2020年頃から、リアル開催の展示会はコロナ禍により大きな打撃を受けました。しかし、本記事を執筆している2022年7月時点。コロナ以前の水準まではいかなくとも展示会来場者数は戻りつつあります。
才流(サイル)には展示会に関するご相談も増えてきており、2022年5月に初出展されたお客さまは3,000件以上のリード獲得を達成されました。出展を迷っている企業は多いと思いますが、認知を拡大したい時期や、多くのリードを獲得したい場合にはやはり有効な施策といえるでしょう。
そこで本記事では、展示会出展をスムーズに進め、成功へ向かうためのテンプレートとその利用方法について解説しました。
才流では「展示会で成果をあげたい」「展示会から受注したい」でお困りの方に130ページ超え、展示会の基礎知識から立ち上げ手順まで学べるガイドブックを無料で提供しています。展示会でお困りの方はぜひご活用ください。⇒『BtoB企業の展示会出展ガイドブック』を無料ダウンロードする(10点以上のテンプレート付き)
展示会計画・出展準備テンプレート(Excel形式)をダウンロードする
※個人情報の入力は必要ありません。クリックするとファイルがダウンロードされます。
テンプレートに含む内容
以下の4つをテンプレートとして提供しています。
- 出展候補選定
- 投資対効果試算
- マスタースケジュール
- チェックリスト
本記事は、再現性の高い展示会ノウハウを提供する株式会社展示会営業マーケティング代表取締役社長の 清永 健一さまに監修いただきました。
1.出展候補選定シートの使い方
はじめに、テンプレートの出展候補選定シートの使い方を解説します。このシートは、「どの展示会に出展するべきか」を決定するために利用するものです。
展示会候補の探し方
出展する展示会候補を探す方法は、大きく以下の2つに分類できます。
1. 自社の商品・サービスが所属するカテゴリー、業界の展示会
2. ターゲット業界の来場者が集まる展示会
くわしくは、以下の記事でも解説しています。
※関連記事:展示会の選び方 BtoB展示会完全攻略ガイド(SmartHR社の事例付き)
展示会の様子を動画付きで確認したい方は、以下の記事も参考になります。出展したい展示会を検索しすれば、当日の様子を見ることができます。
※関連記事:展示会営業マーケティング「展示会レポート」
基本情報
候補の選出後は、A列「展示会名」からG列「終了日」までの基本情報を記載します。
開催エリアや会場は、あうものがなければ「マスタ」のシートで項目を追加してください。
展示会の来場情報
H列「前回来場者数」とI列「主な来場ターゲット(業種、職種)」の欄も記載しておきましょう。これらは該当展示会を主催する会社のWebサイト、あるいはJETROの「世界の見本市・展示会情報」ページで確認できます。
ただし、2020年~2022年はコロナ禍の影響により、展示会自体の開催中止や来場者が通常より激減しているケースもあります。2018年~2019年の情報も確認しておきましょう。
J列「フリーコメント」には、そういった内容や展示会レポートを見た所感、競合の来場動向を記載してください。出展を判断するときに役立ちます。
優先度の判断
K列「出展優先度」には、以下の3つのプルダウンを用意しました。いずれかを選択してください。
- 1:出展必須
- 2:展示会に注力するなら検討
- 3:余力があれば
2は、「リード数を一気に増やしたい」「認知を拡大したい」という年度に出展を前向きに検討するべき展示会です。展示会は出展準備や予算、準備リソース、当日のリソースを含めて、かなりの労力を使います。その年の狙いに合わせて、2に出展するかどうかを判断しましょう。
「優先度の理由」については、来場者の属性や展示会レポートなどから得られた情報を記載しましょう。
2.投資対効果試算シートの利用法
投資対効果試算シートは、展示会に出展する投資対効果を事前にシミュレーションできるものです。グレーのセルの数値を編集して使ってください。なお、本テンプレートには4小間程度(6m×6m規模)で出展する場合を想定して、項目や金額の例を記載しています。
各金額は展示会や利用する業者、内容に寄っても変動するため、必ずしもこれが正しい相場ではありません。あくまでも参考値としてご覧ください。
※万が一、各サービス提供企業で「この金額は語弊を招く」という懸念があれば、こちらよりご連絡ください。検討のうえで対応します。
獲得目標、想定商談化率、想定商談件数の計画
獲得目標には「名刺・バーコード」「ヒアリングシート」の件数目標を記載し、それぞれからの想定商談化率も入力しましょう。自動的に「想定商談件数」が算出されます。
「ヒアリングシート」は、ブース内で説明員が来場者と面談する際の記録用のシートです。
「獲得目標」の設定方法は参考値を欄外に記載しておきました。「想定商談化率」は自社の実績から想定して設定しましょう。迷った場合は、以下の記事で紹介した目標設定方法もご覧ください。
※関連記事:目標設定・BtoB展示会完全攻略ガイド(SmartHR社の事例付き)
「名刺・バーコード」はターゲット外のリードや、検討タイミングではない顧客も多く含まれるため、通常の営業活動の商談化率よりは低めに設定するのが望ましいです。「ヒアリングシート」は説明員と話をしても良いと考えた顧客なので、通常の訪問からの商談化率と同程度で設定して問題ないでしょう。
出展費用明細
21行目からは、出展に必要となる費用を記載します。金額の合計はC5セルに自動集計されます。
一般的な項目は記載しておきましたが、以下もあわせて参考にしてください。
※関連記事:展示会予算の立て方・BtoB展示会完全攻略ガイド(SmartHR社の事例付き)
※万が一、「この金額は語弊を招く」という懸念があれば、こちらよりご連絡ください。検討のうえで対応します。
投資対効果(獲得)(受注)の確認
獲得目標と出展費用の概算がそろったら、投資対効果(獲得)(受注)の2点を確認します。
投資対効果(獲得)
名刺と商談の獲得単価を試算します。以下の式で算出しています。
- リード獲得単価 = 出展費用 ÷ 名刺・バーコード獲得目標
- 商談獲得単価 = 出展費用 ÷ ヒアリングシート獲得目標
厳密には出展費用を按分したほうが良いですが、「按分比率の決定が難しいこと」と「わかりにくくなること」の2点から、それぞれ同じ金額を設定しています。意思決定の参考値にする目的としてご理解ください。
名刺獲得単価は商材や展示会規模にもよりますが、社内人件費抜きで5,000円以下になっていればかなり良いと考えられます。実態としては1万円以下でも、他のマーケティング施策と比べてコストパフォーマンスは良いため、許容する企業も多いです。
商談獲得単価は商材によってかなり異なるはずです。自社のビジネスに合わせて確認してください。
これらの投資対効果を見て、獲得単価が合わないと判断された場合は、獲得目標を高く設定しなおす、費用を見直すなどの調整を行いましょう。
投資対効果(受注)
展示会から発生した「商談からの受注率」と「商材のLTV」を設定して、投資対効果を確認します。「商談からの受注率」は、展示会出展から1年で受注に至る想定で設定します。
LTV(Life Time Value・ライフタイムバリュー)は顧客生涯価値とも言われ、1顧客が生涯にわたって生み出す粗利の合計のことです。くわしい算出方法については以下を記事もご覧ください。
※関連記事:LTV・CACの計算方法とよくある質問への回答
「商談からの受注率」「商材のLTV」の2つを設定したら、展示会からの受注件数と投資対効果を算出できます。
本シートでは、LTV150万円の商材を例に、以下のように算出できました。
- 商材:LTV150万円の商材
- 費用:570万円
- 受注:34件
- 投資対効果:873.6%(約9倍)
十分に出展費用の元がとれる計算となります。
投資対効果に関する注意点
投資対効果については様々な議論があるため、Q&A形式で補足します。
Q.社員の人件費は加味しなくていいの?
A.本来考慮するべきです。本記事でご紹介したテンプレートでは簡易化して割愛しているため、より正確に計算する場合は準備にかかる工数・当日ブースに立つスタッフの工数・フォローにかかる工数なども加味して計算してください。
ただし、毎回試算すると時間がかかり過ぎます。一度概算を出して、「人件費抜きで投資対効果5倍以上ならOK」などの目安を自社で持っておくと判断しやすくなります。
Q.今年はリード数を一気に増やす計画です。受注件数をベースに展示会単位で投資対効果を見るべきでしょうか?
A.本来見るべきです。ただし、年間でのリード獲得件数を目標にしているケースでは、展示会出展成果を名刺の獲得数と獲得単価で見ている企業も少なくありません。
※関連記事:BtoB展示会完全攻略ガイド(SmartHR社の事例付き)
3.マスタースケジュールシートの利用法
マスタースケジュールシートは、展示会出展へのスケジュール管理に利用してください。展示会の申込みは、1年前〜半年前に行うのが一般的です。
実際の出展準備は出展規模にもよりますが、会期3~4か月前頃から着手することが多いでしょう。その前提をもとに、準備する内容と検討開始、終了の期間を設定しています。
B3セル「開始日」を変更すると日付が変更されるので、出展する展示会に合わせて入力してください。ただし、祝日は反映されないので注意してください。
また、テンプレートでは7/11週の展示会を想定したスケジュールを記載しているので参考としてご覧ください。
4.チェックリストシートの利用法
マスタースケジュールを踏まえ、各準備カテゴリにおいてチェックするべきポイントをチェックリストシートに用意しました。
完了した内容にチェックを付けたり、メモを残せたりできるようにしています。
その他よくある質問
Q.支援会社の選び方はありますか?
A.依頼したい業務の範囲で変わってきます。
「企画から提案してほしい」「チラシやノベルティなどの対応もまとめて依頼したい」という場合は、イベント系代理店やマーケティング支援会社を選びましょう。
代理店や支援会社への依頼は多少割高にはなるものの、企画の幅が広がり手配の工数も軽減できます。社内リソースが限られていたり、初出展の企業にはおすすめです。
ブース装飾の依頼が中心で、他の内容は自社内で準備を進められる場合は、ブース装飾会社へ必要な部分のみの依頼で問題ないでしょう。
Q.準備の社内体制はどのようにすればよいですか?
A.メインの展示会担当者となる、1名分のリソースは確保してください。支援会社やブース装飾会社、展示会運営会社とのやり取りを行う窓口になる社員が必要だからです。
展示会準備につきっきりである必要はありませんが、会期前3~4か月前は負荷がかかります。
また、出展製品に関する情報を提供する方、チラシやパネルの原稿を用意いただく方、プレゼンやセミナーを担当する方などが一定必要になりますが、メインの展示会担当者から各適任者へ随時依頼する方法で問題ないでしょう。
大規模な小間で出展する、多くの部門が関わるという場合は、3か月前頃〜隔週or月次で定例ミーティングの時間を設け、主要な議題の検討や意思決定をしてください。
部門横断的なプロジェクトチームを結成することもおすすめです。具体的には営業部門やマーケティング部門だけでなく、設計・開発、製造、購買、総務経理などを巻き込んだ5名~10名程度のチームを組成します。
そのうえで、毎週ミーティングをしながら、出展コンセプト、ブース装飾、フォローの仕掛けなどを部門を越えて検討しましょう。コミュニケーション量が増え、副次的効果として組織の活性化も目指せます。
Q.当日は何名の社員がブースに立てばよいですか?
A.展示会の運営を見る方と、顧客対応する説明員の2種類に分けて考えます。
展示会の運営を見る方は、メインの展示会担当者がよいでしょう。最低でも1名は必要です。前日準備から必須で参加してください。初出展の企業や、初めて展示会業務をメインで担当する方の場合は、会期中は毎日会場にいることをおすすめします。
一方、ブース内で顧客対応する説明員は、獲得目標としたヒアリングシートの数で体制・人数を決定します。本テンプレートの300件を例にすると、以下のように試算できます。
- 3日間の展示会として1日100件獲得
- 休憩考慮して6時間稼働と想定したら1時間あたり約17件
- 1名が接客できる件数は、顧客あたりの接客時間(面談結果の記録など含め)10分として1時間あたり6件
- 17件÷6件≒3名/時間(余裕を見る場合は4名)
3名が必ず同じ時間にブースへ立てるよう、シフトを組んで対応します。できれば1日単位で同じスタッフが入ることが望ましいものの、難しい場合は午前と午後に分けて担当するケースもあります。
なお、複数商材を出展していて、説明員として担当できる商材が異なる場合は、そちらも考慮してシフトを組むようにしてください。
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監修
清永 健一 氏
展示会やオンライン展示会を活用した売上アップの技術を伝える専門家。売上サポート実績は1,300社、これまでに見た展示ブースは53万社を超える。
NHKラジオ総合で展示会の未来について言及するなど、展示会業界活性化にも尽力。テレビ等出演のほか、行政、公益法人、金融機関などで講演多数。
著書に、『最新版 飛び込みなしで新規顧客がドンドン押し寄せる展示会営業術』『中小企業のDX営業マニュアル~オンライン展示会営業術~』他7作。