
成果につながる営業資料・サービス紹介資料の改善プロセス
今回の「SAIRU NOTE」では営業資料(およびサービス紹介資料)の改善プロセスをご紹介します。
見込み顧客のサービス理解を後押しする営業資料。資料請求や初回商談、顧客内での回覧の際に、主にホットリードを商談や提案に繋げる役割を果たします。また、営業資料の構成は初回商談の進め方を規定するため、その内容や流れが商談の質を左右します。
案件や商談の推進に欠かせない重要コンテンツですが、営業企画やセールスイネーブルメントなどの役割は浸透しておらず、営業資料の改善に腰を据えて取り組めている企業は多くありません。弊社のお客様でも、Webサイトや広告クリエイティブの改善に注力する一方、営業資料は「数年前に作ったまま」「継ぎ足しで抜本的な改善はできていない」という企業がほとんどです。
弊社ではそのようなお客様に営業資料改善をご支援しており、多くの場合、商談化率や案件化率(提案率)の改善、新入社員の立ち上がり早期化などの効果が見られます。本記事ではこうした取り組みの中で体系化した営業資料改善に効果的なプロセスをまとめました。
営業資料・サービス資料見直しの参考にしていただけますと幸いです。
目次[非表示]
営業資料改善のプロセス
はじめに営業資料改善のプロセスの全体像をご説明します。以下の図のとおり、大きく4つのステップで進めます。
- 顧客からのフィードバックを得る
- サービス説明のシナリオを見直す
- 資料の構成を見直す
- デザインを見直す
営業資料の読み手・聞き手である顧客視点で課題を抽出し、それを起点にシナリオ・構成を見直し、デザインでわかりやすさを担保するプロセスです。
このプロセスの進め方についてひとつずつご説明していきます。各プロセスを進める際のツールやフォーマットもご紹介しますのでぜひご活用ください。
1. 顧客からフィードバックを得る
顧客からフィードバックを得るべき背景
みなさんの会社で営業資料作成の中心を担うのは誰でしょうか。多くの場合、サービス開発者や営業責任者、事業責任者など商材に最も詳しいメンバーの監修のもとで作成しているかと思います。
商材に詳しい人は商材の良さを熟知しているため、顧客にアピールしたいアイデアが豊富です。自社が伝えたい商材の良さを網羅的に表現することができます。
一方で、問題になるのが「顧客にとってのわかりやすさ」や「顧客が求める情報の網羅性」です。商材に詳しい人は、どうしても伝えたいことを中心に資料を作成してしまい、顧客が知りたいこととはズレた内容になりがちです。
また、こだわりの機能を伝えたい思いから機能説明がメインになったり、自身が商材について詳しすぎるがために「一般的にわかりやすい表現なのか」を判断できなくなったりします。
こうした背景から、営業資料は顧客にとってわかりにくく、顧客が知りたい情報を端的に得られないものになりがちです。営業資料作成の中心には顧客を置くべきであり、まずはじめに顧客からフィードバックを得ることが重要です。
顧客からフィードバックを得る方法
では、具体的に何をすれば良いでしょうか。おすすめするのは、見込み顧客に対する模擬商談です。実際の顧客に近い属性の方に対し、既存の営業資料やラフ案をもとにサービス説明を行い、直後にフィードバックを得る方法です。
模擬商談の利点は、通常の営業活動では得られないフィードバックが得られる点です。
営業活動の中で顧客が商材に対する評価を口にすることはありますが、営業資料や商談の進め方について言及することは稀です。このため、営業資料の良し悪しは営業担当者が自身で振り返るしかなく、第三者の評価を得にくい傾向があります。
一方で、見込み顧客に対する模擬商談では、実際の顧客に近い視点から営業資料や商談の流れについて率直なフィードバックを得られます。「もっとここが知りたかった」「ここは関心事ではないので不要」など、顧客側が得たい情報が明確になります。
また、模擬商談によって得た課題は自社内で共有しやすいことも利点です。個々の営業担当者の課題感を集約するよりも客観的で、組織として改善の方向性を定めやすくなります。
模擬商談の進め方
次に模擬商談の具体的な取り組み方をご紹介します。実際に取り組む際に活用できるツールもご紹介しますので、ぜひご活用ください。
資料の用意
まず、既存の営業資料を用意します。新規商材の場合には企画書や営業資料のラフ案を準備してください。ラフ案を新規作成する際は、弊社の営業資料フォーマット・提案資料フォーマットをご利用ください。
参考情報:営業資料の作成と改善に役立つテンプレート
参考情報:提案資料の作成と改善に役立つテンプレート
見込み顧客の募集
次に、ビザスクなどのスポットコンサルティングサービスで見込み顧客に該当する人材を募集します。たとえば、経費精算システムの営業資料であれば、経理部やIT部門での購買を主導した経験がある方を探します。
見込み顧客を探す方法は「顧客理解を深める12の方法」にまとめていますので参考にしてください。
模擬商談の実施
見込み顧客が見つかったら、1時間程度のインタビュー時間を設定し、用意した営業資料の流れに沿って自社サービスを説明してください。
ただし、どの見込み顧客にも同じ前提でコメントをもらうことが理想です。毎回その場で説明するのではなく、事前に録画しておいたひとつのサービス説明動画を再生する形式をおすすめします。
そのうえで、インタビュー対象者にサービスを選定する立場からの評価を依頼します。
まずは自由にコメントしてもらい、ヒアリングをしながら、以下の視点で評価を確認します。
- 資料・説明のわかりやすさ
- 知りたい情報の網羅性
- 必要ないと感じた情報
- 説明時間の長さ
- サービス説明を受けてより詳しく検討したいと思ったか
- 回答の理由
これらの観点でフィードバックを得ると
「知っていた情報が大半で時間がもったいない」
「説明が長すぎる」
「利用イメージが湧かなかった」
「機能説明ばかりで、業務がどう変わるのかがわからなかった」
「他社商材との違いがわからなかった」
「デザインやフォント等に統一感がなく、不安に感じた」
「図版がわかりにくい」
など、顧客視点で改善点が抽出されます。こうしたフィードバックを複数集め、課題と改善方針を整理していきましょう。
なお、見込み顧客の募集が難しい場合、商材に関与していない社内の第三者、知人などに対して模擬商談を行っても構いません。購買者の視点は欠けますが、第三者にとってわかりやすいか、魅力が伝わるかという観点では十分に気づきが得られます。また、関係値のある既存顧客に協力してもらうケースもあります。
模擬商談時に利用するインタビューシートは以下からダウンロードしてご利用ください。
営業資料改善に役立つ見込み顧客インタビューシート(xlsx形式 個人情報入力無しでダウンロードできます)
2. サービス説明のシナリオを見直す
次に模擬商談で得たフィードバックを元に、営業資料の改善方針を検討します。
とはいっても、すぐに営業資料に手をつけません。
見込み顧客から「話の流れや時間配分が期待通りではない」との指摘を受けることも多いため、まずサービス説明の流れや、それぞれのセクションのボリュームから見直します。
見直しを行う際は以下のように、サービス説明の簡易的なシナリオを作成し、顧客視点に沿った構成や文章を仮置きします。
サービス説明シナリオサンプル(docx形式 個人情報入力無しでダウンロードできます)
シナリオ作成は、ハイパフォーマーの商談に同席し、高い成果を挙げている担当者の説明の流れを書き起こすことから始めます。比較的完成度が高いシナリオをベースにできるため、模擬商談で得たフィードバックを反映しやすいと言えます。
素案ができたら、社内の複数人からフィードバックを得てください。顧客観点を重視しすぎると、顧客に気づきを提供するための文脈が削られる可能性もあります。顧客が知りたいことと、自社が伝えたいことのバランスを取るためにも社内レビューが必要です。
3. 資料の構成を見直す
サービス説明のシナリオが完成したら、営業資料の構成を見直し、ラフを作成していきます。既存資料がある場合、シナリオと照らし合わせて以下を行いしょう。
- 既存スライドの並べ替え
- 既存スライドの分解
- 既存スライドの要否判断
- 各スライドのメッセージ見直し
- 各スライドの文字量削減
- スライドの新規作成
特に重要なのは既存スライドの分解です。1スライドに情報を詰め込むことでメッセージがわかりにくくなることが多々あります。複数のスライドに分けることで各スライドで伝えたいことや情報の順序を明確にし、聞き手・読み手が理解・説明しやすいものにしていきましょう。
資料の構成を整理する際には、営業資料の要素やその目的をスライドマップとして書き出すこともおすすめです。各スライドの並べ替えや分解、要否判断を全体像を把握しながら行いやすくなります。スライドマップのサンプルは以下からダウンロードできますのでぜひご活用ください。
営業資料スライドマップサンプル(xlsx形式 個人情報入力無しでダウンロードできます)
4. デザインを見直す
ラフの作成が完了したら、最後にデザイン制作に着手します。社内で体裁を整えるだけの場合も多いですが、プロのデザイナーに依頼することをおすすめします。Webサイト同様、デザイナーが入る前後では資料の印象やわかりやすさが大きく異なるためです。
弊社がこれまで実施してきた模擬商談では、資料のデザインやフォントの不統一などを理由に「あまりしっかりした会社・サービスではなさそう」といったネガティブな印象を抱かれることが多くありました。本質的な部分ではないかもしれませんが、デザインは企業・サービスへの信用や印象を大きく左右します。
弊社のドキュメント類も基本的にデザイナーの方にデザイン制作をお願いしていますが、ラフとデザイナーによるデザイン制作後とでは雲泥の差があります。デザインに投資することは決して無駄ではないと言えるでしょう。
デザイナー依頼前
デザイナー依頼後
デザイン制作依頼時の注意点
なお、営業資料のデザインを外注する際、依頼の仕方次第でアウトプットの質が大きく変わります。期待したアウトプットが出てこず、やり直しを依頼しなければならないケースもあるため、注意すべき点について解説します。
まず、デザイナーに求めるスキルセットについてです。営業資料のデザインは、BtoB商材に関する制作経験とPowerPointでの制作経験が浅い方への依頼をできるだけ避けましょう。
法人間取引における顧客像をイメージできないと求めるものとズレた提案が出てきやすく、PowerPointでの制作経験が浅いと「スライドマスタが整備されていない」「更新性や柔軟性が低い作りになっている」などの問題が生じやすいためです。BtoB企業の営業資料やホワイトペーパー制作経験があるデザイナーや制作会社を探すことをおすすめします。
次に依頼方法についてです。デザイン制作全般に生じる問題ですが、依頼側の期待とアウトプットの質にギャップが生じることも少なくありません。特にデザインは抽象的なものであり、期待を伝えることも確認することも難しいため、事前のすり合わせをしっかり行う必要があります。
言葉で伝えるだけではなく、希望するデザインに近い制作物を提示したり、デザイナー側にいくつか素案を出してもらったりして、お互いのイメージをすり合わせておきましょう。
その他の注意点やポイントをまとめたデザイン依頼用シートを作成しましたのでよろしければご活用ください。
営業資料のデザイン依頼テンプレート(xlsx形式 個人情報入力無しでダウンロードできます)
改善後のオンボーディング
デザイン制作が終われば、新しい営業資料の完成です。これまでご紹介したプロセスを踏めば、顧客にとって商材の利点が伝わりやすい資料に改善されているはずです。
早速、営業現場で使ってもらうことになりますが、オンボーディングには注意が必要です。
営業資料を大幅に改修した場合、営業現場で新しい資料を使いこなせるようになるまで時間を要することがあります。場合によっては、「以前の資料のほうが説明しやすかった」といった反発が出ることも考えられます。
使い慣れた資料の変化による営業担当者の戸惑いはよくあることなので、スムーズに利用してもらえるよう新しい営業資料の使い方を提示できると理想的です。
弊社で営業資料リニューアルをご支援する場合には、お客様と一緒に営業資料の説明ガイドを作成しています。各スライドの目的と説明のポイントを言語化することで、営業資料の改善の意図やその使い方を営業現場に浸透させることが狙いです。
説明ガイドのテンプレートは以下からダウンロードいただけますのでよろしければご利用ください。
営業資料の説明ガイドテンプレート(pptx形式 個人情報入力無しでダウンロードできます)
営業資料の改善効果
最後に、営業資料の改善効果についてお伝えします。営業資料の改善に取り組むことで、実際にどのような効果が期待できるのでしょうか。
弊社のお客様が実際に得られた効果には以下のようなものがあります。
改善効果の実例
初回商談のサービス説明短縮
- 商談前に事前送付する営業資料を充実させた結果、見込み顧客の商材理解度が高い状態で初回商談をスタートできるようになった
- サービス説明を補足的に行い、課題のヒアリングや解決策のディスカッション、デモに時間を割けるようになった
案件推進への寄与
- 顧客にとってメリットを理解しやすい内容になり、初回商談後の案件化率(提案化率)が改善した
- 商材の強みや選ぶべき理由を明示できるようになったことが受注率改善に寄与した
- 顧客内での回覧時に資料だけで理解できる内容になり、顧客内の合意形成が進みやすくなった
営業担当者の立ち上がり早期化・商談の平準化
- 営業資料の構成と商談の流れを整理したことで、新人の商材理解や商談の立ち上がりを早期化できた
- 営業資料の説明ガイドを作成することで丸投げ的なOJTから脱却できた
- 度々発生するQAを資料に盛り込んだことで、営業担当によって適切な回答ができないケースを回避できた
提案書作成の効率化
- 商材の強みや選ぶべき理由を言語化・スライド化したことで、提案書作成で使えるパーツを拡充でき、提案書作成を効率化できた
- 提案書を個々人が作るのではなく、組織として使えるスライドを拡充していき、それらを組み合わせて提案書を作成する文化ができた
営業資料改善の継続と効果測定
営業資料改善の取り組みは一度で終わるものではなく、継続的に取り組むべきものです。
今回ご紹介した改善プロセスはあくまで模擬商談から得た仮説に基づいています。実際には、受注率や案件化率などの数値確認や営業現場の声を聞くことで資料の良し悪しを評価し、必要に応じてさらに改善を積み重ねる必要があります。
また、市場や競合、自社の変化に応じて必ず修正すべき点が出てきます。少なくとも半年に一度は組織として、営業資料を見直す機会を設けることをおすすめします。
なお、受注率や案件化率の決定因子は複合的なため、営業資料改善の純粋な効果は測定しにくい部分もあります。どうしても数値で効果検証を行いたい場合、「Sales Doc.」や「DocSend」などの資料共有ツールで見込み客の資料閲覧データ(いつ、誰が、どのページを、どれぐらい見たか)を資料改善前後で比較すれば、一定の評価を行えます。
まとめ
今回の「SAIRU NOTE」では営業資料(およびサービス紹介資料)の改善プロセスをご紹介しました。
「営業資料を改善するにはまず顧客視点が重要である」という視点に立ち、顧客からのフィードバック獲得 → サービス説明のシナリオの見直し → 資料の構成見直し → デザイン調整という4つのステップで取り組むことをおすすめします。
営業資料の改善によって商材の良さが伝わりやすくなることは、サービス提供者・購買者の双方にとって大きなメリットです。本記事がその一助となれば幸いです。
才流では営業資料・サービス資料に関する
- 見込み顧客の関心を喚起する内容にしたい
- 商談で話すべき内容・流れにしたい
- 文字量・デザインを調整し、読みやすく説明しやすいものにしたい
などのご相談をお受けしています。
個別相談を行っておりますので、ぜひ気軽にお問い合わせください。
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