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BtoBデジタルシフト2020| エンディングディスカッションレポート

BtoBマーケティング
株式会社才流広報チーム
コンサルタント
中島 孝輔

6月18日(木)・19日(金)、弊社初となるオンラインカンファレンス「BtoBデジタルシフト2020」を開催いたしました。当日は2日間で延べ2,000名を超える方が参加され、Twitterのタイムラインでは、多くの反響をいただきました。

#BtoBデジタルシフト

弊社代表、栗原が行ったオープニングセッションと、全セッションのスライドは先日公開した以下の記事よりご覧いただけます。

BtoBデジタルシフト2020|全スライド公開とイベントレポート

また、本記事では2日間のエンディングにその日の登壇者同士行われた、エンディングディスカッションのレポートをお届けいたします。

【Day.1】デジタルシフトのキーワードは「顧客中心」と「柔軟性」

【画像上右から】
垣内 勇威氏 株式会社WACUL 取締役 Chief Incubation Officer @yuikakiuchi
茂野 明彦氏 株式会社ビズリーチ  HRMOS事業部 インサイドセールス部 部長 @insidesales_job
栗原 康太  株式会社才流 代表取締役社長  @kotakurihara

【画像下右から】
戸栗 頌平氏 株式会社LEAPT 代表 @ShoheiToguri 
川鍋 裕輔氏 株式会社ベーシック SaaS事業部マーケティング部 部長 @y_kawanabe


1日目のディスカッションは5名のフリートークで行われた。

各セッションを振り返り、登壇者の共通認識として挙がったデジタルシフトで重要なこと。それは顧客中心であり、かつ変革に柔軟であることだ。

たとえ、どれだけ顧客データを集め、そのローンチ時の一瞬は完璧だと思われるサイトを作ったとしても、顧客のニーズは日々変化する。デジタルシフトを進める現場では、顧客の声を聞き続け、PDCAを回し続けることが重要だ。優秀なマーケターほど現場に行き、手を動かし続けていると登壇者は口を揃える。

そして、現場がPDCAを回し続けるためには「トップや上層部の覚悟が必要」だという。

上層部がデジタルシフトに対しての長期的な投資への覚悟を持って臨めば、現場はチャレンジできる。試しながらスピードを持って進み、変化を厭わない。柔軟な組織づくりは、企業がデジタル時代を生き抜くために必須の要件だといえよう。

以下に、各登壇者の発言をまとめていく。

垣内 勇威氏 株式会社WACUL 取締役 Chief Incubation Officer

●マーケターは顧客に接触すべき。自分で電話すれば、自分が取ったリードがなぜダメと言われるか、理由がわかる。

●Webに関わる人は、まず自分でサイトを作ってみよう。SEO、サイト構造、アクセス解析のすべてを自分でやるから理解できる。

●PDCAは雑に回してもいい。Webは完璧を求めず、運用され続けるものだと理解する。

●これからデジタル化をはじめる企業が最初にやるべきことは、事業責任者や経営者が腹をくくること。そして年間予算を1,000万程度確保し、LPを1ページ、コンテンツを作り、広告を打つ。

●コンテンツマーケの体制として有効なのは、経営者がコミットしていること、評価制度にリード獲得数を入れること。「このコンテンツでリードを取る」という覚悟がないと、成果は出にくい。

●大企業ならば営業部長など権力を持っている人がコミットし、長期投資をしっかりと決断する。

カンファレンス参加者へのメッセージ

「BtoBは営業でクロージングをするので、当然、営業から逆算して考えていくべきだと思います。それ以外の細かい仕事をやっていると、どんどん疲れてしまう。そういう仕事はバッサリと捨てて、営業同行に出かけましょう。『BtoBマーケター』と呼ばれる人にはぜひおすすめしたい働き方です」

茂野 明彦氏 株式会社ビズリーチ  HRMOS事業部 インサイドセールス部 部長

●顧客理解のために必要なことは、現場を知ること。インサイドセールスは営業同行でコミュニケーションの解像度が上がる。

●『THE MODEL』の考え方は、数値の可視化によって部門感を越えたコミュニケーションが可能になること。決してただの分業ではない。組織としてそれが抜け落ちている場合が多い。

●オンライン商談は、カメラ、音声をオフにして同席ができる。直接関わりのない職種の人も顧客の声を聞けるチャンス。

●サイトを見て「違和感がある」と思われることは重要である。「違和感がある=ひっかかり」であり、刺さっているということでもある。情報が溢れている時代だからこそ、キレイに作ることだけが正じゃない。

●やめる、変えることを組織のあたり前にする。変化を厭わない。

●茂野氏のチームでは、月に1回「やめる会」を開催。やめたいオペレーションを話し合い、必要のないものは辞めるようにしている。

●やめることは痛みを伴う場合もある。現場には丁寧に理由を説明する。

カンファレンス参加者へのメッセージ

「とにかくチャレンジする。何にしても動くということだと思います。それにはコミットが必要だと思います。新しいことにチャレンジすることが日本各地で起きれば、日本の国力はもっとあがっていくはずです。経営者の方々は、ぜひ、現場のチャレンジを許容していただきたいです」

戸栗 頌平氏 株式会社LEAPT 代表

●PDCAを早くまわすことは重要。

●営業同行を積極的にすべき。

●顧客が望むのは、自分にパーソナライズされた営業で。マーケターはツールやチャネルを追うばかりでなく、顧客の信頼を勝ち取るために手を動かそう。

●前職では新入社員トレーニングとして、自分で仮置きのビジネスを立ち上げ、CMSからサイト構築やSNS運用をするということをやっていた。実際にやってみる経験は大きいので、自分の時間を見つけて積極的にやるべき。

●トップや上層部のコミットがない企業には、コンテンツ作成を薦めない場合もある。コミットがあれば、コンテンツ作成を内製化するまでのサイクルが作れる。

●マーケティングは営業の支援活動である。マーケターは営業と同じく、数字を語れなければならない。

カンファレンス参加者へのメッセージ

「マーケのテクニックは山ほどありますが、テクニックの前に重要なことはコミットすることです。マーケをもっと成功させたい、マーケターとして活躍したいという人は、まず目の前の仕事にコミットすることを忘れないでください」

川鍋 裕輔氏 株式会社ベーシック SaaS事業部マーケティング部 部長

●デジタルシフトは、まだまだこれからの企業も多い。特に大手では、意思決定に時間がかかる場合もある。

●まずはやってみるべき。やってみれば改善の材料を得られる。

●オフラインの展示会ではPDCAを回すといってもサイクルが長いので、すぐに試せるWebのメリットを活用しよう。

●キレイにカスタマージャーニーマップを作っても、絶対にその通りにはならない。キレイに書こうとするというよりは、こぼれても拾えるように設計することが重要。

カンファレンス参加者へのメッセージ

「DXやデジタルシフトの流れは自明であり、問題はどういうスピードで実行していくか。我々も状況が変わればマーケティングのメッセージを変えいきますし、変化を厭わない。変化に負けないように戦っていくことが重要だと思います」

栗原 康太 株式会社才流 代表取締役社長

●経営でも同じく、顧客のニーズは刻々と変化している。毎週のように現場に出てリサーチをしないとつかめないし、常に顧客ニーズにフィットさせないと企業として生き残っていけないと感じる。

●カスタマージャーニーマップを描いてもすべての顧客がそのとおりに動くわけではない。いろいろな顧客の声をキャッチし、いかに早く対応できるかが重要。

●経営者のコンテンツに対する考え方はタイプがある。営業ドリブンな会社でマーケを頑張ろうとするより、マーケドリブンな会社に転職したほうが早い場合もある。ビズリーチに登録しよう。

また、カンファレンス申込時に寄せられた質問の中で多かったのは、「営業現場は実際にどうなっていくのか」という声だったと栗原は紹介した。これに対し、ビズリーチ茂野氏は次のように回答した。

「大きい潮流でいくと、オンラインセールスが圧倒的に増えていくと思います。これは、コロナ以前は商習慣の問題などで乗り越えられないと思ってきたことが、乗り越えられると証明されたからです。

ただ、フィールドセールスがなくなるわけではありません。大人数で深いディスカッションを、より密に行う場合は、やはりオフラインのほうが効率が良い。今後は、効率が良いほうを選択していくと思います。

コロナ以前のデータで、オンライン商談が弱いと言われていたのは、複数のステークホルダーがいる場合や、商談金額が大きい場合。エンタープライズ系のセールスでした。しかし、買い手側のリテラシーも変化しており、概ねオンライン化が進むのは間違いありません」(茂野 明彦氏)

【Day.2】コンテンツを軸にした経営と組織づくりの変化

【画像上左から】
西山 直樹 氏 ベルフェイス株式会社 取締役 @nishiyama620
鈴木 淳一 氏 株式会社セールスフォース・ドットコム 執行役員 セールスデベロップメント本部 本部長 @J_TheModel 

【画像下左から】
瀧沢 貴浩 氏 株式会社 キーワードマーケティング  取締役COO  @080fe121
安藤 健作 氏 株式会社ラクス MC事業部 事業部長 @comune1128
枌谷 力 氏    株式会社ベイジ 代表取締役 @sogitani_baigie


2日目のディスカッションは栗原がファシリテーターを務め、5名の登壇者とともに、3つのテーマに沿って行われた。

トークテーマ

  • ここ10年でもっとも大きな変化は?
  • 自社の組織作りで意識していること
  • コンテンツ作りへのコミット

以下、登壇者の発言をまとめていく。(敬称略)

ここ10年間、もっとも大きな変化とは?

安藤 スマートフォンの普及。PCではなく、スマホでどこでも仕事ができるようになったのは大きな変化。リモートワークは10年前では考えられなかった。

枌谷 主役が企業ではなく、消費者の力、買い手の力が強くなった。UX(ユーザー・エクスペリエンス)、ユーザーファースト、顧客理解などの言葉の重要性が増してきた。今のデジタル技術も、顧客を知るための技術が進化しているという印象。

西山 組織マネジメントのあり方。自分が新卒だった2007年当時は、統率型がマネジメントという印象だった。そこからサーバント(支援)型のリーダーシップへと移ってきている。自分自身もどんなマネジメントの在り方が大事なのか考えるようになったし、「ソフトになった」と言われるようになった。

鈴木 枌谷さんと同じく第4次産業革命。ユーザーの力、ユーザーコミュニティの力を感じている。 「The Model Academia」というFacebookコミュニティを運営しているが、7か月で1,000人を超えた。それを見ていると、個の強さ、個が連携していく強さを実感する。コミュニティに面白いコンテンツを設定すると人が集まってくれることは、大きな変化。

もうひとつは、お客様中心の本質的な営業のあり方。2年前くらいにインサイドセールスに配属された新卒で、たくさん電話しろと言われる中で、誰よりも電話をしないでトップクラスの成績を出した子がいた。綿密にステップメールを設定し、お客様のタイミングに合わせてアプローチができれば、そもそも電話なんて必要ないことを証明したと感じた。

瀧沢 広告における機械学習の影響を強く感じる。Googleでいうとディスカバーという枠があり、その人の興味関心に合ったピンポイントの記事が配信される。怖いと思いつつも、これが進むと良い方向にいくと思う。欲しいタイミングで欲しい情報が入るので、ユーザーの利便性につながる。

自社の組織づくりで意識していること

西山 戦略的なジョブローテーションを意識している。昔は自分でアポをとり、自分で商談する一気通貫の営業だったが、今は分業化されている。例えばオンラインセールス担当は、だまっていても自分のカレンダーが埋まっていく。同じことをやっていると、単純に飽きてしまう。

成果をあげるメンバーほど、どんどん新しいことがやりたくなる。メンバーのキャリアビジョンの中で何を目指しているのかを考え、成果をあげているときほど別の仕事を任せるというのを意識している。

さまざまな領域を見ることによって、SaaSのレベニュー全般を理解できるようになり、全体最適の観点を持てる人材を育てたい。

鈴木 西山さんと同じく、ジョブローテーション。早いスピードで昇格をさせていくようにしている。3年やると人は飽きてしまうと思っており、インサイドも基本的には2年くらいで外勤営業に昇格させる。

他にもメンバーの会社や組織に対するフィードバックは意識している。会社としては年2回サーベイをやっているが、自分の組織はアドオンして年4回実施している。そこでお客様の声を聞いた上でメンバーが不必要だと思う仕組みやルールをアップデートする。

また、若手は検索すれば答えが出てくる世代なので、本質主義者が多い。前述の新卒ハイパフォーマーが出てきてから、電話件数をKPIから外した。メンバーからのフィードバックで、無駄なルールを無くし、より本質的な仕事ができるようになった。

瀧沢 自分がマーケとセールスの責任者をやっている中で、1日目に登壇されたビズリーチ茂野さんの「全員で目標を決めて細かく改善していく、いい意味でグレーなチームが強い」という話は響いた。

『THE MODEL』型の分業組織を1年前に作ったが、現在はマーケ、インサイド、フィールドをひとつの組織にまとめており、日によってやる仕事が違うようなチームになっている。役割としてグレーな状態にすることは、小さい営業組織にとっては有効。デジタルシフトが進むと、セールスとマーケの垣根がなくなってきている。

安藤 セールスとマーケで30名くらいの組織なので、自分の考えを隅々まで行き渡らせるためにインナー広報を入れている。インナー広報の子が毎週メンバーと食事に行き、会話する。やろうとしていることを浸透させるための活動をしてくれている。

枌谷 何か施策をするときに、意義をつけてあげること、楽しめるかということを意識している。弊社の場合はクリエーター、デザイナー、エンジニアなので、そもそもマーケをしようとして入社してきたわけではない。SNSやオウンドメディアを続けるためには、楽しいと思ってもらわないとできないし、楽しくなかったらやらないという選択肢を与えている。

意義をつけるという話も、よく社内で共有している。人生は長い中で、会社を辞めるときがくると思う。そのとき、今やっている仕事がどんな意味を持つのか、どんな経験になるのか。意義をしっかりと教えてあげる。クリエーターだけどマーケは面白いとか、こういうことを知っていると生きやすくなるとか、関心を持ってもらうように気をつけている。

コンテンツ作りへどんな気持ちでコミットしているか

西山 いろいろな情報がはびこっている中、たくさんの人に届けようとすると、深く刺さりこまない。絞って絞って、届けたい人の顔をイメージしてコンテンツを作りこむのが大事だと感じている。

現在はエンタープライズ領域を見ているので、エンタープライズ企業の役員が知りたいコンテンツは何かを絞って考えている。世の中の人99%がいらない情報でも、自分たちのターゲットが知りたい情報を届ける。e-bookを作っても数千人に見てもらいたいわけではなく、ペルソナの人だけに見てもらえればいい。これは、ウェビナーも同じ。

瀧沢 オウンドメディアを作って1年くらい経つが、ようやく社員全員が「ブログを書くのがあたり前」という雰囲気が出てきた

最初は「コンテンツをあげて何か変わるの?」とメンバーは思っていたかもしれない。半年くらいかけてトップがしっかりとコミットし、成果を出してきたことで、メンバーに浸透してきた。順番としてトップコミットし、まず結果を見せることが大事だと感じる。

枌谷 自分は「コンテンツ=経営の根幹」だと思っているくらいなので、めちゃくちゃコミットしている。コンテンツを書くのがうまいと思う人に共通するのは、エンタメ精神だと思う。人を驚かせたり、喜ばせたりするのがうまい人。

コンテンツ作りはマーケティングの一貫なので、もちろん数字は見なくてはならないが、数字ばかりを見て機械的に作るというのは主流ではなくなっている。人を喜ばせたり、楽しませたりした結果としてリードがとれるというのが、これからのやり方じゃないかと思う。

安藤 弊社の場合は、営業さんがお客さんのもとに行ったとき、聞かれたこと、困っていることをそのままコンテンツとして発信している。我々はデータを持っているので、惜しむことなく発信すると、出し続けることでいろいろな情報が集まってくることもある。

鈴木 コンテンツは会社の方向性を決めると思います。数年前、製品サービスのアプローチばかりのコンテンツを作っていたら、人が集まらなくなった時期があったが、そこから内容を見直し、今はカスタマージャーニーワークショップというのをやっている。

2時間半もかかるので、マイナスなんじゃないかという話もあったが、お客さんはとても喜んでくれて、理解してくれた。うちの会社が目指している「お客様の成功」にコンテンツを振っていったら、お客様満足度NO.1コンテンツなった。会社の目指す方向にアラインしたコンテンツが有効。

さいごに

最後に、弊社栗原は2日間を総括し以下のコメントとともに2日間に渡るオンラインカンファレンスを締めた。

「1日目のセッションでは顧客理解や顧客中心、アジャイルな組織という話が多く出ました。2日目もそこは皆さんの共通認識だったのではないかと思います。

技術が進んで、リードや商談をとろうと思ったらテクニカルにとれてしまいます。その中で、本当にお客様の心を動かす活動ができているかどうか。自分たちのマーケティング活動、セールス活動がお客様のためになっているのかは、非常に重要な問いだと感じました。視聴されたみなさまの日々の業務に役立つ2日間となっていたらいいなと思います」(栗原 康太)


「BtoBデジタルシフト2020」へご参加いただいた皆さま、運営にご協力いただいた皆さまにあらためて御礼申し上げます。 

才流では、定期的にウェビナー(オンラインセミナー)を開催しておりますので、ぜひご参加くださいませ。

セミナー・イベント|才流

(取材・文/安住 久美子 @081123tadatama  編集・写真/中島 孝輔 @KosukeNakajima_

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