ポジショニングマップとは、市場における自社製品のポジションを競合他社と比較して、視覚的に示した図です。
ポジショニングマップは、以下のような場合に役立ちます。
- 競合他社との差別化ポイントを明確にしたい
- 自社の優位性を投資家または社内への新規事業プレゼンテーションで示したい
- マーケティング戦略を立てたい、または再考したい
今回、ポジショニングマップを自社のビジネスで作成・活用しやすいように「ポジショニングマップテンプレート」を用意しました。テンプレートには、KBF比較表とポジショニングマップの2つのスライドが入っています。
KBF比較表に自社および他社の情報をまとめ、ポジショニングマップに落とし込むという順でご活用ください。
※KBF:ケービーエフ/Key Buying Factorの略称。購買決定要因、顧客が製品を購入する決め手となる要素。
■ポジショニングマップのスライドテンプレート(Googleスライド)を開く
■ポジショニングマップのスライドテンプレート(PowerPoint)をダウンロードする※個人情報の入力は必要ありません。クリックするとファイルがダウンロードされます。
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ポジショニングマップとは?
冒頭でも述べたように、ポジショニングマップとは、市場における自社製品のポジションを競合他社と比較して、視覚的に示した図です。異なる2つの軸(詳しくは後述)のマップ上に自社と競合他社を配置することで、自社のポジションを明確にします。
ポジショニングマップによって自社の優位性、他社との差別化ポイントが明確になると、マーケティング施策が立てやすく、ターゲット顧客に想起されやすくなります。
STP分析で自社のポジショニングを定める
ポジショニングを決めるための有効なフレームワークに「STP分析」があります。
①セグメンテーション(Segmentation)
②ターゲティング(Targeting)
③ポジショニング(Positioning)
上記3つの頭文字を取って名付けられたSTP分析は、自社のポジションを明確にするだけでなく、ターゲット顧客の解像度を高めるために欠かせません。
それぞれのパートについて簡単に解説しましょう。
①セグメンテーション
セグメンテーションとは、市場を分けることです。主に以下の軸で市場を分けます。
【BtoCの場合】
・人口統計軸(年齢、性別、職業、家族構成、学歴 etc.)
・地理的軸(地域、都市規模、人口密度 etc.)
・心理的軸(価値観、嗜好性 etc.)
・行動面の軸(購買頻度、追求する便益 etc.)【BtoBの場合】
・人口統計軸(企業規模、売上高、日本標準産業分類 etc.)
・組織のタイプ軸(メーカー、病院、農家 etc.)
・地理的軸(立地、地域 etc.)
・製品の種類軸(SaaS、部品メーカー、原材料メーカー etc.)
・購買状況のタイプ軸(本社一括発注、事業部ごと発注 etc.)
・調達先忠実度軸(供給業者の変更の頻度)
・互恵性軸(互いに購入する関係、または一方的に買うだけ)
参考:沼上幹『わかりやすいマーケティング戦略』より一部修正して掲載。
②ターゲティング
ターゲティングでは、セグメンテーションによって細分化した市場の中から自社が狙うべき市場を絞り込み、ターゲット顧客像を明確にします。その際、市場の選定基準として「6R」と呼ばれるフレームワークを活用しましょう。
ターゲティングの選定基準「6R」
市場規模 (Realistic Scale) | 市場規模が適切かどうか? 十分な規模があるかどうかはもちろん、大きすぎると競合が多い可能性がある点に注意。 |
成長性 (Rate of Growth) | 市場の成長性はあるか? 現在の市場規模は小さくても高い成長性が見込めるならば、 候補として検討すべき。 |
競合状況 (Rival) | 競合が多くないか? 一般的には競合が少ない方が好ましく、競合が多い場合は自社の強みを活かせることが重要となる。 |
優先順位 (Rank) | 自社製品が顧客にとって優先順位が高いものか? 顧客層の興味関心度が高いほど、市場においても注目を集めやすくなる。 |
到達可能性 (Reach) | 顧客へ的確にアプローチできるか? 製品・サービスの提供が可能かどうかだけでなく、宣伝が届くかどうかも判断材料となる。 |
反応の測定可能性 (Response) | アプローチした効果を測定できるか? 効果測定ができないと、成果を把握できないだけでなく、改善施策が実行できない。 |
③ポジショニング
セグメンテーション、ターゲティングから導き出した市場において、自社のポジションを決定します。自社のポジションを視覚的に把握するために、ポジショニングマップを描きます。
ポジショニングマップの作り方
それでは、具体的にポジショニングマップの作り方をテンプレートに沿って解説していきます。
ポジショニングマップは、KBF比較表を作る⇒マップに落とし込むという流れで作成します。
■ポジショニングマップのスライドテンプレート(Googleスライド)を開く
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1. KBF比較表を作る
まずは、KBF比較表を作ります。
KBF(購買決定要因)がわからない場合は、既存顧客や見込み顧客に「選んだポイントは何ですか?」「購入する際はどういったことを重視しますか?」など質問してみましょう。KBFを抽出する調査方法として、インタビューやアンケートは非常に有効です。
KBF比較表は下記の5つのステップで作成しましょう。
【KBF比較表を作成するための5ステップ】
①市場・顧客を調査する
②ターゲット顧客のKBFを書き出す
③KBFの優先度を評価する
④自社・他社を書き出す
⑤KBFに対する各社の現状評価を行う
市場・顧客の調査では先述した「STP分析」をS→Tと順に行いますが、このときに重要となるのが顧客理解を深めることです。インタビューやアンケートはもちろん、顧客に製品を使用してもらって実際の行動を観察するユーザーテスト、競合他社の導入事例の分析など調査方法は多岐にわたります。調査方法ごとに得られた結果をまとめ、ニーズごとにペルソナを設定しましょう。
市場・顧客の調査によってターゲット顧客からさまざまなKBFが洗い出されますが、インタビューを通じて顧客からよく言われるものほど優先度は高いと判断できます。KBFの優先度は主観ではなく、客観的に評価するようにしましょう。
顧客理解と市場(競合)の調査方法については以下の記事で詳しく解説しています。
※関連記事:
BtoBマーケティングで重要な「顧客理解」を深める12の方法
競合分析テンプレート‐BtoB企業向けにまとめ方やツール、分析の観点を解説
上記の5ステップが完了すると、下の参考例のようなKBF比較表が完成します。
※ターゲットの重点評価の優先度は、◎→◯→△→×という順で評価しています。
2.ポジショニングマップに落とし込む
作成したKBF比較表の中から2つのKBFをマップの軸に設定して、各社のポジションをプロットしましょう。
【KBF比較表をポジショニングマップへ落とし込むまでの3ステップ】
①KBF比較表の中からKBFを2つ選んで軸に設定する
②軸の両端に説明を記入する
③自社・他社をマップ上にプロットする
ポジショニングマップはKBFの数だけ組み合わせがあります。例えば、KBFが3つある場合は3種類のポジショニングマップ(A・B・CのKBFがあった場合、A×B、A×C、B×Cのマップ)ができます。
ポジショニングマップの軸に設定するKBFは、ターゲット顧客が最も重視するもの(購買の決め手となるもの)、競合他社よりも強みを活かせるものを選ぶのが基本です。
また、2つの軸は完全に独立しているのが理想です。「価格」と「品質」のように、相関性の高い要素を軸にしてしまうと、全ての会社(製品)が右肩上がりにプロットされるような偏った配置のポジショニングマップになるからです。
なお、設定すべきKBFは市場における自社の立ち位置(競争地位)によって変わる場合もあります。※詳しくは後述
3.リポジショニングを検討する
ポジショニングマップを作成すると、自社のポジションが競合他社の中に埋もれてしまうことがあります。その際は、リポジショニングを検討しましょう。
リポジショニングとは、自社製品をその特長がより際立つ位置に移動させることです。
ただ、リポジショニングはマップ上では簡単ですが、実際は製品やサービス、現場のオペレーションなどを変更する必要があります。「言うは易し行うは難し」の施策です。
とはいえ、顧客から自社製品を選んでもらうためには必要な作業。リポジショニングを考える際は、当初のポジショニングマップでは軸として選ばなかったKBFを軸に設定することで新たな発見(視点)を得られる可能性があります。
よくある質問と回答
才流のコンサルタント野田がお答えします!
Q.比較表で記載する競合は直接競合だけですか?間接競合も含みますか?
競合の範囲は、市場によって異なります。
分かりやすいようにBtoC市場を例に説明しましょう。例えばコカ・コーラは、コーラ市場ではペプシコーラやダイエットコーラが競合になります。しかし、ソフトドリンク市場ではそれらに加えて、お~いお茶やポカリスエットなども競合になります。
つまり、市場を決める際のセグメンテーションとターゲティングによって競合は変わってくるのです。
Q.ポジショニングマップの完成の基準は何でしょうか?
極論、ポジショニングマップには完成がありません。なぜなら、市場および競合他社は日々変化しているからです。今日作ったポジショニングマップが1週間後には変化していることも十分考えられます。ポジショニングマップは完成を目指すのではなく、ある程度できた段階で、それを元にマーケティング戦略を練りましょう。
Q.軸を決めるのが難しいです。どのような軸がいいでしょうか?
ターゲット顧客が重視するKBF、自社の強みを活かせるKBFを軸にするのが基本ですが、市場における自社の立ち位置(競争地位)も関係してきます。
市場においてトップシェアを持つ「マーケット・リーダー」、もしくはトップシェア奪取を目指す「マーケット・チャレンジャー」であれば、顧客から重要とされるKBFを軸にしましょう。自社のウィークポイントを発見、改善するのに効果を発揮します。
対して、マーケットシェアは小さくても独自の地位を獲得したい「マーケット・ニッチャー」であれば、自社の差別化ポイントが際立つような軸を設定するのがいいでしょう。市場のシェアではリーダーに敵わないまでも、1つもしくは2つの分野で圧倒的に勝利するために、自社のストロングポイントをより伸ばすのに効果を発揮します。
また、新市場の場合は顧客のKBFがまだ明確になっていないことが多いため、見込み顧客へのインタビューを参考にしながら、一旦は仮説ベースで軸を決めるのもいいでしょう。
Q.ポジショニングマップとパーセプションマップはどう違うのでしょうか?
端的に言うと、ポジショニングマップは企業側目線、パーセプションマップは顧客側目線でのポジションを示した図ですが、弊社では以下のような認識をしております。
- ポジショニングマップ ⇒ 顧客の目線で選定した軸の上に、企業側の認識(性能などの事実情報)でプロットしたポジション
- パーセプションマップ ⇒ 顧客の目線で選定した軸の上に、顧客側の認識(イメージ)でプロットしたポジション
ポジショニングマップを作る際の注意点
ポジショニングマップは「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」と順を追って、ひとつひとつ取り組んでいく必要があります。
注意したいのはセグメンテーションの軸とポジショニングの軸(KBF)が混在したポジショニングマップになっていないかということです。
例えば、「年商規模(大⇔小)」×「実績(豊富⇔少ない)」を軸にした場合、年商規模はセグメンテーションの時点で絞り込まれているべき事項であり、ポジショニングマップの軸(KBF)にはなりえないのです。
そのようなポジショニングマップは、事業戦略としては活用できますが、マーケティング戦略を考える上では、顧客視点が欠如しているため活用できません。
ポジショニングマップを作成する際は、重要かつ適切なKBFを軸にすることを第一に考えましょう。
本記事で紹介したポジショニングマップテンプレートがマーケティング戦略を考える一助となれば幸いです。
才流では成果が実証されたメソッドにもとづき、新規事業の立ち上げからPMFに至るまで一気通貫で支援しています。新規事業で課題を感じている方はお気軽にご相談ください。⇒才流のサービス紹介資料を見る(無料)
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