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カスタマージャーニーの意味って?基本の概念と構成【初心者向け解説】

BtoBマーケティング
インハウスエディター
前田 絵理
■監修:才流(サイル)コンサルタント・澤井 和弘

マーケティング領域では、一般的な用語として使われるようになったカスタマージャーニー。しかし、「基本的な定義を理解していない」「古くて意味がないという意見も聞く」「実際、どう設計すればよいか迷ってしまう」という相談もよくいただきます。そこで本記事は、カスタマージャーニーの基本的な知識を初心者にもわかるようにまとめてみました。

具体的な作成手順が知りたいという方は、以下の記事と無料テンプレートをご利用ください。
※関連記事:カスタマージャーニーマップの作成手順

カスタマージャーニーマップのテンプレート(Googleスライド版)を開く
カスタマージャーニーマップのテンプレート(PowerPoint版)をダウンロードする
※個人情報の入力は必要ありません。クリックするとファイルがダウンロードされます。

カスタマージャーニーとは?

カスタマージャーニーとは英語で書くと、Customer(顧客) Journey(旅)であり、その名の通り顧客の行動を旅に見立ててイメージするもの。

顧客が商品やサービスを知り、購入を検討し、実際に購入や契約に至るまで、あるいはその先のリピートや口コミの投稿に至るまでの行動や思考、感情の変化を一連のプロセスとして捉えることを指した用語です。それを可視化した図を、カスタマージャーニーマップと呼びます。

カスタマージャーニーの歴史を紐解くと、1998年まで遡ります。

英国の経営コンサルタント会社OxfordSM(当時はOxford Corporate Consultants)が、英国と欧州を結ぶ国際列車であるユーロスターの企業ミッションとブランドポジションを確立するために設計したのがはじまりだと言われています。その後、OxfordSMは政府への支援などでカスタマージャーニーを広く利用したため、一般にも知られるようになりました。

参考:Wikipedia「Customer Experience

日本でもマーケターを中心に古くから認知されていましたが、カスタマージャーニーの概念が一般に広く知れ渡るようになったのは、フィリップ・コトラー氏の著書『コトラーのマーケティング4.0』の発刊以降というイメージがあります。

本書は、インターネットやソーシャルメディアが台頭したことで世界は「接続性の時代」に突入したと指摘し、顧客は次のような5Aと呼ばれるカスタマージャーニーを辿るようになったと解説しています。

5Aのカスタマージャーニーマップ
参考:コトラーのマーケティング4.0

なぜ、古い・意味がないと言う人がいるか

最近、SNSでは「カスタマージャーニーはもう古い」という投稿を一部で見かけます。このような意見の背景には、顧客の購買プロセスが複雑化したという時代の流れがあると考えられます。

複雑化した購買プロセス例

  • YouTube広告でITツールを認知する → ITツール比較サイトで機能性をチェック → IT製品のレビューサイトで評判をチェック → 無料トライアルに申し込み
  • TikTokで特定の化粧品を認知する → Amazonでレビューをチェック → 最安値で購入できるサイトをチェック → メーカーサイトで定期購入
  • ECサイトで家電をチェック → 実店舗で店員から詳細なスペックを聞く → 自宅に帰り、ECサイトへ再訪問して購入

インターネット、スマートフォン、ソーシャルメディアの普及によって、とくに2010年代に入ってからは顧客の購買プロセスは多様化しました。
しかし、これはカスタマージャーニーが古くなったというわけではありません。顧客はカスタマージャーニーに沿って一直線に進むわけではなく、購買プロセスを行き来するものになったと理解しましょう。

むしろ購買プロセスが複雑化したからこそ、顧客の行動や思考、感情の変化を可視化し、最適なタイミングで必要なコミュニケーションができるようにカスタマージャーニーを設計する重要性が増したと言えます。

必要な考え方

カスタマージャーニーは、自社側の理想だけを掲げて、それに沿って顧客を行動させることを目的に設計するものではありません。あくまでも顧客に寄り添って、その行動や思考、感情の変化を時系列に沿って想定することで、顧客解像度を高めることが目的です。

自社で顧客の旅路を作り、そこを歩いてもらうという考え方ではなく、顧客自身が選択するであろう旅路を想定するという考え方が必要になります。

そして、旅路の過程ごとに適したアプローチを行えれば、顧客は前進と後進を繰り返しながらも最終的な目的地(商品の購入やサービスの申し込みなど)に向かって着実に態度変容をしてくれるようになります。

2つのメリット

カスタマージャーニーの設計で得られるメリットを整理しておきましょう。設計したからと言って、問い合わせや売り上げの増加に直結するわけではありませんが、企業のマーケティング活動に欠かせないメリットを得られるのは間違いありません。

カスタマージャーニーを設計するメリット

1.顧客視点で施策やコンテンツを設計できる

マーケティング施策は、どうしても自社視点で実行してしまいがちです。目先の業績目標に追われ、商材の特徴を伝える施策ばかりに偏ってはいないでしょうか?
そのような状態では、見込み顧客を増やし、自社を検討して選んでもらうときに役立つコンテンツをつくれません。

自社視点から抜け出すのに役立つのが、カスタマージャーニーです。

顧客の行動や思考、感情の変化を想定する過程では「どうすれば自社の商品やサービスを利用してもらえるようになるか」と、検討フェーズごとに考えます。その結果、全体を俯瞰した顧客視点でのマーケティング施策を検討できるようになるのです。

2.各施策の目的を関係者全員で共有できる

カスタマージャーニーはマーケティング部門だけではなく、営業部門やカスタマーサポート/サクセスといった他の部門も巻き込んで設計するものです。顧客解像度を高めるために必要だからですが、結果的に各施策の目的や目標、期待できる効果を関係者全員で共有できるというメリットも得られます。

各コンテンツで発信するべきメッセージも明確にでき、施策をスムーズに進められるようにもなるでしょう。

BtoB例
ITツール販売企業
(Before)
Webサイトのコンバージョンを増やしたいから、
ホワイトペーパーをつくろう
(After)
広告やSEO施策で、サービスの認知を広めることはできた。
しかし、検討フェーズの施策が手薄だ。
サービスの活用法を知ってもらうために、
顧客の活用事例を集めてホワイトペーパーにしよう。
まずは優先するべきペルソナである、〇〇業界向けにつくろう!
BtoC例
化粧品の販売メーカー
(Before)
商品の効能が伝わるランディングページをつくろう
(After)
ECサイトやSNSでの口コミを見ると〇〇を防ぐ効能が好評だ。
この魅力が伝わるよう、
〇〇に悩む方へ向けたランディングページを作り、
リスティング広告を配信しよう。
その層に対しては定期購入を促してもハードルが高いはず。
まずは、初回お試しキャンペーンの利用者増加を目標にしよう!

カスタマージャーニーマップの基本的な構成

カスタマージャーニーは、以下のようにマッピングして整理します。本記事では基本的な構成をご紹介しましょう。

カスタマージャーニーマップ基本の構成
BtoBでの基本的なカスタマージャーニーマップ構成
※BtoCの場合、購買プロセスの「商談」はなくてもOK

横軸:購買プロセスを設置する

横軸には、顧客が商品やサービスを知ってから最終的な購入や申し込みに至るまでの購買プロセスを時系列で用意します。活用され、推奨されるようになるまでの項目もあると望ましいです。

しかし各項目の分け方や名称に明確なルールはありません。前述した『コトラーのマーケティング4.0』で取り上げられている、5Aの項目を採用するのもよいでしょう。

縦軸:態度変容のスタートとゴールから決める

おすすめは、まず態度変容のスタート(顧客の行動)とゴール(企業の目的)を設置すること。そして、各フェーズで効果的に接触できるタッチポイントと、コンテンツ例の項目を用意すればスムーズに書き込めるようになります。

しかし、縦軸も横軸と同様に、各項目の分け方や名称についても明確なルールはないので、自社に合うようアレンジしてください。

作成の手順

カスタマージャーニーマップは、次のような5つのステップで作成します。

  1. ペルソナ(代表的な顧客の人物像)を作成する
  2. カスタマージャーニマップの横軸と縦軸の項目を決める
  3. 態度変容のスタート(顧客の行動)を書き込む
  4. 態度変容のゴール(企業の目的)を書き込む
  5. 施策(タッチポイント・コンテンツ例・CTA)を書き込む

四半期や半期といった節目にカスタマージャーニーを振り返り、リードの獲得状況や受注率を参考にして改善・追記を繰り返してください。

※関連記事:カスタマージャーニーマップの作成手順【テンプレート付き】
※関連記事:BtoBマーケで役立つペルソナ作成3つのステップ

カスタマージャーニーよくある質問に才流のコンサルが回答

カスタマージャーニーは明確なルールがないため、作成にあたり疑問点もでてくるでしょう。よくいただく質問をまとめたので、ぜひ参考にしてください。回答は、本記事の監修者・才流のコンサルタント澤井和弘です。

Q.ペルソナごとにカスタマージャーニーは必要ですか?

澤井 和弘

A.原則としては必要です。ペルソナごとのカスタマージャーニーマップを作成すれば顧客解像度が高まり、検討施策の精度が上がります。
とくにBtoBは、担当者と決裁者のカスタマージャーニーマップをそれぞれ作成することで、顧客の意思決定や稟議といったフローまで含めた高い解像度で検討できるようになります。

一方で、初めてカスタマージャーニーの設計に取り組む場合には、いきなり複数のペルソナとカスタマージャーニーを検討するのは少々ハードルが高いとも言えます。
まずは最も注力するべきペルソナを1人設定し、その人物像に沿ったカスタマージャーニーを設計することからはじめてもよいでしょう。

Q.設計はどの部門が主導するべきですか?

澤井 和弘

A.マーケティング部門が主導して設計するのが一般的です。カスタマージャーニーの設計に取り組んでいる企業の多くで、マーケティング部門がその旗振り役を務めています。

ただし、カスタマージャーニーには営業部門やカスタマーサポート/サクセスなど、マーケティング以外の他部門が顧客接点となるフェーズも含まれます。そのため、他部門も巻き込んで作りましょう。
部門が違えば意見が食い違うこともあるかもしれませんが、それこそが顧客の態度変容の流れを理解するキッカケになるはずです。

Q.カスタマージャーニーで得られる効果はなんですか?

澤井 和弘

A.前述したように、カスタマージャーニーを設計することには大きく2つのメリットがあります。
 1.顧客視点で施策やコンテンツを設計できる
 2.各施策の目的や効果を関係者全員で共有できる

具体的な効果は、顧客解像度と施策の精度向上です。「とりあえず〇〇をやってみる」といった状況を抜け出し、明確な目的に基づいて施策を実行できるようになるでしょう。そのぶん、実行スピードも上がり成果も分析しやすくなります。

まとめ

才流がマーケティング戦略を立てるときは、まず「誰の、どんな課題を、どのように解決するか」を整理するためペルソナを設定し、その次にカスタマージャーニーを設計するケースが多いです。

マーケティング部門をはじめ、さまざまな部門の関係者やユーザーインタビューを実施して設計するため、顧客の購買プロセスに沿った施策を検討できるようになります。そして、成果分析にもとづく改善を重ねることで、より完成度を上げていくという流れです。

どの企業もマーケティング部門に多くのリソースはありません。
もし、カスタマージャーニーの作成や改善に助けが必要であればお気軽にご相談ください。
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監修


才流・コンサルタント
澤井 和弘

Twitter:@sawapp
求人メディア運営会社にて営業・マーケティング・新規事業の立ち上げを担当。その後、フィードフォースに入社し、マーケティングチームの立ち上げ・事業責任者などを務め、デジタルマーケティングに関するメディアへの寄稿やBtoBマーケティングに関するイベント登壇など行う。現在はBtoBマーケティング支援事業の責任者として活動を行う。

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