世界で初めて「モチベーション」にフォーカスした経営コンサルティング会社である株式会社リンクアンドモチベーション。独自の基幹技術である「モチベーションエンジニアリング」を基盤に、組織開発に加えて、個人の生きがい創りや、組織と個人をつなぐマッチングまで事業を広げている。
その中でも、国内最大級の8,010社、203万人のデータベースをもとに組織診断・変革をクラウド上で提供する「モチベーションクラウド」は、2016年のリリース以降、成長を続けている。
2020年、同社ではコロナ禍によって、新規顧客開拓に苦戦を強いられていた。マーケティングをリスタートさせて、再び拡大に向けて成長を加速させたい。しかし知識は不足しており、専門家の支援が必要だったという。
才流は21年1月からマーケティングの戦略と施策の立案、4月からマーケティングの伴走支援を行っている。マーケティングを統括する真砂さん、担当者の宇野さんに才流の支援を受けた感想や支援後の変化について話を伺った。
※数字は2021年5月現在
コロナ禍から復活に向けてマーケティング再始動
ー 才流に依頼する前のマーケティングの状況について教えてください。
宇野 20年はコロナ禍で新規のお問い合わせが減ったため、マーケティングも限定的にし、既存のリストをいかにナーチャリングし、営業までつなぐか。インサイドセールスと連携しながら行っていました。
止まっていたマーケティング活動を再開させようと動き出したのは、20年後半のこと。これまで広告代理店などに発注していた施策をインハウスで行うことを前提として、予算を確保しました。
ただ、責任者の真砂も担当者の私も、BtoBマーケティングの経験はなく、ゼロベースで情報を収集しなければならない状態でした。
真砂 そうですね。私が統括するマーケティングに関わるチームは、Webマーケティングや広告のチーム、イベントを行うチーム、コンテンツを作るクリエイティブのチームの3つあります。
しかし、お客様の課題は明確に見えておらず、ペルソナの設計もあいまいな状態でした。「モチベーションクラウドはこういう顧客にはまる」「顧客はこういう課題を持っている」など、各現場が思うことはあれど、言っていることがバラバラで、統合されていなかったんです。
これを自分たちで何とかしたいと思っていたのですが、非常に難しい課題でした。これはもう、専門家にお願いをしたほうがいいんじゃないかと思いましたね。
宇野 私はWebマーケティングの担当者として、メッセージングの難しさを感じていました。
社内では、エンゲージメント、組織診断といったキーワードをよく使っていたのですが、実際に「組織診断」のキーワードで検索すると医療関係のサイトがズラっと出てくるんです。
社内で当たり前に使われている言葉は、一般的には使われていない。どんなキーワードでコミュニケーションをとるべきなのか、四苦八苦していました。
「基礎からBtoBマーケティングを学びたい」メソッドの多さが決め手
ー 才流に依頼することを決めた経緯を教えてください
宇野 才流には、リスティング広告、Facebook広告についてのスポット研修をお願いしたのが最初です。
代表の栗原さんが書いたSAIRU NOTEの「もしも私がモチベーションクラウドのマーケターだったら」という記事を読んだことがきっかけで才流のことは知っていました。
当時私はインサイドセールスの部署にいて、マーケティングについて勉強をしていたので、この記事はとてもインパクトが強かったですね。私たちがまだできていないこと、ゆくゆくやりたいと話をしていたことが的確に書かれていたんです。
あらためて翌年から予算を組んでマーケティングをするならば、土台をしっかりと作りたいと思っていました。施策の優先順位を正しく判断できるように、BtoBマーケティングの基礎を学び直すことが重要だと思いました。
真砂 私も同じタイミングで知りました。当時は現場のコンサルタントとして今とは違う立場だったんですが、記事を見て素晴らしい会社があるんだなと思っていました。
スポット研修も非常に学びが多かったですし、才流はたくさんのコンテンツを出していますよね。とにかく多くのメソッドを持っている。
私たちはまず、基礎的なBtoBマーケティングのやり方を教えていただきたいと思っていたので、メソッドの多さが才流に依頼をする決め手になりました。
ユーザーインタビューの声は顧客と向き合うきっかけに
ー 21年1月から戦略立案のために、具体的にどのようなことを行ったのでしょうか。
澤井 まず顧客理解のために、想定見込み顧客の方に対して10人以上インタビューを行いました。
インタビューをする中で、大手企業、中小・ベンチャー企業で課題や求めることの違いが明確に見えてきたので、これをベースにペルソナを設計しました。
今回は、モチベーションクラウドを現在使っている方や、過去に使っていた方にもインタビューができたことで、「なぜ解約してしまったのか」「なぜ今使い続けているのか」までを聞くことができたので、より顧客理解を深められました。
ペルソナを決めたら、カスタマージャーニーを一緒に整理し、顧客がどういう検討プロセスを踏んで契約に至るのかを議論しましたね。
宇野 澤井さんがおっしゃったように、既存のお客様や退会してしまったお客様の声は特に参考になりました。
私たちから聞くと、どうしてもオブラートに包んだ回答しか得られないんです。これまでの内部データを見ても、正確な解釈ができないのではないかと思っていました。
今回フラットに話を伺い、納得する部分もあれば、あらためて自分たちのプロダクトの足りない部分を知ることができる言葉もいただきました。顧客と向き合えるとても貴重な機会だったと思います。
また、当社をよく知らない方、プロダクトを知らない見込み顧客の方が、どのような認識を持っているのかを知れたこともありがたかったです。
澤井 才流にはさまざまなメソッドがありますが、顧客理解がベースにあります。顧客がどんな課題を持ち、何を求めているのか。提供するサービスが顧客の課題をどのように解決するのか。ユーザーインタビューは、そのポイントを見出していく重要な過程ですね。
宇野 私はユーザーインタビューで見込み顧客の声を聞いてから、リスティング広告のキーワード選定や広告テキストの作成がものすごくラクになりました。
私たちの社内から見た世界ではなく、一般の世界、外の世界から見たときのキーワードはこういう表現なんだと。理解が進んだので、マーケティング担当者として学びが多かったですね。
すべては事業成長のために「クライアントでも遠慮しない姿勢がありがたい」
ー 21年3月に才流から、戦略をまとめた資料を提出されたそうですね。率直な感想を教えてください。
宇野 ページ数が200ページ以上もあって、率直に言うとすごく大変だったんじゃないかと思いました。申し訳なく思う半面、私たちのビジネスに対する才流の思いをしっかりと受け取れた気がしたので、嬉しかったです。
内容的には、当社のこれからの方向性だけではなく、お役立ち資料のテーマや広告についてのアクションなど、How toまでしっかりと落とし込まれていました。
マーケティング担当者としては、具体的な手段や手法のバリエーションがどれだけ豊富かが、初速に関わる重要な部分だと思っていたので、満足できる内容でした。才流のメソッドの多さが証明されていると感じましたね。
真砂 私は提案資料を拝読して、抽象から具体、理論から実行の方法まで一貫性のあるストーリーを書き上げてくださったので、非常にわかりやすいと思いました。
その上で、私たちがやらなくてはいけないことはとても多いと感じました。多くの課題を突きつけられ、今の状況は「偏差値50以下」だと澤井さんに言われたんです。私たちとしてはそこから頑張らなくちゃいけないと、非常に燃えました。
宇野 悔しかったですよね。でも、そこからいい意味でプライドがなくなって、やってやろうという気持ちになりました。
澤井 遠慮せずに言ってしまいました(笑)。
真砂 できていること、できていないことなど、私たちのビジネス成長のためにフラットに話をしていただけたことは、本当にありがたかったです
ー 才流とのコミュニケーションは、どのように行っていましたか。
宇野 澤井さんには、定例のミーティング以外でも、日々Slackの相談チャンネルで質問や相談をさせてもらっています。
全然本題と関係のないこと、例えばグループ会社のマーケティングに関することなども相談したこともありましたね。本当にいろいろな相談を気軽に送ってしまうので、これでいいのかなと思うくらいですが(笑)。
でも、澤井さんはすぐに返信をくださるので助かっています。私たちが見えていない全体像が見えていらっしゃるので、「そこだけじゃなくてここも確認したほうがいいですよ」と、質問以上の的確なアドバイスをいただけるのもありがたいです。
「共通言語が生まれ、コミュニケーションの生産性が高まった」社内の大きな変化とは
ー 才流との仕事で社内やチームに変化はありましたか。
真砂 マーケティング戦略の提案資料を社内全体に共有したんですが、マーケティングに対するみんなのマインドシェアが高まったと感じています。
マーケティング戦略資料のクオリティが高かったので、「なるほどこうやって考えるんだね」とみんなが納得できて、心が動いたんだと思います。社内の会議の中でマーケティングが占めるポジションが大きく上がった気がしますね。
大袈裟に言うと、プロダクトアウトからマーケットインに変わったんだと思います。これまでは「自社が思うわかりやすさ」で決めていたところから、「外から見たわかりやすさ」について、必ず途中で議論されるようになりました。これは大きな変化だと思います。
また、これまで各担当者が個別最適で行っていたマーケティングに才流のメソッドが備わり、統合されたのは良かったと思います。
宇野 そうですね。現場としても、変化を感じています。
私のチームは、私の他に2名でWebマーケティングを行っているのですが、カスタマージャーニーマップによって共通言語で話をできるようになったんです。
「モチベーションクラウドはお客様とどのように対話を行うのか」「ペルソナはこうだからこの取り組みは違うんじゃないか」「ワーディングはこうじゃないか」など、きちんと認識が擦り合っているので、コミュニケーションの生産性が高まったと思います。
また、澤井さんはどんなときでも、とにかく顧客中心に話をするんです。その考え方が私たちにも染みついて、常にお客様の立場に立って考える、顧客に思いを馳せる癖がついたと思います。
正直これまでは、お客様に伝えたいメッセージが強い分、それを発信することばかりに目が向きがちだったんです。それでは受け取ってもらえないので、「こういう変換をしましょう」「こういう階段を作りましょう」と、ひとつずつ澤井さんから教えていただきました。
「メンバーの育成とチームのレベルアップのために伴走してほしい」才流とのこれから
ー 才流の支援は、どのような会社におすすめしたいと思いますか。
宇野 すでに知り合いの方や、営業で困っているなどの話を聞いたら「SAIRU NOTE」読んでみたらと、個人的にはおすすめしています。あらゆる企業の方に紹介をしたいなと思っています。
ただ実際に取引をすると考えると、一定以上マーケティングに予算をかけられる会社や、マーケティングを学んで頑張りたいと思っている会社のほうが、プロジェクトがうまくいくのではないでしょうか。
ー 21年4月からは伴走支援のフェーズに入ったそうですね。これから才流に期待することを教えてください。
真砂 長期で伴走支援をしていただきたいと思った背景は、実行の支援はもちろん、メンバーの育成にも力を入れたいと思ったからです。
私たちもコンサルティングを提供しているのでわかるのですが、コンサルタントが伴走しているときはきちんとやれるけれども、抜けるとできなくなってしまうのでは意味がないんです。支援が終了した後に、私たちだけでも自走できる状態を作りたいと思っています。
セオリーを構築する、ToDoを洗い出していただくことも大事ですが、メンバーを一流のマーケターとして育成してもらえたら嬉しいですね。
宇野 担当者として私がやらなけれなければならないことは、才流と一緒に取り組んだペルソナ、カスタマージャーニーマップなど、マーケティング理論の効果をしっかりと生み出していくことです。
圧倒的な成果を出すための理論は整ったので、これからは私も含めた担当者のスキルアップをサポートしていただきたいです。
澤井 ありがとうございます。理論は実行できなければ意味がないので、ここからまたしっかりとご支援をしていきたいと思います。
(撮影/矢野 拓実 取材・文/安住 久美子 編集/中島 孝輔)