。ショールームを持っている企業であれば、足を運ぶのもおすすめです。
また、Webサイトと同様に、競合やサプライチェーンの主たる企業のウェビナーを視聴したり、展示会に足を運んだりすることも有効です。
7.インタビュー
有識者や関係者へのインタビューは、現場の状況を理解するのに有効な手段です。生々しい課題やニーズが得られます。
ビザスクのようなサービスを利用すれば、ターゲットや同じ業界の方々に直接インタビューできます。もちろん、友人や知人に紹介を打診するのもよいでしょう。
インタビューは貴重な機会です。事前に仮説を立て、インタビュー項目を整理しておきましょう。
最後に
法人営業に携わる方に向けて、顧客解像度を高めるのに有効なリサーチの手法を解説しました。
まずは以下の3つのリサーチを実施し、必要に応じて記事中で紹介した4つのリサーチにもさらに取り組んでみてください。
- 社内
- 業界新聞やWebの記事
- ターゲット企業や競合企業のWebサイト
また、テクノロジー分野であれば『WIRED』、アパレルであれば『WWD』、情シスであれば『情シスSlack』といったように、最近はWebやSNSでかんたんに業界に特化した情報にアクセスできます。このようなサイトを普段からチェックすることもおすすめです。ぜひ一度探してみてください。
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