catch-img

HubSpotの導入・活用の実態を支援企業に聞いてみた

「MAツール/CRMの導入を検討しているけれど、HubSpotって実際どうなの?」

「何となく使っているHubSpot、もっと上手い使い方はないだろうか?」

このような課題を感じていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。実は、筆者もその一人でした。

弊社のクライアントである株式会社Shirofune様への支援の一環で、私はHubSpotの導入・実装を担当ししています。CRM・MAツールとして日々利用する中、「他の方はどのように使っているのか」「もっと上手く使えないか」などさまざまな疑問が出てきたのです。

そこで本記事では、実際に利用して感じた疑問を、CRM・SFA・MAツールの導入支援を行うPyram株式会社の藤原 健様に伺いました。HubSpot導入時の検討事項、よくある失敗や具体的な活用法なども、解説いただきました。

HubSpotの活用方法を知りたい方、あるいはCRMやMAツールの導入を検討されている方はぜひ参考にしてください。

目次[非表示]

  1. 1.インタビュー対象者
  2. 2.Q.HubSpotの導入にはどのようなケースがありますか?
  3. 3.Q.HubSpotをおすすめする理由を教えてください。
  4. 4.Q.HubSpotを導入する際に多くの企業がつまずくポイントは?
  5. 5.Q.「情報入力されない」課題に対する、おすすめの施策は?
  6. 6.Q.MAツールの導入は難易度が高いと言われます。なぜでしょうか?
  7. 7.Q.Marketing Hubを利用して実施する施策を教えてください。
  8. 8.Q.HubSpotの導入時・運用時によくある失敗を教えてください。
  9. 9.Q.どのようなダッシュボードで管理していますか?
  10. 10.Q.各種プロパティーにはどのような情報を蓄積していますか?

インタビュー対象者

藤原 健様 
Pyram株式会社 代表取締役。株式会社キャスターに所属しながら、個人でPyram株式会社を運営。HubSpotをはじめとしたCRM、SFA、MA、またはwebディレクション・事業企画の支援。HubSpotの利用歴は3年で、1年前からHubSpotソリューションパートナーとして活動。

取材:株式会社才流 コンサルタント 金森 悠介

Q.HubSpotの導入にはどのようなケースがありますか?

藤原:まず、導入支援をするケースは大きく分けて3つあります。

1つ目はCRMを導入しておらず、Googleスプレットシートなどで顧客管理している場合。2つ目がSalesforceを使いこなせずにHubSpotに変更する場合。3つ目がメーラー(メールソフト)を代替する場合です。

私自身、最初からCRMを入れたほうが良いと思っているため、新規事業の立ち上げから携わる際はHubSpotの機能ありきでプロダクトを作るときもあります。

金森: Salesforceを使いこなせずにHubSpotに変更したいと考えるお客様は多いのでしょうか。

藤原:Salesforceを使いこなせているお客様は少ないですね……。「何でもできるけれど結局何もできない」ということになってしまっているんですよね。Salesforceは導入後に情報をきちんと入れることが大事ですが、項目を準備したけれど全然使わず無駄になることが多いですね。

金森:なるほど。HubSpotの場合は、そのような課題は起こりにくいのでしょうか。

藤原:HubSpotはフリーミアム(※)なので、無料で使いながら設計ができる点はSalesforceと違うところです。よほどしっかり営業管理したいというニーズでなければ、HubSpotがちょうど良いと思います。

※フリーミアム:サービスを無償で提供し、使う機能に応じて課金する仕組み

Q.HubSpotをおすすめする理由を教えてください。

藤原:フリーミアム、外部連携、UIの良さ、サポートの早さですね。

無料で大体のことができるのは大きな魅力です。CRMがベースにあって、メール、ミーティングリンク、フォーム、ドキュメントが無料で使える。ちなみに、圧倒的に使い勝手が良いと思うのは、ミーティングリンクですね。

外部連携も他サービスより良いと思います。例えばSlackとはAPIで繋がっているので、HubSpotの動きを簡単にSlackに通知させることができます。

UIの観点では、Salesforceも以前より良くなりましたが、HubSpotの方がかなり使いやすいと感じます。また、Salesforceのヘルプは日本語が分かりにくいのが難点ですね。

サポートもHubSpotは早いです。高機能SaaSの場合は、自分たちですべて解決するのは実際厳しいですよね。その点を考えても、サポートが早いのは助かります。同機能を提供する国産のSaaSと比べても、HubSpotより良いものはないのではないでしょうか。

国産のMAツールも多くありますが、単純にメーラーとフォームだけで、商談と連携できないと意味がないですね。

金森: 本当にそう思います。MAツールは、CRMやSFAと繋がっているからこそ意味がありますね。

Q.HubSpotを導入する際に多くの企業がつまずくポイントは?

導入時につまずきやすいポイント

  • 取引の概念
  • 「入力をしっかりする」運用の問題
  • サブスクリプションの管理

藤原:HubSpotに限るわけではないのですが、取引の概念がつまずきやすいと思います。

これまでCRMやSFAを導入してこなかった企業では、「商談を管理する」という感覚がありません。Googleスプレットシートなどで商談を管理するときに、商談と企業がイコールになっているんですね。

ですから、取引の概念は理解しづらく、つまずきやすいポイントですね。ただ、ここさえクリアできたらあまり大きな問題はないと思います。あとは「入力をしっかりする」といった運用の問題でしょう。

また、これもHubSpotだけではありませんが、サブスクリプションの管理が難しいようです。毎月従量で料金が変わるサービスの場合、一顧客あたりのMRR(月次経常収益)やARR(年次経常収益)をHubSpot単体でだけで算出するのが難しく、最終的にスプレットシートなどを使わないといけない。この辺りの作業ができない企業もいらっしゃいますね。

※筆者注釈:経常収益の計算はSales or Service HubのEnterpriseのみで可能で、外部データベースと連携せずとも経常収益のトラッキングが可能です。しかし、これが従量課金となると、毎月変動してくるのでEnterpriseでも計算は難しいです。

Q.「情報入力されない」課題に対する、おすすめの施策は?

「情報入力されない」課題におすすめの施策

  • HubSpotの指標をチーム内の共通ダッシュボードにすること
  • ワークフローの活用
  • 日時定例MTGでフォロー

金森:CRMを導入したものの、情報が入力されずワークしないという課題をよく聞きます。何かおすすめの施策はありますか?

藤原:おすすめは3つあります。まず、HubSpotの指標をチーム内の共通ダッシュボードにすることです。

例えば、HubSpotに特定指標が入っていない限り、その方の成果にならなくする、といったルールをつくることで、HubSpotへの入力を徹底化させることができます。

2つ目は、ワークフローの活用です。ワークフローを設定して入力自体を自動化したり、リマインドを自動化したりすることです。

前者は、例えばリードが発生したタイミングで取引を自動作成する、会社情報のデータを取引プロパティーに自動で同期するといった施策です。ただし、Sales HubのProfessionalプラン以上でないと自動化できません。

※筆者注釈:2021年4月6日に製品アップデートがあり、すべてのHubのProfessionalプラン以上で、取引ベースのワークフローをご利用いただけるようになっております。

後者は、例えば入力がなされていない場合、担当者にSlack通知を送るといった施策が有効だと思います。

3つ目は、日次定例ミーティングなどでしっかり入力ができているか、フォローする方法です。シンプルでやりやすいと思います。

Q.MAツールの導入は難易度が高いと言われます。なぜでしょうか?

藤原:要件定義ができていないからだと思います。「MAツール」が「DX」と同じようにバズワードになっていて、「とりあえずMAを入れておけばOK」のような感じがあると思います。

この背景には、しっかり要件定義をして提案するMAツールベンダー側の営業が少ないことがあります。提案時の内容が"盛り盛り"になっていることも多いので、買い手側には慎重な判断が求められます。

また、MAツールは導入してからずっと、シナリオを作成したり、コンテンツを作成したりを続けなければなりません。導入時も導入後の運用にもコストがかかりますが、続ける覚悟をしてから導入していない企業は多いのだと思います。だから、「導入したものの結局使いこなせず失敗する」という事例が増えてしまうのでしょう。

金森:同感です。買い手側のリテラシーと導入・運用リソース、そして覚悟が必要ですよね。私も記事で注意喚起をしたことがあります。

※参考:MAツール/CRMとしてHubSpot Marketing Hubを導入・実装・運用するプロセスをフェーズ別に解説

Q.Marketing Hubを利用して実施する施策を教えてください。

藤原:弊社が支援している中では、MAに実装できるほど仮説立てや運用ができているお客様は少ないです。ただ正直、メーラー(メール配信ソフト)とパイプラインのステージごとにメールを送る機能くらいしか使えていなくても、利用料金分(約10万円)は成果として戻っていますね。

金森:藤原さんは、パイプラインのステージごとにメールを送る機能は、具体的にどのように活用していまか。

藤原:次のような場合が多いですね。

パイプラインのステージごとにメールを送る機能の活用

  • 取引ステージが契約のステージになったら申込書のフォームをメールで送る
  • 失注して6ヶ月経過したら、最新の製品情報を記載したメールを送る
  • 失注理由と時間軸を掛け合わせて、過去失注したお客様へメールを送る

例えば1年契約のSaaSを販売しているとしましょう。お客様と商談したものの、最終的に競合他社に負けてしまい失注したとします。

その後の対応として、3〜6か月に1回の間隔で、お客様が再検討し始めているタイミング、慣れてきているタイミングなど現在の検討状況に合わせてメールでアプローチし、最後はディスカウント価格で提案するという際に使います。

この場合、アクセスログのような定量データではなく、営業活動で得た定性データと掛け合わせることが多いですね。

金森:競合他社に決まった場合でも、いざ使ってみると不満が出るケースもありますよね。そのタイミングに合わせて、切り替えの提案をされているんですね。

Q.HubSpotの導入時・運用時によくある失敗を教えてください。

藤原:3つあります。プロパティーが重複してしまうこと、導入時・運用時にプロジェクトオーナー(管理者)を置かないことによる失敗、そしてインポート前に行う、元データのクレンジングです。

弊社が支援する際は、元データをすべてクレンジングして、HubSpotでうまく連携できるようにしてインポートしています。

例えば、顧客が法人だけでなく個人事業主もいるとします。法人か個人事業主かでコミュニケーションを変えたい場合、HubSpotへインポートする前にフラグ立てをすることで実現できます。その他にも必要なフラグ立てをする、重複を整理する、コンタクトと取引を紐付けるなどしています。

コンタクトと取引を紐付けするやり方は、複数あります。例えばHubSpotのコンタクトIDをキーにする場合だと、コンタクトをインポートしてから、そのデータをコンタクトID付でエクスポートをしましょう。その後にコンタクトIDをインポートする取引の元データにも持たせると、コンタクトと取引を紐付けられます。

Q.どのようなダッシュボードで管理していますか?

藤原:HubSpotでは、セールスのダッシュボードを中心にチェックしています。当月のリード、商談、クロージングの数や受注確度を、チャネル別や担当者別で見るケースが多いです。

マーケティングのダッシュボードは、あまり活用していません。Eメールの成果はチェックしているのですがEメール機能の一部としてクリック数など成果を見られる機能がついているので、そこで確認しています。

WebサイトのセッションなどはGoogle Analyticsでチェックしています。

Q.各種プロパティーにはどのような情報を蓄積していますか?

藤原:前提として、BtoBかBtoCか、バーティカル(特定の業種特化)かホリゾンタル(業種関係なく特定の業務で使われる)かなど、商材によってどのような情報を蓄積すべきかは異なります。

弊社が支援するお客様のケースではABM(アカウントベースドマーケティング)の観点から、会社プロパティー側に情報を多く溜めるようにしています。

例えば業種、住所、代表者、資本金、従業員数、設立年、関連会社などです。関連会社の情報は、どの会社がどの会社と紐付いているかを管理することで、グループ企業へのABM戦略を立てる際に活用できるので重要です。

例えば、サイバーエージェントグループへのABM戦略を立てたい場合。自社の商材別にサイバーエージェントグループ内のどの会社からどれだけのリードがあるといった情報を見ますね。これにより、どの会社からアプローチすべきか優先順位を立てたり、社内ネットワークを活用したりできるからです。

コンタクトプロパティーは、オーソドックスな情報しか入れていません。会社名、役職、部署、フリーコメント、必要に応じて名刺、FacebookやTwitterアカウントの情報くらいです。

取引プロパティーにもほとんどはオーソドックスな情報が多く、取引ステージ、商品、成約理由、失注理由、月間経常収益、契約開始日や終了日などです。他には、コンタクト化した経路と商談化した経路を分けて管理しています。コンタクトと接点を持ったのはどこか、どのステップで商談になったかなどの情報を保持していると、社内の他部署間でのパスアップを明確にできます。

なお各経路の情報はオリジナルで作成しています。選択肢は、イベント、セミナー、社員紹介などですね。CRMをきちんとワークさせるには、やはり「情報をしっかり入れる、やり切る力」が欠かせないと思います。


金森:私自身、「もっとHubSpotを活用したい」という思いで、今回のインタビューを企画しました。

私自身が普段利用していた方法と異なる使い方や、活用方法を知ることができ、とても勉強になりました。本記事が、私と同じようにHubSpot導入や運用に関して疑問を持っている方の参考になりましたら幸いです。

藤原さん、ご協力ありがとうございました。

SAIRU NOTEの別記事では、MAツール・CRMとしてHubSpotを導入・実装・運用するフェーズを解説しています。こちらもぜひ参考にしてください。

※参考:MAツール/CRMとしてHubSpot Marketing Hubを導入・実装・運用するプロセスをフェーズ別に解説


著者/ 金森 悠介
株式会社才流 コンサルタント

BtoBコンテンツの受託制作をしていたことをきっかけに、2019年才流に新卒入社。SaaSスタートアップやIT企業などのマーケティング・営業支援を担当。得意領域はコンテンツマーケティングを軸としたリード獲得、
HubSpot(MA・CRM)を活用したリードナーチャリング。個人でSaaS事業者向けメディア「おすすめSaaS.com」を運営。

この著者のSNSアカウント