上場企業の年収ランキングで、常に上位にランクインするキーエンス。同社はセンサーなどの精密機器を販売するメーカーですが
- 直販で売るので利益率が高い
- 付加価値を載せて利益率を更に高くする
- 自社で工場を持たない
というビジネスモデルで年商が4,000億、営業利益率が50%以上ある会社です。
キーエンスは営業の強さが有名ですが、BtoB企業のWebサイトランキングで常に上位にいることはあまり知られていません。
今回はキーエンスのWebマーケティングは何が優れているのかを紹介しましょう。
※本記事は2018年に公開したものです。KWの順位や組織などが変更になっている場合があります。
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キーエンスのWebマーケティングは何が凄いのか
キーエンスはなぜWebが強いと言えるのでしょうか?
先に結論をまとめると
- 自社メディアに掲載されるホワイトペーパーの質と量
- ホワイトペーパーの生産体制
- 巨大な会員数を誇るメルマガの規模
- メルマガのコンテンツの質が圧倒的に高い
- Web経由のリードをクロージングする営業力
このあたりが、とにかくすごいです。ひとつずつ解説します。
コンスタントに生産される良質なホワイトペーパー
キーエンスはオンラインの集客チャネルの7割が自社メディアです。
また流入キーワードを外部分析ツールでみると、中立情報をまとめた特化型メディアでテールワードを多く集客しているのがわかります。
例
マシニングセンタ 2位
https://www.keyence.co.jp/ss/imagemeasure/processing/cutting/machiningcenter/
多くのコンテンツが掲載される自社メディアですが、検索エンジン経由で圧倒的に集客力があるのが技術資料です。
ダウンロード | 技術資料 | キーエンス
https://www-search.keyence.co.jp/jp/jajp/downloadcon/search.x?mode=tg&ie=utf8
2018年4月時点で1,000件以上掲載されていますが、これらは毎月増えています。
※参考:https://www.keyence.co.jp/support/registration/
また組織の体制は、以下の構造になっており、毎月事業部がお客さまからの要望を、販促に上げる義務があります。
- 事業推進部(全社販促)
- 8事業部(販促グループ、営業グループ)
お客さまの要望のなかから、商品化すべきもの・技術資料にすべきものを事業推進部がジャッジ。技術資料にすべきものは、事業部が毎月資料を作るという流れになっています。
事業部は8つあるので、毎月数個のホワイトペーパーがコンスタントに生み出せるのだといいます。
キーエンスが面白いのは、「お客さまが知りたいこと」を軸にホワイトペーパーを作っているという点です。
たとえば
- あるセンサーは、上下どちらに設置した方が誤動作が少ないのか?
- 静電気が発生するメカニズムはどうなっているのか?
など、カタログスペックではない情報を伝える目的になっています。
もちろん技術資料を用意したうえでスペックを伝えるカタログペーパーも用意しています。
https://www-search.keyence.co.jp/jp/jajp/downloadcon/search.x
お客さまが知りたい情報を全社でコンスタントに作り続けるというのは、簡単に真似できるものではありません。
※関連記事:顧客理解を深めるための12の手法
個別最適化されたメルマガ配信基盤
具体数は出せませんが、キーエンスのメルマガ会員数は相当な規模になっています。
https://www.keyence.co.jp/support/registration/
週2回
- 共通メルマガ
- パーソナライズメール
が送られてくるのですが、これも凄い。会員のアクティビティデータ(閲覧数、問い合わせ内容、開封率etc)などで、各会員をスコアリングし
- 共通メルマガの順番はスコアリングで並び替え
- パーソナライズメールはスコアリングで個別化
をしているのです。
共通メルマガを見ると、センサーに詳しくない私でも、どのコンテンツも思わずクリックしたくなるような見出しになっていました。
各事業部の営業担当が執筆している
中身を全社販促のメルマガチームがチェックをし、校閲編集をしたうえで配信という流れになっています。
お客さまの知りたいことを営業が引き上げコンテンツにして流通させることを組織で徹底的にやっているのがキーエンスのすさまじさです。
ちなみにスコアリングやナーチャリングにMAツールは使っていません。
こういったことを10年以上前からスクラッチのシステムでやっているのです。
リードのフォロー体制
上記施策によって大量のリードが生まれます。
キーエンスの営業担当は常に電話をしてるので、パソコンをあまりみていないと聞きました。リードを見落とす可能性があるので、お客さまから問い合わせがあると営業所に誰が何の問い合わせをしたのかが記載されたFAXが送られるようになっており、FAXは事務の方から営業担当へとパスされすぐに対応するようになっています。※FAX送信は2010年前後の話です。現在は変わっている可能性があります
優先的にフォローすべきリードをどのように判断しているのでしょうか?
方法は2つです。
①コンテンツで判断
価格問い合せやフリーコメントの問い合わせ対応、デモンストレーション希望するお客さまです。
②アンケートで判断
すべてのホワイトペーパーにショートアンケートが入ってます。キーエンスの問い合わせフォームを見てもらうとわかりますが、検討状況を確認する項目があるのがわかります。
キーエンスは会員制サイトなので、予め個人情報は入力されており、一つの質問でお客さまの検討状況を確認できるようになっています。
□ 価格を知りたい
を選択した方は優先的にフォローするようになっています。
すぐにフォローといっても、お客さまが資料をダウンロードして5分後に電話などルールが決まっているわけではありません。
即時に電話がかかってくるのが怖いという方も当然いるので、資料ダウンロードがあってから1時間経ってフォローをするケースもあり、営業担当の判断に委ねられていますが、当日にフォローするのは必須です。
そしてこのフォローの目的は商談ではなく受注です。電話口で買ってもらうケースも稀ですがあるということでした。
※関連記事:リードナーチャリングとは?失敗しないための設計プロセスを解説
キーエンスの方法から何を学ぶべきか?
大事なことはキーエンスのWebマーケティングから何を学ぶかですが、一体何を真似すべきでしょうか?
実は
- 技術資料を作る
- スコアリングしてメルマガを送る
ことが最優先ではありません。どちらも非常に大変で、他社が真似するには難易度が高いからです。
ではなにをすべきでしょうか。
キーエンスのマーケティングに非常にくわしい方に、やるべきことを聞くと
- 既存顧客管理
- 営業手法
- 誰が旗を振るのか
この3点を確認すべきということでした。
よくあるのは既存顧客の情報が、SFAやMAツールに入力されていない、また入力されていても、営業プロセスに落とし込まれてないケース。
2の営業手法にも関連する話ですが、キーエンスは顧客に聞くべきことが定型化されています。
要はお客さまにこれを聞ければ「売れる」もしくは「営業はすべきことはもうない」というのが決まっているというのです。ですから、どのお客さまに何をどこまで聞けたのかというプロセスを管理すべきだということでした。
この1と2がない状況で、ホワイトペーパー生産やメルマガ施策に注力しても、穴の空いたバケツに水を注いでいるような状態。当然成果は出ません。
そしてもっとも重要なのが、「誰が旗を振るか」という点。キーエンスの営業の根っこにあるのは定形化です。
仮に、ある組織でエースの営業が8割の受注をとっているといった状態で、この方式をマーケター主導でやろうと思っても、そもそもエースの営業の存在を否定する結果にもなりかねませんのでうまくはいかないでしょう。
経営陣主導で、組織を変えないとキーエンス式のマーケティングはうまくはいかないのです。
※関連記事:「営業の型化」が必要な理由~事例で学ぶセールスイネーブルメント~
キーエンスの凄すぎるマーケティング
キーエンスの営業手法は小手先の話が非常に少なく、簡単に真似ができない分価値があると考えます。
関連書籍などもいくつかあるので
- 営業の生産性を高めたい
- 誰もが売れるような営業組織を作りたい
- エースの営業頼みをなんとかしたい
という課題を持つ経営者の方は読んでみることをおすすめします。
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※参考書籍:『誰でも売れる「プロセス思考」営業術』