DOER NOTEが主催する、時代の最先端に挑戦する実践者をつなげるイベントコミュニティ・DOER Night。第一回は、株式会社ガイアックス ソーシャルメディアマーケティング事業部・事業部長である管大輔氏が、「アウトソーシング活用」をテーマに登壇した。今回は、管氏がイベントで語った驚くべきアウトソーシング活用術について、才流代表の栗原が聞き手となり話を伺った。
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プライベートの話含め、徹底的にコミュニケーションを取りました
栗原 今日のテーマは、「アウトソーシング活用」です。貴社の事業部では、現在どれぐらいアウトソーシングを活用しているのでしょうか?
管 今年3月の時点で、900時間/月ぐらいでした。マックス1,100時間/月まで行った時期もあります。フリーランスの方と直接契約させていただくケースも出てきたので、今はクラウドソーシングの利用時間を減らしています。
栗原 その900時間は、特定の会社に依頼されているんですか?
管 『HELP YOU』というサービスを使っています。チーム制で担当してもらっていて、窓口になる方は3、4人ぐらい。その先で、複数のアシスタントの方々が動いています。ディレクションリソースが削減され、特定メンバーに依存しない体制が作れるので冗長性も保てます。
栗原 使い始めたきっかけはなんですか?
管 部署内で新サービスを立ち上げるときに、人手が足りなかったんですね。友人に声をかけたりもしていたのですが、その流れでクラウドソーシングサービスにたどり着きました。
また、『HELP YOU』の創業者は元上長なのですが、その方に相談した時に「使ってみなよ」と言われたのがきっかけです。その後、僕が事業部長になってから部署全体で使い始めました。
栗原 具体的に、どんなことを依頼しているかを教えてください。
管 多岐にわたります。毎月の社内会議用のパワポ資料/お店の予約/資料作成業務/リサーチ業務/秘書業務 etc……。当時、既存事業の営業もしながら新規事業をやっていたので、どれだけラクに営業するかを突き詰めました。
栗原 最初に担当についたのは、どんな方だったんですか?
管 4つぐらい年上の女性でした。もともと富士通にいらして、社内で営業ナンバーワンを取ったほどの方です。実は、彼女の前に2人ほど断っていたんです、「合わないです」とか生意気言って。さすがに「そんなこと言ってたら誰もつけられないよ」と言われたので(苦笑)、彼女と徹底的にコミュニケーションを取りました。
例えば「デザインはやりにくかったんですけど、他のところは気が回るんです」とかフィードバックを受けながら、お互いのプライベートの話をしたり。仕事終わりに、駅まで歩きながら電話して、気がついたら1時間半ぐらい話し込んだりということもありました。そういう関係性になると思ったことを率直に言えるようになりましたし、向こうも汲み取ってくれるようになりましたね。
テキストからのパワポ資料作成、チャットワークからのタスク管理も依頼しています
管 例えば経営者向け採用支援サービスをやることになり、サービス資料を作ることになったときのこと。MTG内容をテキストでまとめて、『HELP YOU』の方に渡してパワポ資料にしてもらいました。
具体的には「多くの企業が人材不足に陥っている」という課題があったので、いろいろな企業のURLを貼って、採用関連サービスの乱立を図解してもらい、理由も書いてもらって。サービス提供フローも資料化し、良い感じのデザインに仕上げてもらったり。僕らは「サービス内容の骨子が、確実に伝わるか」だけに集中し、それ以外のデザイン含めた部分は『HELP YOU』のプロの方に任せる判断をしています。
栗原 デザインのフォーマットは決めているんですか?
管 決めています。最初に、マスターを100ページぐらい作ってもらいました。マスターのデザインをどうするかディスカッションし、5、6パターンぐらい上げてもらい、キーカラーとフォントをどのテイストにしたいかだけお伝えし、あとは全部作ってもらっています。
栗原 これは、デザイナーさんがいらっしゃったんですか?
管 『HELP YOU』の方が、デザイナーさんに指示を出してくれます。僕らはその方がどなたかはわかりません。
栗原 直接コミュニケーションは取らないんですね。
管 そうです、直接コミュニケーションを取るのは専属ディレクターさんだけです。コミュニケーションはほぼチャットワークで、電話は基本しません。会ったことのある人は2名だけですね。顔が見える形で会議はしますけど、総勢約30名のチームのうち国内にいるのが20名ほど。他のメンバーは海外にいらっしゃったりするので、物理的に会えないんですよね。
時期、シリコンバレー在住の日本人女性ともやり取りをしました。元Amazonのマネージャーさんで、「シリコンバレーの現地でしか流通していない情報がある」とのことで、それを毎週届けてもらっていました。
栗原 パワポに資料を起こすとき、何回ぐらいコミュニケーションを取るんですか?
管 今はほぼ1回です。プロのデザイナーさんが作る資料って精度が高いので。だいたい2、3ヶ月ぐらいでその状態になりました。チャットワーク内から毎日タスクを拾ってもらって、誰が誰にどんな依頼をしたのかをガントチャートにしてもらってます。タスクが遅れたものに対しては、Toでアラートしてもらえるんですね。だから、進捗管理用の社員を置く必要がない。すごく便利です。
栗原 これは『HELP YOU』のサービスメニューですか? それとも管さんたちが開発したんですか?
管 僕らが開発したものですね。今は『Backlog』などのプロジェクト管理ツールがありますが、利用するツールを増やしたくないということもあり、「なるべくチャットワーク内で完結したい」と思ってお願いしました。
他には、会食のレストランの予約もお願いしています。予約方法もテンプレート化し、仮予約までお願いして確認するだけという状態にしています。カウンターNGとか、この場所のこういう店がいいとか、いろいろピックアップしてもらっています。
栗原 そうしたフォーマットは、『HELP YOU』から提案してくれるんですか?
管 そうです。こちらは理想像を伝え、具体的な提案は先方に任せる形です。新しい業務を依頼する場合はまず『HELP YOU』に連絡して、「こんなことを、こんな感じでできたら最高」とだけ伝えます。そうしたら、先方から提案が送られてくる形です。
栗原 先方からしたら、管さんたちの事例を使って他社さんに展開している可能性もありそうですね。
管 あると思いますね。それは全然気にしてません。もっとアウトソーシング活用が広まった方が良いと思っているので。あとはクライアントにTwitterコンサルを提供しているのですが、毎週のツイート数やフォロワー数の変化なども集計してもらっています。例えばAさんが先週107ツイートしてますよとか、5ツイート足りませんねとか。最初は手入力で記録してもらいましたが、先方がツールを開発してくれたので今は自動的に集計いただいています。
導入に関しては、力ずくです(笑)
管 メンバーには、「(HELP YOUを)ガンガン使え」と言っています。個々人の活用状況の差はけっこうありますね、ある担当者はマックス145時間/月ですが、僕は現状44時間/月です。
栗原 とはいえメンバーに(気兼ねなく)使わせるのは難易度が高いのではないかと思うのですが、どうやって浸透させたんですか?
管 導入に関しては、結構力ずくです(笑)。「使わないと損だ」ということを見せないと、なかなか波及しづらいですね。最初は「(自分の業務がなくなると)給与が下げられるんじゃないか」という不安を感じて、後ろ向きの提案をされることもありました。そこで、まず僕がたくさん使って、その後で副部長やマネージャー陣が使いました。
あとは、依頼の仕方も教えています。例えば「明日までに仕上げてください」とか無茶を言ったり、フィードバックが雑だったりすると相手もパフォーマンスが落ちますから。半年ほど経った頃には、皆かなり使いこなせるようになったと思います。
栗原 レスが遅いなどの課題が出てきたら、管さんから伝えに行ってるんですか?
管 ディレクターベースでも言いますし、定例ミーティングでも伝えます。お互いの要望を毎月すり合わせ、課題を抽出して、解決策を話し合っています。
なるべく「ガイアックスの案件をやりたい」と思ってもらいたいですね。『HELP YOU』の中でもトップレベルの人をつけてもらいたいので。だから、(発注量が)「1位じゃなくなったらすぐに教えてください」と先方の社長さんに伝えています。実際、ガイアックスの担当になった人がすごく喜んでいたと聞きました。こういうのはうれしいですね。先方の社内でのブランディングは、すごく大事にしています。
(聞き手/栗原 康太 株式会社才流 代表取締役社長 編集/澤山 大輔)
後半は、株式会社ガイアックス ソーシャルメディアマーケティング事業部・事業部長 管大輔氏の驚異的なアウトソーシング活用術の中でも、その要となるアウトソーシング先との関係性の作り方について、深掘りする。
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