PMFを達成しやすい組織とは?

新規事業
株式会社才流 代表取締役社長
栗原 康太

PMF(プロダクトマーケットフィット)を達成するのは、容易ではありません。市場や顧客の理解は欠かせず、失敗して戻りながらも、粘り強い姿勢でフィットジャーニーを進まなくてはならないからです。

組織として投資し続けるためにも、誰が新規事業を担うか、組織としてどういう仕組みを作るのかは重要です。そこで本記事では、PMFを達成しやすい組織を作るための方法を解説します。

才流では成果が実証されたメソッドにもとづき、新規事業の立ち上げからPMFに至るまで一気通貫で支援しています。新規事業で課題を感じている方はお気軽にご相談ください。⇒才流のサービス紹介資料を見る(無料)

※関連記事:PMF(プロダクトマーケットフィット)達成ガイド~基礎から事例まで、新規事業を成功に導くためのコンテンツ集

新規事業を立ち上げるのは誰か?

そもそも起業や企業内の新規事業は、誰が担うと成功率が高まるのでしょうか。起業の成功条件に関する研究を紹介しているスコット・A・ショーン氏の『<起業>という幻想』(白水社)によると、以下のように整理されています。

・大学(できれば大学院)を卒業し

・ビジネスの経験が10年程度あり

・できればマネジメント経験もある人が

・その人の経験がある産業で

・成長や利益獲得を目的に創業し

・ビジネスプランを策定して

・マーケティングプランも策定し

・価格競争ではなく品質で勝負する事業で

・むやみに多角化せず

・資本金を確保し

・資金繰りに注意を払いながら経営する

この中でのポイントは、「ビジネス経験が10年程度あり」「その人が経験ある産業で」という項目です。企業内新規事業に若手が取り組んでいるというケースはよく聞きますが、この2項目を満たせていることは稀でしょう。

法人向け融資を担当している知り合いの銀行員に「独立してすぐに売上・利益を伸ばすのは、どのような会社ですか?」と聞いたところ、「前の会社でやっていたことと同じことをやって、何ならお客さんを引っ張ってきている会社は垂直立ち上げに成功していますね」という答えが返ってきました。

当社のケースを振り返っても、私が前職でやっていた領域で事業を立ち上げたことで、事前に立てた仮説を大きく外さず事業を軌道に乗せられました。

マーク・ザッカーバーグやビル・ゲイツなど、若くして大成功を収めた起業家が注目されますが、実は米国の起業家で成功確率が一番高いのは40代半ばで起業した人だといいます。VCからも資金も40代以上のベテランといえる起業家に集まる傾向があるそうです。

私たちが想像する以上に、「経験」は新規事業の成功に大きな影響を及ぼしています。

成功の鍵を握るのは「解像度」

では、経験が豊富な人が新規事業を成功に導けるのはなぜなのでしょうか。これは顧客や市場、競合、組織運営についての解像度で説明がつきます。

解像度

参入する市場や競合状況、顧客への解像度が高ければ高いほど、意思決定や施策実行の精度は高く、スピードも速くなります。

たとえば、顧客獲得のためのマーケティング活動を設計する際も、顧客解像度が高ければ、どのチャネルでどんなコンテンツをつくり、どんなメッセージを届ければいいのか明らかです。

逆に解像度が低ければ、正解にたどり着くまでに時間がかかってしまいます。

新規事業の立ち上げにおいては、以下の項目すべてに高い解像度を持てるか、にかかっていると言っても過言ではありません。

・どのような顧客ニーズに応えるか

・どのような機能をつくるか

・競合優位性をどうつくるか

・参入障壁をどうつくるか

・誰に営業するか

・営業するにあたってのリード情報をどうつくるか

・営業、マーケティング組織をどうつくるか

解像度を高める16の方法

では、解像度を高めるために、具体的にどのようなことをすればいいのでしょうか。

結論からいうと、特効薬のように解像度を飛躍的に上げるための特別な施策はありません。日々の営業活動やマーケティング活動の中で、愚直に積み重ねていく努力が必要です。既存顧客や見込み顧客を観察する、インタビューをする、業界の情報収集を行うなど、参入する市場や顧客の動向に常にアンテナを張りましょう。

取り組みやすい順に、解像度を高める16の方法を紹介します。

1.商品を自分で使ってみる

ユーザーのひとりとして、自分たちの商品を自分で使ってみましょう。商品の強みや弱み、利用しにくいポイント、利用したときの行動や感情、「お金を払って使いたい」と思えるかどうか、などを確かめます。

ただし、BtoBの商品・サービスでは、自分で使ってみるのはなかなか難しい場合もあります。その場合は、顧客の置かれている状況になりきることも有効です。たとえば、会計ソフトなどを提供するfreeeでは、社内メンバーが顧客の課題を理解するため「髪とハンコべースの経理業務」を研修で体験しているそうです。

※参考:より深い顧客理解のために。freeeのPMMが設計した「紙とハンコベースの経理業務」体験研修とは?

2.競合商品を使ってみる

競合他社の商品も、使ってみることをおすすめします。自社商品より優れている点や改善すべき点、自社商品ではなく競合商品が選ばれる理由などについて、理解を深められます。

3.インタビューをする

見込み顧客や既存顧客の生の声を、インタビューで聞きましょう。定量データでも解像度は高められますが、インタビューから得られる情報は非常に多く、組み合わせることで、より精度の高い情報が得られます。

またインタビューは一回きりで終わらせるのではなく、組織の仕組みとして定着させることが重要です。四半期に一度、半期に一度など、決まった期間ごとに実施するよう、機能開発やマーケティングの業務プロセスに組み込むのもよいでしょう。

※関連記事:見込み顧客へのデプスインタビューの効果を高める26のチェックリスト~ビザスク活用編~

4.顧客を観察する

インタビューとともに、定性調査でおすすめしたいのが顧客を観察することです。BtoC向けの商品であれば、店舗に足を運ぶ、顧客の自宅に訪問するなどが考えられます。

BtoB向けの商品であれば、

・顧客の社内で常駐・半常駐で働いてみる

・コンサルティングや研修を行う

・一部商品のみを切り売りする

・要件定義フェーズのみを受注する

など、なんらかのサービスを有料で提供しながら、顧客とやりとりをする方法が考えられます。

もしWebサービスを売っているのであれば、ユーザーテストを実施するのも効果的です。顧客がどこを見て、どこをクリックし、どこで迷うのか。リアルな様子を観察することで、改善点が見つかります。

※関連記事:ユーザーテストのやり方(準備、実施方法、分析について)

5.顧客に営業をする

とくにBtoB向け商品の場合、解像度向上に欠かせないのが「実際の顧客に営業をしてみること」です。営業する中で、顧客に刺さっている点や予算感、検討プロセスなどを把握できます。

ポイントは受注を目指し、本気で営業をすること。検討にあたって顧客がつまづくポイントや、本当にお金を払ってまで使いたいと思うのかを確認できます。

6.インタビューや商談などの録画視聴会を開催する

現場の担当者がインタビューや顧客の観察を行っても、社長や事業責任者に報告するやり方では、臨場感や情報が伝わらない場合があります。逆に、社長や事業責任者がインタビューを行う場合も、同じです。

そこで、組織として高い解像度を共有するために、録画の視聴会を開催することをおすすめします。

録画を共有するだけでもいいと思うかもしれませんが、見ない人がいたり、時差が生まれてしまったりするため、新規事業を前に進めるためのアクションが遅れる場合があります。

7.アンケートをとる

見込み顧客や既存顧客に対し、アンケートをとることも有効です。代表的なものとしてはNPS(Net Promoter Score:顧客ロイヤルティを測る調査手法)や顧客満足度アンケート、解約理由のアンケートなどがあります

以下のように、解像度を高めたい対象ごとにアンケートをとることで、顧客の心理や行動などを理解できます。

・非認知顧客

・顧客

・ロイヤル顧客

・解約客

8.ドメインエキスパートを仲間にする

特定の領域またはトピックの情報に優れ、その分野に対して精通している人物のことを「ドメインエキスパート」といいます。ドメインエキスパートを組織内に迎えることで、解像度を引き上げる方法も有効です。

9.ペルソナを作成する

社内でペルソナを明確にすることも有効です。ペルソナとは「商品を実際に使ってくれるであろう典型的なユーザー像」のこと。

ペルソナ
ペルソナの例

ペルソナを持っていることで、顧客のニーズを満たすように商品を設計したり、顧客の情報行動・購買行動に沿うように、自社のマーケティング戦略を設計したりできるというメリットがあります。

逆にペルソナを持たずに商品開発や新規事業の立ち上げを進めてしまうと、社内の意見がまとまりにくかったり、各部門・各人がばらばらの取り組みをしてしまったり、全体の効率が著しく下がってしまいます。ペルソナは社内の共通言語となり、戦略や施策全体の指針にもなるのです。

ペルソナを作成する際は、妄想ではなく、定量・定性調査を駆使し、根拠を持って作るように心がけましょう。

ただし、PMF前の商品では、ペルソナ作成に時間をかけすぎないように注意が必要です。仮説検証の段階では、頻繁に自社の状況や対象の市場、顧客が変わる可能性もあるからです。

10.カスタマージャーニーマップを作成する

ペルソナに加えて、カスタマージャーニーの作成も有効です。カスタマージャーニーとは、「顧客が購買に至るまでのプロセス」を旅にたとえて表現したもの。それを図に表したのがカスタマージャーニーマップです。

カスタマージャーニー
カスタマージャーニーの例

顧客が日々どのような業務を行い、どのような課題を抱えているのか。課題解決にまつわる商品をどのように認知し、興味を持ち、理解・検討し、購買に至るのかを記述することで、顧客への解像度を高められます。

11.顧客の声を収集する

Webからの問い合わせや商談、カスタマーサポート、SNS上の口コミなどで、顧客の声を拾えることがあります。顧客の声は社内に展開し、組織内で共有しましょう。

たとえば、マーケターはリード獲得などのオペレーションをこなすだけでなく、顧客ニーズや顧客に刺さった訴求を組織にフィードバックする。営業は売るだけでなく、顧客に刺さった訴求を組織にフィードバックする。

そうすることで、組織全体として解像度が高まり、PMFまでの道のりを短縮できるはずです。

12.受託する

顧客から何らかのプロジェクトを受託することで解像度を高める方法もあります。顧客からしっかりと対価を受けてサービスを提供するため、顧客の悩みや業務プロセス、業界構造などを深く理解する機会となるでしょう。

13.リリースしてみる

受託に近い方法として、商品を早々にリリースしてしまい、実際のプロモーション活動、商談、受注・失注、納品などを行ってみることで、解像度を高めていく方法もあります。

「百聞は一見に如かず」といいますが、顧客に話を聞いてわかった気になるのではなく、自分の目で見る方法ともいえます。

14.社内の意思決定者が定期的に顧客と会う

何事も「経営トップのコミットメントが重要」という話はよくいわれますが、新規事業の立ち上げで解像度を高める際にも効いてきます。経営者や事業責任者など、意思決定者が定期的に顧客と接点を持つことは極めて重要ですが、実際に実行できている企業は稀ではないでしょうか。

15.解像度向上に責任を持つ人や部署を置く

インタビューや行動観察、アンケートなどで解像度を上げる重要性は理解しつつも、経営トップや現場担当者も通常業務に追われ、なかなか手が回らない場合もあるでしょう。その際は、解像度を上げることにコミットする人物や部署を組織内に置くこともおすすめです。

16.失敗事例も共有する

解像度の重要性を組織に根付かせるためには、顧客視点や顧客理解をおろそかにしてしまい、痛い目にあった失敗経験を共有するのも良いでしょう。

たとえば、以下のような失敗事例です。

・自分たちの想いが先行し、顧客視点が欠如。結果、大赤字になってしまった新規事業

・長期間の開発期間を経て、自身満々でリリースしたが、無風に終わってしまった機能開発

・新しい技術の採用に気を取られ、顧客にとっては使いづらくなってしまった商品

そもそも、顧客視点や顧客理解、解像度という概念を学んだことがある人はほとんどいません。事例を共有することで理解が深め、組織に顧客視点の重要性をインプットすることが重要です。

まとめ

新規事業を立ち上げたものの、組織の中で制約があり、なかなか軌道に乗せられないという方は少なくありません。

・ターゲットが絞りきれず、勝ち筋が見つからない

・なかなか追加予算や開発もできない

・売上目標だけは会社から決められているのに、打ち手が増やせない 

こうした状態では、どんなに現場の担当者が奮闘しても、PMFに至るのはなかなか難しいでしょう。組織として参入する市場、顧客、顧客の課題やニーズ、競合に対して解像度を高めることで、正しい判断ができ、正しい投資が行えるようになります。

新規事業を立ち上げる際には、解像度を高め、社内で情報を共有できる仕組みをぜひご検討ください。

才流では成果が実証されたメソッドにもとづき、新規事業の立ち上げからPMFに至るまで一気通貫で支援しています。新規事業で課題を感じている方はお気軽にご相談ください。⇒才流のサービス紹介資料を見る(無料)

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