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PMF達成後にとれる3つの成長戦略

先日、Twitterで「イノベーター理論とPMF」の図についてコメントしたところ、多くの反響をいただきました。

プロダクトに関わる多くの方が、「自社のプロダクトはがどの何処のフェーズにいるのか」「フェーズに適した動きをできているのか」、正しく見定めたいと感じていらっしゃるようです。


そこで本記事では、図をもとに「PMF達成後に取れる成長戦略」を解説します。

事業責任者やプロダクトマネージャー、プロダクトの成長を担う立場の方は、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

目次[非表示]

  1. PMF後にとれる3つの成長戦略
  2. 新しいセグメントに広げる
    1. 購入決定者の新しいものに対する感度
    2. 会社規模
    3. 業界
    4. 利用シーン
    5. 地域
  3. 既存セグメントの獲得に注力する
    1. 投資効率が高いチャネルにお金と時間を集中投資する
    2. 受注までの離脱ポイントを改善し、投資効率を高める
    3. 新たなチャネルを発見する
  4. 既存セグメントにアップセルする

PMF後にとれる3つの成長戦略

PMFを達成したということは「特定の市場で、マーケットニーズを満たすプロダクトを提供できた」ということです。しかし、ビジネスはここで終わりではなく、PMF後の成長が求められます。

成長の方向性は大きく3つに分けられるでしょう。

  1. 新しいセグメントに広げる
    • 例)既存顧客はIT業界が中心なので、他業界にも広げよう
  2. 既存セグメントの獲得に注力する
    • 例)マーケティング予算、営業を増やして同セグメントでの新規獲得を強化しよう
  3. 既存セグメントにアップセルする 
    • 例)オプション新機能を開発し、アップセルを狙おう

3つの成長戦略に「セグメント」という言葉を入れていますが、現時点で売れている顧客を漫然としか捉えていない状態では、思うような成長曲線を描けない確率が高まります。

現時点でPMFを達成しているのはどのようなセグメントなのか。しっかりと分析をしたうえで、次の成長戦略を立てましょう。

注意したいのは、売れているセグメントとカスタマーサクセスしているセグメントは違う可能性があること。リードが獲得でき、受注率は高いものの、カスタマーサクセスにつながりにくいセグメントは存在します。売れているだけでなく、カスタマーサクセスもしているセグメントを中心に次の成長戦略を決めましょう。

一例として、2021年9月に19億円の資金調達を実施したカスタマーサクセスプラットフォームcommmune(コミューン)は、カスタマーサクセスするセグメントに集中することによって成長を実現したといいます。

最も高い価値を提供できる顧客は誰かを見定め、そこに集中することが必要(中略)commmuneは「企業のカスタマーサクセスを支援することで、エンドユーザーのLTVを上げるためのサービスである」と打ち出すようにした。新規顧客向けの施策やファンクラブのような位置付けで使ってくれる企業も存在したが、あくまでもそれはcommmuneが解決する課題の本流ではないと定義した。

※出典:「みんなにとって50点」の状況から抜け出すために。2つの決断でPMFを手繰り寄せたコミューン|MarkeZine

ここからは3つの成長戦略のそれぞれについて、詳しく説明します。

新しいセグメントに広げる

「新しいセグメントに広げる」場合、セグメントの切り方がポイントになります。下記の代表的なセグメントの切り方を紹介しましょう。

■代表的なセグメントの切り方

  • 購入決定者の新しいものに対する感度
  • 会社規模
  • 業界
  • 利用シーン
  • 地域

購入決定者の新しいものに対する感度

イノベーター理論の顧客層(イノベーター→アーリーアダプター→アーリーマジョリティ→レイトマジョリティ→ラガード)によって分ける方法です。

※イノベーター理論とは、顧客を5つの層に分類することにより、新しい商品やサービスがどのように市場に普及していくのかを分析した理論です

それぞれの顧客層ごとに情報感度、関心事、情報収集のチャネルが異なります。新しい層を狙う場合、それぞれの層が接する情報源や受け取りやすいメッセージを調査し、プロモーション活動・営業活動を展開します。

会社規模

会社規模によってセグメントを区切るケースもあります。中小企業、中堅企業、大手企業では関心事や稟議プロセス、購買関与者の数、予算などあらゆるものが違います。

例えば、大手企業からは「プロダクトのカスタマイズ要望」が強く求められる傾向にあります。

ネット印刷サービスを提供するラクスルは、2021年10月に大企業向けに新サービスの「ラクスル エンタープライズ」をリリースしました。

企業単位で専門の注文サイトを用意し、承認ワークフローを簡略化。アカウントの一元管理と印刷の見える化を実現し、他拠点を持つ大企業のニーズに応えるサービスです。

既存プロダクトを見直し、ネット印刷を大手企業にとって使いやすくすることで、セグメントを広げようと仕掛けています。

参考:ネット印刷を大企業にとって使いやすく開発したラクスルの新サービス

業界

業界によってセグメントを区切るケースです。新たにターゲットにする業界に対しては、もう一度、顧客の課題やニーズ、プロダクトの提供価値、顧客へのリーチ手段を検討するところから始めます。
2021年9月に53億円の大型資金調達をしたタイミーも、コロナ禍の中、最初にPMFをしていた飲食業界から、小売や物流業界の各業界ニーズに分けてプロダクトやメッセージを改善。2度目のPMFを成し遂げています。

参考:創業メンバー自ら“ドタキャン”の代わりをしたことも。初期ユーザーの成功体験を追求しPMFしたタイミー|MarkeZine

利用シーン

利用シーンによってセグメントを区切るケースもあります。利用シーンが異なると必要な機能も変わってきます。

例えばZoomは、もともとオンライン会議ツールとして提供されていましたが、途中からZoomビデオウェビナーを別アプリとしても提供し、セミナーや講義の利用シーンでも広く使われるようになりました。

地域

地域によってセグメントを区切るケースもあります。海外進出もこの1つと言えるでしょう。日本の中でも地域が異なれば、営業方法やマーケティング手法が変わることもあります。

2021年6月に156億円、シリーズDの調達を行ったSmartHR。2019年に関西支社を立ち上げ、2府4県(大阪、京都、兵庫、奈良、滋賀、和歌山)の認知拡大に取り組んでいます。

参考:SmartHR関西支社のイマ〜現状を語る編〜|note

既存セグメントの獲得に注力する

既存セグメントの獲得に注力する際、ポイントは3つあります。

投資効率が高いチャネルにお金と時間を集中投資する

獲得チャネル毎に投資対効果を分別し、効果の高いチャネルを探します。効果の高いチャネルが見つかれば、そこへの追加投資は手堅い手段の一つです。投資効率自体は徐々に低減していきますが、効果が出るかぎりは集中投資を行うことをオススメします。

受注までの離脱ポイントを改善し、投資効率を高める

才流では「階段設計」と呼んでいますが、見込み顧客が課題を認識してから商談を経て、受注に至るまでの階段を設計することが大切です。階段の各ステップで顧客が離脱しているポイントを明確にし、離脱を補うコンテンツや接点の創出に注力します。

新たなチャネルを発見する

新たなチャネルの模索は、成長余地の拡大を生み出すだけでなく、リスク分散という観点でも重要です。例えばコロナ禍で展示会頼りの営業活動を行っていた製造業の中には、あらたなチャネルの開拓を余儀なくされた企業が多くあります。

SEOで集客を伸ばしてきた企業がGoogleの検索アルゴリズムのアップデートで、集客力を大幅に落とし、広告など他の集客チャネルに投資せざるを得なくなったという話もよく聞きます。

顧客セグメント同様に、マーケティングのチャネルも広げることが重要です。

そもそも「どんなマーケティング手法やチャネルがあるのか」という疑問をお持ちの方は、「BtoBマーケティングの手法大全 – 社内会議で使える79個の施策アイデア」を参考にしてください。

既存セグメントにアップセルする

アップセルを行う場合、その方法は主に下記の3つがあります

  • 価格を改定する
  • 課金方法を変える(固定課金、従量課金、固定+従量課金)
  • オプション機能をつける

価格改定や課金方法変更の際は、顧客に対して丁寧な説明を行い、移行期間を設けることが一般的です。あわせて、一時的(もしくは恒久的)に、複数の契約プランを並行して管理運用する煩雑さがあるので、注意しましょう。

また、オプション機能をつける際に気をつけなければいけないことは、「顧客価値とつながらないオプション機能を増やしてしまうこと」です。

顧客価値とつながらないオプション機能を増やしてしまうと、図のように技術負債となり、プロダクト成長の阻害要因になってしまいます。顧客がより一層の価値を感じ、お金を払っていただけることを確認しながら、オプション機能の開発は進めると良いでしょう。

また、機能開発なしでもアップセルは可能です。よくある例としては、オンボーディングやカスタマーサクセス、研修を有料で提供する方法です。プロダクト開発の初期においては、顧客接点も増え、顧客の成功要因を深く理解できるようになるため、有効な手段です。

HubSpot社の場合は、導入支援を一括3~96万円で提供をしています。

参考:導入支援サービス|Hubspot


最後までお読みいただきありがとうございました。

今回は1つのプロダクトがPMFした後の成長戦略について、解説しました。他にも、自社の他プロダクトやシナジーがあるアライアンス先と組むことでクロスセルを実現し、事業を伸ばす戦略もあります。

PMFは1度で終わるものではありません。自社がどのセグメントでPMFを達成したのか、次はどのセグメントを攻略していくのかを確認し、プロダクト戦略やマーケティング戦略を立案していくことが大切です。

才流では「PMFを達成したが、次の成長をどう進めるか?」というご相談を多くいただきます。

  1. 新しいセグメントに広げる
  2. 既存セグメントの獲得に注力する
  3. 既存セグメントにアップセルする

これらの課題をお持ちの方は、ぜひ一度お問い合わせください。

著者/ 石田 啓
株式会社才流 新規事業開発部門責任者

2008年に東京工業大学大学院を卒業後、株式会社ディー・エヌ・エーに入社。EC事業部で新規営業、事業開発グループで中国EC市場やシニア市場の新規事業調査などを経験。11年に独立し、共同購入サービスや台湾ECモールの新規立ち上げ、Webマーケティングのコンサルティングなどを手掛ける。12年に株式会社ユニラボを共同創業。BtoBポータルサイト「アイミツ」をリリースし、営業、カスタマーサポート、マーケティングの立ち上げを行う。20年にベルフェイス株式会社に入社し、プロダクトマネージャーを務める。21年7月より才流にて新規事業開発部門の責任者として活動。

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