「仕組みづくり」したのに、まだ忙しい人
経営層やマネージャークラスになると、意思決定することや見る範囲が増え、「常に忙しい」と感じている人は多いだろう。
リーダーが常に忙しいと未来に対する動きができなくなり、人材育成やメンバーとのコミュニケーションなどに当てる時間も減ってしまい望ましくない、とはよく言われる。しかし、自分がいなくても回るよう「メンバーに仕事を任せる」「仕組みを作る」という打ち手を取ったとして、継続的に楽になった人はどれぐらいいるだろうか?
一時期、楽になっても、しばらくすると猛烈に忙しい状態に逆戻りするケースは多い気がする。
リーダーは未来を描くことが仕事であり、現場は部下に任せ、仕組みを作っていく必要性があることは誰もが口にしている。しかし、実践できているリーダーは驚くほど少ない。頭でわかっていることを実践に移せないのは、何らかの理由があるはずだ。今回は、なぜ、そんなことが起こってしまうのかを考察してみたい。
なぜ、人に仕事を任せられないのか?
僕自身、昨年末も、昨月もものすごく忙しかった。
かつ、残念なことに僕が死ぬほど忙しいのは今回に限ったことではなく、昨年も一昨年も、もっと言うと新卒で入った会社で1年目の時からずっと忙しかった。ワーカーホリックであることを差し置いても、望まないほど忙しく、しょっちゅう、上司や周りのメンバーに相談し、タスクの棚卸しをしていた記憶があるw
「常に死ぬほど忙しい」というパターンになっているな……とようやく気づき、このパターンを引き起こす要因を当社の顧問と話していた。その中で、「目の前の人より、自分が優れてると考えている限りは、人に仕事を任せられないよ」という衝撃的なフィードバックをもらった。
「周りが未熟過ぎて、任せられない」は本当か?
「他人より自分のほうが優れている」と思う経営者、意思決定者は珍しくないだろう。
自分の能力や実績に自信を持つのは、良いことだ。だが、それが過剰になると、能力的に劣る(と認識している)他人に仕事を任せられなくなる。任せたとしても、途中で介入したくなる。結果、部下はいつまでも経験を詰めず成長できなくなり、余計に任せられなくなってしまう。すると、本人に仕事が集中し、死ぬほど忙しくなる……というパターンになる気がする。
過去に一緒に仕事をしてきた人を思い出すと「忙しい、忙しい」が口癖の人は、「自分は他人より仕事ができる。優秀な人間だ」というアイデンティティを強く持っていた印象がある。
彼らは、「周りのメンバーが未熟過ぎて、仕事を任せられない」と口にし、社内・社外への責任を果たすために、自分が仕事を巻き取る必要がある、と語っていた。しかし、傍目に見て、その人が言うほど、周りのメンバーの能力は低くないし、普通に大丈夫そうなのに。。という印象だった。
逆に、過去に一緒に仕事をした余裕のあるリーダーを思い出すと、「自分は○○はできるけど、●●は不得意」、「Aさんは、こういうところがすごい」と自分の能力を客観的に評価し、一緒に働く部下の能力も的確に把握し、仕事を割り振っていた。
彼ら/彼女らのもとでは、部下は場数が多い分、成長スピードが早く、徐々に仕事を任せられる人材に育つ。結果、リーダー本人は次の事業の立ち上げや仕組みづくり、人材育成など、未来への投資に時間を使えるようになっていた。
顧問とのディスカッションを経て、「任せられなくなる」メカニズムを理解できた。
このメカニズムを理解してから、自分自身が仕事の場面で、いかに無用に仕事を奪いに行ってるかに気づいて、背筋が凍った。徐々にではあるが、「自分の優秀さを顕示したい」という欲を手放し始めてから、周りに各領域の一流選手が集まってくれるようになって、これがチームの力か……!と30歳目前でようやく実感している。笑
過度に忙しい・・と感じている経営層やマネージャーは、自分が誰よりも優秀だと思っていないかについて考えてみるのは良いと思う。一緒に働く仲間の能力を認めて仕事を任せることによって、自分自身が楽になれるし、周りの人も才能を発揮しやすくなって、みんなにとってハッピーになる。
これとは全く逆に、自己認識が低く、自己承認欲求が強すぎる場合も、自分が認められるために、過度に仕事を巻き取ってしまい、常に忙しい状態に置かれる、というパターンもありそう。それはそれで別の機会に考察してみたい。